日本の国家安全保障とマス・メディアに関する論文です。

「日本の国家安全保障」

2000年代

田中大介

 

  日本の国家安全保障 

        2000年代

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     田中大介

 

 

 

 

 

2000年代の日本の国家安全保障

 

 

 

 

 

 

 

第1章 2000年に入ってからの情勢


 

ジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領と小泉純一郎首相の誕生と、「アル・カイダ」によるテロの発生

 

アメリカ合衆国では2000年の大統領選挙で、民主党の第42代大統領ウィリアム・ジェファーソン・クリントン(ビル・クリントン)に次いで、第43代大統領に共和党のジョージ・ウォーカー・ブッシュが選出された。民主党大統領候補の現職副大統領アル・ゴアとは激戦であった。アル・ゴアの外交ブレーンはズビグニュー・ブレジンスキーで、ブレジンスキーは97年の『フォーリン・アフェアーズ』において日本を「保護国」(属国)と定義し、中国を北大西洋条約機構(NATO)と同等のパートナーとして扱うと述べるなど、日本にとって受け入れがたい政策を掲げていた。そのため、ジョージ・ウォーカー・ブッシュが大統領に選出されたことは日本にとって朗報であった。

 ジョージ・ウォーカー・ブッシュは国務副長官にリチャード・アーミテージ(元国防次官補)、国防副長官にポール・ウォルフォウィッツ(元国防次官)を指名した。リチャード・アーミテージとポール・ウォルフォウィッツは「アーミテージ・リポート」において、日本をイギリスと同等に扱うよう提言しており、日本の国際的地位向上につながることが有望視された。

 国務長官にはロナルド・レーガン政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で合衆国軍統合参謀本部議長、陸軍大将だった保守穏健派のコリン・パウエルが、国防長官にはネオ・コン派で、リチャード・ニクソン政権で大統領首席補佐官、ジェラルド・フォード政権の国防長官、ドナルド・ラムズフェルドが就任した。国家安全保障担当大統領補佐官にはスタンフォード大学教授のコンドリーザ・ライスが就任した。

 日本では第86代内閣総理大臣・森喜郎に代わり、第87代内閣総理大臣に小泉純一郎が選出された。

 

 

第2章 小泉構造改革の一環としての防衛計画の大綱見直し

 

小泉純一郎内閣総理大臣は、郵政民営化をはじめ各種の「構造改革」に乗り出した。そのひとつに防衛も含まれることとなった。

中国の大軍拡はますます勢いを増し、北朝鮮の情勢不安定と軍事的挑発は続き、韓国の日本に対する軍事的挑戦が強まり、経済が復調したロシアは極東での権益を増すため軍事力を強化していた。

 日本の防衛力増強は必至であった。しかし小泉政権は軍縮を目指したのであった。

 

第1節   「安全保障と防衛に関する懇談会」

 

小泉内閣総理大臣は「安全保障と防衛に関する懇談会」を設けた。座長は東京電力顧問の荒木浩氏、座員は張富士夫・トヨタ自動車社長、五百旗頭真・神戸大学教授、佐藤謙・元防衛庁事務次官、田中明彦・東京大学教授、西元徹也・元統合幕僚会議議長、樋渡由美・上智大学教授、古川貞二郎・前内閣官房副長官、柳井俊二・前駐米大使、山崎正和・東亜大学長であった。

「安全保障と防衛に関する懇談会」は、2004年10月15日に答申を出した。

 

第1部には新たな日本の安全保障戦略と題して、21世紀の安全保障環境、統合的安全保障戦略、新たな安全保障戦略を支える防衛力を打ち出した。21世紀の安全保障環境において、「2001年9月11日、安全保障に関する二十一世紀が始まった。国家からの脅威のみを安全保障の主要な課題と考えていればよい時代は、過去のものとなった」と記述した。1970年代からすでに始まっているテロの脅威に対して遅すぎる指摘である。一方で「他方の極によるきわめて古典的な戦争の可能性がある。その中間にあらゆる組み合わせによる危険が存在している。」と極めて常識的な視点で記述している。

統合的安全保障戦略においては、大きな目標として、「第一には日本に直接脅威が及ぶことを防ぎ、脅威が及んだ場合にその被害を最小化することである。第二の目標は、世界の様々な地域において脅威の発生確率を低下させ、日本に脅威が及ばないようにすることである。」と述べ、これらの目標を達成するために、「国家からの脅威のみ対象にしていた『基盤的防衛力』の概念は、安全保障環境の変化を踏まえて見直す必要がある」と指摘している。

新たな安全保障戦略を支える防衛力として、「多機能弾力的防衛力」を提案している。情報収集・分析能力と伝統的な脅威に対応するために「一定程度の『基盤的』能力を持たなければならず」、また「非国家主体からのテロなどへの対応能力も持たなければならない。」としている。また、国際的安全保障環境改善のために「有効な国際平和協力活動を行う能力が必要」と指摘している。これら多機能弾力的防衛力の要は「情報収集・分析力」であるとしている。

第2部は新たな安全保障戦略を実現するための政策課題として、統合的安全保障戦略の実現に向けた体制整備、日米同盟のあり方、国際平和協力の推進、装備・技術基盤の改革をあげている。

統合的安全保障戦略に向けた体制整備には緊急事態対処、情報能力の強化、安全保障会議の機能の抜本的強化、テロの未然防止に必要な法制度の整備、を指摘している。日米同盟のあり方においては、時代に適合した新たな「日米安保共同宣言」や「日米防衛協力のための指針」の策定を提案している。国際平和協力の推進では自衛隊の本来任務化、武器使用権限の付与、治安維持のための警察的活動の検討を提案している。装備、技術基盤の改革においては、国産追求の見直し、弾道ミサイル防衛における武器輸出三原則の見直しの必要をあげている。

第3部は防衛力のあり方について述べている。「本格的な武力進攻を行いうる脅威は当分の間存在しないと思われる」とし、「むしろゲリラや特殊部隊による重要施設等への攻撃や国内のかく乱、島嶼部への侵略、周辺海空域における軍事的な不法行為など烈度の低い軍事力行使に対して即応しうる必要がある」としている。また、国際的な脅威の予防のため平和協力活動に参加しうるよう長距離・大量の輸送機能の充実を求めている。

防衛力の具体的な構成について、陸上防衛力は「対機甲戦を中心とする本格的着上陸対処のための編成・装備・配置を見直し、烈度の低い多様な軍事行動への即応体制の構築に重点を移す。戦車・特科等の重装備部隊を中心思い切った縮減効率化を図る」と提言している。海上防衛力は「対潜水艦戦闘を中心とした編成・装備・配置から、島嶼防衛や弾道ミサイルの監視・対処、武装工作船による不法行為対処等に重点を移す。艦艇部隊、航空機部隊については、その体制を縮減・効率化する。その際、護衛艦を活用してミサイル防衛能力を整備する。」とした。航空防衛力は「戦闘機を含む航空機部隊の縮減・効率化を図る。誘導弾部隊については、ミサイル防衛力を整備する。」とした。また、「統合の推進」として「統合運用に必要な中央組織を整備する。」ことを提言した。ミサイル防衛について「法改正を含め必要な措置を講ずべきである。」とし、策源地への攻撃能力を持つことが適当か否かは、「慎重に検討し」、「総合的に判断すべきである。」としている。

必要最小限の「基盤的防衛力」から、あらゆる脅威に対応する「多機能弾力的防衛力」への変更を訴え、テロへの対処を明言するなど新機軸を打ち出した提言であるが、具体的な防衛力においては削減ありきの結論で、新たなる危機にも古典的な紛争にも対応していない。 

 北朝鮮の核開発、ミサイル開発、特殊部隊・ゲリラの脅威、朝鮮労働党の工作員がクローズ・アップされた2000年代初頭。

1990年代から中国の軍拡、中国の脅威は明らかになっていた。中国はロシアからスホーイSu-27戦闘機、スホーイSu-30戦闘爆撃機をを輸入するとともに中国国内でライセンス生産も開始、MiG-19戦闘機、殲撃7戦闘機など第2世代戦闘機、殲撃8戦闘機、殲撃8Ⅱ戦闘機など第3世代戦闘機、スホーイSu-27戦闘機、スホーイSu-30戦闘爆撃機など第4世代戦闘機、戦闘機を3000機以上配備、爆撃機140機とともに海軍力も大幅に増強していた。ロシアの軍事力も復活し、韓国はボーイングF-15K戦闘爆撃機とAGM-84H SLAM-ERスタンド・オフ陸上攻撃ミサイル射程距離延伸型を導入、さらに国産巡航ミサイルを搭載する駆逐艦も大幅に増強するなど脅威になっていた。中国の軍拡、中国の脅威、ロシアの軍事力復活、韓国の大軍拡と攻勢が明らかになって久しい2004年、小泉純一郎政権の「安全保障と防衛に関する懇談会」は自衛隊装備の削減、軍縮、を志向していた。(注1)

注1 安全保障と防衛力に関する懇談会『安全保障と防衛力に関する懇談会報告書』(平成16年)

 

 

第2節   防衛計画の大綱の見直し

 

  

 「安全保障と防衛に関する懇談会」の答申を受けて、防衛計画の大綱の見直しが始まった。小泉純一郎内閣総理大臣は、防衛計画の大綱の見直しに、「小泉構造改革」を反映させようとした。その結果、小泉総理大臣は財務省に主導権を持たせた。

小泉総理大臣と財務省首脳の意向をうけた片山さつき財務省主計官は独自の発想に基づく防衛計画の大綱見直し案を提案してくる。片山さつき財務省主計官は「陸上兵力で言えば戦車、火砲、対戦車用ヘリ。海上兵力では護衛艦、対潜哨戒機。航空兵力では、戦闘機などの作戦用航空機など。冷戦型の正面装備になる。」、「日米同盟を強化するなら、なぜ自衛隊を強化する必要があるのか」と的外れな思い込みが激しかった。

テロ対策、ゲリラ・コマンド対処にしても「施設に人を張り付ける非効率な守り方から、情報能力を高めて、敵に張り付ける効率的な方法に変更するというのが、RMAの考え方」、「対象国として想定されている北朝鮮の特殊部隊2500人が日本に向け侵攻し、接岸するとの想定が、アメリカはじめ、わが国も含め周辺各国が情報衛星などを含めてあらゆる方法で集中監視している国から、これまでのような少人数ならいざ知らず、2500人もの大規模部隊が、移動を始めたことすら探知も捕捉もされないほど、甘い国際環境に北朝鮮はおかれていない。」と甘い考えを表明している。特殊部隊の作戦能力、特殊部隊の浸透能力、特殊部隊の輸送能力、を知らないと思われる財務省の片山さつき主計官。(注1)

 

 

1995年防衛計画の大綱では陸上自衛隊現有定員は16万人(実際は16万7千人)、常備編成定員は15万8千人、予備自衛官と即応予備自衛官9千人、戦車979両であった。

 財務省と片山さつき財務省主計官は陸上自衛隊の編成定数を12万人、うち常備編成定数を11万人、予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人とし、戦車は425両と半減した。また北海道の2個師団・2個旅団4万3千人を1個師団1万3千人にするなど、大幅な削減を提案した。これは日本の国土の2/3で、人口は1/2、さらに友好国、同盟国に囲まれたイギリス陸軍(ブリティッシュ・アーミー)の現役兵力より少ない数で、予備役を含めるとさらに少ない数となる。また、装甲厚700mm以上(均質圧延防弾鋼板換算)に及ぶ複合装甲と、装軌・1500馬力のエンジンによる走破性・機動力、120mm砲の圧倒的な火力によって戦場のパトロールをはじめゲリラ・コマンド対処、機甲戦などで有効であるとともに、戦車があまり役に立たないと思われていたアフガニスタン山岳地帯でも戦車が最も有効な兵器とされカナダ軍が戦車を増備するなど、近年のあらゆる紛争で戦車の有効性が証明されているのに、財務省の片山さつき主計官は数を半減させている。

 また、片山さつき財務省主計官は「他国は少数精鋭化している。この事実を防衛庁側はいまだみとめようとはしない」としているが、陸上自衛隊は国土面積38万平方km、人口1億2700万人の大国でありながら、編成定数16万人の少数精鋭である。また、近年の紛争頻発、激化によって各国は陸上兵力を増加させている。災害には、「自衛隊、警察、消防、自治体が協力して対応すべき」と言いながら、災害救援に当たる警察の機動隊の削減、消防庁予算の削減も要求され続けている。(注1)

1995年防衛計画の大綱では海上自衛隊の護衛艦数は54隻であった。

 財務省の片山さつき主計官は、海上自衛隊の護衛艦数は38隻と主張した。

 ロシアは原子力潜水艦と水上戦闘艦の戦力を維持し続けていた。

中国が海軍力を大軍拡し、1988年にはベトナムを攻撃・侵略、1995年にはフィリピンを攻撃・侵略し、尖閣諸島、南沙諸島、中沙諸島を領海と主張し、武力行使を宣言、ミスチーフ礁(美済礁)、ジョンソン・サウス礁(赤爪礁)、ヒューズ礁(東門礁)、スビ礁(渚碧礁)、クアルテロン礁(華陽礁)、ファイアリー・クロス礁(永暑礁)、ガベン礁(南薫礁)を実効支配するなか、片山さつき財務省主計官は海上自衛隊の大幅軍縮を主張した。

航空自衛隊の戦闘機数は編成定数300機、実際は295機であった。

財務省の片山さつき財務省主計官は航空自衛隊の戦闘機数は216機と主張した。

航空自衛隊のこの数字は北海道より人口も面積も小さいイスラエルの469機(F-15A/B戦闘機47機、F-15I戦闘爆撃機60機、F-16A/B/C/D戦闘機362機)、発展途上国のトルコ484機(F-16C/D戦闘機270機、F-4E戦闘機214機)、サウジ・アラビア325機(F-15C/D戦闘機98機、F-15S戦闘爆撃機72機、トーネードADV防空戦闘機60機、トーネードIDS戦闘攻撃機45機、F-5E/F戦闘機50機)、九州程度の大きさで人口が2000万人しかいない台湾575機(F-16A/Bブロック20戦闘機150機、ミラージュ2000戦闘機60機、IDF経国戦闘機150機、F-5E/F戦闘機215機)よりも少ない数である。

さらに15年以上前年度比10%以上の軍事費増加を続け、スホーイSu-27戦闘機とスホーイSu-30戦闘爆撃機を輸入とライセンス生産するとともに、旧世代戦闘機を3000機、爆撃機を140機保有し、近隣諸国への侵略と覇権の姿勢を見せる中国や、スホーイSu-27戦闘機、スホーイSu-30戦闘爆撃機、ミコヤンMiG-29戦闘機、ミコヤンMiG-31戦闘機、ツポレフTu-22爆撃機、ツポレフTu-95爆撃機、ツポレフTu-160爆撃機を200機を保有し、歴史的に覇権主義、拡張主義の国防体制をとるロシアに接する、人口1億2700万人、国土面積38万平方km世界でも有数の領空・排他的経済水域を持つ日本では、従来の編成定数でも不足する。それでも財務省の片山さつき主計官は航空自衛隊の戦力を大幅に削減・軍縮しようとした。

一方、防衛庁は陸上自衛隊の編成定数を16万2千人、うち常備自衛官を15万2千人、予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人、戦車の数は678両と提案、海上自衛隊の護衛艦数を50隻、航空自衛隊の戦闘機数を282機と提案した。ゲリラ・コマンド対処に必要なマン・パワーを増加させているが、戦車、護衛艦、戦闘機を削減ありきで削減している。

小泉内閣総理大臣は2004年12月1日の参議院予算員会で、「防衛予算も聖域はない。前年度以下に抑制するように、増やすべきは増やしていいが、それに見合った削減も考えてくれと言っている。」と発言した。(注2)

 

細田博之・内閣官房長官は2004年12月8日に、東京・赤坂全日空ホテルで与党安全保障に関するプロジェクトチームの額賀福志郎氏に対して、「定数は抑制的にしてほしい。私の感触として小泉首相はそうだ。」と述べ、小泉純一郎・内閣総理大臣と細田博之・内閣官房長官は高まる脅威の中、軍縮と防衛費削減を指示した。(注3)

  小泉内閣総理大臣は2004年12月1日の参議院予算員会で、「防衛予算も聖域はない。前年度以下に抑制するように、増やすべきは増やしていいが、それに見合った削減も考えてくれと言っている。」と発言した。(注2)

細田博之・内閣官房長官は2004年12月8日に、東京・赤坂全日空ホテルで与党安全保障に関するプロジェクトチームの額賀福志郎氏に対して、「定数は抑制的にしてほしい。私の感触として小泉首相はそうだ。」と述べ、小泉純一郎・内閣総理大臣と細田博之・内閣官房長官は高まる脅威の中、軍縮と防衛費削減を指示した。(注3)

新しい防衛計画の大綱では、軍縮傾向政策と防衛費削減を主張する小泉純一郎内閣総理大臣と細田博之・内閣官房、大幅な軍縮と防衛費の大幅な削減を主張する財務省と財務省の片山さつき主計官、若干の軍縮と若干の防衛費削減を主張する防衛庁だったが、結局は折衷案的なものに仕上がった。

新しい防衛計画の大綱において陸上自衛隊は、陸上自衛隊編成定数15万5000人、うち常備自衛官定員14万8000人、即応予備自衛官定員数7000人(中期防完成時編成定数16万1000人程度、うち常備自衛官定員数15万2000人程度、即応予備自衛官定員数8000人程度)とした。戦車は約600両(中期防完成時790両)とされた。主要特科装備は約600門/両(中期防完成時には約830門/両)とされた。

新しい防衛計画の大綱において海上自衛隊は、護衛艦部隊(機動運用)は4個護衛艦群(8個隊)32隻とされ、護衛艦部隊(地域配備)は5個隊(約15隻、中期防完成時に6個隊)とされた。

新しい防衛計画の大綱において航空自衛隊は、航空自衛隊の作戦用航空機は約350機、うち戦闘機は約260機とされた。

国土面積が日本の1割程度の広さで、人口も1600万人のオランダは1995年、F-16A/B戦闘機だけで210機保有していた。オランダより領土、領海、領空、排他的経済水域がはるかに大きい日本は2004年、戦闘機がわずか260機とされた。

 中国、ロシア、北朝鮮、韓国が日本に敵意を向け大幅に軍拡をするなか、日本は大幅に軍縮し防衛費を削減した。小泉純一郎・内閣総理大臣、細田博之・内閣官房長官、財務省、財務省の片山さつき主計官は軍縮、防衛費削減に成功した。高まる脅威の中、日本は人口と国土面積、排他的経済水域に対して大幅に不足する防衛力となった。

 

 

 

注1 片山さつき「自衛隊にも構造改革が必要だ」『中央公論』中央公論社2005年1月        

注2 参議院予算委員会2004年12月1日

注3 読売新聞朝刊2004年12月9日

 

 

 

第1節   平成17年度以降に係る防衛計画の大綱における防衛力 

 

 

 

  

第1項   平成17年度以降に係る防衛計画の大綱における防衛力 陸上自衛隊

 

 

 

  

 増加された常備自衛官定員数は北朝鮮などのゲリラ・コマンド部隊対処に必要なマン・パワーの確保のため増加された。平時地域に配備する部隊は8個師団・6個旅団とされた。第1師団(南関東・静岡)、第2師団(道北)、第3師団(近畿)、第4師団(九州北部)、第6師団(東北南部)、第7師団(機動運用部隊・機甲師団)、第8師団(九州南部)、第10師団(中部)と第5旅団(道東)、第9旅団(東北北部)、第11旅団(道央、道南)、第12旅団(北関東・甲信越)、第13旅団(中国)、第14旅団(四国)である。沖縄は第1混成団が防衛するが、将来的には第15旅団に格上げされることになった。第9師団は第9旅団になる予定だった。

 機動運用部隊には第7師団(1個機甲師団)、中央即応集団があてられた。

第7師団は第3世代戦車の三菱重工業 90式戦車を装備する部隊である。

三菱重工業90式戦車は均質圧延防弾鋼、チタニウム合金、セラミックで構成される複合装甲、日本製鋼所でライセンス生産されるドイツ・ラインメタルの120mm滑腔砲、パッシブ赤外線暗視装置、レーザー照準装置、デジタル・コンピューターなどの最新センサーと演算装置を装備する。三菱重工業 90式戦車には三菱重工業 89式装甲戦闘車(均質圧延防弾鋼装甲、エリコンKDE35mm機関砲と川崎重工業79式対舟艇対戦車誘導弾を装備、乗員3名・搭乗普通科隊員7名)、三菱重工業 73式装甲車(アルミニウム合金装甲、乗員3名・搭乗普通科隊員8名)、三菱重工業 87式自走高射機関砲(エリコンKDA35mm機関砲とレーダー、赤外線映像装置、TVカメラ、レーザー距離測定装置を装備)などが随伴し三菱重工業 90式戦車を守る。

第7師団(本部:北海道・千歳駐屯地)は北部方面隊に配備され、第71戦車連隊、第72戦車連隊、第73戦車連隊を核に、第7化学防護隊、第7飛行隊、第7偵察隊、第7通信大隊、第7施設大隊、第7後方支援大隊、第7高射特科大隊、第7砲兵連隊、第11普通科連隊を擁する。

 

中央即応集団は第1空挺団、中央即応連隊、中央特殊武器防護隊、第1ヘリコプター団、特殊作戦群、を隷下に置く。

 

第1空挺団は千葉県習志野駐屯地に駐屯し、団本部、団本部中隊(偵察小隊、降下誘導小隊)、第1普通科大隊、第2普通科大隊、第3普通科大隊、空挺特科大隊、空挺後方支援隊、空挺通信中隊、空挺施設中隊、空挺教育隊、対テロ中隊、からなる2000人の部隊である。(注2)

第1空挺団の隊員の多くは空挺レンジャー資格保有者で占められ精強を誇る。

 

 中央即応連隊は2008年3月26日に栃木県宇都宮駐屯地で正式に発足した。国内での各方面隊への増援や、国際平和協力活動における先遣隊の役割を果たす。隊員はレンジャー資格保有者や第1空挺団出身者が多く、錬度も非常に高い。700人で構成され、本部管理中隊と3個普通科中隊からなる。

 

 中央特殊武器防護隊は第101特殊武器防護隊として2007年3月28日に埼玉県大宮駐屯地で発足した。2008年3月26日に中央特殊武器防護隊に名称変更している。

 基になったのは第101化学防護隊である。中央特殊武器防護隊は隊本部、本部中隊、第102特殊武器防護隊と第103特殊武器防護隊を隷下に置く。装備は化学防護車(82式指揮通信車ベース)、化学剤監視装置、除染車3型B、除染装置、携帯除染器2型、発煙機3型、生物偵察車、液体散布車、生物剤対処用衛生ユニット、防護マスク4型、化学防護衣4型、空気マスク、火災防護衣、ガス検知器2型、CR警報機、化学剤検知器AP2C、線量計3型、携帯線量計セット、携帯生物検知器、生物剤警報器、携帯気象計1-3型、携帯気象計2型、中性子線用線量率計などである。(注1)

 対特殊武器衛生隊は朝霞駐屯地に駐屯し、方面隊を支援する。

 

 

 第1ヘリコプター団は千葉県木更津駐屯地に駐屯し、団本部、本部管理中隊、第1輸送ヘリコプター群(第103飛行隊、第104飛行隊、第105飛行隊、第106飛行隊)、第102飛行隊、特別輸送ヘリコプター隊、第1ヘリコプター野整備隊、連絡偵察飛行隊を隷下に置く。

 第1ヘリコプター群にはボーイングCH-47JAチヌーク輸送ヘリコプターが配備され、大量輸送を行う。第102飛行隊にはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60JA多用途ヘリコプター、マクドネル・ダグラスOH-6D観測ヘリコプターが配備される。ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60JA多用途ヘリコプターは、合衆国陸軍のユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーMH-60L特殊作戦ヘリコプターに匹敵する事実上の特殊作戦ヘリコプターである。第102飛行隊は合衆国陸軍の第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」のように、特殊作戦を航空支援する部隊となる。特別輸送ヘリコプター隊はユーロコプターEC225LP輸送ヘリコプターを装備する要人輸送部隊である。連絡偵察飛行隊は三菱重工業LR-1連絡偵察機、レイセオン・エアクラフト(ビーチ・エアクラフト)LR-2連絡偵察機で偵察、連絡を行う。(注3)

 陸上自衛隊特殊作戦群は2004年3月、千葉県・習志野駐屯地で正式に発足した。

 

陸上自衛隊特殊作戦群は対テロ、対ゲリラ、対コマンド/対特殊部隊を担当する陸上自衛隊最強の部隊である。陸上自衛隊特殊作戦群は戦闘部隊が200人、支援部隊が100人の300人と発表された。

陸上自衛隊特殊作戦群は当初、空挺レンジャー資格保有者、部隊レンジャー資格保有者を中心に選抜された。その後も空挺レンジャー資格保有者、部隊レンジャー資格保有者を中心に構成されるものの、レンジャー資格が無くても特殊作戦群のセレクションに呼ばれることがある。

米ソ冷戦時代にもテロ・ゲリラ・コマンド・特殊部隊の危機は存在していたのだが、テロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処には治安の要素があるため、陸上自衛隊が任務とすることに警察庁の反対があった。 

陸上自衛隊が特殊部隊を創設しテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処を実施すると、左派マス・メディア、左派市民運動家、左派政治家が「国民に銃を向けるのか」、「戦争の準備をしている」、「市民が巻き込まれる」という反対の声を上げる可能性が高かった。

陸上自衛隊がテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処を本格化させること、特殊部隊を創設することは躊躇われてきた。

しかし、ソ連が崩壊し、機甲部隊の衝突の可能性が低くなったため、相対的にテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処の比重は高まった。

また、1992年からはじまった北朝鮮による大量破壊兵器保有に対する国際的な制裁問題で、1994年、北朝鮮の暴発・崩壊の可能性が高まり、世界有数の特殊部隊・コマンド部隊、ゲリラ部隊・テロ部隊を有する北朝鮮の脅威が切迫したものとなった。

以前からソ連の日本進攻時に真っ先に投入されるソ連軍参謀総局特殊任務部隊(スペツナズ)を考慮はしていたが、こうした経緯で防衛庁、陸上自衛隊のなかでもゲリラ・コマンド対処の重要性が再認識された。

陸上自衛隊は第1空挺団にゲリラ・コマンド研究班を設立、合衆国陸軍特殊作戦コマンド、合衆国陸軍特殊部隊コマンド、合衆国陸軍特殊部隊群(グリーン・ベレー)、合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分権隊D(デルタ・フォース)、ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールに要員を派遣し、部隊運用、作戦、訓練のノウハウを学んだ。

長期間の準備を経て遂に2004年3月、陸上自衛隊特殊作戦群が正式に発足した。

 

 

 中央即応連隊は2008年3月26日に栃木県宇都宮駐屯地で正式に発足した。国内での各方面隊への増援や、国際平和協力活動における先遣隊の役割を果たす。隊員はレンジャー資格保有者や第1空挺団出身者が多く、錬度も非常に高い。700人で構成され、本部管理中隊と3個普通科中隊からなる。

 

 

 

2002年3月には西部方面隊直轄の組織として西部方面普通科連隊が長崎県・相浦駐屯地で発足した。島嶼部、山岳の多い西部方面隊の地形に対応する部隊で、敵が占領・潜伏した離島の奪還、情報収集、テロ・ゲリラ・特殊部隊/コマンド対処がおもな任務である。水路からの潜入、山中機動、ヘリコプターを使っての空路からの侵入など難しい戦術をこなす。レンジャー資格保有者が多数を占める。一方、新兵も比較的多く採っている。(注4)

西部方面普通科連隊は本部管理中隊と3個普通科中隊からなる660人の連隊である。非常に重い81mm迫撃砲を担いでの険しい山中の機動や、装具を身につけての長距離水泳での水路侵入など任務は過酷を極める。

 

 

北海道の防衛を担う北部方面隊(総監部:北海道・札幌駐屯地)には、2個師団・2個旅団が置かれた。

機動運用・機甲師団とされた第7師団と、歩兵師団である第2師団、歩兵旅団の第5旅団、第11旅団がある。

第2師団(本部:北海道・旭川駐屯地)は、第2戦車連隊、第3普通科連隊,第25普通科連隊,第26普通科連隊を基幹に道北に配置される。

第5旅団(本部:北海道・帯広駐屯地)は、第5戦車大隊、第5特科隊、第4普通科連隊、第6普通科連隊、第27普通科連隊を基幹に道東に配置される。

第11旅団(本部:北海道・真駒内駐屯地)は道央、道南を防衛地域とし、第11戦車隊、第11特科隊、第10普通科連隊、第18普通科連隊、第28普通科連隊を基幹とした部隊である。

第1戦車群は90式戦車、74式戦車を装備する精強な部隊であったが、徐々に規模を縮小された。

また、第1特科団にはLTV/ローラル・ヴォート・システムズM270多連装ロケット発射システム、ゼネラル・ダイナミクスM110 203mm自走りゅう弾砲、88式地対艦誘導弾が配備され、強力な火力で敵を撃滅することが期待された。

東北は東北方面隊(総監部:宮城県・仙台駐屯地)が担当する。

南東北は第6師団(本部・神町駐屯地)が防衛する。第20普通科連隊、第22普通科連隊、第44普通科連隊を基幹とした約9000名の甲師団である。

北東北は第9師団(本部:青森県・青森駐屯地)が、第5普通科連隊、第21普通科連隊、第39普通科連隊を基幹とする師団が置かれた。

第9師団は第9旅団となる計画だった。

関東・甲信越・静岡の防衛は東部方面隊(総監部:埼玉県・朝霞駐屯地)が担当した。

南関東と山梨県、静岡県は第1師団(本部・市ヶ谷駐屯地)が担当し、即応近代化師団の政経中枢師団とされた。第1普通科連隊、第31普通科連隊、第32普通科連隊、第34普通科連隊、第1戦車大隊を基幹とする師団である。

北関東と新潟県は第12旅団(本部・相馬原駐屯地)がおかれた。第2普通科連隊、第13普通科連隊、第30普通科連隊、第12ヘリコプター隊を基幹とする旅団であった。

第12師団から戦車と普通科が大幅削減され、ヘリコプターを大幅増強する空中機動旅団となる予定だった第12旅団だが、ヘリコプターは若干の増加にとどまり、戦車と普通科が大幅に削減されただけの軍縮となってしまった。

日本の面積の30%を防衛するのは中部方面隊(総監部:兵庫県・伊丹駐屯地)である。西部本州と四国が担当地域である。

近畿地方を防衛するのは第3師団(本部:兵庫県・千僧駐屯地)で、第7普通科連隊、第37普通科連隊、第36普通科連隊、第3戦車大隊を基幹とする師団で、第45普通科連隊が廃止され定員・9100人の甲師団から定員・7000人の即応近代化師団の政経中枢師団となった。

中部地方を防衛するのは第10師団(本部:愛知県・守山駐屯地)で、第14普通科連隊、第33普通科連隊、第35普通科連隊第10戦車大隊などに加え、第49普通科連隊が新設され約8800人の戦略機動師団となった。有事の際、第10師団は即応近代化師団の戦略機動師団として政経中枢師団の第1師団、第3師団を支援することになった。

中国地方を防衛するのは第13旅団(本部:広島県・海田市駐屯地)で、第8普通科連隊、第17普通科連隊、第47普通科連隊、第13戦車大隊から規模が大幅に縮小された第13戦車中隊、第13特科連隊から規模大幅に縮小された第13特科隊を基幹とする4100人の旅団である。

 

四国を防衛する第14旅団(本部:香川県・善通寺駐屯地)は、第15普通科連隊に加えて第50普通科連隊が新設された。

 

 

 九州・沖縄を防衛するのは西部方面隊(総監部:熊本県・健軍駐屯地)である。

北部九州を防衛するのは第4師団(本部:福岡県・福岡駐屯地)で、第16普通科連隊、第19普通科連隊、第40普通科連隊、第41普通科連隊を基幹部隊とし、さらに対馬警備隊が対馬海峡を警戒する。第40普通科連隊、第41普通科連隊は、北朝鮮ゲリラ・コマンド部隊に対処するため、早い時期から市街地における戦闘を想定した訓練を開始している。

南部九州を防衛するのは第8師団(本部:熊本県・北熊本駐屯地)で、第12普通科連隊、第24普通科連隊、第42普通科連隊、第43普通科連隊を基幹にしている。

西部方面隊には西部方面普通科連隊も創設された。

沖縄は、第1混成群と第101飛行隊を基幹に防衛を担当していた第1混成団(本部:沖縄県・那覇駐屯地)が第15旅団に昇格する。

 

普通科部隊の装備は、豊和工業 89式小銃(5,56mm×45弾)、豊和工業 64式小銃(7,62mm×51弾)、5,56mm機関銃MINIMI(ファブリック・ナショナールFN MINIMI軽機関銃を住友重機械工業でライセンス生産、5,56mm×45弾)、住友重機械工業 62式7,62mm機関銃(7,62mm×51弾)、12,7mm重機関銃(ファブリック・ナショナール ブローニングM2機関銃、住友重機械工業でライセンス生産、12,7mm×99弾)、84mm無反動砲(ボフォース カール・グスタフM2無反動砲)、110mm個人携帯対戦車榴弾(ダイナマイト・ノーベル パンツァーファウスト3)、ロイヤル・オードナンス 81mm迫撃砲L16、トムソン・ブラント 120mm迫撃砲RT、ミネベア 9mm拳銃(シュバイツイッシュ・インダストリー・ゲゼルシャフト/SIGザウエル SIG P220拳銃をミネベアでライセンス生産、9mm×19弾)、ミネベア 9mm機関拳銃(9mm×19弾)、豊和工業 96式40mm自動てき弾銃、川崎重工業 01式軽対戦車誘導弾(赤外線画像誘導)、川崎重工業 96式多目的誘導弾システム(光ファイバー・トラック・ヴィア・ミサイル誘導)、川崎重工業 87式対戦車誘導弾(セミ・アクティブ・レーザー誘導)、川崎重工業 79式対舟艇対戦車誘導弾(光学照準・有線誘導)、が主な装備である。

 

特科部隊の装備には、ラインメタル/ヴィッカーズ・シップビルディング・アンド・エンジニアリング・リミテッド/OTOメララ FH-70 155mm榴弾砲、LTV/ローラル・ヴォート・システムズ M270多連装ロケット発射システム(MLRS)、日本製鋼所/三菱重工業 99式自走155mm榴弾砲、日本製鋼所/三菱重工業 75式自走155mm榴弾砲、ゼネラル・ダイナミクス M110 203mm自走榴弾砲、日立製作所 87式砲側弾薬車、日立製作所 99式弾薬給弾車、などがある。

 

 

施設科部隊の装備は、三菱重工業 グレーダ、日立建機 油圧ショベル、コマツ 油圧ショベル、キャタピラー 油圧ショベル、神戸製鋼所コベルコ建機 油圧ショベル、コマツ 掩体掘削機、タダノ トラック・クレーン、神戸製鋼所コベルコ建機 トラック・クレーン、コマツ 中型ドーザ、キャタピラー 中型ドーザ、コマツ 大型ドーザ、キャタピラー 大型ドーザ、コマツ 75式ドーザ、諸岡 資材運搬車、オノデラ 資材運搬車、IHI/IHI建機 小型ショベルドーザ、長野工業 小型ショベルドーザ、ヤンマー建機 小型ショベルドーザ、クボタ 小型ショベルドーザ、コマツ 施設作業車、川崎重工業 バケットローダ(装輪式)、川崎重工業KCM バケットローダ(装輪式)、三井三池製作所 坑道掘削機、住友軽金属/ナルコ岩井 81式自走架柱橋、日立製作所 07式機動支援橋、三菱重工業 91式戦車橋、日立製作所 92式浮橋、三菱自動車工業 92式浮橋、三菱ふそうトラック・バス 92式浮橋、ジャパンマリンユナイテッド/JMUディフェンスシステムズ 92式浮橋、今治造船 92式浮橋、石原造船 92式浮橋、飯作造船 92式浮橋、住友軽金属/ナルコ岩井 軽徒橋、ウィリアム・フェアリー パネル橋MGB、ジャパンマリンユナイテッド/JMUディフェンスシステムズ 94式水際地雷敷設車、IHI/IHIエアロスペース 92式地雷原処理車、川崎重工業 89式地雷原探知機セット、三菱重工業 92式地雷原処理ローラ、三菱電機 対人障害システムズ、石川製作所 対人障害システム、アイチコーポレーション/いすゞ自動車 道路障害作業車、日立建機 83式地雷敷設装置、富士重工業SUBARU 87式地雷敷設装置(ヘリコプター用)、IHI/IHIエアロスペース 70式地雷爆破装置、などがある。

 

 

