· 

現代日本の安全保障とマス・メディア78警視庁SIT

第2節 警察の対テロ作戦 1995年-2016年

 

非正規戦やテロリズム事件発生時、初動対処(2時間)にあたるのは地域部自動車警ら隊、機動警ら隊、刑事部機動捜査隊である。

 

地域部隊員の主装備は、最近はアルミ・フレームで非常に軽いスミス&ウェッソン(S&W)M37エアー・ウェイト38スペシャル口径回転式拳銃(5発装弾)、S&W M3913「LADY SMITH」9mm×19口径自動拳銃(8+1発装弾)が導入され始めた。刑事部機動捜査隊捜査員の装備はシュバイツイッシュ・インダストリー・ゲゼルシャフト(SIG)P230 32ACP口径(7,65mm×17)自動拳銃(7+1発装填)であり、非正規戦や銃乱射などのテロリズム発生時には対応は困難と思われる。

 

1997年2月28日にロサンゼルス市ノース・ハリウッドのローレル・キャニオン通りにあるバンク・オブ・アメリカで銀行強盗事件が発生した。

 

犯人はごく普通の凶悪犯罪者ラリー・フィリップス・ジュニアとエミール・マタサレムの二人だけである。

 

二人は全身をアラミド繊維製の防弾装備で固め、ノリンコAK-47突撃銃、H&K HK91ライフル、ブッシュマスターAR-15ライフルなどの自動小銃、ベレッタM92F拳銃を乱射し、周囲を警察官50人以上で完全に包囲したロサンゼルス警察と銃撃戦を展開、拳銃とショット・ガンしか装備しないロサンゼルス警察のパトロール警官と刑事はなすすべもなく一方的に長時間、1000発以上銃撃された。

 

アラミド繊維製防弾装備には効果が無い拳銃、ショット・ガンによる反撃は全くの無力だった。

 

アラミド繊維製防弾装備を貫通する能力を持つM16A1自動小銃を装備するSWAT部隊は渋滞で到着が遅れ、SWAT隊員がM16A1自動小銃で犯人を射殺するまでに重傷者が多数発生、死者が出なかったのは奇跡であった。

 

この事件以後、M16A1自動小銃が普通のパトロール車両に配備されるようになったことから、初動対処にあたる警察官の重装備化および能力、資質の飛躍的な向上が重要である。

 

銃犯罪に精通したロサンゼルス警察ですらごく少数の素人重武装犯罪者にすら対処するは至難の業であった。

 

日本赤軍のロッド空港での無差別銃乱射テロ事件、ラシュカレ・タイバによるインド・ムンバイ無差別銃乱射テロ事件、フランス銃撃テロ事件もあったことであり、専門の高度な訓練を受けた北朝鮮のゲリラ部隊、特殊部隊の無差別テロ作戦や、国際テロリストに対処するには相当の準備、訓練、警察官人員の入れ替え、ドクトリンの抜本的改革、と装備が要る。(注1)

 

立て籠もり、人質事件、誘拐・拉致事件、銃器犯罪などのテロリズムの発生時、最初に対処するのは各都道府県警察本部刑事部捜査第一課におかれる特殊犯捜査係である。

 

特殊犯捜査係の捜査員はボディ・アーマーを装着し、S&W M3913「LADY SMITH」9mm×19口径自動拳銃、ベレッタM92Fヴァーテック 9mm×19口径自動拳銃、ヘッケラー&コッホ(H&K) MP5PDW個人防衛武器(サブ・マシンガン)で武装しながら(注2)、高度なネゴシエイト(交渉)能力を駆使し、テロリストに対し投降、人質解放を説得する。

 

また、テロ事件が長期化することが見込まれる場合は、特に能力が高い警視庁刑事部捜査第一課特殊犯罪捜査係・特殊捜査班SIT(東日本)、大阪府警察刑事部捜査第一課特殊事件係・制圧攻撃班MAAT(西日本)が犯行現場に派遣され、武力行使によらない解決に尽力がそそがれる。

 

SITとMAATは他の県警察とは比較にならないほどの人員、予算が与えられており、訓練や実戦経験も豊富である。