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現代日本の安全保障とマス・メディア10

第3章 1976年 旧・防衛計画の大綱における防衛力 陸上自衛隊3

 

砲兵部隊では、644個の対人対物子弾(均質圧延防弾鋼板40mm貫通)を投射し、面制圧に有効な射程32kmのM26ロケット12発と、射程160km以上ある弾道ミサイル「ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)」を装備するLTV/ローラル・ヴォート・システムズM270多連装ロケット発射システム(ATACMSは現在のところ未装備・検討中)が火力投射の期待を担った。

 

対戦車、対艦艇、対舟艇にたいしても整備が図られた。1988年には88式地対艦誘導弾システムが配備され、対舟艇・対戦車には有線誘導の79式対戦車誘導弾が導入された。またセミ・アクティヴ・レーザー誘導の87式対戦車誘導弾も配備された。

 

空中機動においてはシコルスキーUH-60JAブラック・ホーク汎用ヘリコプター、川崎重工業OH-1観測ヘリコプターなどが開発、配備されていった。しかし、大量生産できない日本の財政制度、諸政策によって値段は高騰し、配備は遅れ、防衛力整備が進まない。

 

一方で、高機動車がトヨタ自動車によって開発された。これは、アメリカ4軍が使用するジープ、中型トラック双方の後継車両として開発されたAMジェネラルM998ハマー高機動多目的装輪車両(HMMWV)に酷似しており、使用目的も似ている。双方とも民間技術を多用し、大量生産することで価格低減、大量配備を狙ったもので、さらに装甲強化型、救急車、牽引車、地対空ミサイル搭載車、対戦車ミサイル搭載車、無線中継車などにファミリー化し、生産台数を増やし、メンテナンス・コストを低減させることも狙っている。アメリカではそうなったが、陸上自衛隊では結局、小型トラック、中型トラック、軽装甲機動車と別物が開発、生産され続け、コスト削減にはつながらなかった。

 

旧・防衛計画の大綱が新・防衛計画の大綱に切り替わった1996年までに進められた陸上自衛隊の防衛力は、旧・防衛計画の大綱開始年次の1976年と比較して、飛躍的に向上した。しかし、大量生産できないことからくる価格の高騰と、それにともなう採用数の低下の悪循環によって、1点豪華主義的な装備となってしまっている。また、ソ連による「限定的かつ小規模な侵略」、着上陸侵攻対処を想定した戦力構成、戦術を採っていたため、市街戦や陽動作戦、ゲリラ・遊撃戦、コマンド対処、テロへの対処のための施策、特殊部隊や市街戦部隊、狙撃作戦などが重要視されていなかった。