機甲部隊には、三菱重工業 90式戦車(重量50,2トン、V10水冷ディーゼル・エンジン/1500馬力、複合装甲、ラインメタルRh120 120mmL44滑腔砲/DM33APFSDS弾・JM33APFSDS弾、パッシブ赤外線暗視装置、光学照準システム、デジタル・コンピューター、YAGレーザー距離測定装置)、三菱重工業   74式戦車(重量38,5トン、V8空冷ディーゼル・エンジン/720馬力、均質圧延防弾鋼装甲、ヴィッカーズL7 105mmライフル砲/93式APFSDS弾、アクティブ赤外線暗視装置、光学照準システム、アナログ・コンピューター、ルビー・レーザー距離測定装置)、89式装甲戦闘車(均質圧延防弾鋼装甲、エリコンKDE35mm機関砲と川崎重工業79式対舟艇対戦車誘導弾を装備、乗員3名・搭乗普通科隊員7名)、三菱重工業 73式装甲車(アルミニウム合金装甲、乗員3名・搭乗普通科隊員8名)、三菱重工業 87式自走高射機関砲(エリコンKDA35mm機関砲とレーダー、赤外線映像装置、TVカメラ、レーザー距離測定装置を装備)などが配備される。

また、2010年に10式戦車として制式採用されるTK-Xが開発中であった。 

陸上自衛隊が導入する三菱重工業 10式戦車(重量40トン、戦闘重量44トン、V8水冷ディーゼル・エンジン/1200馬力、モジュール複合装甲、日本製鋼所120mmL44滑腔砲/DM33APFSDS弾・JM33APFSDS弾・10式APFSDS弾、パッシブ赤外線暗視装置、デジタル光学照準システム、データ・リンク、基幹連隊指揮統制システム、レーザー距離測定装置、)は、データ・リンクやデジタル光学照準システムなど新機軸の技術が多く取り入れられたが90式戦車より価格が抑えられた。10式戦車は重機を運搬する民間のトランスポーターを利用することを想定している。民間のトランスポーターは積載量40トンのものが多いので、10式戦車の重量はモジュール複合装甲を取り外した状態で40トン以内に抑えることとした。

10式戦車は74式戦車の後継とされた。方面隊の防空として第1高射特科群、第2高射特科群、第3高射特科群、第4高射特科群、第5高射特科群、第6高射特科群、第7高射特科群、第8高射特科群がある。

 

方面隊の防空として第1高射特科群、第2高射特科群、第3高射特科群、第4高射特科群、第5高射特科群、第6高射特科群、第7高射特科群、第8高射特科群がある。

高射群特科の装備に、三菱電機 03式中距離地対空誘導弾(アクティブ・レーダー誘導)、レイセオン/三菱電機/東芝 MIM-23改良ホーク地対空誘導弾(セミ・アクティブ・レーダー誘導)が導入されている。

03式中距離地対空誘導弾はレイセオン/三菱電機/東芝 MIM-23改良ホーク地対空誘導弾を更新するものとされていた。03式中距離地対空誘導弾は当初、1年につき0,5個群(2個中隊)の導入予定で、8個高射特科群のMIM-23改良ホーク地対空誘導弾を約16年前後をかけてゆっくりと置き換える予定されていたが、次第に1年につき0,25群(1個中隊)の導入とに変更され当初予定から導入数が半減、03式中距離地対空誘導弾の配備がほとんど進まなかった。

配備が進まない03式中距離地対空誘導弾、防空能力を高めるため03式中距離地対空誘導弾(改)の開発が進められた。

 

03式中距離地対空誘導弾(改)は、コスト削減とともに、巡航ミサイル・空対地ミサイル対処能力を高めている。

 

師団・旅団の防空として、東芝 81短距離地対空誘導弾(赤外線誘導)、東芝 81式短距離地対空誘導弾(C)(電波弾:アクティブ・レーダー誘導、光波弾:赤外線可視光画像誘導)が配備された。

東芝 81式短距離地対空誘導弾の後継に2011年に制式採用される東芝 11式短距離地対空誘導弾が開発されていた。11式短距離地対空誘導弾はアクティブ・レーダー誘導で、アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーで捜索する。

 

近接防空には、東芝 93式近距離地対空誘導弾(赤外線誘導+CCDカメラ画像誘導)、東芝 91式携帯地対空誘導弾(赤外線誘導+CCDカメラ画像誘導)が配備されている。FIM-92スティンガー携帯地対空ミサイル(赤外線誘導+紫外線誘導)、エリコン L90 35mm高射機関砲も配備されていたが次第に数を減らしている。

 

 

 レーダーには、NEC 85式地上レーダー装置JTPS―P11、NEC 地上レーダー装置1号(改)JTPS-P23、富士通 地上レーダー装置JPPS-P10、富士通 地上レーダー装置(改)JPPS-P24、東芝 対迫レーダー装置JMPQ-P13、東芝 対迫レーダー装置JTPS-P16、三菱電機 低空レーダー装置JTPS―P18、三菱電機 対空レーダー装置JTPS-P14、三菱電機 対空レーダー装置JTPS-P25、航法支援システムには東芝 着陸誘導装置JTPN―P20、国際電気 航法援助装置JMRN-A2、がある。

 

汎用ヘリコプターには、ベル・ヘリコプター・テキストロン UH-1Hイロコイ汎用ヘリコプター、ベル/SUBARU富士重工業 UH-1J汎用ヘリコプター、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60JAブラック・ホーク汎用ヘリコプター、がある。

ベル・ヘリコプター・テキストロン UH-1Bイロコイ汎用ヘリコプターは19998年に全機退役し、陸上自衛隊ではベル・ヘリコプター・テキストロン UH-1Hイロコイ汎用ヘリコプター、ベル/富士重工業 UH-1J汎用ヘリコプターが主力になった。

 

陸上自衛隊ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60JAブラック・ホーク汎用ヘリコプターは、合衆国陸軍ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60A/L/Mブラック・ホーク汎用ヘリコプターと違い、合衆国陸軍ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーMH-60L/Mブラック・ホーク特殊作戦ヘリコプターのように、赤外線暗視装置、気象レーダー、増加燃料タンクを装備するため高価になり、さらに財務省(大蔵省)の単年度会計による少量生産・少数購入、防衛費縮減のための少量生産・少数購入のため価格がさらに高価になり、導入数が少ない。

 

 

対戦車ヘリコプターには、ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1S(AH-1F)ヒューイ・コブラ攻撃ヘリコプター、ボーイングAH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターがある。

ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1S(AH-1F)ヒューイ・コブラ攻撃ヘリコプターは、対地装備としてM197 20mm機関砲、BGM-71TOW空対地ミサイル8発、ハイドラ70ロケット弾38発を装備する。

ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1S(AH-1F)ヒューイ・コブラ攻撃ヘリコプターの後期導入型はAH-1S C-NITE攻撃ヘリコプターで、夜間作戦能力が大幅に向上している。

 

ボーイングAH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターは、対地装備として、M230 30mm機関砲、AGM-114ヘルファイア空対地ミサイル8発とハイドラ70ロケット弾38発、またはAGM-114ヘルファイア空対地ミサイル16発とハイドラ70ロケット弾0発を装備する。対空装備としてAIM-92スティンガー空対空ミサイル2発を装備している。

 

 

観測ヘリコプターには、マクドネル・ダグラス OH-6Dカイユース観測ヘリコプター、川崎重工業 OH―1観測ヘリコプターがある。

マクドネル・ダグラス OH-6Dカイユース観測ヘリコプターは、ヒューズ500小型ヘリコプターとヒューズを買収したマクドネル・ダグラスMD500小型ヘリコプターがベースである。

合衆国陸軍では、マクドネル・ダグラスMD500小型ヘリコプター、MDヘリコプターズ MD500小型ヘリコプターをベースに、マクドネル・ダグラス MH-6リトル・バード特殊作戦ヘリコプター、マクドネル・ダグラスAH-6キラー・エッグ攻撃ヘリコプターを開発、合衆国陸軍第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」において使用している。

合衆国陸軍の観測ヘリコプターは、ベル・ヘリコプター・テキストロン OH-58Dカイオワ・ウォリアー観測ヘリコプターが主流で、後継としてシコルスキー・ボーイング   RAH-66コマンチ偵察攻撃ヘリコプター、ベル・ヘリコプター・テキストロン ARH-70武装偵察ヘリコプターが開発されていたが計画中止となった。

川崎重工業 ОH-1観測ヘリコプターは、川崎重工業が1990年代から開発していたもので、ヒンジレス・ローター・ハブ、繊維強化プラスティック複合材、ダクテッド・テイルローターなど新機軸の技術を採用し、ハワード・ヒューズ賞を受賞している。攻撃ヘリコプターと同じタンデム配置の座席、防弾構造コックピットとなっている。91式携帯地対空ミサイル4発を搭載できる。

 

輸送ヘリコプターには、川崎重工業/ボーイング・ヴァートル KV-107中型輸送ヘリコプター、ボーイング CH-47J/JA輸送ヘリコプターがあった。

川崎重工業/ボーイング・ヴァートル KV-107中型輸送ヘリコプターはヴァートルV-107中型輸送ヘリコプターを川崎重工業でライセンス生産したもので、合衆国海兵隊ではボーイング・ヴァートル CH-46シー・ナイト輸送ヘリコプターとして採用されていた。KV-107中型輸送ヘリコプターは2002年に全機退役している。

 

ボーイング CH-47J輸送ヘリコプターは、大型輸送ヘリコプターである合衆国陸軍 ボーイング CH-47Dチヌーク輸送ヘリコプターを川崎重工業でライセンス生産したものである。1984年から川崎重工業でライセンス生産を開始し、1986年から陸上自衛隊に配備された。その後、改良型のCH-47JA輸送ヘリコプターが導入される。

 

 

 

 

 練習ヘリコプターは、マクドネル・ダグラス ОH-6D観測ヘリコプターを使用していたが、後継にエンストローム TH―480B練習ヘリコプターの採用が決まった。

エンストロームはその後、中国企業に買収される、倒産する、など紆余曲折があった。

政府専用ヘリコプターは、中型ヘリコプターであるアエロスパシアル AS332L政府専用ヘリコプターを導入していた。 AS332L政府専用ヘリコプターの後継にはユーロコプター EC225LP政府専用ヘリコプターが導入された。ユーロコプター EC225LP中型ヘリコプターはアエロスパシアル AS332L中型ヘリコプターの改良・発展型である。

連絡偵察機には、ビーチクラフト LR-2連絡偵察機、三菱重工業LR-1連絡偵察機、がある。

 

 

装甲車には、三菱重工業 89式装甲戦闘車、三菱重工業 73式装甲車、三菱重工業 60式装甲車、コマツ 96式装輪装甲車、コマツ 87式偵察警戒車、コマツ 82式指揮通信車、がある。

戦術車には、トヨタ自動車 高機動車、がある。

小型戦術車には、三菱自動車工業 1/2トン・トラック、三菱自動車工業 73式小型トラック、がある。

新しい戦術車として、コマツ 軽装甲機動車が開発された。

コマツ 軽装甲機動車は、2001年度予算から計上され、配備された。軽装甲機動車は重量4,5トン、水冷ディーゼル・エンジン、160馬力、乗員4人で、普通科部隊の新たなる戦術に沿うものである。軽装甲機動車は普通科部隊の装甲化に大いに貢献することとなった。

 

戦術トラックには、トヨタ自動車 1・1/2トン・トラック、トヨタ自動車 1・1/2トン救急車、トヨタ自動車 73式中型トラック、いすゞ自動車 3・1/2トン・トラック、いすゞ自動車 3・1/2トン有蓋車、いすゞ自動車 3・1/2トンダンプ、いすゞ自動車 3・1/2トン水タンク車、いすゞ自動車 3・1/2トン燃料タンク車、いすゞ自動車 73式大型トラック、三菱自動車工業 7トン・トラック 三菱ふそうトラック・バス 7トン・トラック、三菱ふそうトラック・バス 特大型ダンプ、三菱自動車工業 74式特大型トラック、三菱自動車工業/三菱ふそうトラック・バス 特大型運搬車、三菱重工業 重装輪回収車、三菱重工業 重装輪回収車ベース派生型トラック、三菱自動車工業/三菱ふそうトラック・バス  73式特大型セミトレーラ、三菱ふそうトラック・バス 特大型セミトレーラけん引車、三菱自動車工業/三菱ふそうトラック・バス 重レッカ、三菱自動車工業/三菱ふそうトラック・バス 燃料タンク車(10000l航空用)、がある。

 

業務トラックには、いすゞ自動車 業務トラック、日野自動車 業務トラック、三菱自動車工業 業務トラック、三菱ふそうトラック・バス 業務トラック、日産ディーゼル工業 業務トラック、がある。

業務車には、日産自動車 業務車1号、トヨタ自動車 業務車1号、富士重工業SUBARU 業務車1号、日産自動車 業務車2号、トヨタ自動車 業務車2号、がある。

高官輸送車には、トヨタ自動車 業務車3号、日産自動車 業務車3号、がある。

人員輸送車には、日野自動車 人員輸送車1号、Jバス 人員輸送車1号、日産自動車 人員輸送車2号、三菱自動車工業 人員輸送車2号、トヨタ自動車 人員輸送車2号、日野自動車 人員輸送車2号、がある。

 

オートバイには、川崎重工業 オートバイ(偵察用)、ヤマハ発動機 オートバイ(警務用)がある。

 

 

地対艦ミサイル部隊として、第1地対艦ミサイル連隊、第2地対艦ミサイル連隊、第3地対艦ミサイル連隊、第4地対艦ミサイル連隊、第5地対艦ミサイル連隊、第6地対艦ミサイル連隊がある。

地対艦ミサイル部隊には三菱重工業 88式地対艦誘導弾(慣性航法装置+アクティブ・レーダー誘導)が導入された。88式地対艦誘導弾は慣性航法装置とともに、事前にプログラムされた経路を飛行し、終末はアクティブ・レーダー誘導となる。

88式地対艦誘導弾の後継として、88式地対艦誘導弾(改)が開発され、2012年に12式地対艦誘導弾として制式採用された。

 

陸上自衛隊特殊作戦群、第1空挺団、西部方面普通科連隊、第3師団、第6師団、第14旅団の順に対人狙撃銃が配備された。合衆国陸軍の制式狙撃ライフル・システムのレミントンM24 SWS(スナイパー武器システム)を対人狙撃銃として配備している。陸上自衛隊M24 SWS対人狙撃銃は、レミントン M700ボルト・アクション・ライフル(.308ウィンチェスター弾=7,62mm×51弾)、光学照準器、レーザー距離測定装置、三脚、収納ケースを中心とした狙撃システムである。

 

 

 

 2000年代、陸上自衛隊は北朝鮮ゲリラ・コマンド(北朝鮮の朝鮮労働党作戦部の工作員に指揮される朝鮮総連の有志ゲリラ部隊、親北朝鮮の在日韓国人と日本人によるゲリラ部隊、北朝鮮の朝鮮人民軍コマンド特殊部隊)対処をもっとも重視していた。

特殊作戦群が創設され、第1空挺団は1500人から2000人に増強された。北朝鮮ゲリラ・コマンドのテロ、ゲリラ戦を想定し、対テロ戦、対ゲリラ戦に力が入れられる。

普通科連隊も北朝鮮ゲリラ・コマンドとの戦闘を重視し、市街戦訓練、屋内戦闘訓練、検問訓練、重要防護施設警備訓練を開始した。

西部方面普通科連隊も島嶼部、山岳地帯での戦闘とともに、市街戦訓練、屋内戦闘訓練に力が入れられる。西部方面普通科連隊では中国語とともに朝鮮語の教育を重視した。

警察庁のSAT(特殊急襲部隊)は日本赤軍などテロリストのハイジャック対処、テロ対処に加え、北朝鮮ゲリラ・コマンドのゲリラ戦対処のため野戦訓練を強化する。

 陸上自衛隊は特殊作戦部隊や普通科部隊を強化した反面、機甲部隊、特科部隊(砲兵)は縮小された。

各師団の戦車大隊は縮小され、3個戦車中隊の戦車大隊から2個戦車中隊の戦車大隊への縮小、3個戦車中隊の戦車大隊から1個戦車中隊の戦車中隊となった部隊もある。

特科大隊も特科隊への縮小が計画され、政経中枢師団である第1師団と第3師団の普通科連隊の重迫撃砲中隊は解隊が計画された。

 2000年代に入って、豊和工業89式小銃、FN MINIMI軽機関銃の調達数が急激に増えだした。

 

北朝鮮ゲリラ・コマンド対処に必要なマン・パワー増加/普通科部隊強化のためである。

 

 

 

 

 

 

注1 https://www.mod.go.jp/gsdf/crf/chutokubou/cnbc/2-1ninmu.htm

   https://www.mod.go.jp/gsdf/crf/chutokubou/cnbc/2-2soubihinsyaryou.htm

   https://www.mod.go.jp/gsdf/crf/chutokubou/cnbc/2-3soubihinkagakukizai.htm

注2 ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2007年3月号

   高井三郎「自衛隊特殊部隊の編制装備、運用原則」P58

注3 所属航空機 (mod.go.jp)

   朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2002-2003』

   朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2007-2008』

   朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

注4 ジャパン・ミリタリー・レビュー『ワールド・インテリジェンスVOL9特集 特殊部隊と心理戦の最先端』

   陸上自衛隊西部方面普通科連隊連隊長・若生明智「若生明智・連隊長に聞く島嶼防衛で潜入・対ゲリラコマンドウも見据えた陸上自衛隊西部方面普通科連隊の任務とは」

 

 

 

 

第2項    

 

 平成17年度以降に係る防衛計画の大綱における防衛力 海上自衛隊

 

 

シー・レーン防衛の中心として、機動運用にあたる護衛艦部隊には4個護衛艦群が当てられている。1個護衛隊群には8隻の護衛艦と8機の対潜哨戒ヘリコプターが配備され、海上防衛を担っている。

護衛艦隊(神奈川県・横須賀基地)のもとに第1護衛隊群(横須賀基地)、第2護衛隊群(長崎県・佐世保基地)、第3護衛隊群(京都府・舞鶴基地)、第4護衛隊群(広島県・呉基地)がおかれている。

 

 

DD122「はつゆき」を1番艦とするはつゆき級汎用護衛艦は、昭和53年中期業務見積もりによって計画され、1979年に起工、1982年に竣工、就役している。基準排水量2950トン、満載排水量4000トン、ガス・タービン推進で、兵装はOTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk112アスロック発射機(Mk46魚雷搭載アスロック8発)、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk29発射機(RIM-7シー・スパロー艦対空短距離ミサイル8発)、68式3連装短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム、である。また、対潜哨戒ヘリコプター1機を搭載し、汎用護衛艦としてバランスのとれた艦となっている。当初、上部構造物はアルミニウム合金であったが、1975年のアメリカ空母CV-67ジョン・F・ケネディと巡洋艦CG-26ベルナップの衝突事故でアルミニウム合金の脆弱性が指摘され、さらに1982年のフォークランド紛争でアルミニウム合金製上部構造物艦船が相次いで攻撃によって炎上、沈没したことから、はつゆき級汎用護衛艦8番艦DD130「やまゆき」からは上部構造物が鋼鉄製に変更され、ダメージ・コントロールが向上している。はつゆき級汎用護衛艦は1987年までに12隻建造された。

 

 

 昭和56年中期業務見積もりによって計画された汎用護衛艦DD151「あさぎり」を1番艦とするあさぎり級汎用護衛艦は1985年に起工し、1987年に竣工、1988年から就役している。基準排水量は3500トン、満載排水量は4900トンである。兵装はOTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk112アスロック発射機(Mk46魚雷搭載アスロック8発、予備弾8発)、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、短SAM発射機(RIM-7シー・スパロー艦対空短距離ミサイル8発)、68式3連装短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム、である。また、対潜哨戒ヘリコプター1機を搭載する。あさぎり級汎用護衛艦は、はつゆき級汎護衛艦の発展型とされ、はつゆき級汎用護衛艦よりレーダーや射撃管制装置などが向上し能力的には大きく発展したものとなっている。このあさぎり級汎用護衛艦は1991年までに8隻建造され、これによって護衛隊群の汎用護衛艦は完備された。

 

新しい概念の汎用護衛艦として、汎用護衛艦DD101「むらさめ」を1番艦とするむらさめ級汎用護衛艦の導入が1990年代からはじまっている。むらさめ級汎用護衛艦の1番艦である「汎用護衛艦DD101「むらさめ」は、1993年起工、1994年進水、1996年竣工である。基準排水量4550トン、満載排水量6200トン、ガス・タービン推進、兵装は、Mk41垂直発射システム16セル(Mk46魚雷搭載RUM-139A垂直発射対潜ロケット16発)、68式三連装短魚雷発射管2基(Mk46魚雷、97式魚雷など6発)、OTOメララ 76mmコンパクト砲1門、90式艦対艦ミサイル6発/8発、Mk48垂直発射システム16セル(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル16発またはRIM-162発展型シー・スパロー短距離艦対空ミサイル最大32発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御システム2基、である。射撃統制装置はフェーズド・アレイ・レーダー型の射撃統制装置3型(FCS-3)は搭載されず、従来型の射撃統制装置2型31(FCS-2-31)という改良型にとどまった。また、こんごう級護衛艦と同様にステルス性を意識した船型を採用しているが、傾斜角はそれほどではなくステルス性は限定的なものであると思われる。搭載ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー/三菱重工業 SH-60Jシー・ホーク対潜哨戒ヘリコプターである。2002年までに9隻が導入され、1982年に導入の始まった汎用護衛艦はつゆき級護衛艦の多くを地方隊へ追いやった。

 

 2003年にたかなみ級汎用護衛艦(1番艦DD-110 たかなみ)が就役した。船体はむらさめ級汎用護衛艦に似ているが、細かいところでステルス性が徹底されている。1番艦DD-110 たかなみ起工2000年、進水2001年、竣工2003年、基準排水量4650トン、満載排水量6300トン、ガス・タービン推進、兵装はOTOメララ 127mmコンパクト砲1門、Mk41垂直発射システム32セル(RUM-139A垂直発射対潜ロケット16セル、RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル16セル最大64発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、3連装短魚雷発射管2基、90式艦対艦ミサイル(SSM-1)6発/8発である。射撃統制装置はFCS-2-31射撃統制装置、対空レーダーはOPS-24B対空三次元レーダー、対水上レーダーはOPS-28D対水上レーダー、航海レーダーはOPS-20航海レーダー、ソナーはOQS-5ソナー、OQR-2ソナー、OQR-2曳航ソナーである。戦術情報処理システムはOYQ-9戦術情報処理システム、電子戦システムはNOLQ-2電子戦装置、戦術データ・リンクはLINK16である。搭載航空機はSH-60K哨戒ヘリコプター2機である。たかなみ級汎用護衛艦は2006年までに5隻が就役した。(注1)

 

 2003年にたかなみ級汎用護衛艦(1番艦DD110「たかなみ」)が就役した。船体はむらさめ級汎用護衛艦に似ているが、細かいところでステルス性が徹底されている。1番艦DD110「たかなみ」起工2000年、進水2001年、竣工2003年、基準排水量4650トン、満載排水量6300トン、ガス・タービン推進、兵装はOTOメララ 127mmコンパクト砲1門、Mk41垂直発射システム32セル(RUM-139A垂直発射対潜ロケット16セル、RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル16セル最大64発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、HOS-302 68式3連装短魚雷発射管2基、90式艦対艦ミサイル(SSM-1)6発/8発である。射撃統制装置はFCS-2-31射撃統制装置、対空レーダーはOPS-24B対空三次元レーダー、対水上レーダーはOPS-28D対水上レーダー、航海レーダーはOPS-20航海レーダー、ソナーはOQS-5ソナー、OQR-2ソナー、OQR-2曳航ソナーである。戦術情報処理システムはOYQ-9戦術情報処理システム、電子戦システムはNOLQ-2電子戦装置、戦術データ・リンクはLINK16である。搭載航空機はSH-60K哨戒ヘリコプター2機である。たかなみ級汎用護衛艦は2006年までに5隻が就役した。(注1)

 

 

 

艦隊防空ミサイル護衛艦DDGはDDG168「たちかぜ」を1番艦とするたちかぜ級ミサイル護衛艦3隻であった。1番艦のDDG168「たちかぜ」は、1973年に起工し、1976年に竣工している。基準排水量3850トン、満載排水量5200トン、蒸気タービン推進、兵装はMk13発射機(RIM-66スタンダード1艦対空ミサイル40発、エリア・ディフェンス:艦隊防空用)、Mk42 127mm砲2門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk112発射機(Mk46魚雷搭載対潜ロケット8発、予備弾8発)、68式3連装短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、68式三連装短魚雷発射機2基である。防空以外にも対潜、対艦能力も有している。

 

 

1983年に起工、1986年に竣工したDDG171「はたかぜ」を1番艦とするはたかぜ級ミサイル護衛艦2隻もある。1番艦DDG171「はたかぜ」は、起工1983年、進水1984年、竣工1986年、基準排水量4600トン、満載排水量5900トン、ガス・タービン推進、兵装はMk13発射機(RIM-66スタンダード1艦対空ミサイル40発、エリア・ディフェンス:艦隊防空用)、Mk42 127mm砲2門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk112発射機(Mk46魚雷搭載対潜ロケットを8発、予備弾8発)、68式3連装短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、68式三連装短魚雷発射機2基である。

さらに旗艦能力とヘリコプター離発艦能力を有していた。

 

イージス護衛艦DDG173「こんごう」を1番艦とするこんごう級イージス・システム搭載艦隊防空ミサイル護衛艦は、1番艦DDG173「こんごう」が1990年に起工し、1993年に竣工、就役した。

ガス・タービン推進、基準排水量7250トン、満載排水量9500トン、となっている。兵装は、OTOメララ 127mmコンパクト砲1門、Mk41垂直発射システム90セル(RIM-66スタンダード艦対空ミサイル、RIM-156SM2艦対空ミサイル、RIM-161SM3弾道ミサイル迎撃艦対空ミサイルなど艦対空ミサイル74発、RUM―139A Mk46搭載垂直発射対潜ロケット16発)、ミサイル装填用クレーン6基、68式三連装短魚雷発射機2基、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、である。

イージス・システム搭載艦隊防空ミサイル護衛艦に搭載されているイージス・システムは、ソ連の圧倒的数量のミサイル攻撃から艦隊を守るために1960年代から開発が始まったもので、1973年から試験が開始され、1978年に採用された。1983年就役のアメリカ海軍CG-47「タイコンデロガ」を1番艦とするタイコンデロガ級巡洋艦から搭載された。イージス・システムのフェーズド・アレイ・レーダーは従来型レーダーより格段に能力が向上しており、さらに戦闘情報処理能力は従来艦の比ではないとされている。さらにMk41垂直発射システムにより、多目標同時攻撃が可能となっている。またこんごう級イージス・システム搭載艦隊防空ミサイル護衛艦はアメリカ海軍DDG-51「アーレイ・バーク」を1番艦とするアーレイ・バーク級イージス駆逐艦と同様、ステルス(低発見性)的な船体を取り入れている。3番艦「みょうこう」によって護衛艦群は完成したが、さらに4番艦DDG176「ちょうかい」が建造され、4個護衛艦群すべてにイージス・システム搭載艦隊防空ミサイル護衛艦が配備されることとなった。

 

 2007年には平成14年度計画イージス・システム搭載艦隊防空ミサイル護衛艦(14DDG)、あたご級艦隊防空ミサイル護衛艦(1番艦DDG177「あたご」、2番艦DDG178「あしがら」)が就役した。AN/SPY-1Dレーダー4基で捜索、Mk41垂直発射システムからのミサイル同時発射、艦隊防空を担う。満載排水量は10000トン、基準排水量は7700トン、ガス・タービン推進、兵装はMk41垂直発射システム96セル(RIM-66艦対空ミサイル、RIM-161SM3弾道ミサイル迎撃艦対空ミサイル、RIM-156SM2艦対空ミサイルなど艦対空ミサイル80発、RUM-139A Mk46魚雷搭載垂直発射対潜ロケット16発)、127mm単装砲1門(DDG-177「あたご」はOTOメララ 127mmコンパクト砲、DDG178「あしがら」はMk45 127mm砲)、HOS-302 68式短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御システム2基、90式艦対艦ミサイル(SSM-1B)6発/8発である。FCSはAWS Mk7イージス武器システム ベースライン7,1J、AN/SQQ-89(V)15統合対潜システム、Mk99ミサイルFCS、Mk160砲FCS、Mk116対潜攻撃指揮装置である。電子戦装置はNOLQ-2、戦術データ・リンクはLINK11/14/16である。ヘリコプター格納庫はあるが、搭載ヘリコプターはない。(注2)

 

 

 

 

 

 

 

対潜哨戒ヘリコプター搭載護衛艦DDH141「はるな」(1970年起工、1973年竣工)、DDH142「ひえい」(1972年起工、1974年竣工)、DDH143「しらね」(1978年起工、1980年竣工)、DDH144「くらま」(1979年竣工、1981年竣工)があたっていた。はるな級対潜ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は基準排水量5200トン、満載排水量7200トンで蒸気タービン推進、Mk42 127mm砲2門、Mk29発射機(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル8発、ポイント・ディフェンス:個艦防空用)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、Mk112発射機(Mk46魚雷搭載対潜ロケット8発、予備弾8発)、68式三連装短魚雷発射機2基、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイルを8発)などが主な兵装である。対潜戦には対潜哨戒ヘリコプター3機搭載でこれにあたった。

DDH143「しらね」を1番艦とするしらね級ヘリコプター搭載護衛艦もはるな級ヘリコプター搭載護衛艦に準じる能力である。対潜能力とともに、個艦防空も充実した艦船である。特に対潜哨戒ヘリコプターを3機搭載することで、対潜水艦戦に秀でている。電子機器なども逐次更新され、第一線の護衛艦として遜色の無い物となっていた。しらね級対潜ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は基準排水量5200トン、満載排水量7200トンで蒸気タービン推進、Mk42 127mm砲2門、Mk29発射機(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル8発、ポイント・ディフェンス:個艦防空用)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、Mk112発射機(Mk46魚雷搭載対潜ロケット8発、予備弾8発)、68式三連装短魚雷発射機2基、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイルを8発)などが主な兵装である。対潜航空機には対潜哨戒ヘリコプター3機を搭載している。

 

 

 2009年には平成16年度計画ヘリコプター搭載護衛艦(16DDH)、ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦が就役した。基準排水量13500トン、満載排水量19000トン、ガス・タービン推進、兵装はMk41垂直発射システム16セル(RUM-139A垂直発射対潜ロケット12セル12発、RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル艦対空ミサイル4セル16発)、Mk15ブロック1Bファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基、HOS-303 3連装短魚雷発射管2基である。搭載ヘリコプターはSH-60J/K哨戒ヘリコプター、MCH-101掃海輸送ヘリコプターなど8機である。FCSはFCS-3射撃統制装置、ソナー・システムはOQQ-21、情報処理装置はOYQ-10、電子戦装置はNOLQ-3C、艦内統合ネットワークはNOYQ-1、戦術データ・リンクはLINK11/16である。ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦は1番艦DDH-181「ひゅうが」と2番艦DDH-182「いせ」が配備される。(注3)

 

  最新のDEはDE229「あぶくま」を1番艦とするあぶくま級護衛艦の6隻である。1988年に起工、1989年に竣工、就役している。基準排水量2000トン、満載排水量2900トン、ディーゼル及びガス・タービン推進、兵装はOTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk112発射機(Mk46魚雷搭載対潜ロケット8発、予備弾8発)、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、68式3連装魚雷発射機2基、である。近接防御武器システムにはMk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム1基を装備している。DEとしてはじめて対空レーダーを搭載し、防空能力を強化した。

 

Mk49発射機の搭載スペースがある。Mk49発射機はRIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイルを運用できる。

 

 

 

1979年に起工、1981年に竣工、就役したDE226「いしかり」を1番艦とするいしかり級護衛艦1隻がある。いしかり級護衛艦の基準排水量1250トンである。ディーゼル、ガス・タービン推進で、兵装は、OTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、ボフォース4連装対潜ロケット1基、である。

 

 

 

DE227「ゆうばり」を1番艦とするゆうばり級護衛艦2隻は、基準排水量1450トンで1981年に起工、1983年に竣工している。ディーゼル、ガス・タービン推進で、兵装は、OTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、ボフォース4連装対潜ロケット1基、である。

 

ミサイル艇には、はやぶさ級ミサイル艇とミサイル艇1号型がある。

ミサイル艇1号型は、1991年起工、1992年進水、1993年竣工、基準排水量50トン、満載排水量60トン、ガス・タービン、ディーゼル推進、兵装はJM61 20mm機関砲1門、90式艦対艦ミサイル2発である。ミサイル艇1号型は、3隻が建造された。

 

はやぶさ級ミサイル艇は、2000年起工、2001年進水、2002年竣工、基準排水量200トン、ガス・タービン・ウォータージェットポンプ推進、兵装はОTОメララ 76mmコンパクト砲1門、90式艦対艦ミサイル2発である。はやぶさ級ミサイル艇は、6隻が建造された。

 

潜水艦部隊は6個隊・16隻体制と定められていた。

 

三菱重工業神戸造船所(兵庫県神戸市中央区)と川崎重工業神戸工場(兵庫県神戸市中央区)において隔年ごとに建造され、就役期間は16年と短く、能力を高く保っている。また、訓練・予備に2隻がある。

 

1984年3月に就役した、ゆうしお級潜水艦5番艦「なだしお」からは、533mm魚雷発射管から発射可能なUGM-84ハープーン潜対艦ミサイルを装備し、対艦戦闘能力を向上させている。

 

アメリカと同様に高張力鋼の品質は世界最高である。主電池はGS YUASA,潜望鏡はニコン、電子戦装置は三菱電機、レーダー・通信装置はJRC日本無線が製造している

 

1990年に就役したSS-583「はるしお」を1番艦とする、はるしお級潜水艦(基準排水量2450トン、水中排水量3200トン、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門)で、運動性重視の涙滴型船体である。

 

船殻には高張力鋼NS80、NS110が使用され、潜行深度も向上している。

 

1998年に就役したSS-590「おやしお」を1番艦とするおやしお級潜水艦(基準排水量2750トン、水中排水量3500トン、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門)からは従来の運動性重視の涙滴型船体から、静粛性に優れる葉巻型船体に変更された。さらに音響のステルス化をはかるため吸音タイルを多用した。フランク・アレイ・ソナー、コンフォーマル・アレイ・ソナーを搭載し、捜索探知能力を向上させている。船殻には高張力鋼NS80、NS110が使用さている。

 

 平成16年度計画2900トン型潜水艦として、2009年3月にそうりゅう級潜水艦SS501 そうりゅうが就役した。そうりゅうは水中排水量4200トン、ディーゼル・エレクトリック推進に加え、AIP(大気独立推進)のスターリング機関を備え、水中での作戦期間が大幅に伸びることになった。兵装は533mm魚雷発射管6門(89式魚雷、UGM-84ハープーン潜対艦ミサイル)である。(注4)

 

 ちはや級潜水艦救難艦は、ASR403「ちはや」が1997年に起工、1998年に進水、2000年に竣工している。基準排水量5450トン、ディーゼル推進、DSRV1隻、深海救難装置、深海潜水装置、捜索用ソナー、海底調査装置、自動艦位保持装置、手術室、医務室、レントゲン室を装備している。

 

 掃海部隊には掃海母艦として、うらが級掃海母艦がある。うらが級掃海母艦にはMST-463「うらが」が1995年起工、1996年進水、1997年竣工、MST-464「ぶんご」が1996年起工、1997年進水、1998年竣工である。うらが級掃海母艦は基準排水量5650トン、ディーゼル推進、兵装はОTОメララ 76mmコンパクト砲1門、機雷敷設装置3型、である。1個掃海隊群・掃海艇12隻へ支援・補給し、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーMH-53Eシー・ドラゴン掃海ヘリコプター、アグスタ・ウェスタランドMCH-101掃海ヘリコプターを運用して、高性能機雷敷設能力を保有する。

潜水艦を狙う深深度敷設機雷の処分用に導入されたMSO-301「やえやま」を1番艦とするやえやま級掃海艦が1993年から1994年に3隻導入されている。基準排水量は1000トン、ディーゼル推進、

うわじま級掃海艇は、基準排水量510トン、ディーゼル推進、兵装は、JM61 20mm機関砲、О型係維掃海具一式、DYAD感応掃海具一式、PAP-104機雷処分具一式、TYPE-2093機雷探知機一式、情報処理装置一式、である。1番艦MSC681「うわじま」が起工1989年、進水1990年、竣工1990年した。うわじま級掃海艇は9隻が建造された。

すがしま級掃海艇は、基準排水量510トン、ディーゼル推進、兵装は、JM61 20mm機関砲、О型係維掃海具一式、DYAD感応掃海具一式、PAP-104機雷処分具一式、TYPE-2093機雷探知機一式、情報処理装置一式、である。1番艦MSC681「すがしま」が起工1996年、進水1997年、竣工1999年した。すがしま級掃海艇は12隻が建造された。

 ひらしま級掃海艇は、基準排水量570トン、ディーゼル推進、兵装は、JM61 20mm機関砲、О型掃海具一式、S-10水中航走式機雷掃討具、である。1番艦MSC601「ひらしま」が起工2005年、進水2006年、竣工2008年した。すがしま級掃海艇は3隻が建造された。

 いえしま級掃海管制艇は、基準排水量490トン、ディーゼル推進、兵装は、JM61 20mm機関砲、遠隔操縦式掃海具操縦装置、である。1番艦MSC601「いえしま」が起工1995年、進水1996年、竣工1996年した。いえしま級掃海管制艇は2隻が建造された。

 

輸送にはおおすみ級輸送艦、1号型輸送艇、エアクッション艇が担当する。

 

おおすみ級輸送艦は、1番艦LST4001「おおすみ」が、1995年に起工し、1996年に進水、1998年に竣工している。

基準排水量8900トン、満載排水量14000トン、ディーゼル推進、兵装はMk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。

エアー・クッション揚陸艇LCAC2隻、陸上自衛隊隊員330人、90式戦車を搭載できる。

航空機用エレベーターは無いのでヘリコプターは艦内に収容できない。

ヘリコプターは全通甲板の後部で運用される。

 大蔵省は日本が軍事大国化すると言い海上自衛隊艦艇の大型化に反対し、輸送艦の基準排水量を10000トン未満とするよう強く要請した。

そのため基準排水量が増えるLST戦車揚陸艦タイプの外観ではなく全通甲板のあるLHDドック型揚陸艦タイプの外観となった。

全通甲板があるので、左派マス・メディア、左派言論人は空母保有、日本の軍事大国化、アジアへの脅威、と批判した。

おおすみ級輸送艦を全通甲板のある揚陸艦にしたことで、平成16年度計画ヘリコプター搭載護衛艦(16DDH)ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦を全通飛行甲板のある護衛艦にしやすくなった。

 

 1号型輸送艇は、1番艦LCU1「輸送艇1号」が1987年起工、1987年進水、1988年竣工、である。基準排水量420トン、満載排水量540トン、ディーゼル推進、兵装はJM61 20mm機関砲1基である。

 

 とわだ級補給艦は、1番艦AOE422「とわだ」が1985年に起工、1986年に進水、1987年に竣工している。

基準排水量は8100トン、ディーゼル推進、洋上補給装置、補給品艦内移送装置を搭載している。

とわだ級補給艦は3隻建造された。

合衆国海軍の補給艦のようにMk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システムは搭載されていない。

 

 ましゅう級補給艦は、1番艦AOE425「ましゅう」が2002年に起工、2003年に進水、2004年に竣工している。

 基準排水量13500トン、ガス・タービン推進、洋上補給装置、補給品艦内移送装置を搭載している。

ましゅう級補給艦は2隻建造された。

合衆国海軍の補給艦のようにMk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システムは搭載されていない。

 

あすか級試験艦は、ASE6102「あすか」が1993年に起工、1994年に進水、1995年に竣工している。

基準排水量4250トン、ガス・タービン推進で、各種試験装置を搭載する。

 

くろべ級訓練支援艦は、ATS4202「くろべ」が1987年に起工、1988年に進水、1989年に竣工している。

基準排水量2250トン、ディーゼル推進で、兵装はОTОメララ 76mmコンパクト砲1門で、艦上評価装置を装備し、CICを設置している

 

てんりゅう級訓練支援艦は、ATS4203「てんりゅう」が1998年に起工、1999年に進水、2000年に竣工している。

基準排水量2450トン、ディーゼル推進で、兵装はОTОメララ 76mmコンパクト砲1門で、対空射撃訓練支援装置、艦上評価装置を装備し、CICを設置している

 

 ひうち級多用途支援艦は、1番艦AMS4203「ひうち」が2001年に起工、2001年に進水、2002年に竣工している。

基準排水量980トン、ディーゼル推進で、クレーン装置、曳航装置、消防装置を装備する。

 

ふたみ級海洋観測艦は、1番艦AGS5103「ふたみ」が1978年に起工、1978年に進水、1979年に竣工している。

基準排水量2050トン、ディーゼル推進で、海象、気象、海底地質、水質、地磁気、音響を観測する。

 

にちなん級海洋観測艦は、AGS5105「にちなん」が1997年に起工、1998年に進水、1999年に竣工している。

基準排水量3350トン、ディーゼル・エレクトリック推進で、海洋観測装置、音響観測装置、無人潜水装置を搭載している。

 

ひびき級音響測定艦は、1番艦AOS5201「ひびき」が1989年に起工、1990年に進水、1991年に竣工している。

基準排水量2850トン、ディーゼル・エレクトリック推進で、曳航式ソナーSURTASSを搭載している。

東芝機械が対共産圏輸出統制委員会COCOM違反であるソ連への工作機械輸出をおこなった。それによりソ連の潜水艦が静粛性向上、アメリカで批判された。そのため、ソ連潜水艦静粛性向上に対して日本も責任を取ることになり、ひびき級音響測定艦が導入された。

 

砕氷艦しらせは、1981年起工、1981年進水、1982年に竣工している。基準排水量11600トン、ディーゼル・エレクトリック推進、ヘリコプター3機搭載、南極観測支援に使われる。

 

砕氷艦しらせ(二代目)は、2008年起工、2009年進水、2010年に竣工している。基準排水量12650トン、ディーゼル統合電気推進、ヘリコプター2機搭載、南極観測支援に使われる。

 

 航空機も大幅に更新されていく。

 

護衛艦に搭載される対潜哨戒ヘリコプターは当初、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー(三菱重工業でライセンス生産)HSS-2対潜哨戒ヘリコプター(SH-3シー・キング対潜哨戒ヘリコプター)であったが、1980年代後半に入って、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー(三菱重工業でライセンス生産)SH-60Jシー・ホーク対潜哨戒ヘリコプターに順次切り替えられ、対潜水艦戦能力が向上し、運用性も向上となった。

 

ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー/三菱重工業SH-60J哨戒ヘリコプターの後継として新たに設計・開発されたのが三菱重工業SH-60K哨戒ヘリコプターである。

SH-60K哨戒ヘリコプターは2001年9月13日に初飛行、2002年6月24日に海上自衛隊第51航空隊に引き渡された。

SH-60K哨戒ヘリコプターはSH-60J哨戒ヘリコプターに比べ若干大型化され、コックピットは操作、状況認識しやすいようグラス・コクピット化、さらに搭載センサーは小型化されながら高性能化された。

これまでのHQS-103ディッピング・ソナーに代わり、新型低周波アクティブ・ソナーが装備された。また、対水上戦用に捜索レーダーに代わり、逆合成開口レーダーが装備される。またFLIR機能とレーザー誘導機能のあるレイセオンAN/AAS-44 ILDRTS(赤外線・レーザー探知測距追跡セット)を装備する。

三菱重工業SH-60K哨戒ヘリコプターは対水上戦に74式車載7,62mm機関銃とAGM-114Mヘルファイア対戦車ミサイルを装備し、北朝鮮の工作船などに対応できるようになった。

工作船などからの攻撃に備え、自衛システムとしてEADS AN/AAR-60 MILDミサイル発射探知システムとBAEシステムズAN/ALE-47 CMDSカウンターメジャー・ディスペンサー・システムが装備された。(注5)

 

救難ヘリコプターにはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60J救難ヘリコプターがある。ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60J救難ヘリコプターは気象レーダー、赤外線暗視装置、慣性航法装置、燃料タンク、などを装備している。

 

 掃海・輸送用に2006年からアグスタ・ウェストランドEH-101(現AW101)をMCH-101掃海・輸送ヘリコプターとして川崎重工業でライセンス生産をはじめた。

前任のシコルスキーMH-53Eシー・ドラゴン掃海ヘリコプターはアメリカ合衆国政府からのFMS(対外有償軍事援助)のため稼働率に問題があったが、ライセンス生産であるMCH-101掃海・輸送ヘリコプターは稼働率の向上が見込まれた。(注6)

 

 2009年、ユーロコプターTH-135練習ヘリコプターの初号機が海上自衛隊に引き渡された。

ユーロコプターTH-135練習ヘリコプターは、練習ヘリコプターとして使用していたマクドネル・ダグラスОH-6D観測ヘリコプターを代替するものである。

 

1977年に国防会議で、ロッキード P-2Jネプチューン対潜哨戒機の後継としてロッキード P-3Cオライオン対潜哨戒機に代替されることが決定された。対潜能力は向上していくことになる。

ロッキード P-3C対潜哨戒機もロッキード P-3Cオライオン対潜哨戒機アップ・デート2、ロッキード P-3Cオライオン対潜哨戒機アップ・デート2,5からロッキード P-3Cオライオン対潜哨戒機アップ・デート3へと性能が向上していった。ロッキード P-3C対潜哨戒機は101機が導入され、アメリカに次ぐ対潜哨戒機を保有するに至った。

ロッキード P-3Cオライオン対潜哨戒機はロッキード P-3Cオライオン哨戒機へ名称が変更される。

また、ロッキード P-3Cオライオン哨戒機をベースに、新装備テストベッドに使われるUP-3C多用機、電子戦訓練に使われるUP-3D多用機、画像情報収集任務に使われるОP-3C多用機、電子情報収集任務に使われるEP-3多用機、が製造された。

連絡機にはホーカー・ビーチクラフト LC-90連絡機がある。

練習機にはホーカー・ビーチクラフト TC-90練習機、SUBARU富士重工業 T-5練習機がある。

 ロッキード P-3Cオライオン哨戒機の後継として川崎重工業P-1哨戒機が開発中であった。

 

 1999年3月の北朝鮮工作船事件を発端に、対ゲリラ、対テロ、対コマンド特殊部隊のために特殊部隊・海上自衛隊特別警備隊が発足した。

海上自衛隊特別警備隊は豊和工業 89式小銃(5,56mm×45)、H&K HK416ライフル(5,56mm×45)、H&K MP5サブ・マシンガン(9mm×19)、SIG P226拳銃(9mm×19)などを装備している。

イギリス海軍(ロイヤル・ネイヴィー)の特殊部隊・特殊舟艇部隊SBSに学んだ精鋭である。(注7)

 

 支援船には、YDT-01級水中処分母船、YT-75級曳船、YT-58級曳船、YW-19級水船、YO-25級油船、YG-203級油船、YB-01級廃油船、YL-09級運貨船、YC-09級起重機船、YF-1029級交通船、YF-2088級交通船、YR-01級設標敷設救難船、YD-04級作業船、YS-01級清掃船、YTE-13級練習船、SB-01級特別機動船、SB-07級特別機動船、YAL敷設船、B-4017級機動船、B-4018級機動船、C-5001級カッター、T-6081級伝馬船、Y-7021級ヨット、Y-7023級ヨット、などがある。

 

車輌には、日産ディーゼル工業 8000l燃料給油車、三菱自動車工業 20000l燃料給油車、三菱ふそうトラック・バス 20000l燃料給油車、日野自動車 トラック2 1/2トン、いすゞ自動車 トラック3/4トン、トヨタ自動車 トラック1/4トン4×4、日野自動車 楽器運搬車、日野自動車 大型人員輸送車、Jバス 大型人員輸送車、日産自動車 人員輸送車、トヨタ自動車 人員輸送車、日産自動車 業務車、トヨタ自動車 業務連絡車、三菱自動車工業 1/2トン・トラック、トヨタ自動車 1 1/2トン・トラック、いすゞ自動車 3 1/2トン・トラック、などがある。

 

 

 

 

 

 

 注1 護衛艦「たかなみ」型|水上艦艇|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2002-2003』

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2007-2008』

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

注2 護衛艦「あたご」型|水上艦艇|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

 注3 護衛艦「ひゅうが」型|水上艦艇|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

 注4 潜水艦「そうりゅう」型|潜水艦|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

 注5 哨戒機「SH-60K」|航空機(回転翼)|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

    朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

 注6 掃海・輸送機「MCH-101」|航空機(回転翼)|装備品|海上自衛隊 JMSDF オフィシャルサイト (mod.go.jp)

     朝雲新聞社『自衛隊装備年鑑2019-2020』

 注7  高井三郎「自衛隊特殊部隊の編制装備、運用原則」P55

 

 

 

第3項    

 

 

 平成17年度以降に係る防衛計画の大綱における防衛力 航空自衛隊

 

 航空総隊(府中基地)のもとに北部航空方面隊、中部航空方面隊、西部航空方面隊、南西航空混成、航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団が設置された。

北部航空方面隊には第2航空団(千歳基地)、第3航空団(三沢基地)、北部航空警戒管制団(三沢基地)、第3高射群(千歳基地)、第6高射群(三沢基地)がある。

中部航空方面隊には第6航空団(小松基地)、第7航空団(百里基地)、中部航空警戒管制団(入間基地)、第1高射群、第6高射群がある。

西部航空方面隊には第5航空団(新田原基地)、第8航空団(築城基地)、西部航空警戒管制団(春日基地)、第2高射群がある。

南西航空混成団には第83航空隊(那覇基地)、南西航空警戒管制団(那覇基地)、第5高射群(那覇基地)がある。

航空支援集団には航空救難団(入間基地)、第1輸送航空隊(小牧基地)、第2輸送航空隊(入間基地)、第3輸送航空隊(美保基地)、航空保安管制群(入間基地)、航空気象群(府中基地)がある。

航空教育集団には第1航空団(浜松基地)、第4航空団(松島基地)、第11飛行教育団(静浜基地)、第12飛行教育団(防府北基地)、第13飛行教育団(芦屋基地)、航空教育隊(防府南基地)がある。

補給本部は十条基地(十条駐屯地)にある。

 

戦闘機が配備されている基地には基地防空隊が設置されている。

基地防空隊には、第2基地防空隊、第3基地防空隊、第4基地防空隊、第5基地防空隊、第6基地防空隊、第7基地防空隊、第8基地防空隊、第9基地防空隊、がある。

以前は基地防空群としてレーダー・サイト防空なども担当していたが、戦闘機配備基地のみの防空を担当する基地防空隊となった。

基地防空隊には81式短距離地対空誘導弾、91式携帯地対空誘導弾、VADS(バルカン防空システム)が配備されている。

81式短距離地対空誘導弾は赤外線誘導短距離地対空ミサイルである。

91式携帯地対空誘導弾は赤外線誘導とCCDカメラ画像誘導の個人携帯地対空ミサイルである。

VADS(バルカン防空システム)は、M61バルカン20mm機関砲の地上配備型であるM167機関砲、F-104スター・ファイター戦闘機に搭載されていたM61バルカン20mm機関砲を取り外し対空機関砲に改造したもの、がある。

以前はFIM-92スティンガー携帯地対空ミサイル(赤外線誘導+紫外線誘導)も配備されていたが、91式携帯地対空誘導弾に代替されていった。

81式短距離地対空誘導弾の後継には、2011年に基地防空地対空誘導弾が開発された。

 

航空団は団司令を頂点に副団司令、副官と続く。航空団は監理部、人事部、防衛部、装備部、衛生班と、群本部と飛行隊からなる飛行群、そして群本部と検査隊、装備隊、修理隊、車輌機材隊、補給隊からなる整備補給群、および群本部と、飛行場勤務隊、施設隊、監理隊、業務隊、会計隊、衛生隊からなる基地業務群で構成される。

 

航空警戒管制部隊には北部航空管制団(三沢基地)、中部航空管制団(入間基地)、西部航空管制団(春日基地)、南西航空管制隊(那覇基地)が担当した。

北部航空管制団隷下には北部防空管制群(三沢基地)、警戒通信隊(三沢基地)、整備隊(三沢基地)、第1移動警戒隊(三沢基地)、第8移動警戒隊(千歳基地)と各レーダー・サイトがおかれた。

中部航空管制団隷下には中部防空管制群(入間基地)、整備補給群(入間基地)、基地業務群(入間基地)、第2移動警戒隊(入間基地)と各レーダー・サイトがおかれた。

西部航空管制団には隷下に西部防空管制群(春日基地)、整備業務群(春日基地)、基地業務群(春日基地)と土佐清水通信隊(土佐清水分屯基地)と各レーダー・サイトがおかれた。

南西航空警戒管制隊隷下には南西防空管制群(那覇基地)、警戒通信隊(那覇基地)、防空管制隊(那覇基地)と第4移動警戒隊(那覇基地)、奄美通信隊、整備隊がおかれた。

 

レーダーは、NEC 固定式3次元レーダーJ/FPS-2、NEC 固定式3次元レーダーJ/FPS-3、東芝 固定式3次元レーダーJ/FPS-4、三菱電機 固定式3次元レーダーJ/FPS-5、ベンディックス 固定式2次元レーダーAN/FPS-20・J/FPS-20S、NEC 移動式3次元レーダー装置J/TPS-102があり、NEC 移動用多重通信装置(ОH)J/TRQ-502、NEC 移動用多重通信装置(ОH)J/TRQ-504、NEC 移動用多重通信装置(ОH)J/TRQ-50、NEC ラプコン(レーダー・アプローチ・コントロール・システム)装置、NEC 移動式ラプコン(レーダー・アプローチ・コントロール・システム)装置J/TPQ-701、NEC 移動式ラプコン(レーダー・アプローチ・コントロール・システム)装置J/TPQ-702、NEC タカン(タクティカル・エア・ナヴィゲーション)装置、日立国際電気 無線機J/GRC-506、JRC日本無線 気象用レーダーJ/FPH-8、東芝 気象用レーダーJ/FPH-8、JRC日本無線 気象レーダーJ/FPH-9、移動式気象レーダー装置J/TPH-702、明星電気 高層用気象観測装置J/FMQ-10、気球製作所 高層用気象観測装置J/FMQ-10、NEC 多重無線装置(ОH)J/TRQ-503、が地上からの警戒管制に使用される。

 

警戒航空隊には第601飛行隊に、グラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機13機、ボーイング E-767空中警戒管制システム機4機、がある。

 

三沢基地に配置されるグラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機は、合衆国海軍の空母での運用を前提に開発された早期警戒機で、小型の機体となっている。

 

1976年のミグ25戦闘機亡命事件では、地上レーダー、マクドネル・ダグラス f-4EJファントムⅡ戦闘機ともにソ連から亡命してきたミコヤン MiG-25戦闘機を見失い、函館空港に強行着陸された。

そのため空中早期警戒システムの導入が急がれた。

グラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機、ボーイング E-3セントリー空中警戒管制システム機の導入が検討され、価格が安いグラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機が採用された。

 

ボーイング E-767空中警戒管制システム機は、浜松基地に配備される。

合衆国空軍 ボーイング E-3セントリー 空中警戒管制システム機の導入を計画していた航空自衛隊だったが、ボーイング E-3セントリー 空中警戒管制システム機のベースとなるボーイング707が製造中止となりボーイング E-3セントリー 空中警戒管制システム機の導入は不可能になった。

そのためボーイングは、ボーイング E-3セントリー空中警戒管制システム機のレーダーと管制システムをボーイング767に搭載するボーイング E-767空中警戒管制システム機を開発、航空自衛隊が導入することになった。

 

マクドネル・ダグラス F-4EJファントムⅡ戦闘機(初飛行1958年、自重13500kg、総重量18818kg、推力79,62kN×2)140機(注1)は1971年からライセンス生産された。

マクドネル・ダグラス F-4EJファントム戦闘機の要撃戦闘機部隊は第301飛行隊(宮崎県・新田原基地)、第302飛行隊(沖縄県・那覇基地)に配備され、で南西に偏っていた。

 

レーダー・サイトを中心とした警戒管制部隊28個警戒隊と1個警戒航空隊で構成されるJADGE(自動警戒管制組織)システムは、日本の各地(第18警戒隊:稚内分屯基地・NEC J/FPS-2、第28警戒隊:網走分屯基地・東芝 J/FPS-4、第26警戒隊:根室分屯基地・NEC J/FPS-2、第36警戒隊:襟裳分屯基地・ベンディックス J/FPS-20S(AN/FPS-20改)、第45警戒隊:当別分屯基地・NEC J/FPS-3改、第42警戒隊:大湊分屯基地・三菱電機 J/FPS-5、第33警戒群:加茂分屯基地・NEC J/FPS-3改、第37警戒隊:山田分屯基地・NEC J/FPS-2、第27警戒隊:大滝根山分屯基地・NEC J/FPS-3改、第35警戒隊:佐渡分屯基地・NEC J/FPS-3改、第23警戒隊:輪島分屯基地・NEC J/FPS-3改、第44警戒隊:峯岡山分屯田基地・東芝 J/FPS-4、第1警戒隊:笠取山分屯基地・NEC J/FPS-3改、第5警戒隊:串本分屯基地・ベンディックス J/FPS-20S(AN/FPS-20改)、第35警戒隊:経ヶ岬分屯基地・NEC J/FPS-3改、第7警戒隊:高尾山分屯基地・東芝 J/FPS-4、第9警戒隊:下甑島分屯基地・三菱電機 J/FPS-5、第17警戒隊:見島分屯基地・NEC J/FPS-2、第19警戒隊:海栗島分屯基地・NECJ/FPS-2、第43警戒隊:背振山分屯基地・NEC J/FPS-3改、第15警戒隊:福江島分屯基地・東芝 J/FPS-4、第13警戒隊:高畑山分屯基地・ベンディックス J/FPS-20S(AN/FPS-20改)、第56警戒隊:与座岳分屯基地・三菱電機 J/FPS-5、第54警戒隊:久米島分屯基地・東芝 J/FPS-4、第55警戒隊:沖永良部島分屯基地・ベンディックスJ/FPS-20S(AN/FPS-20改)、第53警戒隊:宮古島分屯基地・NEC J/FPS-2)に配置されたレーダー・サイトと中央管制システム、グラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機、ボーイング E-767空中警戒管制システム機からなる。

 

マクドネル・ダグラス F-4EJファントムⅡ戦闘機は改修されF-4EJ改ファントムⅡ戦闘機となった。

マクドネル・ダグラス F-4EJ改ファントムⅡ戦闘機のレーダーはロッキード・マーティン F-16A/Bファイティング・ファルコン戦闘機と同様のAN/APG-66に換装、アナログ方式セントラル・コンピューターからデジタル方式セントラル・コンピューターへの換装、レーダー警戒装置はマクドネル・ダグラス F-15Jイーグル戦闘機と同様のAN/ALR-56Cに換装されている。

搭載ミサイルは80式空対艦ミサイル(ASM-1)、AIM-9Lサイドワインダー空対空ミサイル,AIM―7F/Lスパロー空対空ミサイルが搭載可能になっている。(注2)

 

マクドネル・ダグラス F-4EJ改ファントムⅡ戦闘機はデジタル・データ・バスが無いため、ミサイル発射後ただちに現場から離れられ安全なAIM-120AMRAAM空対空ミサイル、AAM-4空対空ミサイルが運用できない。マクドネル・ダグラス F-4EJ改ファントムⅡ戦闘機は長期的な使用は不可能になると考えられた。

 

初飛行1958年のマクドネル・ダグラス F-4EJ改ファントムⅡ戦闘機では相対的な戦力低下は否定できず、後継機の早期配備が望まれた。

  

1977年に国防会議で導入が決定し、1980年から導入されたマクドネル・ダグラスF-15J/DJイーグル戦闘機(初飛行1972年、自重12973kg、総重量20244kg、最大重量30845kg、推力105,7kN×2)。F-15J/DJイーグル戦闘機は225機の導入が計画されたが、計画はは200機に縮小、総生産数は213機となった。(注2)

 

F-15J/DJ戦闘機は1981年に西部航空方面隊の新田原基地に第5航空団隷下に「F-15臨時飛行隊」が結成され配備されたのをはじめに、第202飛行隊に続いて配備され、1984年に第2航空団隷下に第203飛行隊へのF-15J/DJが配備されたことでF-104Jの更新を完了、第204飛行隊(茨城県・百里基地)、第305飛行隊(石川県・小松基地)、第304飛行隊(福岡県・築城基地)と配備が続いていった。

 

F-15J/DJイーグル戦闘機は、大型にもかかわらずチタニウム合金を従来機より大幅に使用したため重量が抑えられ、大推力による高機動、高速巡航が可能で空戦において圧倒的に優位に立つ。

電子装備も大型な機体を生かし、大型ゆえ高性能なAPG-63レーダー火器管制システムを搭載している。

電子戦装置はアメリカ議会の反対で導入できなかった戦術電子戦システムTEWS(AN/ALR-56レーダー警戒装置、AN/ALQ-135電子妨害装置、AN/ALQ-128電子戦警戒受信装置、AN/ALE-45チャフ/フレア・ディスペンサーなどで構成)に代えて、日立製作所が開発した国産電子戦装置J-TEWS(J/APR-4レーダー警戒装置、J/ALQ-8電子妨害装置、AN/ALE-45Jチャフ/フレア・ディスペンサー、J/APQ-1後方警戒装置などで構成)を装備し、20世紀では超一流の性能を誇った。

 

F-15イーグル戦闘機203機で、生産時期によって使用が異なる。1985年生産分からはセントラル・コンピューターが新型化され、1991年生産分からは電子制御式F100エンジンを搭載している。後期生産分はMSIP(段階的改良計画)機として、前期生産機分(PRE―MSIP)機とは異なった機体となっている。

 

宮崎県・新田原基地の第202飛行隊は航空教育集団隷下の第23飛行教育航空隊に改変された。

 

防衛庁は1997年度からマクドネル・ダグラスF-15J/DJ戦闘機に対して近代化能力向上改修の実施を開始した。改修が実施しやすい設計のF-15J/DJイーグル戦闘機MSIP機(多段階改良計画機、F-15J戦闘機67機、F-15戦闘機DJ36機)が対象である。

防衛庁は「F-15が既存の装置のままでは、2010年度以降に予想される脅威に対処することが困難であることから、これに対処し得るために、電子戦環境下でのミサイル戦における優勢の確保と、戦況把握および表示能力の向上を図ることが必要である。」とし、「防空要撃能力については、将来における技術的水準の動向に対応して、現有の要撃戦闘機(F-15)を今後とも有効活用するため、近代化の改修を確保する」とした。

 

2002年にはF-15Jイーグル戦闘機に対する試改修を開始、2003年7月18日に初飛行した。10月21日には防衛庁に納入され航空自衛隊飛行開発実験団が作業に入った。F-15量産改修機は2004年度に予算化され、2機分・98億円が予算化された。2005年度には4機、2006年度には2機、2008年度には20機・609億円が予算化された。2009年度には22機と38機分のレーダーが予算化された。

 

F-15J近代化改修機形態Ⅰ型はレーダーがAN/APG-63レーダーからAN/APG-63(V)1レーダーに換装された。これによって平均故障間隔が2倍以上の150時間となり、信頼性が向上した。AN/APG-63(V)1レーダーはボーイング/マクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機に搭載されているAN/APG-70レーダーからフィード・バックしたものである。

アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーのAN/APG-63(V)2レーダーは量産化されず、F-15J近代化改修機形態Ⅰ型への搭載は不可能となった。

アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーのAN/APG-63(V)3レーダーはマクドネル・ダグラスF-15J/DJ戦闘機の近代化能力向上改修が決定された1997年はまだ開発中で、F-15J近代化改修機形態Ⅰ型への搭載に間に合わなかった。

 

F-15J近代化改修機形態Ⅰ型は、セントラル・コンピューターはAP-1RからVHSICに換装された。処理速度が大幅に向上され、記憶容量も容量に余裕がある。また、基本ソフト・ウェアも更新された。

 発電機と冷却システムはアヴィオニクスの増加による電力需要の増大や、発生熱大に対応するためジェネレーターを75kVAの発電能力のある新型に換装され、冷却能力が向上した高圧除湿装置が導入された。

戦術データ・リンク向上のために、戦術データ交換システム端末(MIDS-FDL)としてLINK16戦術データ・リンクが搭載された。無線通信装置は電波妨害対処能力が付加され、飛行記録装置(FDR)も搭載され、機体管理能力が強化された。

 

また、F-15J近代化改修機形態Ⅰ型はにAAM-4(99式空対空誘導弾)空対空ミサイルやAAM-5(04式空対空誘導弾)空対空ミサイルの搭載能力が付与された。AAM-4空対空ミサイルはアクティブ・レーダー誘導中距離空対空ミサイルで、複数同時処理、撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)能力、視程距離外(BVR)戦闘能力を持ち、大幅な作戦能力の向上となる。そのために運用飛翔プログラムの改修、指令送信機の搭載がされた。AAM-5空対空ミサイルは赤外線画像誘導短距離空対空ミサイルで、オフボアサイト能力を持つ。そのために、ヘルメットのバイザー部分に情報表示できるヘルメット・マウンテッド・ディスプレイが導入される。ヘルメット・マウンテッド・ディスプレイは島津製作所のヘルメット・マウンテッド・ディスプレイとJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムが検討された。

 

F-15J近代化改修機形態Ⅱ型では、電子戦環境下での能力向上のため、統合電子戦システム(IEWS)が導入される予定だった。チャフ/フレア・ディスペンサーはAN/ALE-45からIEWSに統合可能なAN/ALE-47に換装される。

また、赤外線捜索追跡装置(IRST)も試改修1号機に搭載改修作業がなされている。2003年度から「戦闘機搭載用IRST装置」の開発が技術研究本部で始まり、2008年度までに技術・実用試験が完了した。IRSTはパッシブ赤外線センサーで、電子戦環境下にも強く、ステルス機にも対応が期待されている。

マクドネル・ダグラスF-15J/DJイーグル戦闘機は、最終的には量産改修機88機、試改修機2機が近代化改修機になる予定とされた。

   

支援戦闘機部隊は3個飛行隊ある。

 

第8飛行隊(青森県・三沢基地)は三菱重工業 F-1支援戦闘機からマクドネル・ダグラス F-4EJ改ファントムⅡ戦闘機に機種更新された。

 

第3飛行隊は次期支援戦闘機FSXとして開発された三菱重工業/ロッキード・マーティンF-2支援戦闘機に機種更新された。

 

三菱重工業/ロッキード・マーティンF-2支援戦闘機(旧称・F-16SX-3)は、自重9527kg、離陸最大重量22100kg、エンジンはゼネラル・エレクトリックF110-GE-132で、推力131,2kN×1である。(注3)

 

第3飛行隊の戦力は向上している。

第6飛行隊も2005年までにF-2支援戦闘機に機種更新された。

 

三菱重工業/ロッキード・マーティンF-2(旧称・F-16SX-3)支援戦闘機は、次期支援戦闘機FSXとして、三菱重工業とゼネラル・ダイナミクスが共同開発することになった。

次期支援戦闘機FSXは当初、機体は日本単独開発、エンジンはアメリカ製を導入する計画であった。

アメリカでは、日本の航空機開発能力は低いと主張する合衆国空軍、国防省、日米貿易摩擦により日本の対アメリカ貿易黒字縮小を求めるアメリカ議会、自動車だけでなく航空宇宙防衛産業でも日本が力をつけることを懸念するアメリカ商務省、産業界の批判があった。

その結果、機体の開発にもアメリカ企業が関与することになる共同開発が最適という結論になった。ベースとなる機体はゼネラル・ダイナミクス F-16C/Dブロック40ファイティング・ファルコン戦闘機となり、機体の開発にはゼネラル・ダイナミクスが関与することが最適とされた。

FSXはゼネラル・ダイナミクス F-16C/Dブロック40ファイティング・ファルコン戦闘機をベースに三菱重工業とゼネラル・ダイナミクスが共同で開発することになった。

しかし、クライド・プレストウィッツ元・商務省次官補代理が「アメリカの航空機開発能力、航空機技術が日本に奪われる、盗まれる」とマス・メディアにおいて強く主張し、FSXはFSX問題としてアメリカ議会で取り上げられることになり、アメリカ議会での議論は紛糾した。

 

 三菱重工業が全開発の60%、ゼネラル・ダイナミクスが全開発の40%を担当することになった。その後、ゼネラル・ダイナミクスの戦闘機部門はロッキードに売却され、ロッキードはマーティン・マリエッタと合併しロッキード・マーティンとなる。

FSX(F-16SX-3、F-2支援戦闘機)には3重デジタル・フライ・バイ・ワイヤ1重アナログ・フライ・バイ・ワイヤの日本独自フライ・バイ・ワイヤFBW、炭素繊維複合材CFRP、三菱電機 J/APG-1アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー、液晶グラス・コックピットなど、日本独自開発の最新の技術が投入されている。

エンジンはゼネラル・エレクトリックF110-GE-132ターボ・ファン・エンジンが導入され、石川島播磨重工業IHIでライセンス生産している。推力はアフター・バーナーを使用した最大推力が131,2kNである。

 

航空偵察機部隊、航空輸送部隊は新・防衛計画の大綱においても旧・防衛計画の大綱と同じくそれぞれ1個飛行隊、3個飛行隊が維持され、機種も同様である。

 

 航空偵察部隊は1個飛行隊とされ、マクドネル・ダグラス RF-4EJ偵察機が13機配備され、後にマクドネル・ダグラス F-4EJ戦闘機を偵察機改造したうえで追加され、航空偵察部隊は17機となった。

 

練習機には、川崎重工業 T-4中等練習機、富士重工業SUBARU T-7初等練習機、レイセオン・エアクラフト・カンパニー T-400輸送機・救難機等基本操縦練習機、がある。 

 

 航空輸送部隊は3個飛行隊とされ、川崎重工業 C-1輸送機が27機(ペイロード8トン)、ロッキード C-130Hハーキュリーズ輸送機(ペイロード18トン)が16機、日本航空機製造 YS-11が9機配備されていた。

 また、ボーイング747政府専用機が要人輸送に充てられた。

 川崎重工業 C-1輸送機の後継には、川崎重工業 C-2輸送機が開発され、鳥取県・美保基地に配備された。

 

  航空自衛隊の支援航空機として、BAEシステムズ U-125飛行点検機、ガルフストリーム・エアロスペース U-4多用途支援機が配備された。

 資材の運搬にはボーイング CH-47J輸送ヘリコプターが使用されている。

 

 救難飛行隊にはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60J救難ヘリコプター、ブリティッシュ・エアロスペース(現BAEシステムズ) U-125A救難捜索機が導入された。

 

救難ヘリコプターとしてユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーUH-60Jヘリコプターが導入された。

UH-60となっているが汎用ヘリコプター(ユーティリティ・ヘリコプター)ではなく、合衆国空軍ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー HH―60Gぺイヴ・ホーク救難ヘリコプターに相当する機体である。

赤外線暗視装置、気象レーダー、慣性航法装置、燃料タンク、空中給油装置、を装備し救難任務仕様となっている。

 ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60J救難ヘリコプターは救難専用として目立つように白を中心とした塗装にしていたが、戦闘捜索救難CSARを考慮するようになりロービジ(低視認性)塗装に変更される。

 

救難機として、ブリティッシュ・エアロスペース(現BAEシステムズ) U-125A救難捜索機が1995年に導入された。ブリティッシュ・エアロスペース BAe125-800に捜索レーダー、赤外線暗視装置が追加装備されている。 U-125A救難捜索機もロービジ塗装に変更された。

 

 地対空誘導弾部隊には6個高射群とされた。

 

装備は、1989年からMIM-104 PATRIOT(Phased Array TRacking to Interceptor Of Target)防空システムが配備された。

 

MIM-104C PAC2(PATRIOT能力向上型2)に改良されている。若干の弾道ミサイル迎撃能力を持つようになった。

 

弾道ミサイルを迎撃できるMIM-104F PAC3(PATRIOT能力向上型3、旧称ERINT)の配備には時間がかかり、2007年からの配備になった。

 

1個高射群は指揮所運用隊、整備補給隊と4個高射隊からなり、24個高射隊が航空自衛隊基地や航空自衛隊分屯基地にある。

 

   北海道・千歳基地に第3高射群、青森県・三沢基地に第6高射群、埼玉県・入間基地に第1高射群、岐阜県・岐阜基地に第4高射群、福岡県・芦屋基地に第2高射群、沖縄県・那覇基地に第5高射群、が配置されている。

 

 第1高射隊は千葉県・習志野分屯基地、第2高射隊は神奈川県・武山分屯基地、第3高射隊は茨城県・霞ヶ浦分屯基地、第4高射隊は埼玉県・入間基地、第5高射隊は福岡県・芦屋基地、第6高射隊は福岡県・芦屋基地、第7高射隊は福岡県・築城基地、第8高射隊は福岡県・多良台分屯基地、第9高射隊は北海道・千歳基地、第10高射隊は北海道・千歳基地、第11高射隊は北海道・長沼分屯基地、第12高射隊は滋賀県・餐場野分屯基地、第13高射隊は岐阜県・岐阜基地、第14高射隊は三重県・白山分屯基地、第15高射隊は岐阜県・岐阜基地、第16高射隊は沖縄県・知念分屯基地、第17高射隊は沖縄県・那覇基地、第18高射隊は沖縄県・知念分屯基地、第19高射隊は沖縄県・恩名分屯基地、第20高射隊は北海道・八雲分屯基地、第21高射隊は青森県・車力分屯基地、第22高射隊は青森県・車力分屯基地、第23高射隊は北海道・八雲分屯基地、第24北海道・長沼分屯基地、に配置されている。

 

 高射隊は基地や分屯基地から各地に展開するが、広大な領土領海領空、広大な排他的経済水域、の防空には高射隊、MIM-104 PATRIOTがかなり不足している。

 

 航空自衛隊は、朝鮮半島有事において航空自衛隊基地への攻撃を懸念した。

北朝鮮のコマンド部隊/特殊部隊による航空自衛隊基地への攻撃および北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員が朝鮮総連の有志と日本人、在日韓国人の協力者を指導しゲリラ部隊を編成し航空自衛隊基地を攻撃する可能性が高まった。

航空自衛隊は基地警備部隊の能力向上のため基地警備教導部隊の研究を始め、2008年3月に基地警備教導隊を発足させる予定であった。

2008年3月の発足予定から3年遅れて2011年3月に航空自衛隊基地警備教導隊が発足した。

航空自衛隊基地警備教導隊は航空自衛隊の各基地の基地警備部隊を教育訓練する部隊であるとともに対ゲリラ・コマンド特殊部隊で、北朝鮮のコマンド部隊/特殊部隊、ゲリラ部隊に対応する。

航空自衛隊の基地警備教導隊は、豊和工業 64式小銃(7,62mm×51)、FN MINIMI5,56mm機関銃(5,56mm×45)、ミネベア 9mm機関拳銃(9mm×19)、SIGザウエル/ミネベア SIG P220 9mm拳銃(9mm×19)などの小火器が装備されている。

車輌は陸上自衛隊と同じコマツ 軽装甲機動車が配備されている。陸上自衛隊ではオリーブ・ドラブとライト・ブラウンの迷彩となっているコマツ 軽装甲機動車だが、航空自衛隊基地警備教導隊はオリーブ・グリーン一色のコマツ 軽装甲機動車を装備する。

 

車輌には、三菱自動車工業 1/2トン・トラック、トヨタ自動車 1・1/2トントラック、いすゞ自動車 3・1/2トン・トラック、いすゞ自動車 トラック2・1/2トン4×4カーゴ(2トンクレーン付)、日産ディーゼル工業 トラック8トン(4×2)、

UDトラックス トラック8トン(4×2)、ダイムラー/メルセデス・ベンツ 射場多目的車、日野自動車 施設作業車、日野自動車 自活車、東洋電機工業 救難車、東洋電機工業 救難車(改)、トヨタ自動車 場外救難車1型、三菱自動車工業 トラクタ6トン(6×4)給水車用、いすゞ自動車 2000リットル燃料タンク車、三菱自動車工業 2000l燃料タンク車、日野自動車 2000G燃料給油車、UDトラックス 2000G燃料給油車、日産ディーゼル工業 2000G燃料給油車、東邦車輛 20キロリットル燃料給油車、東邦車輛 セミトレーラ5000G燃料給油車、いすゞ自動車 2・1/2トン散水車、日野自動車 2・1/2トン散水車、三菱自動車工業 除雪トラック(6×6)、三菱ふそうトラック・バス 除雪トラック(6×6)改、三菱ふそうトラック・バス 残雪除去器材(プラウ付)、三菱ふそうトラック・バス/新明和工業 大型融雪散布車、日野自動車/加藤製作所 ランウェイスイーパー、日野自動車 バリヤ作業車、三菱ふそうトラック・バス バリヤ作業車、いすゞ自動車 バリヤ作業車、日野自動車 爆弾作業車、コマツ 軽装甲機動車、いすゞ自動車 除染車、三菱自動車工業 レッカ車、三菱ふそうトラック・バス レッカ車、ダイムラー/メルセデス・ベンツ 山林多目的車、三菱自動車工業 ミサイル運搬車、三菱ふそうトラック・バス ミサイル運搬車、三菱重工業/日産ディーゼル工業 起動車(自走式)、神戸製鋼所/神鋼電気 AE-3電源車、神戸製鋼所/神鋼電気 C-5電源車、大阪精密電気工作所 C-5電源車、東急車輛製造 中型バキュームスイーパ、三菱ふそうトラック・バス 大型人員輸送車、三菱自動車工業 大型人員輸送車、日野自動車 大型人員輸送車、日産自動車 サイト用人員輸送車、三菱自動車工業 サイト用人員輸送車、トヨタ自動車 小型人員輸送車、三菱自動車工業 小型輸送車、などがある。

 

 2008年度から退役の始まるマクドネル・ダグラスF-4EJファントムⅡ戦闘機140機の後継として、次期主力戦闘機策定がはじまった。

 

後継機の候補にはロッキード・マーティンF-22Aラプター戦闘機(三菱商事)、ロッキード・マーティンF-35ライトニングⅡ戦闘機(三菱商事)、ボーイングF-15FX戦闘機(伊藤忠商事)、ボーイングF/A-18E/F戦闘攻撃機(双日)、ユーロファイター・タイフーン(住友商事)が候補に挙がった。

 

ロッキード・マーティンF-22ラプター戦闘機はYF-22初飛行1990年、F-22A初飛行1997年、自重19700kg、推力156kN×2。異機種間戦闘訓練(DACT)でほぼ無敗を誇り、20世紀最強の戦闘機マクドネル・ダグラス F-15Cイーグル戦闘機をも圧倒する世界最強の戦闘機である。

ロッキード・マーティン本社には日の丸ラウンデルが描かれたF-22Aラプター戦闘機の小型模型が展示されている様子が撮影されている。

ロッキード・マーティンF-22ラプター戦闘機は、レーダー断面積0,0001平方メートル(ロッキード・マーティン F-117ナイト・ホーク戦闘爆撃機のレーダー断面積は0,025平方メートル、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダー断面積は0,001平方メートル)という高度なステルス性能、統合電子戦能力、推力偏向制御システムの採用による画期的な機動、最高速度マッハ2,4、アフター・バーナーを使用せずにマッハ1,58での超音速巡行が可能なスーパー・クルーズ能力、高性能なAN/APG-77アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダー、秘匿性を重視した通信データリンク・システム、など最高機密の技術で製造されているため、国防技術流出防止法(2006年解除)や1998年国防歳出法オービー修正条項(デイヴィッド・オービー下院議員提出、2009年下院削除)、2010会計年度予算権限法案で輸出が禁止されていた。また、機体の価格が非常に高価(合衆国空軍フライ・アウェイ価格1機155億円、F-22A戦闘機の対日F-22Aラプター戦闘機輸出賛成派であるダニエル・イノウエ上院議員の提案で1機250億円)であることも問題になると思われた。

 

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はX-35初飛行2000年、F-35A初飛行2006年、自重13300kg、エンジンはユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF135-PW-100ターボ・ファン・エンジンで、推力は173kN×1である。

ロッキード・マーティン F-35ライトニングⅡ戦闘機は開発が遅れ2005年初飛行予定が2006年12月の初飛行となった。F-35Aライトニング戦闘機は初期作戦能力の獲得がかなり遅くなると考えられた。

ロッキード・マーティン F-22ラプターA戦闘機が最高速度マッハ2,4、アフター・バーナーを使わずにマッハ1,58で超音速巡行できるスーパー・クルーズ能力、推力偏向制御システムによる画期的な機動が可能であるのに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は最高速度マッハ1,6、スーパー・クルーズ能力は無い、推力偏向制御システムは無い。

ロッキード・マーティンF-35ライトニングⅡ戦闘機もロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機と同様に第5世代戦闘機として画期的な機動が可能となる推力偏向制御機能、アフター・バーナーを使用せずに超音速巡行が可能なスーパー・クルーズ能力が付与される計画と発表されていたがコストの問題などで変更となった。

 

ステルス性は、ロッキード・マーティン F-22ラプターA戦闘機のレーダー断面積は0,0001平方メートルに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダー断面積は0,001平方メートルで、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡのステルス性はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機より劣る。

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダーAN/APG-81アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーは、ロッキード・マーティン F-22ラプター戦闘機のAN/APG-77レーダーを簡易化させたもので半導体素子の数は大幅に減らされている。

一方、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機にはロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機にはないAN/AAQ-40電子光学ターゲティング・システム、AN/AAQ-37電子光学配給開口システムがある。

AN/AAQ-40電子光学ターゲティング・システムのIRST赤外線サーチ・アンド・ターゲット機能によりレーダーを使わず赤外線での捜索が可能となり被発見性が低下、安全性が向上し、AN/AAQ-40ターゲティング・システムのレーザー・ターゲティング機能によりレーザー誘導爆弾の運用が可能になっている。

AN/AAQ-37電子光学配給開口システムにより、光学画像、赤外線画像がJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムのヘルメット・バイザー部に表示され、常時360度監視可能となり状況認識、安全性が向上している。

ロッキード・マーティンF-22Aラプター戦闘機のコックピットはファンクションスイッチ(ボタン)式グラス・コックピットとヘッド・アップ・ディスプレイであるが、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は大型2面タッチ・センサー液晶パネル・コックピットとJHMCS統合ヘルメット・キューイング・システムとになり、状況認識、操作性が向上している。ヘッド・アップ・ディスプレイを廃止しヘルメット・マウンテッド・ディスプレイであるJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムの採用により状況認識、操作性を向上させ、大型2面タッチ・センサー液晶パネル・コックピットも状況認識、操作性向上となっている。

 

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は当初、ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機と同じくチタニウム合金を多用することで軽量化を目指していたが、価格を抑えるためチタニウム合金よりアルミニウム合金の多用に変更され重量が増加した。一方でロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は大型油圧アクチュエーターの無いパワー・バイ・ワイヤの採用で軽量化している。

 

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機の対空装備はAIM-120C/D AMRAAM先進中距離空対空ミサイル8発、AIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイル2発、M61A2バルカン20mm機関砲であるのに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機の対空装備はAIM-120C/D AMRAAM先進中距離空対空ミサイル4発、GAU-22/Aイコライザー25mm機関砲、となる。

GAU-22/Aイコライザー25mm機関砲は対空より対地を念頭に開発されているため対空を重視する航空自衛隊ではロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機の採用は不利になると考えられた。

しかしロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムの採用によって将来的にはAIM-9Xサイドワインダー2000空対空ミサイルの効果的な運用が可能になった。JHMCS統合装着キューイング・システムとAIM-9Xサイドワインダー2000空対空ミサイルの採用は、短距離、近距離での空対空戦闘で有利になると考えられた。

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機の対地攻撃能力はGBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)2発またはGBU-39 250ポンドSDM小直径爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界5m)8発の搭載に限られるが、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はGBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導)、GBU-39 250ポンドSDM小直径爆弾GPS/INS誘導)だけではなく、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS9誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(滑空兵器、GPS誘導)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー兵器)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導/GPS誘導/INS誘導、対レーダー兵器)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS誘導/赤外線画像誘導)など多様な対地攻撃兵器の使用が可能で、JSM統合打撃ミサイルによる対艦攻撃も可能となり、マルチ・ロールを念頭に置くとF-35AライトニングⅡ戦闘機は使えると判断された。

 

ハイ・ロー・ミックス構想(のちにフォース・ミックス構想に言い換えられる)では、ハイ-高価格・高性能のマクドネル・ダグラス F-15Cイーグル戦闘機の後継機となるハイ-高価格・高性能はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機である。

ロー-低価格それなりの性能にあたるロッキード・マーティン F-16ファイティング・ファルコン戦闘機の後継となるロー・低価格それなりの性能の戦闘機はロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機である。ロー・数をそろえるための低価格・それなりの性能な戦闘機がロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機である。

 

ハイ-高価格・高性能のマクドネル・ダグラス F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機894機をロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機750機で代替、ロッキード・マーティン F-16A/B/C/Dファイティング・ファルコン戦闘機2241機をロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機2000機以上で代替する計画だった。

軍事大国にならないという日本の政治の意味不明・理不尽な要求によって戦闘機の数を少なくしなければならなかった航空自衛隊は、戦闘機の高価格・高性能のハイに当たる戦闘機による少数精鋭でやってきた。

航空自衛隊の構想にあてはまるハイ-高価格・高性能の戦闘機はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機で、ローにあたるロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は支援戦闘機である三菱重工業/ロッキード・マーティン F-2戦闘機に近い。

ハイ-高価格・高性能の戦闘機であるマクドネル・ダグラス F-4EJファントムⅡ戦闘機、マクドネル・ダグラス F-15J/DJイーグル戦闘機に続く主力戦闘機にロー・低価格それなりの性能であるロッキード・マーティン F-35ライトニングⅡ戦闘機はあまり適当と言えなかった。

ハイ・ロー・ミックス構想のハイを要求する航空自衛隊はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機を求めていた。

しかしロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は合衆国空軍フライ・アウェイ価格が105億円、最終的な合衆国空軍フライ・アウェイ価格が95億円になる計画でかなり安く、防衛費の縮減を求められた場合はロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機が優位となる。

 

 

 

ボーイング F-15FX戦闘機は、合衆国空軍のボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機を航空自衛時次期主力戦闘機隊仕様にするとされた。

F-15FX戦闘機の源流となるとなるマクドネル・ダグラス F-15Aイーグル戦闘機は初飛行1972年、F-15FX戦闘機の原型となるマクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機は初飛行1986年。ボーイング/マクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機は最高速度マッハ2,5、自重14379kg、エンジンはユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-129ターボ・ファン・エンジンとゼネラル・エレクトリックF110-GE-129ターボ・ファン・エンジンから選択でき、ともに推力は129kN×2である。

ボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機はGBU-28 バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾の搭載に耐えるようフレームを強化したため、F-15Cイーグル戦闘機より重量が増加している。

源流となるマクドネル・ダグラス F-15Aイーグル戦闘機の初飛行が1972年、原型のマクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機の初飛行1986年と古く、ステルスという概念のない時代に生まれた戦闘機で、今後20年以上使用するには将来性に疑問が残った。

また、ボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機の原型であるマクドネル・ダグラス F-15C(F-15J)イーグル戦闘機を1980年から三菱重工業でライセンス生産していたことからF-15Eも日本国内でライセンス生産は可能であると思われたが、機体が古い割には価格が高額でF-15Jのライセンス生産価格と同様、1機あたり100億円以上の高額になると思われた。

さらにマクドネル・ダグラス F-15Jイーグル戦闘機でのライセンス生産の経験があるので、ボーイング F-15FX戦闘機を日本国内でライセンス生産してもチタニウム合金を多用する機体技術くらいしか新たに技術的なものを多く得られないと考えられた。

制空戦闘機を求めている航空自衛隊だが、ボーイング F-15FX戦闘機はボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機と同様の複座型または複座型の後席を撤去したもののみの提案で、制空戦闘機用の単座型は用意されなかった。

空対空戦闘での装備はAIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル、AIM―9Xサイドワインダー2000空対空ミサイル、M61A2バルカン20mm機関砲となる想定されたと。日本製のAAM―4空対空ミサイル(99式空対空誘導弾、アクティヴ・レーダー誘導中距離空対空ミサイル)、AAM-5空対空ミサイル(04式空対空誘導弾、赤外線画像誘導短距離空対空ミサイル)の搭載も容易と考えられた。

レーダーは、マクドネル・ダグラス F-15C/Dイーグル戦闘機の最新改良型「ゴールデン・イーグル」に搭載されているアクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーのAN/APG-63(V)3レーダー、ボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機の改良型に搭載予定の最新のアクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーであるAN/APG-82レーダーが検討された。

ボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機はGBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)、GBU-39 250ポンドSDB小直径爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界5m)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-28 バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(GPS/INS誘導、滑空爆弾)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー/GPS/INS誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS/INS/赤外線画像誘導)と非常に多く対地攻撃兵器は搭載できるが対艦ミサイル、特に日本国産のASM-2空対艦ミサイル、XASM-3空対艦ミサイルの搭載は想定されておらず、ボーイング F-15FX戦闘機に対艦ミサイルを搭載する場合には追加費用が必要になると思われた。

 

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は、原型YF-17初飛行1974年、源流F/A-18A初飛行1978年、F/A-18E初飛行1995年、自重14009kg、最高速度マッハ1,6、エンジンはゼネラル・エレクトリックF414-GE-400ターボ・ファン・エンジンで、推力97,86kN×2。

海軍機であるため空中給油方式が異なる(航空自衛隊 ボーイングKC-767空中給油・輸送機のフライング・ブーム方式でない)、空軍機として使用するには無駄な装備(主翼自動折り畳み機構など)が多い。

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は、基本設計が原型YF-17初飛行1974年、と設計コンセプトが古く、ステルス性もボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機はマクドネル・ダグラス F/A-18A/B/C/Dより大型化されているにも関わらずレーダー断面積は小さくなっているとは言え、本格的ステルス戦闘機の第5世代戦闘機と比べるとステルスとは言い難い。

対地攻撃・対艦攻撃に使用する戦闘攻撃機にはロッキード・マーティン F-16ファイティング・ファルコン戦闘機を発展させた三菱重工業 F-2支援戦闘機がすでにある。 

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は原型のYF-17が初飛行1974年、源流F/A-18A戦闘攻撃機初飛行1978年と古く、高度な技術で生産されていないためライセンス生産しても得るべきことが少ない。

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は、AIM-120C/D AMRAAM先進中距離空対空ミサイル(アクティヴ・レーダー誘導)、AIM-7Mスパロー空対空ミサイル(セミ・アクティヴ・レーダー誘導)、AIM―9Xサイドワインダー2000空対空ミサイル(赤外線画像誘導)、AIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイル(赤外線誘導)、AGM-84ハープーン空対艦ミサイル(アクティヴ・レーダー誘導)、AGM-84E SLAMスタンド・オフ陸上攻撃ミサイル(GPS誘導/赤外線画像誘導)、AGM-84H SLAM-ERスタンド・オフ陸上攻撃ミサイル・射程距離延伸型(GPS誘導/赤外線画像誘導)、AGM-65マーヴェリック空対地ミサイル(TV画像誘導/赤外線画像誘導)、AGM-114Mヘルファイア対戦車ミサイル爆風破砕型(レーザー誘導)、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)、GBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界13m、)、GBU-39 250ポンドSDM小直径爆弾(GPS/INS誘導、半数必中界5m、)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー/GPS/INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-28 バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(GPS/INS誘導、滑空爆弾)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー/GPS/INS誘導、パッシヴ・レーダー誘導)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS/INS/赤外線画像誘導)など、合衆国海軍が使用するすべての航空機搭載兵器が使用できたが、ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は21世紀の合衆国海軍の「フロム・ザ・シー」戦略に適合するよう対地攻撃任務が基本で、制空・要撃任務が主任務でありFX次期主力戦闘機として制空戦闘機を求める航空自衛隊には不適である、など問題があった。

そして、ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘機に搭載されるAN/APG-79アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーは空中電子攻撃機能など非常に高度な技術をもつもので、国防技術流出防止法など機密保持を意識しているアメリカが日本に供給するどうかの問題があった。ダウン・グレードされたAN/APG-79廉価版か、日本国内でライセンス生産できずアメリカからの輸入品にされる可能性が考えられ、その場合日本にとって技術導入のメリットが無かった。

 

 

 

 ユーロファイター・タイフーンは原型EAP初飛行が1986年、ユーロファイター・タイフーン初飛行1994年と古く、ステルスの概念もあまりない。

ユーロファイター・タイフーンは、コンピューター制御のフライ・バイ・ワイヤ技術重視ではなくカナード翼を重視しておりアメリカ、日本と航空機技術の考え方、方向性が違った。

レーダーは日本やアメリカで主流となっているアクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーの開発が遅れており完成の目途が立っていなかった。

ユーロファイター・タイフーンが旧態化していることは否めなかった。またアメリカ製戦闘機を導入してきた航空自衛隊で、ヨーロッパ製戦闘機を導入するとなると治具の変更など現場での混乱も予想された。

 

 

2008年12月、第8飛行隊からマクドネル・ダグラスF-4EJファントムⅡ戦闘機が退役した。

マクドネル・ダグラス F-4EJファントムⅡ戦闘機の後継が決まらないまま、マクドネル・ダグラス F-4EJファントムⅡ戦闘機の退役が始まり、航空自衛隊は戦闘機の配備数が減っていくことになった。

 

航空自衛隊の戦闘機数、航空自衛隊の戦闘機数が防衛計画の大綱より多くなることは絶対に許されない日本の政治、マス・メディアだが、航空自衛隊の戦闘機数が防衛計画の大綱より少なくなることに対しては何の反応もない日本。

 

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機はアメリカ議会での輸出許可は下りず、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機がFX次期主力戦闘機に決定したが、開発に難航して完全作戦能力獲得に時間がかかっており、その後の紆余曲折が予想された。 

 

 

1972年から140機が導入されたF-4EJファントムⅡ戦闘機は初飛行1958年、配備1971年で、老朽化が激しい。早期に後継機ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機の増備が望まれたが、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は年6機の導入にとどまる。

 

1981年から配備されたマクドネル・ダグラス F-15J/DJイーグル戦闘機の1984年までの導入分である非MSIP機100機はデジタル・データ・バスが無く、アクティヴ・レーダー誘導のAIM-120先進中距離空対空ミサイル、AAM-4空対空ミサイル(99式空対空誘導弾)が使用できず、現代戦では通用しなくなっていた。

マクドネル・ダグラス F-15J/DJイーグル戦闘機の非MSIP機100機の後継機導入も急がなければならなかった。

 

 

 

 

 

第4   統合幕僚長と統合幕僚監部

 

2006年3月27日、統合幕僚会議は統合幕僚監部に改編された。機能は強化され、統合幕僚会議議長も統合幕僚長となった。

 

統合幕僚会議議長は、アメリカから統合参謀本部議長に相当する職を日本でも設けてほしいと言われて作られた。

 

当時、防衛庁の内局は大蔵省、警察庁からの出向が多く、外務省、通商産業省などからの出向も多かった。

 

防衛庁の内局に多く出向し影響力を行使する大蔵省、警察庁と、防衛庁内局に出向してる大蔵省、警察庁、外務省、通商産業省出身の官僚と防衛庁内局の官僚は、自衛隊(制服組)の地位向上阻止、内局優位維持のため、統合幕僚会議議長に調整権限すら与えず、お飾りの名誉職にした。

 

統合幕僚会議議長にまったく権限はなく統合運用に関して無力だった。

 

その反省から統合幕僚長は統合運用に関して権限を持つことになった。防衛省設置法第22条で、「統合運用による円滑な任務遂行を図る見地からの防衛及び警備に関する計画の立案に関すること」と明記され、実質的権限を持つようになった。

 

 

 

 

 

 

第3章 2008年の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」

 

 安倍晋三・内閣総理大臣は、2007年4月17日、時代状況に適合した実効性のある安全保障の法的基盤を再構築するために「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を開催することにした。座員には柳井俊二(国際海洋法裁判所判事、元・外務省)、岡崎久彦(NPO法人 岡崎研究所理事長・所長、元・外務省)、佐藤謙(財団法人 世界平和研究所副会長、元・防衛庁事務次官)、西元徹也(元・防衛庁統合幕僚会議議長)、葛西敬之(東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長)、佐瀬昌盛(拓殖大学教授、防衛大学校名誉教授)、北岡伸一(東京大学教授)、田中明彦(東京大学教授)、西修(駒沢大学教授)、村瀬信也(上智大学教授)、岩間陽子(政策研究大学院大学准教授)、中西寛(京都大学教授)が選ばれた。

 

 安倍内閣総理大臣は2007年5月18日の第1回会合で、共同訓練などで公海上において自衛隊艦船と米軍艦船が近くで行動している時に米軍艦船が攻撃された場合の自衛隊艦船の行動、同盟国・米国が弾道ミサイルに向かうかもしれない弾道ミサイルを日本がレーダーで捕捉した場合の日本の行動、国連PKOに参加している自衛隊の武器使用の問題、国連PKOに参加することにおいて後方支援で「武力行使と一体化」しないという条件が課される現状、について新たな安全保障政策構築のため新しい時代の日本が何をおこない、何をおこなわないのか、明確な「歯止め」を国民に提示することが重要、と述べた。

 

 懇談会は2008年6月24日、安倍・前総理大臣が指示した安全保障における法的基盤の再検討について、自衛権に関する問題である公海における米艦防護、弾道ミサイル防衛についての問題、国際的な平和活動に関する問題であるPKO活動等における自衛隊の武器使用、PKO活動等における他国への後方支援、の4つにおいて基本認識と提言を報告書として福田内閣総理大臣に提出した。

 

報告書では日本国憲法制定時から大きく変化した日本の安全保障環境を踏まえ、現行解釈に固執することは法的に合理的でない解釈の連鎖を生みだしかねないとし、安全保障環境の変化に適合し、法的に見ても一貫した論理に基づいた国際的にも適切と考えられる新しい解釈の必要性を説いている。

公海における米艦防護については、個別的自衛権及び自己の防護や自衛隊法第95条に基づく武器等の防護により反射的効果として米艦の防護が可能であるというこれまでの憲法解釈及び現行法の規定では米艦防護ができないため集団安全保障の行使を認める必要があるとしている。

 

米国に向かうかもしれない弾道ミサイルについては、従来の自衛権概念や国会手続きを前提としていては充分な実効的対応ができないとし、個別的自衛権や警察権によって対応する従来のやり方から集団自衛権の行使を必要としている。

 

国際的な平和活動における武器使用について、憲法で禁止された武力行使に抵触しないため自己の防護や武器等の防護のためしか認められないとされる現在の憲法解釈や現行法では国際非難の対象となるため、国連PKO等の国際的な平和活動への参加は憲法9条で禁止されないと整理されるべきとし、自己防衛に加え他国部隊や要員への駆けつけ警備及び任務遂行のために武器使用を認めるべき、としている。

 

PKO等に参加している他国への後方支援について、憲法9条で禁止されている武力行使と一体化に抵触する恐れがあるとされてきたことに対し、政策的妥当性の問題とし総合的に検討して政策決定するべき、とした。

 

 

 

 

東アジア各国の戦力

 

 

 

第1章 東アジア各国の戦力 アメリカ合衆国太平洋軍 2000年代

 

アメリカ合衆国軍は世界各地に展開しており、地域コマンドとして欧州軍、太平洋軍、中央軍、南方軍、北方軍があるが、東アジアは太平洋軍(United States PAcific COMmand,U.S.PACOM、現・インド太平洋軍)が受け持っている。太平洋軍はハワイ州オアフ島のキャンプ・H・M・スミスで司令官は海軍大将である。

アメリカ太平洋軍は傘下に太平洋艦隊、太平洋陸軍、太平洋海兵隊部隊、太平洋空軍がある。地域統合軍は在日米軍(USFJ)、在韓米軍(USFK)、アラスカ軍、ハワイ陸軍、太平洋特殊作戦軍がある。

 

 

 第1節      合衆国陸軍

 

 

 

ハワイ州スコフィールド・バラックスには合衆国陸軍第25歩兵師団「トロピック・ライトニング」が駐留している。

2006年までは第25歩兵師団(軽)「トロピック・ライトニング」という軽歩兵師団で、3個旅団で構成されていた。

2006年までの第25歩兵師団(軽)「トロピック・ライトニング」の時代は、非防弾のM998ハマー高機動装多目的装輪車HMMWV、7,62mm×51ライフル弾防弾のM1114装甲強化型ハマー高機動装多目的装輪車アップ・アーマードHMMWVを主装備とする軽歩兵師団だった。

2006年に第25歩兵師団「トロピック・ライトニング」に名称を変更してからは、非防弾のM998ハマー高機動装多目的装輪車HMMWV、限定的な防弾のM1114装甲強化型ハマー高機動装多目的装輪車アップ・アーマードHMMWVに加え、全周14,5mm徹甲弾防弾の装甲車であるGDLSカナダ M1126ストライカー歩兵輸送車、全周14,5mm徹甲弾防弾でM68 105mmライフル砲(ヴィッカースL7ライフル砲)搭載のGDLSカナダ M1128ストライカー機動砲システムも装備する歩兵師団に変更となった。第25歩兵師団「トロピック・ライトニング」は4個旅団で構成される。

第25歩兵師団「トロピック・ライトニング」の第1旅団戦闘団と第2旅団戦闘団は、ロッキード・マーティン C-130E/Hハーキュリーズ輸送機で輸送可能で緊急展開できるGDLSカナダ M1126ストライカー歩兵輸送車を主装備とする「ストライカー旅団戦闘団」である。第25歩兵師団「トロピック・ライトニング」の他の旅団戦闘団は軽歩兵旅団の緊急展開部隊である。また、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60Lブラック・ホーク汎用ヘリコプターも保有している。

アラスカ軍(アラスカ州フォート・リチャードソン、現エルメンドルフ・リチャードソン統合基地)には、合衆国陸軍第6歩兵師団第1旅団から改編された第172歩兵旅団(独立)「スノー・ホークス」(アラスカ州フォート・ウェインライト 定員3800人)があった。第172歩兵旅団は第25歩兵師団第1旅団戦闘団に改編された。

 

日本にはキャンプ座間に合衆国陸軍第9軍から改編された合衆国陸軍第9戦域陸軍地域コマンド司令部がおかれるものの、あとは補助部隊で太平洋陸軍の実戦部隊は置かれていなかった。

しかし、特殊作戦軍(United States Special OperationCOMmand U.S.SOCOM)のもとにおかれる合衆国陸軍第1特殊部隊群(1stSFG、グリーン・ベレー、司令部:ワシントン州フォート・ルイス)第1大隊(沖縄県トリイ・ステイション)が日本に駐留する。

日本有事、日本周辺有事で合衆国陸軍の特殊部隊は、第1特殊部隊群第1大隊の他に、合衆国陸軍第1特殊部隊群作戦分遣隊D(デルタ・フォース、400人、ノース・キャロライナ州フォート・ブラッグ)、合衆国陸軍第1特殊部隊群第2大隊、合衆国陸軍第1特殊部隊群第3大隊、合衆国陸軍第19特殊部隊群が投入される。

また、特殊部隊では無いが合衆国特殊作戦コマンド隷下に精鋭部隊である合衆国陸軍第75レンジャー連隊が日本有事、日本周辺有事において特殊作戦に投入される。

 

合衆国陸軍特殊部隊群(グリーン・ベレー)は第1特殊部隊群、第3特殊部隊群、第5特殊部隊群、第7特殊部隊群、第10特殊部隊群があり、合衆国陸軍53万人の志願者から選び抜かれた7500人の精鋭で、対テロ戦、対ゲリラ戦、心理戦、偵察、情報支援活動、捕虜救出、爆撃誘導、敵重要防護施設破壊、敵基地破壊、敵装備破壊、直接行動(敵要人の暗殺、敵要人を拉致し尋問により情報収集)などあらゆる特殊作戦、合衆国陸軍への協力者の獲得、協力者への軍事教育・軍事訓練、協力者による軍事作戦の指導、協力者による軍事作戦の指揮、同盟国軍・友好国軍の指導、教育、訓練などを担当する。

合衆国陸軍の州兵にも第19特殊部隊群、第20特殊部隊群というグリーン・ベレーがある。

 

 

合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分遣隊D(デルタ・フォース)は1977年11月に創設、1980年10月に正式発足した。

1970年代、各国国内では共産党の関係者・共産党の出身者や左翼過激派など左翼勢力が航空機ハイジャック、政治家・経営者の誘拐人質事件、無差別爆弾テロ、殺人・拉致人質事件をともなうデモ・暴動を多発させ、国際社会では日本赤軍、西ドイツ赤軍派、イタリア赤い旅団、フランス直接行動、ベルギー戦う共産主義者細胞など左翼国際テロリストとパレスチナ解放人民戦線PFLP、パレスチナ解放人民戦線総司令部派PFLP-GCなど社会主義パレスチナ・ゲリラが共闘し航空機ハイジャック、大使館・領事館人質占拠事件、政治家・経営者誘拐事件、無差別爆弾テロなど国際テロリズムを多発させた。

アメリカでも対テロ戦の重要性が認識された。

合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分遣隊D(デルタ・フォース)は対テロ戦、対ゲリラ戦、人質救出作戦、捕虜救出作戦、敵重要防護施設の破壊、要人警護、国外での情報収集、直接行動(敵要人の暗殺、敵要人を拉致し尋問で情報収集)が主な任務である。

合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分遣隊D(デルタ・フォース)は第75レンジャー連隊の在籍隊員や一般部隊のレンジャー資格保有者などの志願者から選び抜かれた400人の部隊である。

合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分遣隊D(デルタ・フォース)は、1980年のイラン大使館人質占拠事件人質救出イーグル・クロー作戦、1982年にイタリア左翼テロリスト赤い旅団による合衆国陸軍の准将誘拐人質事件、1985年にイスラム聖戦によるTWAトランス・ワールド航空ハイジャック事件、パレスチナ解放人民戦線総司令派PFLP-GCから分派したパレスチナ解放戦線PLFによるアキレ・ラウロ号シー・ジャック事件、1989年にパナマ侵攻ジャスト・コーズ作戦におけるノリエガ将軍身柄拘束、1993年にソマリアでの国連平和維持活動UNOSOMⅡにおけるアイディード将軍派幹部捕獲、などで出動している。

 

第1特殊部隊群、第19特殊部隊群、第1特殊部隊作戦分遣隊D、第75レンジャー連隊など日本有事、日本周辺有事で投入される特殊部隊、レンジャー部隊の輸送、特殊作戦での航空支援任務は第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」が担当する。

 第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は、赤外線暗視装置、気象レーダー、空中給油装置、ミサイル警戒装置、ミサイル防御装置を装備するユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー MH-60Mブラック・ホーク特殊作戦ヘリコプター、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー MH-60Lブラック・ホーク特殊作戦ヘリコプター、小型で狭所に着陸・飛行可能なマクドネル・ダグラス MH-6リトル・バード特殊作戦ヘリコプター、小型で狭所に着陸・飛行可能で、ハイドラ70 70mmロケット弾14発と、7,62mm×51弾を毎分2000発から6000発ほど発射できるM134ミニガン電動ガトリング砲を装備するマクドネル・ダグラス AH-6キラー・エッグ攻撃ヘリコプター、定員55人で赤外線暗視装置、気象レーダー、地形追従レーダー、空中給油装置を装備、また大量の燃料を搭載でき他の特殊作戦ヘリコプターに給油できるボーイング MH―47Eチヌーク特殊作戦ヘリコプター、などを保有する。

第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は夜間飛行、超低空飛行、匍匐飛行を徹底して訓練している。

第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は、1980年のイラン大使館人質占拠事件の人質救出作戦イーグル・クロー作戦において空軍C-130Hハーキュリーズ輸送機と海軍RH-53Dシー・スタリオン掃海ヘリコプターが接触、墜落し死者8名を出しイーグル・クロー作戦が失敗したことで、特殊作戦ヘリコプター部隊が必要と考えられたことから生まれた。

第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は、第159航空大隊などを核にタスク・フォース160として結成された。第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は、1983年に第101空挺師団(空中強襲)「スクリーミング・イーグルス」で使われていたユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH―60Aブラック・ホーク汎用ヘリコプターを受領し、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-6Aブラック・ホーク汎用ヘリコプターに赤外線暗視装置、気象レーダー、ミサイル警戒装置を取り付けMH-60Aヴェルクロ・ホーク特殊作戦ヘリコプターへ改造、部隊に配備した。

 

合衆国陸軍第75レンジャー連隊(3個大隊2300人、司令部:ジョージア州フォート・ベニング)は緊急展開できる小規模の部隊である。

第75レンジャー連隊には第75レンジャー連隊第1大隊(ワシントン州ルイス・マッコード統合基地)、第75レンジャー連隊第2大隊(ジョージア州ハンター陸軍飛行場)、第75レンジャー連隊第3大隊(ジョージア州フォート・ベニング)がある。テロ・ゲリラ・コマンド対処などに迅速に行動できる態勢をとっている小規模緊急展開部隊で、18時間以内に全世界に展開できる。(注2)

 

合衆国陸軍第82空挺師団「オール・アメリカン」(1万6000人、ノース・キャロライナ州フォート・ブラッグ)、合衆国陸軍第101空挺師団(空中強襲)「スクリーミング・イーグルス」(1万6000人、ケンタッキー州フォート・キャンベル)、合衆国陸軍第10山岳師団「マウンテナーズ」(ニュー・ヨーク州フォート・ドラム)を擁する合衆国陸軍第18空挺軍団(ノース・キャロライナ州フォート・ブラッグ)があり、合衆国陸軍第82空挺師団「オール・アメリカン」、合衆国陸軍第101空挺師団(空中強襲)「スクリーミング・イーグルス」、合衆国陸軍第10山岳師団「マウンテナーズ」が大規模緊急展開部隊として派遣される。

 

合衆国陸軍第18空挺軍団には、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ M1A2システム拡張パッケージSEPエイブラムス戦車(複合装甲+劣化ウラン装甲)、ユナイテッド・ディフェンス M2A3ブラッドレー歩兵戦闘車(防弾アルミニウム装甲+爆発反応性装甲)を装備する合衆国陸軍第3歩兵師団(機械化)「ロック・オブ・ザ・マルヌ」(ジョージア州フォート・スチュアート)という機械化歩兵部隊もある。合衆国陸軍第3歩兵師団(機械化)は西ドイツ駐留だったが、アメリカ本国に移動した。

 

増援が必要となった場合には、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズM1A2システム拡張パッケージSEPエイブラムス戦車(複合装甲+劣化ウラン装甲)、BAEシステムズ M2A3ブラッドレー歩兵戦闘車(防弾アルミニウム装甲+爆発反応装甲)、ボーイング AH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターを装備する第1機甲師団「オールド・アイアンサイド」、第1騎兵師団「ファースト・チーム」、第1歩兵師団(機械化)「ビッグ・レッド・ワン」、第4歩兵師団(機械化)「アイヴィー」が投入される。

第1騎兵師団「ファースト・チーム」、第1歩兵師団(機械化)「ビッグ・レッド・ワン」、第4歩兵師団(機械化)「アイヴィー」はベトナム戦争に投入されていた。

第1機甲師団「オールド・アイアンサイド」は西ドイツ駐留からアメリカ本国に移動した。

 

合衆国陸軍は2000年代、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ M1A1HA重装甲エイブラムス戦車/M1A2エイブラムス戦車/M1A2システム拡張パッケージSEPエイブラムス戦車を7620両、ユナイテッド・ディフェンス M2A3ブラッドレー歩兵戦闘車/M3A3ブラッドレー騎兵戦闘車を6719両、フード・マシナリー・アンド・ケミカル・コーポレーション M113A2/A3装甲兵員輸送車を1万4300両、GDLSカナダ M1126ストライカー歩兵輸送車を600両、マクドネル・ダグラス AH-64Aアパッチ攻撃ヘリコプター/ボーイング AH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターを732機、ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1Sヒューイ・コブラ攻撃ヘリコプターを370機、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60A/L/Mブラック・ホーク汎用ヘリコプターを1484機、ベル・ヘリコプター・テキストロンUH-1Hイロコイ汎用ヘリコプターを447機、ボーイング CH-47Dチヌーク輸送ヘリコプターを440機、ベル・ヘリコプター・テキストロン OH-58カイオワ観測ヘリコプターを463機、ベル・ヘリコプター・テキストロン OH-58Dカイオワ・ウォリアー観測ヘリコプター(レーザー・ターゲティング・システム搭載)を375機、保有していた。

 

陸上自衛隊は2000年代後半、第3世代戦車・三菱重工業 90式戦車が292両、旧型の第2世代戦車・三菱重工業 74式戦車が893両、歩兵戦闘車である三菱重工業 89式装甲戦闘車が68両、装甲兵員輸送車である三菱重工業 73式装甲車が338両、装輪装甲歩兵輸送車であるコマツ 96式装輪装甲車が217両、ボーイング AH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターが2機、ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1Sコブラ攻撃ヘリコプターが90機、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH―60JAブラック・ホーク汎用ヘリコプターが40機、ベル・ヘリコプター・テキストロン UH-1H/J汎用ヘリコプターが131機、ボーイング CH-47JAチヌーク輸送ヘリコプターが50機、マクドネル・ダグラス OH-6Dカイユース観測ヘリコプターが193機、であった。

 

合衆国陸軍の戦力の大きさがよくわかる。

 

2005年、合衆国陸軍第9戦域陸軍地域コマンドに代わり合衆国陸軍第1軍団がキャンプ座間に駐留すると報道されたが、実際、キャンプ座間に駐留したのは合衆国陸軍第1軍団前方司令部となった。合衆国陸軍第1軍団はアジア・インド太平洋の合衆国陸軍の指揮を担当する。

 

 韓国には合衆国陸軍第8軍がソウルに司令部を置き、傘下に第2歩兵師団「インディアン・ヘッド」(第1旅団戦闘団、第2旅団戦闘団、第3旅団戦闘団)、第6騎兵旅団、第17航空旅団などを置いていた。

しかし第2歩兵師団第2旅団戦闘団、第2歩兵師団第3旅団戦闘団はワシントン州フォート・ルイス配備に変更、第6騎兵旅団、第17航空旅団は解隊され、在韓アメリカ軍は大幅に縮小されている。

主力である第2歩兵師団第1旅団戦闘団はゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ M1A1HA重装甲エイブラムス戦車(複合装甲+劣化ウラン装甲)、ユナイテッド・ディフェンス M2A3ブラッドレー歩兵戦闘車(防弾アルミニウム装甲+爆発反応装甲)を配備する機械化歩兵部隊である。

第2歩兵師団第2旅団戦闘団はユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60Lブラック・ホーク汎用ヘリコプターによる空中強襲作戦部隊であったがGDLSカナダ M1126ストライカー歩兵輸送車、GDLSカナダ M1128ストライカー機動砲システムを主装備とするストライカー旅団戦闘団に変更された。

しかし第2歩兵師団の第2旅団戦闘団、第3旅団戦闘団はワシントン州フォート・ルイスに配備されることになった。

第6騎兵旅団はマクドネル・ダグラス AH-64Aアパッチ攻撃ヘリコプター、ボーイング AH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリコプターを主装備とする部隊である。

2005年、第6騎兵旅団は解隊される。

第17航空旅団はユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー UH-60Lブラック・ホーク汎用ヘリコプター、ボーイング CH-47Dチヌーク輸送ヘリコプターを配備した。

2005年、第17航空旅団は解隊される。

在韓アメリカ軍は陸軍中心だったので、在韓アメリカ軍は大幅な縮小となった。

 

 韓国には第160特殊戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」の中隊が駐屯している。

ユナイテッド・テクノロジーズシコルスキー MH-60L特殊作戦ヘリコプター、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーMH-60M特殊作戦ヘリコプター、マクドネル・ダグラス MH-6リトル・バード特殊作戦ヘリコプター マクドネル・ダグラス AH-6キラー・エッグ攻撃ヘリコプターを配備している。

北朝鮮・朝鮮人民軍正規部隊、北朝鮮・朝鮮人民軍コマンド部隊、北朝鮮・朝鮮人民軍特殊部隊や、北朝鮮・朝鮮労働党35室海外担当課の工作員、北朝鮮・朝鮮労働党35室外郭団体課の工作員、北朝鮮・朝鮮労働党対外連絡部の工作員、北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員、北朝鮮・朝鮮労働党統一戦線部の工作員と北朝鮮の工作員が指導する主体思想派の韓国人で構成されるゲリラ部隊、北朝鮮の工作員が指導する親北朝鮮の韓国人で構成されるゲリラ部隊、に迅速に対応できるような態勢においている。(注2)

 

第2節     合衆国海兵隊

 

 合衆国海兵隊の人員は17万人で、太平洋海兵隊部隊は人員約6万人、主に合衆国海軍のワスプ級強襲揚陸艦、タラワ級強襲揚陸艦、ホイットビー・アイランド級ドック型揚陸艦、オースティン級ドック型揚陸艦、サン・アントニオ級ドック型揚陸艦によって輸送される。

 

合衆国海軍ワスプ級強襲揚陸艦は満載排水量40532トン、1番艦LHD-1ワスプ就役1989年、蒸気タービン推進である。兵装はMk29発射機2基(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル/RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル艦対空ミサイル)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。搭載航空機は垂直離着陸航空機10機、ヘリコプター30機、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC3隻、収容する海兵隊隊員は1870人である。

太平洋艦隊には3隻配備されている。(注14)

 

合衆国海軍タラワ級強襲揚陸艦は1番艦LHA-1タラワ1976年就役で、満載排水量はワスプ級強襲揚陸艦39000トン、兵装は、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基である。搭載航空機は垂直離着陸航空機10機、ヘリコプター30機、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC1隻、収容する海兵隊隊員はワスプ級強襲揚陸艦とほぼ同じ1900人前後である。

合衆国海軍タラワ級強襲揚陸艦は太平洋艦隊に3隻配備されていた。(注14)

 

合衆国海軍タラワ級強襲揚陸艦1番艦LHA-1「タラワ」は2007年、ワスプ級強襲揚陸艦8番艦LHD-8「マキン・アイランド」に代替された。

合衆国海軍タラワ級強襲揚陸艦2番艦LHA-2「サイパン」は、2012年に「LHA(R)」(Rはリプレイスメント)アメリカ級強襲揚陸艦に代替された。

アメリカ級強襲揚陸艦の1番艦、2番艦は航空機運用重視でLCAC、LCUを運用するためのウェル・デッキがなかったが、不評のため3番艦から復活することになった。(注15)

 

合衆国海軍ホイッドビー・アイランド級ドッグ型揚陸艦は、満載排水量15726トン、1番艦LSD-41ホイッドビー・アイランド就役1986年、ディーゼル推進、兵装はMk49射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基で、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC4隻、収容する海兵隊隊員は500人である。

 

合衆国海軍ホイッドビー・アイランド級ドック型揚陸艦は太平洋艦隊に6隻配備されている。

合衆国海軍オースティン級ドッグ型輸送揚陸艦は満載排水量16500トン、1番艦LPD-4オースティン就役1965年、兵装はMk15ファランクス20mmバルカン機関砲近接防御武器システム2基、搭載航空機はヘリコプター6機、収容する海兵隊隊員は840人である。

合衆国海軍オースティン級ドッグ型輸送揚陸艦は太平洋艦隊に6隻配備されていた。(注16)

 

 合衆国海軍オースティン級ドック型輸送揚陸艦に代わり配備されたのは、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦である。

 

合衆国海軍サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦は満載排水量25300トン、ディーゼル推進である。兵装はMk41垂直発射システム(16セルにRIM-162発展型シー・スパロー個艦防空短距離艦対空ミサイル64発、後日装備予定)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk46 30mm機関砲2基、である。搭載航空機はMV-22ティルト・ローター航空機1機、ヘリコプター1機である。搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC2隻、収容車両は水陸両用装甲車14両など、収容する海兵隊隊員は720人である。(注17)

 

合衆国海兵隊は近接航空支援のため、マクドネル・ダグラス F/A-18A/C/Dホーネット戦闘攻撃機(原型YF-17初飛行1974年、F/A-18A/B初飛行1978年、機体空虚重量10455kg、エンジン:ゼネラル・エレクトリックF404-GE-400、推力78,3kN×2)(注1)とマクドネル・ダグラス AV-8BハリアーⅡ攻撃機(初飛行1978年、機体重量5670kg、エンジン:ロールスロイスF402-RR-406、推力95,kN×1)(注2)を装備する。

 

マクドネル・ダグラス F/A-18A/C/Dホーネット戦闘攻撃機とマクドネル・ダグラス AV-8BハリアーⅡ攻撃機は、ロッキード・マーティン F-35CライトニングⅡ戦闘機(空母運用艦載戦闘機)とロッキード・マーティン F-35BライトニングⅡ短距離離陸垂直着陸戦闘機に代替され、航続距離の延伸とステルス性が確保され、作戦能力が向上される。

 

合衆国海兵隊の航空輸送はユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー CH-53Dシー・スタリオン輸送ヘリコプター(定員37人)、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー CH-53Eスーパー・スタリオン輸送ヘリコプター(定員65人)、ボーイング・ヴァートル CH-46シー・ナイト中型輸送ヘリコプター(定員26人)、ベル・ヘリコプター・テキストロン UH-1Nツイン・ヒューイ汎用ヘリコプター(定員11人)、ロッキード KC-130Tハーキュリーズ空中給油機、ロッキード・マーティン KC-130Jハーキュリーズ空中給油機がある。

 

ボーイング・ヴァートル CH-46シー・ナイト中型輸送ヘリコプター、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー CH-53Dシー・スタリオン輸送ヘリコプターは、2016会計年度までにヘリコプターと固定翼航空機の利点を併せ持つティルト・ローター航空機ボーイング/ベル MV-22Bオスプレイ垂直離着陸輸送機360機、16個現役飛行隊、2個予備役飛行隊となる。

ティルト・ローター航空機ボーイング/ベルMV-22Bオスプレイ垂直離着陸輸送機の導入によって飛躍的に航続距離が伸び、揚陸作戦が容易、安全になる。

 

合衆国海兵隊の地上戦装備には、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ M1A1戦車、GMカナダ/GDLSカナダ LAV-25 25mm機関砲搭載軽強襲車、GMカナダ/GDLSカナダ LAV-AT 対戦車ミサイル搭載軽強襲車、フード・マシナリー・アンド・ケミカル・コーポレーション AAV7水陸両用強襲車がある。

 

合衆国陸軍が早期にM4A1カービンを採用したのに対し、合衆国海兵隊はM16A4ライフルを使い続けた。しかし2000年代後半、合衆国海兵隊もM4A1カービンに切り替えることになる。

 

合衆国陸軍がM249 SAW(Squad Automatic Weapon、FN MINIMI軽機関銃)のみを使用しているのに対し、合衆国海兵隊はM249 SAWとともにM27 IAR(Infantry Automatic Rifle、H&K HK416カービン・ヘビーバレル)を併用するようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注1  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P89

 

注2  同上P27

 

第3節     合衆国海軍

 

 アメリカ合衆国海軍は、現役兵力約33万人で、艦艇は300隻近く有する世界最大の海軍である。そのうち、東アジアを責任地域とするアメリカ太平洋艦隊(ハワイ州パール・ハーバー-ヒッカム統合基地)は、東太平洋の第3艦隊(カリフォルニア州サン・ディエゴ基地)と西太平洋の第7艦隊(神奈川県横須賀基地)の2個艦隊が実戦配備、訓練、休養、整備、補修などローテーションを組みながら共通運用されている。太平洋艦隊の人員は現役兵力15万人で、艦艇は200隻近くが配備されている。

 

ニミッツ級原子力空母は、満載排水量91847トン、1番艦ニミッツ就役1975年、原子力蒸気タービン推進、収容機材は空母艦載機70機、ヘリコプター10機搭載である。兵装はMk29発射機2基(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル/RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。ニミッツ級原子力空母は太平洋艦隊に5隻配備されている。

 

空母キティ・ホークと空母コンステレーションは満載排水量83960トン、蒸気タービン推進で、空母艦載機70機/ヘリコプター10機搭載、兵装はMk29発射機2基(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル/RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。

 

タイコンデロガ級巡洋艦は、満載排水量9500トン、1番艦CG-47タイコンデロガ就役1983年、ガス・タービン推進、艦隊防空にイージス・システム搭載している。

 

 CG-47タイコンデロガの兵装は、Mk26連装発射機(RIM-67スタンダードER艦対空ミサイル88発)、Mk141発射機2基(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk45 127mm砲2門、Mk15ファランクス20mmバルカン機関砲近接防御システム2基である。搭載ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Bシー・ホーク哨戒ヘリコプター2機である。

 

CG-52バンカー・ヒルより、Mk26ミサイル連装発射機からMk41垂直発射システムに変更された。CG-52バンカー・ヒルはMk41垂直発射システム122セル(RIM-67スタンダードERミサイル艦対空ミサイル/RIM-156SM2艦対空ミサイル96発、RGM-109トマホークTLAM艦対地ミサイル26発)、ミサイル装填用クレーン6基、を装備した。その他の兵装はMk141発射機2基(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk45 127mm砲2門、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御システム2基、である。搭載ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Bシー・ホーク哨戒ヘリコプター2機である。

 

その後、Mk41垂直発射システムにRIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイルを搭載するようになった。

 

タイコンデロガ級巡洋艦は太平洋艦隊に13隻配備されている。(注6)

 

アーレイ・バーク級駆逐艦は、満載排水量8500トン、1番艦DDG-51アーレイ・バーク就役1988年、ガス・タービン推進、艦隊防空にイージス・システムを搭載している。兵装は、Mk41垂直発射システム96セル(RIM-66スタンダードMRミサイル艦対空ミサイル、RIM-156SM2艦対空ミサイル、RGM-109トマホーク艦対地ミサイル、RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル、RUM-139垂直発射対潜ロケット)、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk45 127mm単装砲1門、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。アーレイ・バーク級駆逐艦はステルス性を意識した船体である。太平洋艦隊には14隻配備され、現在も増備が続く。(注7)後期に建造され現在も建造が続くフライトⅡA型はヘリコプター格納庫を増備している。

 

スプルーアンス級駆逐艦は、満載排水量8040トン、1番艦DD-963スプルーアンス就役1975年、ガス・タービン推進、である。

 

スプルーアンス級駆逐艦の非改修型の兵装はMk112発射機1基(Mk46魚雷搭載対潜ロケット8発、予備弾8発)、Mk29発射機1基(RIM-7Mシー・スパロー短距離艦対空ミサイル8発)、Mk143発射機2基(RGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル8発)、Mk141発射機2基(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk45 127mm砲2門、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基である。

 

スプルーアンス級駆逐艦の改修型の兵装はMk41垂直発射システム64セル(RGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル48発、RUM-139垂直発射対潜ロケット16発)、Mk141発射機2基(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk45 127mm砲2門、Mk29発射機1基(RIM-7Mシー・スパロー短距離艦対空ミサイル8発)、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基である。

 

 

搭載ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Bシー・ホーク哨戒ヘリコプター2機である。(注8)

 

 

スプルーアンス級駆逐艦は太平洋艦隊に10隻配備されていた。 

 

 スプルーアンス級駆逐艦は2006年までに全艦退役した。

 

 

 

 

 次世代駆逐艦DD(X)ズムウォルト級駆逐艦は満載排水量14000トン級、建造費3000億円で、2009年に建造工事を開始した。

ズムウォルト級護衛艦は複合材も使用したステルス船型で、Mk57垂直発射システム80セル(RGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル、RGM-162 ESSM発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル)、などを装備する。

Mk57垂直発射システムには艦隊防空用のRIM-156 SM2艦対空ミサイル、対潜水艦用にRUM-139垂直発射対潜ロケットも装備する予定だったが中止された。

砲は、対地対艦に155mmAGS(先進砲システム、GPS誘導砲弾)、対空対艦にMk110 57mm砲(ボフォース SAK Mk3ステルス砲塔)が搭載される予定だった。

Mk110 57mm砲の搭載は中止され、対艦にMk46 30mm機関砲に変更された。   

変更が重なり計画は遅れ、1番艦DDG-1000ズムウォルトは2014年に竣工した。

 

オリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲートは、満載排水量4100トン、1番艦FFG-7オリヴァー・ハザード・ペリー1982年就役、ガス・タービン推進である。兵装はMk13単装ミサイル発射機1基(RIM-66スタンダードMRミサイル艦対空ミサイル、RGM-84ハープーン艦対艦ミサイルなど40発)、Mk32 324mm短魚雷発射管2基(Mk46魚雷6発)、Mk75 76mm単装砲1門(OTOメララ・コンパクト砲)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム1基である。搭載ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Bシー・ホーク哨戒ヘリコプター2機である。太平洋艦隊には15隻配備されていた。

 

近年は密輸取り締まり、対テロのためMk13ミサイル発射機に代えてMk38 25mm機関砲に装備を変更している艦も多い。しかし、就役から時間がたち、退役、予備艦隊移転、海外売却が進み、合衆国海軍に残るオリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲートも2014年会計年度いっぱいで全艦退役することになった。(注9)

 

 オリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲートの事実上の後継は、LCS(沿岸戦闘艦)である。

ロッキード・マーティン提案マリネット・マリーン造船所建造のフリーダム級LCS(1番艦LCS-1フリーダム)と、オースタルUSA提案ゼネラル・ダイナミクス・バス・アイアン・ワークス建造のインディペンデンス級LCS(1番艦LCS-2インディペンデンス)が採用されている。

 

フリーダム級沿岸戦闘艦は、満載排水量3354トン、1番艦LCS-1フリーダムは2008年就役、ガス・タービン/ディーゼル推進、兵装はMk110 57mm砲(ボフォース SAK Mk3ステルス砲塔)1基、Mk46 30mm機関砲2基、Mk31発射機1基(RIM-116C シーRAM回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル11発)で、搭載航空機はヘリコプター2機もしくはヘリコプター1機および無人航空機3機である。

 

インディペンデンス級沿岸戦闘艦は、満載排水量2841トン、1番艦LCS-2インディペンデンスは2010年就役、ガス・タービン/ディーゼル推進、兵装はMk110 57mm砲1基(ボフォース SAK Mk3ステルス砲塔)、Mk31発射機1基(RIM-116C シーRAM回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル11発)で、搭載航空機はヘリコプター1機またはヘリコプター2機および無人航空機3機、である。

 

潜水艦の主力はロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦である。

 

水中排水量6982トン、1番艦SSN-668ロサンゼルス就役1976年、原子力蒸気タービン推進、533mm魚雷発射管4門(Mk48魚雷、UGM-84ハープーン潜対艦ミサイル、UGM-109陸上攻撃ミサイル)を装備する。

後期建造型はMk45垂直発射システムを備え、UGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル12発を装備するようになった。

太平洋艦隊には25隻配備されていた。

静粛性に優れ、同時期の原子力潜水艦ではトップクラスの静粛性である。(注10)

 

 シー・ウルフ級攻撃型原子力潜水艦は水中排水量9100トン、1番艦SSN-21シー・ウルフ就役1996年、原子力蒸気タービン推進、660mm魚雷発射管8門(Mk48ADCAP魚雷、UGM-84ハープーン潜対艦ミサイル、UGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル)を装備する。

1隻4500億円と高価で配備は3隻に終わった。

静粛性、大深度航行、高速航行、戦闘システム、すべてにおいて優れたが、1隻4500億円と高価で配備が進まなかった。(注11)

 

 シー・ウルフ級攻撃型原子力潜水艦は、米ソ冷戦時代のソ連原子力潜水艦探知、追跡を主任務に建造された潜水艦だったため、大深度行動能力、高速航行、高い運動能力をもつ「世界最強」の潜水艦だったが、ロシア潜水艦勢力の弱体化、1隻4500億円という高価格だったため、3隻で建造が打ち切られた。

そしてシー・ウルフ級攻撃型原子力潜水艦3番艦SSN-23「ジミー・カーター」は大幅な設計変更がなされた。船体を30メートル延長、それにともなって水中排水量は12100トンとなった。船体大型化の原因は特殊部隊隊員収容設備を設置したことにある。

 

 シー・ウルフ級攻撃型原子力潜水艦に代わり建造されることとなった攻撃型原子力潜水艦は、大量配備が可能なように低価格に抑えるため民間技術を多用することになった。NAS計画、NSSN計画、センチュリオン級攻撃型原子力潜水艦計画と計画は紆余曲折した。

最終的には音響のステルス性に優れ、捜索索敵能力に重点が置かれ、総合的にはシー・ウルフ級攻撃型原子力潜水艦と同等の能力で、コスト・ダウンが図られたヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦が採用され、2004年に進水した。

しかし当初予定していた低価格・大量配備から、要求水準の多様化、高性能化によって大型化し、1隻3000億円という高価格になった。(注13)

 

 ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦は、1番艦SSN-774ヴァージニア就役2004年、水中排水量7800トン、533mm魚雷発射管4門(Mk48魚雷、UGM-84ハープーン潜対艦ミサイル)とMk45垂直発射システム(UGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル12発)を装備する。

 

18隻配備されているオハイオ級弾道ミサイル搭載戦略原子力潜水艦は水中排水量18750トン、1番艦SSBN-726オハイオ就役1981年、原子力蒸気タービン推進、533mm魚雷発射管にMk48魚雷を搭載する。前期型はUGM-96Aトライデント(C4)潜水艦発射弾道ミサイル24発搭載し、後期型はUGM-133AトライデントⅡ(D5)潜水艦発射弾道ミサイル24発搭載する。(注12)

 

オハイオ級弾道ミサイル搭載戦略原子力潜水艦の1番艦から4番艦までの4隻はSTART(戦略兵器削減条約)により、トライデントC4潜水艦発射弾道ミサイル24発の装備から、UGM-109トマホーク陸上攻撃ミサイル154発ほど搭載する巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)に改造された。

 

 

 アヴェンジャー級掃海艦は満載排水量1312トンで、太平洋艦隊に6隻配備されている。機雷掃海についてはLCS沿岸戦闘艦に機雷戦モジュールを搭載し、機雷掃海を行う予定である。

 

2000年代、太平洋艦隊の海軍航空機部隊の主力は、マクドネル・ダグラス F/A-18A/B/C/Dホーネット戦闘攻撃機(原型YF-17初飛行1974年、F/A-18A/B初飛行1978年、機体空虚重量10455kg、エンジン:ゼネラル・エ

レクトリックF404-GE-402、推力78,3kN×2)である。

 マクドネル・ダグラス F/A-18A/B/C/Dホーネット戦闘攻撃機は世界初のグラス・コックピット採用、世界2番目のフライ・バイ・ワイヤ採用で、軽戦闘機で空対空ミサイル8発搭載/セミ・アクティヴ・レーダー誘導空対空ミサイル運用可能、と画期的な戦闘機であった。

グラマン F-14Aトムキャット戦闘機(初飛行1970年、自重18191kg、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーTF30-P-412A、推力93kN×2)は(注18)2006年までに全機退役した。

グラマン F-14Aトムキャット戦闘機の事実上の代替としてボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機(初飛行1995年、自重14009kg、エンジン:ゼネラル・エレクトリックF414-GE-400、推力97,86kN×2)が配備されている(注19)。

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は対地・対艦攻撃能力が重視され、合衆国海軍の航空機搭載ミサイル、航空機搭載爆弾のすべてを搭載できる。   

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は、AIM-120C/D AMRAAM先進中距離空対空ミサイル(アクティヴ・レーダー誘導)、AIM-7Mスパロー空対空ミサイル(セミ・アクティヴ・レーダー誘導)、AIM―9Xサイドワインダー2000空対空ミサイル(赤外線画像誘導)、AIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイル(赤外線誘導)、AGM-84ハープーン空対艦ミサイル(アクティヴ・レーダー誘導)、AGM-84E SLAMスタンド・オフ陸上攻撃ミサイル(GPS誘導+赤外線画像誘導)、AGM-84H SLAM-ERスタンド・オフ陸上攻撃ミサイル・射程距離延伸型(GPS誘導+赤外線画像誘導)、AGM-65マーヴェリック空対地ミサイル(TV画像誘導/赤外線画像誘導)、AGM-114Mヘルファイア対戦車ミサイル爆風破砕型(レーザー誘導)、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、GBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m、)、GBU-39 250ポンドSDM小直径爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界5m、)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-28 バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(GPS誘導+INS誘導、滑空爆弾)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導+GPS誘導+INS誘導、対レーダー兵器)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS誘導+INS誘導+赤外線画像誘導)など海軍が使用するすべての航空機搭載兵器を搭載可能で、航続距離もマクドネル・ダグラス F/A-18A/B/C/Dホーネット戦闘機に比べ大幅に向上し、ディープ・ストライク能力を獲得するにいたった。

部分的にではあるがステルス性も考慮され、空中電子攻撃機能のあるAN/APG-79アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーを搭載し、空対空戦闘でもF-14Aトムャット戦闘機を大幅に上回る能力となった。

要撃専門で艦隊防空が任務であるグラマン F-14Aトムキャット戦闘機と比較して、ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は対地攻撃能力、空対空戦闘能力の両方がある。搭載スペースに限りがある空母でグラマン F-14Aトムキャット戦闘機、グラマン A-6イントルーダー攻撃機の両方を搭載していた時代と比べ、戦力が倍増となりボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は重宝されることになる。

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は2030年代に配備されるF/A-XXの登場まで海軍航空機部隊の主力となる。

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機は2014会計年度までに556機の配備が決まっていた。

 

マクドネル・ダグラス F/A-18A/B/C/Dホーネット戦闘攻撃機はステルス戦闘機のロッキード・マーティン F-35CライトニングⅡ戦闘機260機に代替される。

 

ボーイング F/A-18E/Fスーパー・ホーネット戦闘攻撃機をベースとしたボーイング EA-18グラウラー電子戦機は、ノースロップ・グラマン EA―6Bプラウラー電子戦機に代わり、電子戦の主力として海軍、海兵隊、空軍と統合運用される。搭載ジャマーはAN/ALQ-99であるが、将来的には開発中のNGJ(次世代型ジャマー)となる予定である。

ノースロップ・グラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機は、ステルス航空機発見に効果的といわれるUHF帯レーダーのAN/APY-9レーダーを搭載するノースロップ・グラマン E-2Dアドヴァンスド・ホーク・アイ早期警戒機に代替される。

ノースロップ・グラマン E-2Cホーク・アイ早期警戒機は空母1隻に4機搭載であったが、ノースロップ・グラマン E-2Dアドヴァンスド・ホーク・アイ早期警戒機は空母1隻に5機搭載され、艦隊の捜索警戒監視能力が強化される。

また、ノースロップ・グラマン E-2Dアドヴァンスド・ホーク・アイ早期警戒機はネットワーク戦NIFC-CA(海軍統合火力統制―対空)構想の一役を担い、艦隊防空の強化につながることが期待されている。

合衆国海軍の哨戒機であるロッキード・マーティン P-3Cオライオン哨戒機は、MMA(海洋多任務航空機)として開発されたボーイング P-8Aポセイドン哨戒機109機とノースロップ・グラマン MQ-4CトライトンBAMS(広域洋上監視)無人機66機に代替される。

 

 哨戒ヘリコプターはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Bシー・ホーク哨戒ヘリコプター、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー SH-60Fオーシャン・ホーク哨戒ヘリコプターから、対潜水艦戦、機雷処理・発見、小型戦闘艇への攻撃、小型民間船舶によるテロ対処など多任務に対応するよう最新のアヴィオニクス、センサーを搭載するユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー MH-60Sナイト・ホーク多任務ヘリコプターと、機雷処理や輸送を主任務とするユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー MH-60Rストライク・ホーク多任務ヘリコプターに代替される計画だった。

救難機にはティルト・ローター航空機であるベル/ボーイング HV-22オスプレイ垂直離着陸救難機が採用され、さらにベル/ボーイング V-22オスプレイ垂直離着陸機はノースロップ・グラマン C-2Aグレイハウンド空母・地上間航空輸送機の後継にも採用された。

 

 

 海軍の特殊部隊は、海軍特殊戦コマンドのもと、海軍特第1殊戦群、海軍第2特殊戦群、海軍第3特殊戦群、海軍第4特殊戦群、海軍特殊戦開発群DEVGRUがある。

カリフォルニア州の海軍第1特殊戦群に、SEAL TEAM1、SEAL TEAM3、SEAL TEAM5、SEAL TEAM7、NSWU1,NSWU3,特殊舟艇TEAM12、SEAL輸送TEAM1、ヴァージニア州の海軍第2特殊戦群にSEAL TEAM2、SEAL TEAM4、SEAL TEAM8、SEAL TEAM10、NSWU2、NSWU4、NSWU10、特殊舟艇TEAM20、特殊舟艇TEAM22、SEAL輸送TEAM2、がある。

特殊戦開発群DEVGRUは特殊戦に関する開発任務のほかに、対テロ戦、直接行動(暗殺)も担当する。

北朝鮮要人の暗殺(直接行動)、金正恩斬首作戦、北朝鮮の特殊部隊対処、北朝鮮のコマンド対処、主体思想派韓国人ゲリラ部隊対処、親北朝鮮派韓国人ゲリラ部隊対処、在日朝鮮人ゲリラ部隊対処、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊対処、親北朝鮮派日本人ゲリラ対処、北朝鮮のミサイル狩り、中国特殊部隊対処、台湾支援などインド太平洋での作戦任務は、SEAL TEAM1、SEAL TEAM5、海軍特殊戦開発群DEVGRUが

担当する。

 

1970年代に建造された原子力推進水上戦闘艦は2000年までに退役し、巡洋艦はタイコンデロガ級巡洋艦のみとなって高度な防空能力を維持している。

東アジア、西太平洋を担当する第7艦隊には1986年にタイコンデロガ級巡洋艦CG-52「バンカー・ヒル」、1987年にタイコンデロガ級巡洋艦CG-53「モービル・ベイ」が配備された。21世紀に入り、日本に配備されるタイコンデロガ級巡洋艦は後期建造型で防空能力の向上したタイコンデロガ級巡洋艦CG-62「チャンセラーズヴィル」、タイコンデロガ級巡洋艦CG-63「カウペンス」に配備艦が変更され、戦力、を向上させている。

 

また、退役したスプルーアンス級駆逐艦の代替として、タイコンデロガ級巡洋艦の初期建造型であるタイコンデロガ級巡洋艦CG-49「ヴィンセンズ」が配備され戦力を向上させた。

その後、タイコンデロガ級巡洋艦CG-49「ヴィンセンズ」は初期建造型の特徴であるMk26発射機装備のため、RGM-109トマホーク巡航ミサイルが運用できず、さらにミサイル複数同時発射が不可能であることから早期に退役し、Mk41垂直発射システム装備のタイコンデロガ級巡洋艦CG-54「アーティンタム」、タイコンデロガ級巡洋艦CG-67「シャイロー」が配備されることになった。

 

 またアーレイ・バーク級駆逐艦は、本格的ステルス船体を取り入れ、イージス・システムも能力向上型にされたものであるが、第7艦隊にはアーレイ・バーク級駆逐艦4番艦DDG-54「カーティス・ウィルバー」から配備が始まった。

 

 一方で潜水艦は、グアム島のアプラ港を母港とするロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦SSN-705「シティ・オブ・コーパス・クリスティ」のみが東アジア配備であったが、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦SSN-711「サン・フランシスコ」、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦SSN-713「ヒューストン」が増備され能力が増強された。また攻撃型原子力潜水艦による常時パトロールが実施され、頻繁に横須賀基地、佐世保基地に寄港している。2007年にはロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦SSN-711「サン・フランシスコ」に代わりロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦SSN-715「バッファロー」が加わった。

 

 横須賀基地を母港とする第7艦隊には、核アレルギーの強い日本を考慮して、通常推進型の空母が配備され続けてきた。また歴代、空母CV-41「ミッドウェイ」、空母CV-62「インディペンデンス」、空母CV-63「キティ・ホーク」と最古参の空母が配備され続けてきたが、メンテナンス、改修工事は充実しており、能力は高く保たれてきた。

空母CV-63「キティ・ホーク」以降は空母CV-64「コンステレーション」しか通常推進空母は建造されていないため、横須賀基地配備の空母の動向が注目されていたが、結局原子力推進の空母CVN-73「ジョージ・ワシントン」が配備されることとなった。

 

 

 

合衆国海兵隊の輸送に、ワスプ級強襲揚陸艦、タラワ級強襲揚陸艦、ホイットビー・アイランド級ドック型揚陸艦、オースティン級ドック型揚陸艦、サン・アントニオ級ドック型揚陸艦がある。

ワスプ級強襲揚陸艦は満載排水量40532トン、1番艦LHD-1ワスプ就役1989年、蒸気タービン推進である。兵装はMk29発射機2基(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル/RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル艦対空ミサイル)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基である。搭載航空機は垂直離着陸航空機10機、ヘリコプター30機、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC3隻、収容揚陸部隊隊員は1870人である。太平洋艦隊には3隻配備されている。(注14)

タラワ級強襲揚陸艦は1番艦LHA-1タラワ1976年就役で、満載排水量はワスプ級強襲揚陸艦とほぼ同じである。兵装は、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基である。搭載航空機は垂直離着陸航空機10機、ヘリコプター30機、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC1隻、収容揚陸部隊隊員はワスプ級強襲揚陸艦とほぼ同じである。タラワ級強襲揚陸艦は太平洋艦隊に3隻配備されていた。(注14)

タラワ級強襲揚陸艦は2007年にLHA-1「タラワ」がワスプ級強襲揚陸艦8番艦LHD-8「マキン・アイランド」に代替し、タラワ級強襲揚陸艦2番艦LHA-2「サイパン」は、2012年に「LHA(R)」(Rはリプレイスメント)アメリカ級強襲揚陸艦に代替された。アメリカ級強襲揚陸艦の1番艦、2番艦は航空機運用重視でLCAC、LCUを運用するためのウェル・デッキがなかったが、不評のため3番艦から復活することになった。(注15)

ホイットビー・アイランド級ドッグ型揚陸艦は、満載排水量15726トン、1番艦LSD-41ホイットビー・アイランド就役1986年、ディーゼル推進、兵装はMk49射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システム2基で、搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC4隻、収容揚陸部隊隊員は500人である。ホイットビー・アイランド級ドック型揚陸艦は太平洋艦隊に6隻配備されている。

オースティン級ドッグ型輸送揚陸艦は満載排水量16500トン、1番艦LPD-4オースティン就役1965年、兵装はMk15ファランクス20mmバルカン機関砲近接防御武器システム2基、搭載航空機はヘリコプター6機、収容揚陸部隊隊員は840人である。オースティン級ドッグ型輸送揚陸艦は太平洋艦隊に6隻配備されていた。(注16)

 オースティン級ドック型輸送揚陸艦に代わり配備されたのは、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦である。サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦は満載排水量25300トン、ディーゼル推進である。兵装はMk41垂直発射システム(16セルにRIM-162発展型シー・スパロー個艦防空短距離艦対空ミサイル64発、後日装備予定)、Mk49発射機2基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル42発)、Mk46 30mm機関砲2基、である。搭載航空機はMV-22ティルト・ローター航空機1機、ヘリコプター1機である。搭載艦艇はエアー・クッション揚陸艇LCAC2隻、収容車両は水陸両用装甲車14両など、収容揚陸部隊隊員は720人である。(注17)

 

 

 

 

 

 

第4節     合衆国空軍

 

 合衆国空軍は2000年代、「グローバル・パワー、グローバル・リーチ」をスローガンに、装備の数、質ともに世界最高水準の空軍である。

 合衆国空軍の爆撃航空団は、戦略爆撃だけでなく戦術爆撃もおこなうようになった。1992年に戦略航空軍団(SAC)と戦術航空軍団(TAC)が廃止され、航空戦闘軍団(ACC)に統合されてから、それは進んだ。

レーダーで捉えることは非常に困難であるステルス爆撃機ノースロップ・グラマンB-2Aスピリット爆撃機を20機(総生産機数21機、1機墜落)保有している。

AGM-86空中発射巡航ミサイル、ステルス性の高いAGM-129先進巡航ミサイルの運用が可能なロックウェル・インターナショナルB-1Bランサー爆撃機を100機生産、66機保有している。

ロックウェル・インターナショナルB-1Bランサー爆撃機は機内にGBU-31 500ポンドJDAM(統合直接攻撃爆弾、GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、、超音速飛行が可能で、若干のステルス性がある。

500ポンドJDAM(統合直接攻撃爆弾、GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、AGM-86空中発射巡航ミサイル、Mk82爆弾、核爆弾を搭載するボーイングB-52H爆撃機を58機保有する。

 戦略核運用を担当するのは新たに創設されたグローバル・ストライク軍団(全地球攻撃軍団)である。杜撰な核管理が原因で戦略核運用は航空戦闘軍団からグローバル・ストライク軍団に移された。

 

 制空戦闘機には20世紀最強の戦闘機であるマクドネル・ダグラスF-15A/B/C/Dイーグル戦闘機(初飛行1972年、自重12973kg、総重量20244kg、最大重量30845kg、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-100、推力105,7kN×2)を894機生産している(合衆国空軍/空軍州兵向け総生産機894機、1989年調達終了)。

マクドネル・ダグラス F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機は1974年の実戦配備から数々の紛争に投入されてきたが、敵に撃墜されたことはない。E-3セントリー空中警戒管制システム機の支援を受け行動する。

マクドネル・ダグラス F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機は徐々に退役、または空軍州兵、空軍予備軍団など二線級部隊に移籍している。

マクドネル・ダグラス F-15C/Dイーグル戦闘機の177機はレーダーをAN/APG-63レーダーからアクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーのAN/APG-63(V)3レーダーに換装し、AIM-120C/D空対空ミサイル、AIM-9X空対空ミサイルを運用可能にした「ゴールデン・イーグル」として合衆国空軍の一線級部隊に2020年代まで現役に残り、F-22Aラプター戦闘機とともに制空任務に就く予定である。

マクドネル・ダグラス F-15C/Dイーグル戦闘機は空対空任務の場合、AIM-120C/D先進中距離空対空ミサイルを4発、AIM―9Xサイドワインダー2000短距離空対空ミサイルを4発、M61A1バルカン20mm機関砲1基装備する。

 

 マクドネル・ダグラス F-15イーグルA/B/C/Dイーグル戦闘機の後継の制空戦闘機として開発されたのがロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機である。

世界初の本格的ステルス制空戦闘機ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機(原型YF-22初飛行1990年、F-22A初飛行1997年、空虚重量19700kg、レーダー断面積:0,0001平方メートル、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF119-PW-100、推力156kN×2)は187機が生産された。

ロッキード・マーティンF-22ラプター戦闘機は、レーダー断面積0,0001平方メートル(ロッキード・マーティン F-117ナイトホーク戦闘爆撃機のレーダー断面積は0,025平方メートル、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダー断面積は0,001平方メートル)という高度なステルス性能がありレーダーによる捜索は非常に困難である。また秘匿性を重視した通信データリンク・システムを採用しているため電子戦支援ES/ESMによる発見も困難である。

F-22Aラプター戦闘機はステルス技術以外にも新技術がある。

高推力エンジンのユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF119-PW-100ターボ・ファン・エンジンによりアフター・バーナーを使用せずにマッハ1,58という超音速巡航が可能となった。

アフター・バーナーを使用すると最高速度マッハ2,4である。

さらにF-22Aラプター戦闘機は推力偏向制御(TVC)装置による画期的な機動が実現できることになった。

ロッキード・マーティン F-22A戦闘機の電子装備は、長距離捜索・多目標同時処理が可能なAN/APG-77アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダー、統合電子戦システムを導入し、戦術能力が強化されている。

 

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機は空対空任務の場合、AIM-120C/D先進中距離空対空ミサイルを6発、AIM―9Mサイドワインダー短距離空対空ミサイルを2発、M61A2バルカン20mm機関砲1基、装備する。

空対地任務の場合はGBU-32 1000ポンドJDAM(統合直接攻撃爆弾、GPS+INS誘導、半数必中界13m)2発とAIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル2発、AIM―9Mサイドワインダー短距離空対空ミサイル2発とM61A2バルカン20mm機関砲1基、またはGBU-39 250ポンドSDB(小直径爆弾、GPS+INS誘導、半数必中界5m)8発とAIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル2発、AIM―9Mサイドワインダー短距離空対空ミサイル2発とM61A2バルカン20mm機関砲1基、の装備となる。

 

ATF(戦術先進戦闘機)トライアルではロッキードYF-22戦闘機(原型)とノースロップYF-23(原型)の選考となった。ロッキードYF-22戦闘機(原型)のサポート企業はボーイング、ゼネラル・ダイナミクス、ノースロップYF-23戦闘機(原型)のサポート企業はマクドネル・ダグラス、となった。

ロッキードYF-22戦闘機(原型)は巡航速度、機動を重視し、ノースロップYF-23戦闘機(原型)は最高速度、ステルス性を重視した。

ロッキードYF-22戦闘機(原型)の保守的な設計、完成度の高さが開発費、機体価格、維持費を抑えられると評価されロッキードYF-22戦闘機(原型)がATFに選定された。

 

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機は一時期、調達数を増やすため、

マルチ・ロール性を強調したロッキード・マーティン F/A-22Aラプター戦闘攻撃機という名称に変更された。

しかし合衆国空軍において戦闘航空機は戦闘機と爆撃機だけであるべき、攻撃機は中途半端な存在で海軍のもの、という主張が多く、空軍参謀総長も戦闘攻撃機という名称は空軍にふさわしくないと発言し、すぐにロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機へ戻った。

 

マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機は「航空優勢戦闘機」であったが、ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機は「航空支配戦闘機」となった。(注22)

マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機894機の後継としてロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機は750機生産の予定であった。

しかし、米ソ冷戦終了、イラク戦争の戦費高騰、イラクやアフガニスタンで役に立たないという近視眼的な発想、のため187機の生産に減らされた。

 

ロッキード・マーティン F-117Aナイトホーク戦闘爆撃機は、世界初の本格的ステルス航空機である。原型ハヴ・ブルー初飛行1977年、F-117A初飛行1981年、空虚重量13380kg、エンジン:ゼネラル・エレクトリックF404-GE-F1D2、推力48,0kNで、59機が生産された。レーダー断面積は0,025平方メートルで、レーダーで捉えることは非常に困難である。

1988年に公表されたが、空軍警備部隊の厳重な警備、監視のもとでの公表で、ステルス性能が判明しないよう厳重に管理された。

ロッキード・マーティン F-117Aナイトホーク戦闘爆撃機は第49戦闘航空団(ニュー・メキシコ州ホロマン空軍基地)に配備されていたが2008年に全機退役し、ネバダ州トノパ試験レンジで保管されることになった。しかし2008年以降もロッキード・マーティン F-117Aナイトホーク戦闘爆撃機の飛行が確認されている。

1989年のパナマ侵攻を初陣にアメリカの係わる戦闘においてなくてはならない存在となったロッキード・マーティン F-117Aナイトホーク戦闘爆撃機から導入されたステルス技術は、ロシア、ヨーロッパ、日本より大幅に先を行くものとなった

 

 

 制空任務、戦術爆撃任務をこなすデュアル・ロール・戦闘機として開発されたマクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機(初飛行1986年、実戦配備1988年、自重14379kg、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-229、推力129kN×2)。

マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15C/Dイーグル戦闘機は制空戦闘機のため爆撃任務は1000ポンド爆弾の搭載のみであるが、マクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機はGBU-28バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾を搭載できるように機体フレームが大幅に強化され、精密爆撃を可能とする合成開口レーダー機能のあるAN/APG-70レーダーを装備するなど電子装備も大きく変更された。

マクドネル・ダグラス F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機とマクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機の外観はほぼ同じであるが、中身はかなり違うものとなっている。

 合衆国空軍はマクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機を221機保有している。(注20)

マクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機は、マクドネル・ダグラスを買収したボーイングが近代化改修することとなった。

レーダーをAN/APG-70レーダーからアクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーで空対空戦闘が大幅に強化され、さらに対地モードも強化されるAN/APG-82(V)1レーダーに換装される。

電子戦装置はTEWS(戦術電子戦システム)からEPAWSS(イーグル・パッシヴ・アクティヴ・警戒生存性システム)に換装される。

セントラル・コンピューター、ミッション・コンピューターも換装される。

マクドネル・ダグラス F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機はGBU-28バンカー・バスター5000ポンド貫徹型爆弾以外に、GBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)、GBU-39 250ポンドSDB小直径爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界5m)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(GPS誘導+INS誘導、滑空爆弾)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導+GPS誘導+INS誘導、対レーダー・ミサイル)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS誘導+INS誘導+赤外線画像誘導)など、多彩な対地爆撃能力を誇る。

 

デュアル・ロール戦闘機にロッキード・マーティン F-16A/B/C/Dブロック1/5/10/15/30/32/40/42/50/52ファイティング・ファルコン戦闘機がある。

 

ロッキード・マーティン F-16A/B/C/Dブロック1/5/10/15/30/32/40/42/50/52ファイティング・ファルコン戦闘機(原型YF-16初飛行1974年、F-16A初飛行1976年、F-16A空虚重量7387kg、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-220、推力105kN×1、レーダー:AN/APG-66レーダー)は合衆国空軍、州兵空軍向けに2231機製造され、2005年に調達終了した。

 

2000年代、アメリカ本土防空を担う州兵空軍はマクドネル・ダグラス F-15A/Bイーグル戦闘機とともにロッキード・マーティン F-16A/Bブロック15ADF防空戦闘機ファイティング・ファルコン戦闘機を配備している。

 

2000年代、合衆国空軍はロッキード・マーティン F-16C/Dブロック40/42ファイティング・ファルコン戦闘機とロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52ファイティング・ファルコン戦闘機が配備の中心となった。

 

ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック40/42ファイティング・ファルコン戦闘機は空虚自重8627kg、エンジンはF-16C/Dブロック40がゼネラル・エレクトリックF110-GE-100(推力129N×1)、F-16C/Dブロック42がユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-229(推力129kN×1)、レーダーはAN/APG-68レーダーである。

 

ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機は空虚重量8573kg、エンジンはF-16C/Dブロック50がゼネラル・エレクトリックF110-GE-129(推力129kN×1)、F-16C/Dブロック52がユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-229(推力129kN×1)、レーダーはAN/APG-68(V)5レーダーである。

 

ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック40/42ファイティング・ファルコン戦闘機は夜間爆撃任務、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52ファイティング・ファルコン戦闘機は敵防空制圧任務(SEAD、敵レーダー、敵通信設備、敵地対空ミサイルの制圧)である。

 

ロッキード・マーティン F-16A/B/C/Dブロック1/5/10/15/25/30/32/40/42/50/52ファイティング・ファルコン戦闘機はコスト抑制と小型な機体ゆえに、当初はレーダー非搭載の昼間限定戦闘機として安価・大量配備を目指して開発されたが、小型でそれなりの性能のAN/APG-66レーダーの装備によって全天候型戦闘機となり、また機体の持つ潜在的能力が開花し制空、領域防空、本土防空、戦術爆撃、敵防空制圧など何でもこなす主力戦闘機として活躍することとなった。(注21)

ロッキード・マーティン F-16A/Bファイティング・ファルコン戦闘機は空対空任務の場合、AIM-9Mサイドワインダー短距離空対空ミサイル6発とM61A1バルカン20mm機関砲1基の装備だったが、F-16C/Dブロック25ファイティング・ファルコン戦闘機からAIM-7スパロー中距離空対空ミサイル2発とAIM-9Mサイドワインダー短距離空対空ミサイル4発とM61A1バルカン20mm機関砲1基の装備となった。ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52ファイティング・ファルコン戦闘機はAIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル4発とAIM-9Xサイドワインダー2000短距離空対空ミサイル2発とM61A1バルカン20mm機関砲1基の装備となっている。

2000年代も輸出向けに、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52ファイティング・ファルコン戦闘機、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52アドヴァンスド戦闘機の生産ラインが残されている。(注21)

 

マクドネル・ダグラス F-15A/B/C/Dイーグル戦闘機の後継は、ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機となったが、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック40/42ファイティング・ファルコン戦闘機、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50/52ファイティング・ファルコン戦闘機の後継はロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機となった。

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はX-35初飛行2000年、F-35A初飛行2006年、自重13300kg、エンジンはユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF135-PW-100ターボ・ファン・エンジンで、推力は173kN×1である。

 

ロッキード・マーティン F-35ライトニングⅡ戦闘機は開発が遅れ2005年初飛行予定が2006年12月の初飛行となった。F-35Aライトニング戦闘機は初期作戦能力の獲得がかなり遅くなると考えられた。

ロッキード・マーティン F-22ラプターA戦闘機が最高速度マッハ2,4、アフター・バーナーを使わずにマッハ1,58で超音速巡行できるスーパー・クルーズ能力、推力偏向制御システムによる画期的な機動が可能であるのに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は最高速度マッハ1,6、スーパー・クルーズ能力は無い、推力偏向制御システムは無い。

 

第5世代戦闘機とは、ステルス、画期的な機動が可能となる推力偏向制御、アフター・バーナーを使用せずに超音速巡行が可能なスーパー・クルーズ能力、を備えることとロッキード・マーティンは発表していた。

ロッキード・マーティンF-35ライトニングⅡ戦闘機もロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機と同様に第5世代戦闘機として画期的な機動が可能となる推力偏向制御機能、アフター・バーナーを使用せずに超音速巡行が可能なスーパー・クルーズ能力が付与される計画と発表されていたがコストの問題などで推力偏向制御機能、スーパー・クルーズ能力は付与されず、第5世代戦闘機から推力偏向制御機能、スーパー・クルーズ能力は取り下げられた。

 

ステルス性は、ロッキード・マーティン F-22ラプターA戦闘機のレーダー断面積は0,0001平方メートルに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダー断面積は0,001平方メートルで、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡのステルス性はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機より劣る。

 

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機のレーダーAN/APG-81アクティヴ電子スキャンド・アレイ・レーダーは、ロッキード・マーティン F-22ラプター戦闘機のAN/APG-77レーダーを簡易化させたもので半導体素子の数は大幅に減らされている。

 

一方、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機にはロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機にはないAN/AAQ-40電子光学ターゲティング・システム、AN/AAQ-37電子光学配給開口システムがある。

AN/AAQ-40電子光学ターゲティング・システムのIRST赤外線サーチ・アンド・ターゲット機能によりレーダーを使わず赤外線での捜索が可能となり被発見性が低下、安全性が向上し、AN/AAQ-40電子光学ターゲティング・システムのレーザー・ターゲティング機能によりレーザー誘導爆弾の運用が可能になっている。

AN/AAQ-37電子光学配給開口システムから得た光学画像、赤外線画像はJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムのヘルメット・バイザー部に表示され、常時360度監視可能となり状況認識、安全性が向上している。

 

ロッキード・マーティンF-22Aラプター戦闘機のコックピットはファンクションスイッチ(ボタン)式グラス・コックピットとヘッド・アップ・ディスプレイであるが、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は液晶タッチ・パネル大型2面ディスプレイ・コックピットとJHMCS統合ヘルメット・キューイング・システムとになり、状況認識、操作性が向上している。

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はヘッド・アップ・ディスプレイを廃止しヘルメット・マウンテッド・ディスプレイであるJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムの採用により状況認識、操作性を向上させ、液晶タッチ・パネル大型2面ディスプレイ・コックピットも状況認識、操作性向上となっている。

 

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は当初、ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機と同じくチタニウム合金を多用することで軽量化を目指していたが、価格を抑えるためチタニウム合金よりアルミニウム合金の多用に変更され重量が増加した。一方でロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は大型油圧アクチュエーターの無いパワー・バイ・ワイヤの採用で軽量化している。

 

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機は空対空任務の場合AIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル6発、AIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイル2発、M61A2バルカン20mm機関砲であるのに対し、ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機の対空装備はAIM-120C/D先進中距離空対空ミサイル4発、GAU-22/Aイコライザー25mm機関砲、となる。

GAU-22/Aイコライザー25mm機関砲は対空より対地を念頭に開発されているため対空任務ではロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は不利になると考えられた。

しかしロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はJHMCS統合ヘルメット装着キューイング・システムの採用によって将来的にはAIM-9Xサイドワインダー2000空対空ミサイルの効果的な運用が可能になった。JHMCS統合装着キューイング・システムとAIM-9Xサイドワインダー2000空対空ミサイルの採用は、短距離、近距離での空対空戦闘で有利になると考えられた。

ロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機の対地攻撃能力はGBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界13m)2発、M61A2バルカン20mm機関砲またはGBU-39 250ポンドSDB小直径爆弾(GPS誘導+INS誘導、半数必中界5m)8発とM61A2バルカン20mm機関砲の搭載に限られる。

ロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機はGBU-32 1000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導)、GBU-39 250ポンドSDB小直径爆弾(GPS誘導+INS誘導)だけではなく、GBU-31 2000ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導)、GBU-38 500ポンドJDAM統合直接攻撃爆弾(GPS誘導+INS誘導)、GBU-54 500ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-55 1000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-56 2000ポンドLJDAMレーザー統合直接攻撃爆弾(レーザー誘導+GPS誘導+INS誘導)、GBU-12 500ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-10 1000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、GBU-16 2000ポンドPAVEWAY誘導爆弾(レーザー誘導)、AGM-154 JSOW統合スタンド・オフ兵器(滑空兵器、GPS誘導)、AGM-88C/D HARM高速対電波源ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導、対レーダー兵器)、AGM-88E AARGM先進対電波源誘導ミサイル(パッシヴ・レーダー誘導+GPS誘導+INS誘導、対レーダー兵器)、AGM-158 JASSM統合空対地スタンド・オフ・ミサイル(GPS誘導+赤外線画像誘導)など多様な対地攻撃兵器の使用が可能で、JSM統合打撃ミサイルによる対艦攻撃も可能となり、マルチ・ロールを念頭に置くとF-35AライトニングⅡ戦闘機は有効である。

 

ハイ・ロー・ミックス構想(のちにフォース・ミックス構想に言い換えられる)では、ハイ-高価格・高性能のマクドネル・ダグラス F-15Cイーグル戦闘機の後継機となるハイ-高価格・高性能はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機である。

ロー-大量配備のため低価格それなりの性能にあたるロッキード・マーティン F-16ファイティング・ファルコン戦闘機の後継となるロー・大量配備のため低価格それなりの性能の戦闘機はロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機である。

ロー・大量配備のための低価格・それなりの性能な戦闘機がロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機は1機155億円のロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機より大幅に安くなる計画である。

 

一方で、対テロ戦争、イラク戦争の影響でロッキード・マーティン F-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機を配備する航空団が、対戦車攻撃、対車両攻撃、対人攻撃と能力の限られる小型で非ステルスのゼネラル・アトミックス MQ-1プレデター無人多任務(軽攻撃・偵察)機、ゼネラル・アトミックス MQ-9リーパー無人多任務(軽攻撃・偵察)機、の配備に機種転換され、東アジアの正規戦に不安を残す結果となっている。

 

 航空機動軍団(AMC)には、ペイロード108トンを誇る大型輸送機ロッキード・マーティン C-5Bギャラクシー輸送機とロッキード・マーティン C-5Bギャラクシー輸送機の改良型ロッキード・マーティン C-5Mスーパー・ギャラクシー輸送機が120機生産された。ロッキード・マーティン C-5Bギャラクシー輸送機はロッキード・マーティン C-5Mスーパー・ギャラクシー輸送機に改修される。

C-130輸送機と同程度の短距離離着陸(900m)で戦略輸送、戦術輸送の両方もこなし、ペイロード78トンと戦車も輸送可能なボーイング C-17Aグローブ・マスターⅢ輸送機を212機生産している。

ペイロード18トンの戦術輸送機ロッキード・マーティン C-130E/Hハーキュリーズ輸送機とロッキード・マーティン C-130Jスーパー・ハーキュリーズを約600機保有する。

 

空中給油機は、ボーイング717/ボーイング367-80をベースとしたボーイングKC-135R/Tストラトタンカー空中給油機を414機(減少中、1956年生産開始、総生産機数730機)、ボーイング KC-135ストラトタンカー空中給油機の2倍の給油能力を持つダグラスDC-10をベースにしたマクドネル・ダグラス KC-10エクステンダー空中給油機を59機保有している。

しかし、これら空中給油機は老朽化のためボーイング767旅客機をベースにしたボーイング KC-46Aペガサス空中給油機が代替導入される。

そのほかロッキード・マーティン HC-130J空中給油機、ロッキード・マーティン HC-130N空中給油機、ロッキード・マーティン HC-130P空中給油機がある。

 

航空戦闘作戦支援任務には、超広域の捜索・監視を担当するボーイング E-3セントリーAWACS空中警戒管制システム機が32機、核戦争・超大国間の大規模戦争時に大統領が搭乗し国家運営と戦争指揮を執るボーイング E-4B国家空中作戦センター機が4機、合成開口レーダーにより地上の車両を捜索・監視するボーイング E-8A/C J-STARS統合捜索目標攻撃レーダー・システム機が18機、各種アンテナで情報収集するボーイング RC-135リベット・ジョイント情報収集機が22機、などが担当する。

 

 攻撃機にはフェアチャイルド A-10CサンダーボルトⅡ攻撃機、ロッキード・マーティン AC-130Hガンシップ攻撃機、ロッキード・マーティン AC-130Uガンシップ攻撃機、特殊作戦機にはロッキード・マーティン E/MC-130E特殊作戦・電子戦機、ロッキード・マーティン MC-130H特殊作戦機、ロッキード・マーティン MC-130P特殊作戦機、ロッキード・マーティン MC-130W特殊作戦機がある。

 

 救難ヘリコプターにはユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー HH-60Gペイヴ・ホーク救難ヘリコプター99機が充てられていたが、今後はユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー HH-60Wジョリー・グリーン救難ヘリコプターに代替されていく。

 

合衆国空軍太平洋空軍は東西には東太平洋から西太平洋、インド洋、そして南北には北極から南極まで担当する。太平洋空軍(司令部・ヒッカム空軍基地、現パール・ハーバー-ヒッカム統合基地)には、戦闘航空団、混成航空団、輸送航空団で構成される第5空軍(東京都横田基地)、2個戦闘航空団がある第7空軍(韓国・烏山基地)、1個戦闘航空団と1個混成航空団で構成される第11空軍(アラスカ州エルメンドルフ空軍基地)、ボーイングB-52ストラトフォートレス爆撃機が配備され、1989年まで戦略航空軍団の基地として重責を担い、現在もその流れをくみ合衆国国家の前進基地として機能する第13空軍(グアム島アンダーセン空軍基地)があった。

 第5空軍の主力は沖縄県嘉手納基地の第18航空団で、マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15C/Dイーグル戦闘機を主力装備とし、制空戦闘を重視している。第44戦闘飛行隊、第67戦闘飛行隊にマクドネル・ダグラス/ボーイング F-15C/Dイーグル戦闘機が配備され、支援戦力として第961空中指揮管制飛行隊のボーイング E-3セントリー空中警戒管制システム機、第909空中給油飛行隊のボーイング KC-135ストラトタンカー空中給油機、ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー HH-60Gペイヴ・ホーク救難ヘリコプターを装備し、マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15C/Dイーグル戦闘機を補佐する。

第35戦闘航空団は第13戦闘飛行隊、第14戦闘飛行隊から成り、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機を装備する。第35戦闘航空団のロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機には、敵防空制圧(SEAD、敵レーダー、敵通信設備、敵地対空ミサイルの制圧)任務が課せられており、有事の際はF-15C戦闘機護衛のもと、先んじて敵防空網制圧・破壊に投じられる。第374輸送航空団は横田基地にロッキード・マーティン C-130H輸送機を配備していた。

 第7空軍は韓国防衛が主任務であり、仮想敵は北朝鮮である。

ロッキード・マーティンF-16C/Dブロック40ファイティング・ファルコン戦闘機を装備する第8戦闘航空団(韓国・群山基地)は対地、対空の両方の戦闘に対応する。   

第51戦闘航空団(韓国・烏山基地)は、ロッキード・マーティン F-16C/Dブロック40ファイティング・ファルコン戦闘機が主装備である。また対地攻撃、特に近接航空支援能力を重視した設計のフェアチャイルド A-10A/OA-10AサンダーボルトⅡ攻撃機も装備し、押し寄せる北朝鮮地上兵力の機械化部隊、機甲部隊への攻撃、親北朝鮮派の韓国人ゲリラ部隊殲滅、主体思想派韓国人ゲリラ部隊殲滅(近接航空支援)が主要な任務であった。

第5空軍が日本を基盤とし、広く西太平洋、インド洋をカバーするのに対し、第7空軍は北朝鮮爆撃、北朝鮮地上部隊攻撃、親北朝鮮派の韓国人ゲリラ部隊殲滅、主体思想派韓国人ゲリラ部隊殲滅に特化している。

 第11空軍第3航空団(アラスカ州エルメンドルフ空軍基地)はロッキード・マーティン F-22Aラプター戦闘機、ボーイング(旧マクドネル・ダグラス)F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機、マクドネル・ダグラス/ボーイング F-15C/Dイーグル戦闘機、ボーイング E-3セントリー空中警戒管制システム機、ロッキード・マーティン C-130Hハーキュリーズ輸送機を装備する大規模航空団で、有事の際は各地に展開する。

第11空軍第354戦闘航空団(アラスカ州アイルソン空軍基地)はロッキード・マーティン F-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機とフェアチャイルド OA-10CサンダーボルトⅡ攻撃機を装備する対地攻撃任務を主任務とする部隊で、アラスカ州に配備されている空中給油機とともに、各地に展開することが可能である。

 第13空軍は隷下に部隊をもっていない。第13空軍のグアム島アンダーセン空軍基地にはノースロップ・グラマン B-2スピリット爆撃機が展開し、東アジアの危機に対応していた。第13空軍は2012年に解隊される。

 

 

 

 

注1  防衛庁『平成15年版防衛白書』

注2  同上

注3  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P89

注4  同上P27

注5  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注6  同上

注7  同上

注8  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注9,10,11,12  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

            『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注13『JANE‘S FIGHTING SHIPS』10-11

注14,15,16 『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注17 『JANE‘S FIGHTING SHIPS』10-11

注18 エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P71

注19  同上P90

注20  同上P87

注21  同上P75

注22 ロッキード・マーティン・ホームページ

注23  防衛庁『平成15年版防衛白書』P319,320

     防衛庁『平成26年度版防衛白書』資料1

 

 

 

 

 

第2章 東アジア各国の戦力 北朝鮮  2000年代 

 

 

北朝鮮は弾道ミサイル開発と核開発に力を入れている。

北朝鮮は1980年代半ばまでに、ソ連の開発したスカッド弾道ミサイルを改良したスカッドBミサイル、スカッドCミサイルを配備、韓国と日本の本州西部、九州北部の脅威となってきた。

1992年には射程距離1300kmのノドン1号の開発に成功し、1993年には日本海・能登半島沖にノドン1号の試射をおこない成功、日本に対する脅威は非常に強まった。

ノドン1号はすでに200基は配備されている模様である。

さらに1998年には日本国土を超えるかたちでテポドンを試射した。テポドン2、ムスダンなどより射程の長い弾道ミサイルも開発中である。

発射プラットフォームは移動式で発見は困難である。

北朝鮮は早い時期から化学兵器、生物兵器を保有していた。

1994年の国際原子力機関(IAEA)による北朝鮮国内の原子力施設への特別査察を拒否、妨害し、核兵器開発への疑念は深まった。

ジミー・カーター元大統領の訪朝と、ビル・クリントン大統領の米朝合意によって北朝鮮は石油供与と軽水炉型原子力発電供与と引き換えに黒鉛減速炉型原子力発電所の廃止を受け入れた。

北朝鮮は本来、核開発を中断すべきであったが、ジミー・カーター元大統領とビル・クリントン大統領の北朝鮮への甘い態度は、北朝鮮の核開発継続を許し、北朝鮮は黒鉛減速炉の燃料棒からプルトニウムを抽出し、核爆弾の製造をおこなった。

 

また、化学兵器、生物兵器の配備にも力がそそがれ、すでに保有、配備したものと考えられている。

 

北朝鮮の総兵力は110万人、そのうち陸軍が100万人、27個師団である。

主な装備は旧ソ連の戦車がベースの「暴風号」戦車、「天馬号」戦車、旧ソ連のT-62戦車、T-54/55戦車が3500両、歩兵戦闘車4000両、自走砲4500門、野砲7000門、多連装ロケット発射システム2400両、重迫撃砲9000門で、機甲化、機械化、防弾化、自動車化はある程度進んでいるとみられる。北朝鮮・朝鮮人民軍の陸軍は非武装地帯DMZ周辺に全戦力の70%以上を配置する。

 

北朝鮮は朝鮮半島において正規戦力では数的に圧倒しているものの、近代化された韓国軍、合衆国軍には正規戦で対抗できない。

北朝鮮は韓国で、朝鮮労働党作戦部の工作員に指導される主体思想主義の韓国人ゲリラ部隊結成、親北朝鮮の韓国人ゲリラ部隊結成を準備している。

 

北朝鮮は西ドイツの商社を利用して、マクドネル・ダグラスMD500ヘリコプターを87機購入した。MD500は合衆国陸軍マクドネル・ダグラスMH-6リトル・バード、韓国陸軍マクドネル・ダグラスOH-6カイユースと同じ形の民間型で、北朝鮮はマクドネル・ダグラスMD500ヘリコプターを韓国陸軍マクドネル・ダグラスOH-6カイユース観測ヘリコプターの塗装と同じ塗装にして運用している。

 

朝鮮労働党対外連絡部は工作員を長期にわたり日本、韓国に潜入させ、工作活動、情報収集を実施している。また朝鮮総連への指導や、工作のためのダミー会社設立を担当していると思われる。

 

朝鮮労働党統一戦線部は資金調達を担当、労働党対外連絡部は朝鮮総連など外国北朝鮮人組織への指導を担当する。

 

労働党作戦部は工作員浸透、要人拉致・暗殺を目的とし、対韓国に3000人~1500人、対日本に500人が配備されている。

 

朝鮮労働党対外連絡部の工作員は、日本人と在日韓国人に親北朝鮮派を醸成し、親北朝鮮派だけではなく主体思想派を育成する。

北朝鮮の主体思想本部には沖縄県教職員組合の主体思想研究会の寄贈プレートが目立つところに飾られており、沖縄県教職員組合以外に日本各地にある教職員組合、大学の主体思想研究会の寄贈プレートが飾られている。金日成、金正日など金一族を尊敬する日本人、在日韓国人の主体思想派も多少は存在する。

 

労働党35室(対外情報調査部)は情報収集とともに、拉致活動、テロリズム作戦、長期潜入工作活動をおこなう。

 

労働党35室の隷下に、偽造パスポートを利用して日本・韓国に潜入する直接浸透課、南北間の交流においての工作活動をおこなう南北会談課、海外出張・海外留学の日本人、韓国人への接触、浸透、工作をおこなう海外担当課、韓国、日本の国情の情報収集、調査、評価、研究を行う南朝鮮研究所、北朝鮮の工作活動を支援する団体(朝鮮総連など)を管理する外郭団体課がある。

 

労働党35室(旧・対外情報調査部)の主任務は日本、韓国以外の国で外交官の身分を利用して、北朝鮮大使館を拠点に日本人、韓国人の拉致、情報収集、工作を展開する。

 

また北朝鮮は、日本、韓国、グアムで工作員を浸透させ、朝鮮人民軍の特殊部隊/コマンド部隊の投入を計画している。

 

人民武力省総参謀部のもとに特殊軍団(旧・第8軍団)、偵察局(8個特殊部隊)がおかれ、指揮は軽歩兵教導指導局、労働党35室(対外調査部)が執る。

 

特殊軍団は、敵地における破壊工作を遂行する6個狙撃旅団、敵軍事施設・社会基盤の占拠をおこなう2個水陸両用狙撃旅団、敵航空基地・レーダーの破壊を目的とする2個空軍狙撃旅団、敵主要施設の占領を任務とする3個軽歩兵空挺旅団、敵地潜入情報収集をおこなう17個偵察大隊、要人拉致・暗殺・主要産業基盤破壊・テロ工作・長期敵地潜入・革命地下組織育成をおこなう偵察局8個特殊部隊、が主要な部隊である。

 

北朝鮮・人民武力省特殊軍団の装備は60mm迫撃砲、RPG-7 対戦車ロケット擲弾砲、AT-3対戦車ミサイル、SA-16携帯地対空ミサイル、AK-47 7,62mm×39ライフル、AKS-74 5,45mm×39ライフル、M16A1 5,56mm×45ライフル、AR-15 5,56mm×45ライフル、VZ61サブ・マシンガン、FNブローニング・ハイパワー9mm×19拳銃、手榴弾、携帯用化学兵器、GPS受信機、無線装置、暗号通信装置などである。

 

 

 

 

 

日本において北朝鮮・人民武力省の特殊部隊/コマンド部隊、ゲリラ部隊は朝鮮労働党作戦部が指揮を執る。

 

朝鮮労働党作戦部は工作員を日本へ投入、浸透させている。

 

日本に投入され日本に拠点を置く朝鮮労働党作戦部は、朝鮮労働党対外連絡部と朝鮮労働党統一戦線部の指導を受けた朝鮮総連、朝鮮総連内部過激派、主体思想派の日本人・在日韓国人、親北朝鮮派の日本人・在日韓国人の協力により日本人拉致をおこなっていた。

 

日本における北朝鮮・朝鮮人民軍の特殊部隊は2500人(防衛庁、2004年)、日本における北朝鮮ゲリラ・コマンド部隊(北朝鮮・朝鮮人民軍の特殊部隊、北朝鮮・朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、朝鮮総連内部過激派、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊)は10000人(陸上自衛隊、2005年)と想定されていた。

 

北朝鮮特殊部隊、北朝鮮ゲリラ・コマンド部隊はテロ、ゲリラ戦、撹乱、陽動作戦、心理戦を実行すると思われ、日本の左翼過激派の便乗攻撃も期待されている。

 

朝鮮労働党作戦部は親北朝鮮派の日本人・在日韓国人、主体思想派の日本人・在日韓国人によるゲリラ部隊の結成を計画し、ゲリラ部隊は朝鮮労働党作戦部の工作員が指揮を執る予定である。

 

朝鮮労働党作戦部は、朝鮮総連における非常に優秀な人材を金正日政治軍事大学に留学させ軍事作戦、ゲリラ戦を教育訓練し、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊の指揮官となることを期待している。

 

1996年には韓国・江陵道江陵市にサンオ級潜水艦が工作員の投入のため海岸に接近し失敗、座礁、乗組員11人が自決、工作員と乗組員24人が韓国陸軍に射殺され、工作員1人が逮捕、工作員1人が親北朝鮮派韓国人の協力者により逃亡する事件が発生した。

 

1990年には福井県の海岸で北朝鮮の工作員が使った水中スクーターが発見された。

 

1999年には漁船に偽装した小型ガス・タービンを搭載し超高速巡航できる北朝鮮の工作船が能登半島沖で発見され、追跡する海上自衛隊艦艇と航空自衛隊マクドネル・ダグラス F-15Jイーグル戦闘機に対し、北朝鮮はミコヤン MiG-21戦闘機を出動させ対抗し、日本政府は野中広務官房長官の主張で追跡を断念した。

 

2001年には、奄美沖で北朝鮮の工作船が海上保安庁巡視艇に銃撃・ロケット弾攻撃し、海上保安庁の航空機に地対空ミサイル攻撃をしたのちに自沈した。

 

 

 

 

 

北朝鮮の海軍力は、近代戦に耐えうるものではないと思われるが、工作員、コマンド部隊、特殊部隊の敵地浸透のための特殊装備、国際法違反装備は数多く装備している。

 

ロメオ級潜水艦21隻、ウィスキー級潜水艦4隻、フリゲート3隻、哨戒艇413隻、サンオ級小型潜水艦21隻、半潜水艇50隻、ヨンオ級潜水艇(ヨノ級潜水艇)、小型ガス・タービン搭載超高速巡航漁船型工作船、出力強化型高速巡航漁船型工作船、がある。

また北朝鮮船籍の貨物船、北朝鮮系企業の所有する貨物船には小型高速ボート、超小型潜水艇、水中スクーターが搭載され、レーダー、ソナーでの捜索は困難で、目視による発見も困難である。日本近海や港湾において海上保安庁や税関が臨検、審査しても発見が難しい。

 

北朝鮮の航空戦力、朝鮮人民軍空軍の兵力は8万2000人、作戦機は509機である。

装備はH-5爆撃機80機、殲撃5戦闘機110機(原型ミコヤンMiG-17初飛行1950年)、殲撃6戦闘機130機(原型ミコヤンMiG-19初飛行1953年)、殲撃7戦闘機(原型ミコヤンMiG-21初飛行1956年、自重5275kg、推力59,82kN×1)130機、ミコヤン MiG-23戦闘機(初飛行1967年、自重10200kg、推力127,49kN×1)46機、ミコヤン MiG-29戦闘機(初飛行1979年、導入1985年、自重8175kg、推力81、4kN×2)40機、スホーイ Su-7戦闘機(初飛行1955年)18機、スホーイ Su-25攻撃機(初飛行1975年、自重9500kg、推力44,2kN、固定武装30mm機関砲×2、ハード・ポイント10か所)35機、である。

主力はアントノフAn-2輸送機300機で、朝鮮人民軍のコマンド部隊・特殊部隊の輸送が主任務である。

ほかに木製グライダー、気球などレーダーでの捜索が困難な航空機で朝鮮人民軍のコマンド部隊・特殊部隊の輸送を任務とする。

 

 

 

注1  防衛庁『平成15年版防衛白書』P50

注2  合衆国太平洋軍作戦計画5055に関する各種情報、報道による

コウ・ヨンチョル「工作船に見る北の対日工作」        

    ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2002年12月号

    コウ・ヨンチョル『北朝鮮特殊部隊 白頭山3号作戦』講談社

    恵谷治『対日潜入工作』宝島社

    ジョゼフ・S・バーミューデッツ『北朝鮮特殊部隊』並木書房

    片山さつき「自衛隊にも構造改革が必要だ」『中央公論』中央公論社2005年1月号P69

    警察庁『焦点 第269号 警備警察50年 現行警察法50周年記念特別号』

 

 

 

 

 

 第3章 東アジア各国の戦力 中国   2000年代

 

 

 

 中国の軍事力は、人民解放軍、人民武装警察、民兵からなり、人民解放軍は中国共産党が指導する軍隊となっている。人民武装警察は人民解放軍陸軍の効率化によって生じた余剰人員を平時には治安維持任務にあたらせるというもので、実質的には陸軍の歩兵部隊であり、装備もアサルト・ライフル、機関銃、重機関銃など陸軍歩兵装備と同様である。人民武装警察は66万人ほどいる。民兵は輸送部隊、工兵部隊、兵站部隊、後方支援部隊の色彩が濃く、有事の際には人民解放軍の補佐にあたることになる。

 中国の陸上戦力は総兵力160万人、主として旧ソ連軍の装備をコピーしたものが配備されている。7個軍区、28個省軍区、21集団軍(軍団)、59個師団、35個旅団、10個ヘリコプター連隊からなり、戦車7000両、歩兵戦闘車5500両、野砲/多連装ロケット発射システム15000門、ヘリコプター300機以上を有する。

 また、快速反応部隊と呼ばれる緊急展開部隊が創設され、機動力を高めるため中国国内で生産された民間用航空機マクドネル・ダグラスMD-90旅客機なども軍事転用しているようである。陸軍の各種特殊部隊や空軍第15空挺軍と呼ばれる特殊部隊も創設され、総数は2万人以上に登るとている。

 渡洋能力は本格的大型揚陸艦、本格的大型輸送艦が少ないことから限られたものになっているが近海ならじゅうぶんに通用する能力である。地球規模の渡洋能力獲得のため本格的大型揚陸艦、本格的大型輸送艦を急激に増やしている。1996年の台湾総選挙の際の威嚇的軍事演習においては民間船舶に多連装ロケット発射システムを搭載し実弾演習をしている映像があることから、有事の際は中国に存在する民間用船舶、民間航空機を総動員することが予想される。特殊部隊によるゲリラ・コマンド作戦とともに、その能力は侮ることは出来ないといえるだろう。(注1)

人民解放軍海軍は北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊からなり、兵力26万人、水上戦闘艦670隻、潜水艦70隻を有する。

 ロシアから輸入したソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦は1996年9月に購入、1999年12月に1番艦「杭州 HANGZHOU」、2001年1月に2番艦「福州 FUZHOU」が引き渡された。さらにその後1隻が配備された。ソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦は満載排水量7940トン、蒸気タービン推進、兵装は130mm連装砲2基、SS-N-22艦対艦ミサイル8発、SA-N-7艦隊防空用艦対空ミサイル発射機2基、RBU-1000 6連装対潜ロケット発射機2基、533mm連装魚雷発射管、30mm近接防御武器システム4基である。搭載航空機はカモフKa-28哨戒ヘリコプターを2機である。SS-N-22艦対艦ミサイル(NATOコード:サンバーン)はマッハ2の速度で超低空をS字状に飛来するミサイルで、発見、迎撃することが非常に困難である。また、SA-N-7艦対空ミサイルによって本格的艦隊防空能力を保持するにいたった。しかし、基本設計が1970年代後半であり、情報処理能力、防空能力、電子戦能力、ステルス性、各種センサーは西側陣営の最新鋭艦に比べ劣っているようである。しかし西側の水上戦闘艦も1970年代後半の設計、1980年代前半の就役も多い。

 052B型駆逐艦の1番艦「広州 GUANGZHOU」は2002年6月に起工、2003年3月に進水、2004年7月に就役した。2番艦の「武漢 WUHAN」も2004年に就役している。052B型駆逐艦は満載排水量6500トン、ディーゼル・ガスタービン推進、100mm単装砲1基、SA-N-12艦対空ミサイル発射機2基、YJ-83艦対艦ミサイル16発、30mm近接防御武器システム2基、324mm3連装短魚雷発射管2基、対潜ロケット発射機4基、搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター1機である。ガス・タービンはウクライナ製である。ステルス性を意識した船体であるが、その他設計は保守的で電子装備も古いままである。(注2)

 052C型駆逐艦の1番艦「蘭州 LANZHOU」は2002年7月起工、2003年4月進水、2004年に就役している。2番艦の「海口 HAIKOU」は2005年に就役している。052C型駆逐艦の満載排水量は6500トン、ディーゼル・ガスタービン推進、100mm単装砲1基、HQ-9艦対空ミサイル用垂直発射システム48セル、YJ-83艦対艦ミサイル8発、30mm近接防御武器システム2基、324mm3連装短魚雷発射管2基で、搭載航空機はハルビンZ-9A哨戒ヘリコプター2機である。フェーズド・アレイ・レーダー4基を装備し、イージス・システムを意識した先進的な装備である。(注3)

  旅州型駆逐艦は、1番艦「瀋陽」は2006年10月就役、2番艦「石家荘」は2007年3月に就役している。旅州型駆逐艦は満載排水量7112トン、蒸気タービン推進、SA-N-20艦対空ミサイル8連装回転式垂直発射システム6基、YJ-83艦対艦ミサイル4連装発射筒2基、100mm単装砲1基、30mm近接防御武器システム2基、324mm3連装短魚雷発射管2基を装備する。(注4)

 旅海 LUHAI級駆逐艦はいまのところ1隻のみの配備である。1999年就役、満載排水量6000トン、ディーゼル・ガスタービン推進、兵装は100mm連装砲1基、37mm連装機銃4基、YJ-83艦対艦ミサイル16発、短距離艦対空ミサイル8発、3連装魚雷発射管2基で、搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター2機である。ステルス性を考慮した船体となっている。船体の大きさの割には搭載兵器が多いという共産国の伝統を引き継いでいる。(注5)

 旅滬 ルーフ- LUHU級駆逐艦は天安門事件前に計画された艦で、西側陣営が中国に幻影を見ていた時期であるため多くの西側陣営の技術が導入されている。ガス・タービンはアメリカのゼネラル・エレクトリックLM2500で、短距離艦対空ミサイルHQ-7はフランスのクロタル・ミサイルをライセンス生産したものである。現在のところ2隻が就役している。

旅滬 ルーフ- LUHU級駆逐艦は1994年就役、満載排水量4600トン、ディーゼル・ガスタービン推進、HQ-7艦対空ミサイル8発、3連装魚雷発射管2基、搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター2機である。(注6)

 旅大 ルーター LUDA級駆逐艦は中国初の国産駆逐艦で、人民解放軍海軍の主力で16隻が就役している。1971年から1991年までの長きにわたって建造され続け、そのためバリエーションが多くある。満載排水量3670トン、蒸気タービン推進、兵装は130mm連装砲2基、57mm連装砲2基、25mm連装機銃4基、HY-2艦対艦ミサイル6発、HQ-7短距離艦対空ミサイル8発で、搭載航空機はハルビンZhi-9Aヘリコプター2機である。排水量に対して兵装が多く、バランスが悪いと思われる。また、中国国産とはいえ旧ソ連艦艇のコピーで、1番艦就役が1971年という古さからも、戦力としては低いものとなっている。(注7)

 最新のフリゲートはチャンカイⅡ JIANGKAI江凱Ⅱ型フリゲートである。1番艦「530 徐州」が2008年11月に就役した。満載排水量3963トン、HHQ-16短距離艦対空ミサイル32発、YJ-83艦対艦ミサイル4連装発射機2基、76mm単装砲1門、30mm近接防御武器システム2基、6連装対潜ロケット2基、324mm3連装短魚雷発射管2基を装備している。16隻の建造が認められ中国の外洋進出の柱である。(注8)

 054型フリゲート、チャンカイⅠ JIANGKAIⅠ江凱Ⅰ型フリゲートは、1番艦「馬鞍山 MAANSHAN」が2001年12月に起工、2003年9月に進水、2005年2月に就役した。満載排水量3900トン、ディーゼル推進、兵装は100mm単装砲1門、RBU1000 6連装対潜ロケット発射機2基、HQ-7短距離艦対空ミサイル8発、YJ-83艦対艦ミサイル8発、30mm近接防御武器システム2基、324mm3連装魚雷発射管2基で、搭載航空機はハルビンZhi-9Cヘリコプター1機である。HQ-7短距離艦対空ミサイルはフランスのクロタル・ミサイルをライセンス生産したもので、ディーゼル機関もフランス製である。射撃統制装置、情報処理システムもフランス製が基になっている。フランスのラファイエット級フリゲートを意識した船体で相当なステルス性を意識した作りになっている。(注9)

 チャンウェイⅡ JIANGWEI Ⅱ型フリゲートは1番艦が1998年に就役し、10隻が建造されている。満載排水量2250トン、ディーゼル推進、兵装は100mm単装砲1基、37mm連装機銃4基、YJ-1艦対艦ミサイル8発、HQ-7短距離艦対空ミサイル8発、RBU1200対潜ロケット発射機2基で、搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター1機である。船体の大きさに比べ、多大な兵装でありバランスが悪いと思われる。(注10)

 チャンウェイⅡ型フリゲートのベースとなったチャンウェイⅠ型フリゲートは1番艦が1991年に就役、満載排水量2250トン、ディーゼル推進、兵装は100mm単装砲1基、37mm連装機銃4基、YJ-1艦対艦ミサイル8発、HQ-61短距離艦対空ミサイル8発、RBU1200対潜ロケット発射機2基で、搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター1機である。(注10)

チャンウェイⅠ型フリゲートはチャンウェイⅡ型フリゲートのHQ-7短距離艦対空ミサイルがHQ-61短距離艦対空ミサイルとなっている以外の兵装は全く同じで、満載排水量も同じである。各種センサー、電子戦システム、情報処理装置などが変更されたと思われる。両艦あわせて14隻建造された。(注11)

 チャンフ- JIANGHU型フリゲートは1970年代から1989年までの長きにわたり建造された中国の主力フリゲートである。満載排水量が1700トンであるにもかかわらず、乗員が200人と多く、兵装も多大である。自動化が遅れていると推測される。長きにわたって建造されたこともあって30隻あり、Ⅰ型からⅣ型まであり、各型によって各種センサー、電子戦システムは変更されていると思われる。兵装は攻撃力重視で、近距離での水上戦闘においては威力を発揮すると思われるが、対空戦、対潜戦など現代戦には不向きだと思われる。(注12)

 

 攻撃型原子力潜水艦には091型ハン級攻撃型原子力潜水艦がある。1974年に1番艦が就役し、以後5隻が就役している。水中排水量5550トン、原子力ターボ・エレクトリック推進、兵装は533mm魚雷発射管6門で、水中速力25ノット、潜航深度300メートルと一流の能力を持っている。(注13)

 

093型攻撃型原子力潜水艦は1994年からロシアの専門家の協力で開発された。静粛性に優れ、合衆国海軍、ロシア海軍に追いついたともいわれる。水中排水量6096トン、原子力蒸気タービン推進、全長107m、幅11m、533mm魚雷発射管6門を有する。1番艦407が2006年12月に就役している。(注14)

 

 094型戦略原子力潜水艦はJL-2潜水艦発射弾道ミサイルを12基搭載する。1番艦411が2007年に就役している。水中排水量8000トン、原子力蒸気タービン推進、兵装はJL-2潜水艦発射弾道ミサイル12基、533mm魚雷発射管6門である。4隻が就役した。

 

 キロ級潜水艦は1993年にロシアに発注、1995年に回航された。12隻が就役している。水中排水量3076トン、水中速度17ノット、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門を装備している。静粛性に優れ、発見が困難である。浅海での作戦に適しており、中国近海の環境に適している。(注15)

 中国国産の新鋭潜水艦にはユアン YUAN級潜水艦がある。水上排水量2400トン、水中排水量3000トン、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門と一流のものとなっている。(注16)

 

ソン SONG級潜水艦は、中排水量2250トン、水中速力22ノット、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門と一流の能力を誇っている。(注17)

 

 2000年代前半、人民解放軍海軍の主力潜水艦はミン MING級潜水艦である。中国が独力で開発した通常推進型潜水艦で、1971年に1番艦が就役している。2000年代前半、6隻が就役しているが、1970年代においても時代遅れなデザインであったため、現代の潜水艦として一流とは言い難い。水中静粛性は悪いと思われる。水中排水量2113トン、ディーゼル・エレクトリック推進、水中速力18ノット、533mm魚雷発射管8門という攻撃力重視の潜水艦である。

 

同じく2000年代前半の主力潜水艦にソ連のロメオ級のコピーが40隻あった。あまりに古臭いその外観から察するに性能は現代の戦闘に耐えうるものではないと思われる。(注18)

 

 水陸両用作戦に使われる艦艇に071型(搭載エアー・クッション揚陸艇4隻、搭載ヘリコプター4機、兵員800名、大型車両20両搭載)3隻、072Ⅲ型(兵員250名、戦車10両搭載)10隻、072Ⅱ型(兵員250名、戦車10両搭載)10隻、072型(兵員200名、戦車10両搭載)7隻、074型(兵員250名、戦車2両搭載)12隻がある。

 

 中国人民解放軍海軍の航空部隊は戦闘機、攻撃機が主力であり、日本のように対潜哨戒機を重視している国とは傾向が違う。

 

 空母保有は人民解放軍創設以来の念願だったが、その真意は隠し通してきた。1980年に艦隊世界一周を成功させたことによって空母保有の実現へ走り出した。

2008年12月23日、中国・国防省の黄雪平報道官は「空母は国家の総合力の表れだ。中国政府は各方面の要素を総合し、関係する問題を研究、考慮する。」と述べ、遂に正式に空母保有を宣言した。

空母保有の理由として「中国領海の主権と権益を守ることは軍の神聖な職域だ。」と強調した。

 

最新鋭の装備は西側陣営のマクドネル・ダグラスF-15A/B/C/Dイーグル戦闘機に対抗するために旧ソ連が開発したスホーイSu-27戦闘機(初飛行1981年、自重17700kg、推力122,6kN×2、注19)で、ハイパワーエンジン、高い運動性能で、レーダーも大型・高出力で高性能なものを搭載している。

 

スホーイSu-27戦闘機の発展型スホーイSu-30MKK戦闘爆撃機(初飛行1985年、運用開始1992年)、スホーイSu-30MKK戦闘爆撃機の中国型スホーイSu-30MK2戦闘爆撃機の導入も始まった。人民解放軍海軍はあわせて100機ほど調達している。

 

また中国がロシアに無断でスホーイSu-27戦闘機をコピー生産した殲撃11BH J-11BH戦闘機、スホーイSu-30MK2戦闘爆撃機をコピー生産した殲撃16 J-16戦闘機も配備され始めた。

 

 空母「遼寧」に搭載する戦闘機として、スホーイSu-27戦闘機の艦載機版スホーイSu-33戦闘機をウクライナから導入、スホーイSu-33戦闘機を模倣研究した中国国産版Su-33戦闘機である殲撃15 J-15戦闘機を開発、配備した。

 

1998年から人民解放軍海軍航空隊への配備が始まったのがJH-7戦闘攻撃機で、C-801空対艦ミサイル2発搭載可能である。(注20)

 

 殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ(F-8Ⅱ)戦闘機は1990年に配備が始まった戦闘機である。天安門事件前の米中蜜月時代に「ピース・パール」計画として、グラマン、リットン、ウェスティングハウス・エレクトリックなどが開発に関与している。

殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ(F-8Ⅱ)戦闘機はロッキード・マーティンF-16A/Bファイティング・ファルコン戦闘機が搭載しているAN/APG-66レーダー火器管制装置、慣性航法装置、その他アヴィオニクスなどアメリカ製を導入する予定であったが、天安門事件によって頓挫している。初飛行は1994年と新しいが、ベースとなった殲撃8 J-8(F-8)戦闘機が新しいものでないために運動性能は良いものではないと思われる。自重は14300kg、推力は65,9kN×2である。(注21)

 

 殲撃8 J-8(F-8)戦闘機(自重15000kg、推力59,82kN×1)も海軍航空隊は保有しているが15機しか保有しておらず、今後の増備も少数にとどまると予想される(注22)。

 

殲撃8戦闘機のベースとなった殲撃7 J-7(F-7)戦闘機(自重5275kg、推力59,82kN×1)も老朽化が進み、100機程度まで保有数が低下している(注23)。

 

2000年代、人民解放軍海軍で数的に主力となっているのは旧ソ連のミコヤンMiG-19戦闘機/殲撃6 J-6(F-6)戦闘機で320機保有しているが、あまりにも古く空戦では活躍できず、対艦攻撃支援、囮、自爆用無人機化などに限られるだろう。

 

またミコヤンMiG-19戦闘機/殲撃6 J-6戦闘機を改造した強撃5 Q-5(A-5)攻撃機を93機保有している。空戦ではなく対艦攻撃に重きを置いており、ある程度の実用性は認められる。(注24)

 

 爆撃機はイリューシンIl-28爆撃機をコピーした轟5 H-5爆撃機が50機、ツポレフTu-16爆撃機をコピーした轟6 H-6爆撃機が51機ある。(注25)

 

 人民解放軍海軍航空隊の航空機による対潜哨戒の中心は艦載ヘリコプターで、フランスのアエロスパシアル(現・ユーロコプター)のドーファン2の中国国内ライセンス生産品であるハルビンZ-9Aヘリコプターと、ロシアから輸入するカモフKa-28ヘリコプターが主力であり、今後とも両方が増備されていく模様である。

 

中国の航空戦力は、人民解放軍海軍航空隊とともに、人民解放軍空軍が担っている。人民解放軍空軍はスホーイSu-27戦闘機(NATOコード:フランカー、初飛行1981年、自重17700kg、推力122,6kN×2、注19)を1993年にロシアか

ら26機を輸入したのを皮切りに、着実に輸入し続け機数を増やした。

さらに1996年にはSu-27戦闘機の生産ライン輸入協定を調印し、1998年末からノック・ダウン生産を始めた。

その後、中国国内でのライセンス生産も開始し、殲撃11 J-11戦闘機と名付けられ100機以上を保有している。

また、Su-27戦闘機を無断コピー製造した殲撃11B戦闘機の生産を開始した。殲劇11B戦闘機は中国国産のアヴィオ二クスを搭載し、生産数は非常に多い。

 

さらにスホーイSu-27戦闘機の戦闘爆撃機型で制空任務、爆撃任務ともに有力なスホーイ Su-30MKK戦闘爆撃機、スホーイ Su-30MK2戦闘爆撃機、スホーイSu-35戦闘爆撃機をロシアから輸入しており、購入を続ける予定である。

スホーイ Su-30MK2戦闘爆撃機を中国が模倣、コピー生産した殲撃16 J-16戦闘機は中国国産のエンジン、アヴィオ二クスを搭載している。

 

 主力は殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ(F-8Ⅱ)戦闘機を50機、殲撃8 J-8(F-8)戦闘機(初飛行1970年代半ば、自重15000kg、推力59,82kN×1)を100機以上(注26)、殲撃7 J-7(F-7)戦闘機(原型MiG-21戦闘機初飛行1956年、中国国内生産初飛行1970年代前半、自重5257kg、推力59,62kN×1)を400機保有、殲撃6 J-6(F-6)戦闘機(原型ミコヤンMiG-19戦闘機初飛行1953年)を3000機保有、殲撃5 J-5戦闘機(原型ミコヤンMiG-17戦闘機初飛行1950年)を400機保有、強撃5 Q-5(A-5)攻撃機(初飛行1965年、自重6654kg、推力36,52kN×2)を750機保有している。(注27)

 かつて少数であったロシア製の第4世代戦闘機は300機以上となり、ロシア製のコピー第4世代戦闘機も相当数配備し、さらに旧世代戦闘機を数千機保有しているため周辺諸国の脅威となっている。ただ、殲撃6 J-6戦闘機、殲撃5 J-5戦闘機はあまりにも古いので、デコイ(囮)や保管、デコイ用無人機、自爆用無人機となっている。

 また、アメリカのエンジン輸出拒否によって計画が頓挫したイスラエルのラビ戦闘機を開発したイスラエル人技術者が農業技術者の名目で中国入り、協力したことにより、殲撃10 J-10(F-10)戦闘機の開発がされた。殲撃10 J-10戦闘機は、アメリカ中央情報庁(CIA)の発表によると、イスラエルに輸出されたF-16ファイティング・ファルコン戦闘機の技術が流用されている模様で、周辺諸国にとって脅威となる。(注28)また、ダイバーターレス・インレットの殲撃10B J-10Bも開発され、配備され始めている。

 

 戦略爆撃機として轟6 H-6を140機保有し、核戦略の一つとして重要視されている。またCJ-10航空機発射巡航ミサイルの発射母機として活用されている。

 新型ステルス爆撃機として、轟20 H―20爆撃機を開発中である。

 

 

 

 

中国の核戦略の中で最も大きな比重を占めているのは地上発射の弾道ミサイルである。地上発射大陸間弾道ミサイルDF-5(CSS-4)(射程距離13000km、弾頭4MT)を20基、DF-3(CSS-2)中距離弾道ミサイル(射程距離2800km、弾頭3MT)、DF-4(CSS-3)中距離弾道ミサイル(射程距離4750~5400km、弾頭2Mt)、DF-21(CSS-5)中距離弾道ミサイル(射程距離2500km、弾頭250Kt)116基以上がある。

 

DF-31大陸間弾道ミサイル(射程距離7200km以上)、DF-31A(大陸間弾道ミサイル射程距離1万2000km)36基以上を保有している。

 

また夏 XIA級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(水中排水量6500トン、弾道ミサイル12基搭載)1隻、ゴルフ級弾道ミサイル搭載潜水艦(水中排水量2950トン、弾道ミサイル1基搭載)1隻にJL-1(CSS-N-3)潜水艦発射弾道ミサイル(射程距離2150km、弾頭250KT)を搭載している。

 

JL-2潜水艦発射弾道ミサイルも配備中である。(注29)

 094型戦略原子力潜水艦はJL-2潜水艦発射弾道ミサイルを12基搭載する。1番艦411が2007年に就役している。水中排水量8000トン、原子力蒸気タービン推進、兵装はJL-2潜水艦発射弾道ミサイル12基、533mm魚雷発射管6門である。4隻が就役した。

 

また、核弾頭搭載可能な地対地巡航ミサイルも多く保有している。DH-10地対地巡航ミサイルは300基以上配備されていると思われる。

 

 

 

注1  防衛庁『平成15年版防衛白書』  同上 P62、63,64

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

宇垣大成「中国/台湾の兵力比較」海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2

版』

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』1995-1996

注2  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIP』92-93

海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P64

注3   海人社『世界の艦船』2011年9月号

注4   同上

 

注5   海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P66

注6   海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P70

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注7   海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P72

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

  『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注8   海人社『世界の艦船』2011年9月号

注9   海人社『世界の艦船』2011年9月号

注10  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P80

注11  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P78

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

     『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注12  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P82

注13  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P54

     国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注14  海人社『世界の艦船』2011年9月号

注15  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P56

     国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

     『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注16  海人社『世界の艦船』2011年9月号

注17  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P58

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注18  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P60

国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注19  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P57

注20  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P114

注21  同上P115、エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P14

注22  同上P115、エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P13

注23  同上P116、エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P11

注24  同上P116、エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P12

注25  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P253

注26  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P15

注27  同上P11

注28  同上P16、『東アジア戦略概観2003』P149

注29  防衛庁『平成15年版防衛白書』P319、P320

     防衛省『平成26年度版防衛白書』資料1

 

 

 

第4章 東アジアの戦力 台湾   2000年代

 

 中国の軍事的圧力、脅威に絶えずさらされ続けている台湾は、近年まで1982年の米中コミュニケや、中国の圧力により近代兵器の購入が滞っていたが、1990年代以降ようやく近代化が可能になってきた。

台湾の陸上戦力は12個師団、海軍陸戦隊2個師団とあわせて地上兵力27万人である。2000年代、M48A5パットン戦車を中古M60A3スーパー・パットン戦車に更新したが、西側陣営がM1A2SEPシステム拡張パッケージ・エイブラムス戦車など第3世代戦車を装備しているのに対し、台湾は依然、旧型戦車を配備している。

 海上戦力の近代化は進んでおり、世界有数の強力な海軍となっている。現役兵力は6万8000人、水上戦闘艦は40隻、潜水艦は4隻、揚陸艦18隻を保有、海軍陸戦隊の上陸作戦も可能である。

 最新鋭艦は康定(カンディン)級フリゲートである。これはフランスのラファイエット級フリゲートを輸入したものである。ラファイエット級フリゲートは本格的にステルス機能を取り入れた船体で、レーダーによる捜索は困難である。康定級フリゲートはフランスで船体を建造したが、電子装備、兵装は台湾において艤装が行われ、台湾オリジナルの兵装となっている。ラファイエット級フリゲートにはない対潜兵装が加えられたため、ステルス性が損なわれていると思われる。(注1)

康定(カンディン)級フリゲートは満載排水量3800トン、ディーゼル推進で、兵装はOTOメララ 76mmコンパクト砲1門、40mm単装機銃2基、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、雄風Ⅱ艦対艦ミサイル8発、シー・チャパラル短距離艦対空ミサイル4発、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム1基である。搭載航空機はSH-60シー・ホーク哨戒ヘリコプターの民間バージョンであるシコルスキーS-70C(M)で、アメリカ製の対潜哨戒機器が装備されたものを1機搭載している。康定級フリゲートは1996年から1998年までに6隻が就役した。(注1)

 台湾の艦隊防空を担うのは成功(チェンクン)級艦隊防空ミサイル・フリゲートである。これはアメリカのオリヴァー・ハザード・ペリー級艦隊防空ミサイル・フリゲートを台湾でライセンス生産したものである。1993年から8隻が就役している。満載排水量4105トン、ガス・タービン推進、兵装はMk13発射機(RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイルなどミサイル44発)、OTOメララ 76mmコンパクト砲1門、40mm単装機銃2基、雄風Ⅱ艦対艦ミサイル8発、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム1基である。搭載航空機はシコルスキーS-70Cヘリコプター2機である。(注2)

 対潜戦で主力となるのは合衆国海軍の中古艦船を購入したノックス級フリゲートである。ノックス級フリゲートは、満載排水量4260トン、蒸気タービン推進、兵装はMk42 127mm砲1門、Mk112発射機1基(対潜ロケット8発、予備弾8発)、20mm単装機銃4基、Mk32 324mm短魚雷発射管2基、、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基である。搭載航空機はマクドネル・ダグラスMD500小型ヘリコプターで、小型なためその能力は限られたものになる。1972年に合衆国海軍で就役し、1993年に台湾が購入、就役させている。台湾はノックス級フリゲートを8隻配備している。(注3)

 ギアリング級駆逐艦は、合衆国海軍の中古艦船で1946年に建造された非常に古い艦で、1980年代に近代化工事を実施、RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイルを発射可能にしていた。ギアリング級駆逐艦は、満載排水量は3540トン、蒸気タービン推進、兵装はOTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk112発射機1基(対潜ロケット8発、予備弾8発)、40mm単装機銃2基、12,7mm機関銃6基、RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイル10発、雄風Ⅱ艦対艦ミサイル4発、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基である。搭載航空機はマクドネル・ダグラスMD500ヘリコプターである。台湾海軍はギアリング級駆逐艦を2000年代中盤まで7隻保有していた。(注4)

 キッド級艦隊防空ミサイル駆逐艦は、1970年代半ば王政イランがアメリカに発注した駆逐艦である。イラン・イスラム革命でイランは購入断念を余儀なくされ、合衆国海軍が購入することになった艦船である。1981年から1982年に竣工している。キッド級駆逐艦は、満載排水量は9547トン、ガス・タービン推進、兵装はMk42 127mm砲2門、Mk26発射機2基(RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイルなどミサイル88発)、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm短魚雷発射管2基、Mk15ファランクス20mm近接防御武器システム2基、搭載航空機はシコルスキーSH-60Bシー・ホークの民間版であるシコルスキーS-70Cヘリコプターである。台湾海軍はキッド級艦隊防空ミサイル駆逐艦を4隻導入し、飛躍的な戦力向上となった。(注5)

 潜水艦は4隻配備されている。1987年と1988年に就役した海龍(ハイルン)級潜水艦は、オランダのウィルトン・フィエノルドが建造し、台湾が初めて購入した近代的潜水艦である。水中排水量2660トン、ディーゼル・エレクトリック推進、533mm魚雷発射管6門と、2000年代では他の先進国の潜水艦として遜色のないものとなっている。海龍級潜水艦導入以前に台湾が保有していた潜水艦は1945年に合衆国海軍が建造したガピーⅡ級潜水艦のみであったので、台湾の潜水艦作戦能力は大幅に向上した。(注5)

 台湾空軍も1990年代中盤まではロッキード F-104スター・ファイター戦闘機など旧型戦闘機を配備するだけであり。その戦力は非常に弱いものであった。

しかし、中国が着実に航空戦力を向上させていった事態に対して、まず1992年前半にフランスからダッソ-・ミラージュ2000-5戦闘機(初飛行1978年、自重7490kg、推力95,1kN×1)を60機導入した(注6)。

1992年秋にはアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領がテキサス州フォート・ワースのロッキードの戦闘機工場においてロッキード F-16ファイティング・ファルコン戦闘機の売却を発表、台湾空軍はロッキード F-16A/Bブロック20ファイティング・ファルコン戦闘機(原型YF-16初飛行1974年、F-16Aブロック20戦闘機:自重8627kg、F-16Aブロック20戦闘機エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-229、推力129kN×1)を150機導入することになった。

第4世代戦闘機を210機導入した2000年代の台湾の航空戦力は一流のものとなった。台湾空軍はこれら輸入した第4世代戦闘機210機に加え、アメリカの支援を得て開発された国産のF-CK-1経国戦闘機(初飛行1989年、自重6386kg、推力41,1kN×2)130機、ノースロップ F-5EタイガーⅡ戦闘機(初飛行1972年、自重4410kg、推力22,2kN×2)も150機配備しており(注7)、中国軍の攻勢に対抗しているが、中国の大軍拡の前に依然苦境に立たされている。また台湾の防空システムはレーダーによる警戒システム、高度な情報通信システム、グラマンE-2Tホーク・アイ早期警戒機などで構成される。

 台湾は性能が劣り老朽化してきているダッソー ミラージュ2000-5戦闘機60機の代替として、アメリカにロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機(空虚重量8573kg、エンジン:ゼネラル・エレクトリックF110-GE-129、推力129kN×1)を66機ほど輸出するよう嘆願した。

しかし中国の抗議、親中派の反対などを受けてアメリカのバラク・オバマ大統領はロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機66機の輸出を拒否した。

 

注1  海人社『中国/台湾海軍ハンドブック改訂第2版』P126,127

注2  同上P124,125

注3  同上P128,129

注3  同上P122,123

注4  同上P121

注5  『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注6  エア・ワールド『世界軍用機年鑑1993-94』P19

注7  同上P

 

 

 

 

 

 第5章 東アジア各国の戦力 韓国   2000年代

 

 北朝鮮の侵攻から防衛するため世界有数の陸上戦力を保有する韓国は、陸上戦力を中心にした態勢から海軍、空軍を重視したものへと変貌を遂げつつある。

陸軍は3個軍、22個師団、海兵隊は2個師団で陸上戦力は60万人、さらに予備役27個師団、400万人を揃えている。装備面では韓国国産のK-1戦車シリーズ、M48A5パットン戦車など戦車を約2200両、K-9 155mm自走砲、ゼネラル・ダイナミクス M110 203mm自走砲、LTV/ローラル・ヴォート・システムズ M270多連装ロケット発射システムなど多数の火砲、ベル・ヘリコプター・テキストロン AH-1J/Fヒューイ・コブラ攻撃ヘリコプターが空から北朝鮮の機甲部隊、歩兵部隊を攻撃する態勢となっており北朝鮮に対抗する。また、レンジャー部隊や陸軍特殊部隊、警察特殊部隊(KNP-SWAT)など、テロ・ゲリラ・コマンド対処部隊にも力がそそがれ北朝鮮・朝鮮人民軍特殊部隊、北朝鮮・朝鮮人民軍コマンド部隊、北朝鮮・朝鮮労働党作戦部工作員1500人~3000人、韓国主体思想派ゲリラ部隊、韓国親北朝鮮派ゲリラ部隊に対応している。(注1)

 韓国海軍は現役3万3000人、徴兵1万7000人、予備役9000人で、艦艇は約200隻、15万トンである。(注2)

 ウルサン級フリゲートは韓国初の国産水上戦闘艦で、満載排水量2180トン、ディーゼル・ガスタービン推進、OTOメララ 76mmコンパクト砲1門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk32 324mm3連装魚雷発射管2基、30mm連装機銃4基で、おもに水上戦闘を想定しているとみられる。ウルサン級フリゲートは1981年から1993年までに9隻が建造された。排水量に比較して、兵装が多いため上部構造物が大きくなっており、また上部構造物もアルミニウム合金でできておりダメージ・コントロールに問題がある。しかし、問題は残しつつも本格的水上戦闘艦を国産したことは韓国海軍にとって大きな意義があったと思われる。(注2)

 クアンゲトデワン級駆逐艦は満載排水量3855トン、ディーゼル・ガスタービン推進、兵装はMk45 127mm砲1門、Mk141発射機(RGM-84ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk48垂直発射システム16セル(RIM-7シー・スパロー短距離艦対空ミサイル16発/RIM-162発展型シー・スパロー・ミサイル短距離艦対空ミサイル32発)、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、ゴール・キーパー30mm近接防御武器システム2基である。

1998年から2000年までに3隻が就役した。

これはKDXと名付けられた駆逐艦建造計画である。クアンゲトデワン級駆逐艦は、海上自衛隊が同時期に導入した汎用護衛艦のむらさめ級汎用護衛艦よりも満載排水量がかなり小さいにもかかわらず、海上自衛隊むらさめ級汎用護衛艦よりも重装備である。そのため上部構造物が大きくなっていてバランスが悪い。(注2)

 チュンムゴン・イ・スンシン級駆逐艦はKDX-2計画の艦船である。満載排水量4800トン、ディーゼル・ガスタービン推進、兵装はMk41発射機32セル(RIM-66スタンダードMR艦対空ミサイル32発)、Mk141発射機(RGM-86ハープーン艦対艦ミサイル8発)、Mk45 127mm砲1門、Mk32 324mm3連装短魚雷発射管2基、Mk49発射機1基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイル21発)、ゴール・キーパー30mm近接防御武器システム1基である。搭載航空機はスーパー・リンクス哨戒ヘリコプター2機である。

1番艦チュンムゴン・イ・スンシンが2002年5月に進水して、2003年に就役した。以後、6番艦まで建造されている。(注3)

 KDX-3、セジョン・デワン級駆逐艦は、合衆国海軍のアーレイ・バーク級イージス駆逐艦フライトⅡAをベースに韓国で生産したものである。近接防御武器システムはアーレイ・バーク級駆逐艦のMk15ファランクス20mm機関砲近接防御武器システムから、RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御艦対空ミサイルに変更されている。電子戦システムは韓国国産の電子戦システムを搭載している。

KDX-3セジョン・デワン級駆逐艦は、満載排水量10290トン、ガス・タービン推進、兵装はMk41垂直発射システム80セル(RIM-66スタンダードSM2艦対空ミサイル、RIM-162発展型シー・スパロー短距離艦対空ミサイル)、天竜巡航ミサイル/赤鮫対潜ロケット用垂直発射システム48セル(対地巡航ミサイル32発/対潜ロケット16発)、海星艦対艦ミサイル8発、Mk49発射機1基(RIM-116回転飛翔体ミサイル近接防御ミサイル21発)ゴール・キーパー30mm近接防御武器システム1基、である。

 チャンボゴ級潜水艦はドイツHDWの209型潜水艦を韓国でライセンス生産したものである。1番艦はドイツで建造され、2番艦と3番艦は韓国でノック・ダウン生産した。4番艦からは韓国で建造している。1993年から2001年までに9隻が就役した。チャンボゴ級潜水艦は、ディーゼル・エレクトリック推進、水中排水量は1285トン、水中速力22ノット、兵装は533mm魚雷発射管8門である。

短期間に大量の潜水艦を配備したため、まだ潜水艦作戦は成熟してないとみられる。

チャンボコ級潜水艦は533mm魚雷発射管からUGM-84ハープーン潜対艦ミサイルを発射可能にする改良工事と、近代化計画を進めている。(注3)

 ソン・ウォンイル級潜水艦はドイツのHDWが開発した214型がベースとなっている。ディーゼル・エレクトリックとAIP大気独立推進で、水中排水量1860トン、兵装は533mm魚雷発射管8門である。

1番艦ソン・ウォンイルは2006年に就役している。9番艦までの建造が認められた。

 このほかに韓国海軍は小型艦艇を多数装備している。1000トン・クラスのコルベットが28隻、満載排水量183トンの高速戦闘艦シー・ドルフィン級を83隻、などを保有しており、沿岸域での戦闘を主な任務としている。

韓国海軍はロッキード・マーティン P-3Cオライオン哨戒機を8機のみ導入した。日本がロッキード・マーティン P-3Cオライオン哨戒機を101機導入しているのに比べ韓国は8機のみで、韓国の対潜能力は低い。

 

 韓国空軍の主要装備は、ロッキード・マーティンF-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機(KF-16戦闘機、原型YF-16初飛行1974年、自重8627kg、推力129kN×1)、マクドネル・ダグラスF-4D/EファントムⅡ戦闘機(原型初飛行1958年、F-4D初飛行1966年、F-4E初飛行1968年、自重13500kg、総重量18818kg、推力79,62kN×2)、ノースロップ F-5E/FタイガーⅡ戦闘機(初飛行1972年、自重4410kg、推力22,2kN×2)、である。

 

ロッキード・マーティン F-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機は180機あり、アメリカの有償援助により1986年から導入された。

 

マクドネル・ダグラス F-4DファントムⅡ戦闘機はベトナム戦争参戦、ベトナム戦争協力の見返りとして合衆国空軍の中古機66機が無償譲渡された。

 

マクドネル・ダグラス F-4EファントムⅡ戦闘機は95機が導入された。中古機の無償譲渡と新造機の無償援助がある。

 

ノースロップF-5E/FタイガーⅡ戦闘機は148機が導入された。全機が新造機の無償援助である。(注6)

 

 

F-4D/EファントムⅡ戦闘機の後継としてボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機(F-15E初飛行1986年、自重14300kg、エンジン:ユナイテッド・テクノロジーズ・プラット・アンド・ホイットニーF100-PW-229、推力129×2、レーダー:AN/APG-70レーダー)の韓国仕様であるボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機を2002年4月19日に採用決定し、とりあえず40機導入した。その後も増備された。

ボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機は、竹島(韓国名・独島)問題など対日本用として導入された。ボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機は射程距離300kmのAGM-84H SLAM-ER空対地ミサイル2発を装備している。AN/APG-70レーダーから空対空戦闘に有効なAN/APG-63(V)1レーダーに変更されている。

 

ノースロップ F-5E/FタイガーⅡ戦闘機の後継としては、韓国がロッキード・マーティンに設計を依頼し、韓国KAIが生産するFA-50ゴールデン・イーグル戦闘攻撃機がある。KAI T-50ゴールデン・イーグル練習機から発展させたもので能力は限られる。

 

地上防空警戒システムが脆弱な韓国は早期警戒機の導入を目指し、ボーイング E-737ピース・アイ(ボーイング737AEW&Cウェッジ・テイル)空中早期警戒機を導入した。

 

また、韓国の保有できる米韓ミサイル指針により対地ミサイルは射程距離180kmまでだったが、韓国は米韓ミサイル指針を無視し、なし崩しで距離射程300kmの小型巡航ミサイルを多数配備した。さらに韓国は射程距離800kmから1000kmの小型巡航ミサイル開発を進めた。

2000年代、射程距離800kmの弾道ミサイルの開発している。日本にも使用されることが表明されている。

 

1965年、日本と韓国は日韓基本条約、日韓請求権により日本と韓国間の問題は完全、不可逆、最終的に解決した。

日本は韓国に60兆円のインフラ無償譲渡、民間資産の無償譲渡、800億円の経済協力、新日本製鐵、川崎製鉄、神戸製鋼所、日本鋼管、住友金属工業、日新製鋼の製鐵技術を無償技術供与、三菱重工業、川崎重工業、住友重機械工業、日本鋼管、日立造船、三井造船、石川島播磨重工業の造船技術を韓国に無償技術供与、無償援助、韓国は援助品を分解し分析、リバースエンジニアリングする契約違反、国鉄、川崎重工業(川崎車両、汽車製造)、日立製作所、近畿車輛、日本車両、東急車輛製造の鉄道車両技術を韓国に無償技術供与と無償援助、韓国は援助品を分解し分析、リバースエンジニアリングする契約違反、国鉄、日立製作所、東芝、三菱電機、東洋電機製造の鉄道車両用モーター技術・鉄道車両用制御器技術を韓国に無償技術供与と無償援助、韓国は援助品を分解し分析、リバースエンジニアリングする契約違反、日立製作所、東芝、三菱電機、松下電器産業、シャープ、三洋電機、NEC、富士通、富士電機のエレクトロニクス技術を無償技術供与と無償援助、韓国は援助品を分解し分析、リバースエンジニアリングする契約違反、1970年代からは韓国への無償資金援助、無償技術援助、有償資金援助を実施、技術供与では日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、松下電器産業、シャープの半導体技術を韓国に無償技術供与、1983年に日本は韓国経済危機に対し特別経済協力として韓国に4000億円供与、1990年に東芝が開発したフラッシュメモリー技術をサムスン電子、SKハイニックスに無償技術供与、大日本スクリーンの半導体製造装置技術をサムスン電子に技術供与、1996年に日本の半導体国家プロジェクト・セリートにサムスン電子の特別加入を認め通商産業省、日本の大学、日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通の半導体技術をサムスン電子に無償技術供与、日本の半導体国家プロジェクト日本EUVL基盤開発センターにサムスン電子とSKハイニックスの特別加入を認め経済産業省、東芝、ルネサスエレクトロニクス、東京エレクトロンの半導体技術をサムスン電子、SKハイニックスに無償技術供与、1997年に韓国通貨危機支援として1兆円供与、2006年に韓国ウォン高による韓国経済危機への支援として韓国に2兆円供与、2008年にリーマン・ショックによる韓国経済危機救済のため韓国に3兆円供与など、日本は韓国に無償資金援助、有償資金援助、無償技術供与を続け、韓国企業の契約違反を不問にしたにも関わらず韓国は反日政策、反日教育を続け、完全、不可逆、最終的に解決している従軍慰安婦問題など諸問題をアメリカ、ヨーロッパ、国連において反日ロビー活動をおこない日本の国益を毀損し続けた。さらに韓国の情報機関・国家情報院は日本において親韓国派の醸成、左翼の反日活動の支援など工作活動をおこなっている。

 

注1  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注2  国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

    『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

海人社編集部「韓国海軍の現況と将来」

海人社『世界の艦船』2003年3月号P104

注3  『JANE‘S FIGHTING SHIPS』10-11

注4  海人社『世界の艦船』2003年3月号P105

注6  エア・ワールド『世界軍用機年鑑 1993-94』P254

 

 

 


 

 

 

 第6章 東アジア各国の戦力 ロシア軍   2000年代

 

 ロシアの総兵力は152万人、予備役2000万人。

地上軍の兵力は67万人、8個軍管区、1個軍集団、14個軍司令部、8個軍団司令部である。

ロシア軍は極東地域に、シベリア軍管区、極東軍管区を置き、地上軍11万人を配備している。ハバロフスクに3個師団、ソビエツカヤガワニに4個師団、ペトロハヴロフスクに1個師団、サハリンに1個師団、日本の北方領土に1個旅団を配置しており、さらにウラジオストクに海軍歩兵師団を1個師団配置している。

主な装備はT-54/T-55戦車412両、T-62戦車761両、T-64A/B戦車625両、T-72L/M戦車1938両、T-80戦車3144両、新しい戦車にT-95戦車、T-14アルマータ戦車がある。

保管中戦車は1万1000両、PT-76軽戦車は200両、BRDM偵察車は2000両あり、歩兵戦闘車は1万7000両、装甲兵員輸送車は1万6000両ある。航空機にミルMi-24攻撃ヘリコプター1000機、輸送ヘリコプター1300機がある。

機械化、機甲化が進んでおり、旧ソ連時代と比較して戦力は減少しているものの、潜在的な能力は侮れないものとなっている。(注1)

 ロシア海軍は兵力17万5000人で、北洋艦隊、バルチック艦隊、黒海艦隊、太平洋艦隊の4個艦隊を有しており、太平洋艦隊は北洋艦隊とともに主力艦隊である。

 空母アドミラル・グズネツォフは満載排水量59439トン、蒸気タービン推進、兵装はSA-N-9短距離艦対空ミサイル32発、SS-N-19艦対艦ミサイル12基、CADS-N-1近接防御システム8基、30mm近接防御武器システム6基、RBU12000 10連装対潜ロケット発射機2基で、艦載航空機はスホーイ Su-33戦闘機、ミコヤン MiG-29K/KUB戦闘機、スホーイ Su-25UTG練習機など固定翼機22機、カモフ Ka-31早期警戒ヘリコプターなどヘリコプター17機である。

 キーロフ級原子力巡洋艦は満載排水量24690トン、原子力蒸気タービン推進、兵装はSA-N-20艦対空ミサイル96発、SA-N-9短距離艦対空ミサイル16発、SA-N-4短距離艦対空ミサイル連装発射機2基、SS-N-19艦対艦ミサイル20発、CADS-N-1近接防御システム6基、RBU1000 6連装対潜ロケット発射機2基、RBU12000 10連装対潜ロケット発射機1基、533mm5連装魚雷発射管2基である。艦載航空機はカモフKa-27ヘリコプター3機である。

 スラヴァ級艦隊防空ミサイル巡洋艦は1番艦が1982年に就役し、太平洋艦隊には、011「ワリヤーグ」が配備されている。スラヴァ級艦隊防空ミサイル巡洋艦は満載排水量11490トン、ガス・タービン推進、130mm連装砲2門、SA-N-6艦対空ミサイル64発、SA-N-4短距離艦対空ミサイル4発、SS-N-12艦対艦ミサイル16発、30mm近接防御武器システム6基、533mm5連装魚雷発射管2基、12連装対潜ロケット発射機2基、搭載航空機はカモフKa-50ヘリコプター(NATOコード:へリックス)で、対空戦能力とともに、対艦戦能力が非常に重視されている。(注2)

 ソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦は1番艦が1980年に就役し、18隻が就役したが、12隻が退役した。満載排水量8067トン、蒸気タービン推進、兵装は130mm連装砲2門、SA-7艦対空ミサイル単装発射機2基またはSA-N-12艦対艦ミサイル単装発射機2基、SS-N-22艦対艦ミサイル8発、30mm近接防御武器システム4基、533mm5連装魚雷発射管2基、搭載航空機はカモフKa-27ヘリコプター1機である。SS-N-22艦対艦ミサイル(NATOコード:サンバーン)は、マッハ2のスピードで巡航し、迎撃されにくいよう超低空をS字状に飛行するもので、西側諸国の最新鋭迎撃システムでも迎撃困難である。ソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦の攻撃能力は高いが、基本設計は1970年代のもので、電子戦装置など電子装備は古い。(注3)

 ウダロイ級駆逐艦は、1980年に1番艦が就役し、13隻が就役したが、現役は8隻であり、そのうち半数が太平洋艦隊の所属である。満載排水量は8500トン、ガス・タービン推進、兵装は100mm単装砲2門、SS-N-12艦対潜ロケット16発、SA-N-9短距離艦対空ミサイル64発、30mm近接防御武器システム4基、12連装対潜ロケット発射機2基、533mm4連装魚雷発射管2基、搭載航空機はKa-27ヘリコプター2機である。対潜戦に重きを置いた艦で、個艦防空に非常に力が注がれている。

 カシン級駆逐艦は満載排水量4826トン、ガス・タービン推進、兵装はSA-N-1艦対空ミサイル連装発射機2基、SS-N-25艦対艦ミサイル4連装発射機2基、76mm連装砲1基、RBU6000 12連装対潜ロケット発射機2基、533mm5連装魚雷発射管1基で、搭載航空機は無い。20隻が建造された。

 クリヴァック級フリゲートは1970年に1番艦が就役し、41隻が建造された。満載排水量は3560トン、ガス・タービン推進、兵装は100mm単装砲1門、SA-N-4短距離艦対空ミサイル連装発射機1基、12連装対潜ロケット発射機2基、533mm4連装魚雷発射管2基、30mm近接防御武器システム2基である。小型艦ながら対潜装備と個艦防空は充実している。

 ステレグシュチイ級フリゲートは2007年に就役がはじまった新世代フリゲートで、満載排水量2235トン、ディーゼル推進、兵装は9M96艦対空ミサイル16セル、SS-N-25艦対艦ミサイル8発、100mm単装砲1基、CADS-N-1近接防御システム1基、30mm近接防御システム2基で、搭載航空機はカモフKa-27ヘリコプター1機である。8隻が配備中である。

 ネウストラシムイ級フリゲートは、満載排水量4318トン、ガス・タービン推進、兵装はSA-N-9短距離艦対空ミサイル32発、SS-N-25艦対艦ミサイル8発、100mm単装砲1基、CADS-N-1近接防御システム2基、RBU12000 10連装対潜ロケット発射機1基、533mm5連装魚雷発射管4基、搭載航空機はカモフKa-27ヘリコプター1機である。2隻が現役である。

 グリシャ級フリゲートは満載排水量1219トン、ディーゼル推進、兵装はSA-N-9短距離艦対空ミサイル発射機1基、57mm連装砲1基または76mm単装砲1基、30mm近接防御武器システム1基、533mm4連装魚雷発射管2基、RBU6000 12連装対潜ロケット発射機2基である。94隻が建造された。

 ゲパルド級フリゲートは満載排水量1961トン、ディーゼル・ガスタービン推進、兵装はSA-N-4短距離艦対空ミサイル連装発射機1基、SS-N-25艦対艦ミサイル8発、SS-N-30巡航ミサイル8発、76mm単装砲1基、CADS-N-1近接防御システムまたは30mm近接防御武器システム2基である。搭載航空機は無い。

  オスカーⅡ級巡航ミサイル搭載原子力潜水艦は、1980年に1番艦が就役し、1997年までに11隻が就役したが、現役は6隻で、太平洋艦隊には4隻が配備されている。搭載巡航ミサイルは、西側諸国の艦隊攻撃を想定した対艦巡航ミサイルである。水中排水量は18300トン、原子力蒸気タービン推進、水中速力28ノット、兵装は対艦巡航ミサイルSS-N-19潜対艦ミサイル24発、650mm魚雷発射管2門、533mm魚雷発射管4門である。

 アクラ級攻撃型原子力潜水艦は、1988年に1番艦が就役し、18隻が就役した。水中排水量9100トン、原子力蒸気タービン推進、水中速力28ノット、兵装は533mm魚雷発射管2門、650mm魚雷発射管4門である。音響のステルス性を追求し、静粛性にも優れている。

 ヴィクター級攻撃型原子力潜水艦は、1960年代に1番艦が就役し、26隻建造されたが、現役はヴィクターⅢ級攻撃型原子力潜水艦4隻のみである。ヴィクターⅢ級攻撃型原子力潜水艦の1番艦は1988年に就役し、水中排水量は6401トン、原子力蒸気タービン推進、水中速力30ノット、650mm魚雷発射管2基、533mm魚雷発射管4基、である。

 シエラⅠ級攻撃型原子力潜水艦は、1984年に1番艦が就役し、2隻が建造され、1隻が現役で、1隻が改修作業中である。水中排水量8230トン、原子力蒸気タービン推進、水中速力34ノット、兵装は650mm魚雷発射管4基、533mm魚雷発射管4基である。高張力鋼製ではなくチタニウム製である。

 シエラⅡ級攻撃型原子力潜水艦は、1990年に1番艦が就役し、1隻が現役、1隻が修理中である。水中排水量9246トン、原子力蒸気タービン推進、水中速力32ノット、兵装は650mm魚雷発射管4基、533mm魚雷発射管4基、である。高張力鋼製ではなくチタニウム製であることである。

 キロ級攻撃型ディーゼル・エレクトリック推進潜水艦は、非常に静粛性に優れ、発見が困難である。1982年に1番艦が就役し、26隻建造されたが、15隻が退役し、4隻が建造中、太平洋艦隊には4隻が配備されている。水中排水量は3076トン、ディーゼル・エレクトリック推進、水中速力17ノット、533mm魚雷発射管6門を装備する。

 ラダ級攻撃型ディーゼル・エレクトリック推進潜水艦は、1番艦「サンクトペテルブルグ」が就役し、2隻が建造中である。水中排水量は2693トン、水中速力21ノット、533mm魚雷発射管6基を装備する。

弾道ミサイル搭載潜水艦は、667BDRデルタⅢ級弾道ミサイル搭載潜水艦4隻、667BDRMデルタⅣ級弾道ミサイル搭載潜水艦7隻、941タイフーン級弾道ミサイル搭載潜水艦1隻、955/955Aボレイ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦3隻、885/885Mヤーセン級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦1隻、がある。

 

 

 海軍航空隊の兵力は3万人である。作戦機783機、武装ヘリコプター251機で、4個艦隊航空隊からなる。

装備はツポレフ Tu-22M爆撃機100機、スホーイ Su-24戦闘攻撃機(初飛行1970年、自重22320kg、推力109,8kN×2)95機、スホーイ Su-25攻撃機(初飛行1975年、自重9500kg、推力44,2kN、固定武装30mm機関砲×2、ハード・ポイント10か所)50機、ミコヤン MiG-23戦闘機/MiG-27戦闘攻撃機(初飛行1967年、自重10200kg、推力127,49kN×1)30機、ツポレフ Tu―95爆撃機14機、対潜哨戒機151機、対潜哨戒ヘリコプター238機である。

 

 ロシア航空軍は、最盛期の1980年代中盤と比較して、半数以下の大幅な減少となったが依然、巨大な航空戦力である。

 

主力はスホーイ Su-24戦闘爆撃機(初飛行1970年、自重22320kg、推力109,8kN×2)、スホーイ Su-27戦闘機(初飛行1981年、自重17700kg、推力122,6kN×2)、スホーイ Su-27戦闘機の戦闘爆撃機型スホーイ Su-30戦闘爆撃機(初飛行1985年、運用開始1992年)、スホーイ Su-30戦闘爆撃機の発展型スホーイSu-35戦闘爆撃機、ミコヤン MiG-31戦闘機(初飛行1979年、自重21825kg、運用重量41000kg、推力151,9kN×2)、ミコヤン MiG-29戦闘機(初飛行1977年、自重8175kg、推力81,4kN×2)、スホーイ Su-27戦闘機の戦闘爆撃機型スホーイ Su-30戦闘爆撃機(初飛行1985年、運用開始1992年)、スホーイ Su-30戦闘爆撃機のサイド・バイ・サイド戦闘爆撃機型スホーイ Su-34戦闘爆撃機,スホーイ Su-25攻撃機(初飛行1975年、自重9500kg、推力44,2kN×2、固定武装30mm機関砲×2、ハード・ポイント10か所)などで、第4世代機が大部分を占める。

 

ミコヤン MiG-29戦闘機 220機ミコヤン MiG-31戦闘機 665機スホーイ Su-27戦闘機 484機スホーイ Su-30戦闘爆撃機 不明スホーイSu-35 戦闘爆撃機 不明スホーイ Su-34戦闘爆撃機 少数スホーイSu-24戦闘爆撃機 413機スホーイ Su-25攻撃機 202機、ISR(情報収集)機(戦闘機型・爆撃機型・輸送機型) 192機輸送機 523機ツポレフTu-22M-3バック・ファイアー爆撃機 66機、ツポレフ Tu-95ベア爆撃機 71機ツポレフ Tu-160ブラックジャック爆撃機 17機である。

 

また防空軍からミコヤン MiG-23戦闘機284機、ミコヤン MiG-31戦闘機425機、スホーイ Su-27戦闘機325機が空軍に編入される。

 

 ロシアの核戦略は大陸間弾道ミサイルが中心である。特にロシアの大陸間弾道ミサイルは移動式で、早期発見は困難である。大陸間弾道ミサイルはSS-18(射程距離16000km、弾頭500KT×10)が54基、SS-19(射程距離9000、弾頭50KT×6)、が40基、SS-24(射程距離10000km、弾頭550KT×10)が46基、SS-25(射程距離10500km、弾頭550KT)が160基、SS-27(射程距離10500km、弾頭550KT)が28基、RS-24が24基、である。

弾道ミサイル搭載潜水艦は、667BDRデルタⅢ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦4隻、667BDRMデルタⅣ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦7隻、941タイフーン級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦1隻、955/955Aボレイ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦3隻、885/885Mヤーセン級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦1隻、がある。

潜水艦発射弾道ミサイルは、SS-N-8(射程距離9100km、弾頭1MT)、SS-N-18(射程距離8000km、弾頭100KT×7)が48基、SS-N-20(射程距離8300km、弾頭100KT×4)、SS-N-23(射程距離8300km、弾頭100KT×4)が96基である。核弾頭搭載巡航ミサイルSS-N-21(射程距離3000km、弾頭200KT)もある。

 略爆撃機はツポレフTu-160爆撃機が11機、ツポレフTu-95MS爆撃機が55機で、核爆弾は約200基である。後継爆撃機にステルス爆撃機のPAK-DA未来型長距離航空機を開発中である。

 

注1 国際戦略研究所『ミリタリー・バランス』95-96

注2 『JANE‘S FIGHTING SHIPS』92-93

注1 海人社『世界の艦船』2003年3月号「ロシア太平洋艦隊」P36

注2 同上P36

注3 同上P37

注4 同上P37

注5 同上P34

注6 同上P35

注7 同上P35

注8 『平成15年版防衛白書』P69

注9 エア・ワールド」『世界軍用機年鑑1993-94』P49

注10 同上P47

注11 『平成15年版防衛白書』P319、『平成26年版防衛白書』資料1

注12 同上P320

 

注13 同上P319

 

 

 

 

第4章 日本の危機 

 

 

 

 

第1節 日本の危機 アメリカ

 

 アメリカは政府要人、高官の登用にポリティカル・アポイントメント制をとっており、政権によって外交・防衛政策が違ってくる。

 

1981年から1992年まで続いた共和党政権での対日本政策担当の中心はジェームズ・アワー国防省日本部長であった。ドイツ系カトリック教徒のジェームズ・アワー氏(現バンダービルド大学教授)は、マーケット大学在学中、予備士官訓練制度(ROTC)によって軍事訓練を受け、1963年に海軍少尉で任官、ベトナムで掃海艇勤務に配属された後、タフツ大学大学院フレッチャー・スクールに進学、1970年に日本に留学した。日本留学で「よみがえる日本海軍」を執筆、日本の海上自衛隊を的確に評価した。

1979年に国防省日本部長に着任、日本の重要性を説き、冷戦激化の中の日米同盟強化に尽力した。

ジェームズ・アワー氏は日本の防衛力の強化と、日米同盟の強化、日本の集団自衛権行使をすすめている。(注1)

 

同じく、1980年代の共和党政権で、国防省東アジア担当国防次官補をつとめ、日米関係に大きな影響力を持つ人物としてリチャード・アーミテージ氏(2001年から2004年までジョージ・W・ブッシュ政権で国務副長官)がいる。

リチャード・アーミテージ氏は、1967年に海軍士官学校を卒業、海軍少尉としてベトナム戦争に従軍後退役する。直後に、海軍、中央情報庁(CIA)、アメリカ軍駐在武官本部スタッフ、民間人の身分で特殊作戦任務に従事した。その後、国防情報庁(DIA)、ボブ・ドール上院議員事務所スタッフ、ロナルド・レーガン大統領選挙キャンペーン・スタッフを経て、1981年に国防省東アジア担当国防次官補に着任する。

リチャード・アーミテージ氏は東アジアにおいて日本を重視するよう訴え続けた。

アーミテージ氏は日本の防衛力強化、日米同盟の強化、日本の集団自衛権行使をもとめているが、日本の核兵器保有には否定的で、そのまえに通常戦力の大幅な増強、核兵器配備基地を自力で防衛できる通常戦力の整備を求めている。(注3)

 

国家安全保障会議アジア上級部長などを歴任したCSIS戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン氏は、日本の防衛力強化に難色を示し、日本の核兵器保有にかなり強硬に反対し、日本の偵察衛星保有にすら強硬に反対するなど、日本の安全保障確立、日本の安全保障自立に強く反対していた。

 CSIS戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン氏は自民党の小泉純一郎・元内閣総理大臣の要請で小泉純一郎氏の次男・小泉進次郎氏を教育した。 

 

 1969年から1976年まで、ニクソン・フォード政権において大統領補佐官や国務長官をつとめ、ハーバード大学の教授でもあり、アメリカ政界、学界、財界のみならず、全世界に影響を行使しえるドイツ出身のユダヤ教徒であるヘンリー・キッシンジャー氏。コンドリーザ・ライス前国務長官が親北朝鮮、親中国外交を推進したのもヘンリー・キッシンジャー氏の全面的なアドバイスに盲従したためである。

 

ヘンリー・キッシンジャー氏は1997年8月25日の読売新聞「地球を読む」において、「米中関係 共存の道探る好機」と題し、そこで「少なくとも今後十年間、日本の軍備はますます恐るべきものとなろう。」(注9)と国際政治学者とは考えられないアホ見解を表明した後、「さらに、北京の立案者たちは、インドや韓国、ロシア、ベトナム、さらに台湾の軍事能力を無視することはできない。」(注10)、「中国にとって米国と日本の関係は、依然として懸念のもとである。」(注11)と、中国に肩入れし中国の立場のみを強調している。

1999年10月25日の読売新聞「地球を読む」において、「薄れた国家独裁色」と題し中国は独裁ではなくなってきていると中国を美化し、「インドから日本、ロシアに至るまで、軍事的に相当な隣人と向き合っている」(注12)と中国に異様なまでに肩入れし中国の軍事力を擁護している。

1999年5月10日の読売新聞「地球を読む」においては、「軍事的挑戦をおこなったのは台湾を巡る国家統一の懸念や、南沙諸島などの伝統的な領土主張の擁護のためだった。中国の戦略能力は20基そこそこの戦略核を擁するに過ぎない。」(注13)と主張、台湾と東南アジアに対する中国の軍事的恫喝を支持している。

また、天安門事件ではABCテレビ「ABCワールド・ニュース・トゥナイト・ウィズ・ピーター・ジェニングス」において、マスター・オブ・セレモニーのピーター・ジェニングスのインタビューに対し、「私ならどのような制裁もしない。」と語っている。

1995年7月にはワシントン・ポストで「アメリカも中国もそれぞれ理由は異なるが、一つの覇権国家によってアジアが支配されることに反対している」と意味深な文言を残し、「中国はアメリカに強力な近隣諸国との関係を均衡させる手助けをして欲しいのだ。」、「少なくとも中国が自らそれができるほど力をつけるまでは」と、異様なまでに中国に肩入れし中国の大軍拡を擁護、中国の将来のアジア覇権を認めている。(注14)

 

 ロナルド・レーガン大統領政権の東アジアの安全保障政策は、リチャード・アーミテージ国務次官補、ジェームズ・アワー国防省日本部長らの主張する日本重視の考えヘンリー・キッシンジャー元国務長官の主張する中国重視の考えが激しく対立した。

ジョージ・ブッシュ副大統領、キャスパー・ワインバーガー国防長官、ジョージ・シュルツ国務長官は、リチャード・アーミテージ国防次官補、ジェームズ・アワー国防省日本部長の日本重視の主張を採用した(注2)。

 

 ジョージ・H・W・ブッシュ大統領政権で国家安全保障担当大統領補佐官になったブレント・スコウクロフト氏は、キッシンジャー・アソシエイツに入社、親中国の姿勢を明らかにするものの、中国に対して警戒感を示した。

 

ジョージ・H・W・ブッシュ大統領政権で国務副長官となり、政権末期に国務長官に就任したローレンス・イーグルバーガー氏もキッシンジャー・アソシエイツに入社、アメリカ企業と中国共産党との関係を仲介した。

 

リチャード・アーミテージ氏は文藝春秋・文春新書『日米同盟VS中国・北朝鮮 アーミテージ・ナイ緊急提言』において、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官ハーバード大学教授とズビグニュー・ブレジンスキー元大統領特別補佐官コロンビア大学教授について「考えてもみて下さい。キッシンジャーやブレジンスキーといった人たちはこれっぽっちも日本のことやアジアのことわかっていないのです。まったく、本当に!」とかなり強い調子で批判している。

 

イエール大学卒業後、中央情報庁(CIA)で東アジアを担当し、事実上の在台湾アメリカ大使館であるアメリカ在台湾協会台北所長を経て1989年から1991年まで中国大使を務めたジェームズ・リリー氏。ジェームズ・リリー氏は中国を厳しく批判していた。

 

リチャード・アーミテージ国防次官補は、日米同盟の強化、防衛力の大幅な強化を求めたが、日本のFSX(次期支援戦闘機)計画において、日本の単独開発には反対した。その理由として、日本単独ではその航空機技術の低さから満足な性能を得る戦闘機は開発できない、悪化する日米貿易摩擦を緩和するために航空機分野はアメリカが主導するのが得策である、というものだった。その結果、FSXはゼネラル・ダイナミクスF-16C/Dブロック40ファイティング・ファルコン戦闘機をベースに、日本とアメリカが共同開発することになった。(注2)

 

 クライド・プレストウィッツ元商務省次官補代理はFSXについて、「日本がアメリカの航空機技術を盗もうとしている」と主張した。

アメリカ議会、アメリカメディアはクライド・プレストウィッツ元・商務省次官補代理の影響を受け日本を批判し、日米関係は悪化した。

 

 アメリカ右派の自由主義思想であるリバータリアニズムと、リバータリアニズムを代表するシンクタンクのケイトー研究所の外交・防衛政策の責任者で、ケイトー研究所の副所長でもあるテッド・カーペンター氏は、日本は地上発射大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル、長距離飛行可能な戦略爆撃機を保有し核のトライアドを構築し、日本は独自で核の抑止力を持つべきだとしている。通常兵力では、空母を保有し、航空戦力を大幅に強化し、日本独自でシー・レーン防衛すべきであるとしている。さらにアメリカ合衆国軍は日本から撤退し、そのうえで日本とアメリカは友好関係を築くべきとしている。(注4)

同様の立場に、ダグ・バンドウ氏がいる。ダグ・バンドウ氏もリバータリアンで、アメリカ合衆国のアジア太平洋への介入、地域紛争への介入に否定的見解を表明している。 

 

ニクソン大統領のスピーチライターをつとめ、1992年の共和党大統領予備選挙のニュー・ハンプシャー州予備選挙でトップとなり、その後は政治評論家、ポリティカル・ディスク・ジョッキーなどを正業としているアイルランド系カトリック教徒のパット・ブキャナン氏は、自らを「ネオ・アイソレーショニスト」と名乗るアイソレーショニスト(鎖国主義者)である。

宮沢喜一・内閣総理大臣は共和党大統領予備選挙に出馬したパット・ブキャナン氏を「泡沫の人」と論評したが、直後にパット・ブキャナン氏は重要州、重要予備選挙州のニュー・ハンプシャー州予備選挙でトップとなり、現役のジョージ・H・W・ブッシュ大統領の選挙戦略に大打撃を与えた。

パット・ブキャナン氏は「アメリカ・ファースト」、「バイ・アメリカン」を訴え、アメリカ企業製品の購入、アメリカ国内での生産、輸入製品への高関税付加をもとめる経済・通商の保護主義者である。外交・防衛政策では海外駐留のアメリカ合衆国軍の全面撤退と、大幅な軍縮政策を主張している。

 

コリン・パウエル氏はニュー・ヨーク市立大学に入学、ROTC予備士官訓練制度により陸軍士官となりベトナム戦争に従軍した。その後、ロナルド・レーガン大統領政権で国家安全保障担当大統領補佐官となり、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領政権で統合参謀本部議長に就任した。ジョージ・W・ブッシュ政権では国務長官となり東アジアに対しても影響力を発揮した。

 

ジョージ・W・ブッシュ大統領政権は、ディック・チェイニー副大統領、コリン・パウエル国務長官、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、リチャード・アーミテージ国務副長官、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官、トーケル・パターソン国家安全保障会議東アジア上級部長、ジョン・ボルトン国連大使の助言で、中国を「戦略的パートナー」から「戦略的競争相手」に変更し、中国に対する警戒感を高めた。

 

 ジョージ・W・ブッシュ大統領政権でコリン・パウエル氏は国務省官に就任し、リチャード・アーミテージ氏は国務副長官に就任、東アジアだけでなく全世界に影響力を及ぼした。

しかしリチャード・アーミテージ国務副長官とコリン・パウエル国務長官は第2期ジョージ・W・ブッシュ大統領政権には入らなかった。

リチャード・アーミテージ氏は国務副長官辞任以降、コンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官とポール・ウォルフォウィッツ国防副長官との関係について「かつては友人だった。今はそうではない。」と発言した。

 

イラク戦争を強硬に推し進める学者のコンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官とポール・ウォルフォウィッツ国防副長官、イラク戦争に否定的なトーマス・ホワイト陸軍長官、エリック・シンセキ陸軍参謀総長、陸軍参謀本部の陸軍大将を支持する元・統合参謀本部議長コリン・パウエル国務長官と海軍士官学校出身の元・海軍士官リチャード・アーミテージ国務副長官の対立は激しいものとなった。

 

コリン・パウエル氏、リチャード・アーミテージ氏がジョージ・W・ブッシュ大統領政権を去り、トーマス・ホワイト陸軍長官が解任され、エリック・シンセキ陸軍参謀総長の退役式典にドナルド・ラムズフェルド国防長官、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官が出席しない異常な状況で、ジョージ・W・ブッシュ大統領政権が陸軍参謀総長を現役の陸軍大将に打診しても拒否され続けたので、予備役のピーター・J・シューメイカー氏が招集され陸軍参謀総長に就任を命じられる異常事態となった。

 

2005年からのジョージ・W・ブッシュ大統領政権はコンドリーザ・ライス国務長官が安全保障において主導権を握った。

コンドリーザ・ライス国務長官は北朝鮮に譲歩し続け、北朝鮮をテロ支援国家指定から解除し北朝鮮への経済制裁を緩め、北朝鮮を助けた。

またコンドリーザ・ライス国務長官は中国に譲歩する政策をとった。中国重視派の重鎮国際政治学者ヘンリー・キッシンジャー氏に助言を求めた結果である。

しかし中国、北朝鮮はアメリカの意向に沿うことは一切なかった。コンドリーザ・ライス国務長官の親中国戦略、親中国政策、親北朝鮮戦略、親北朝鮮政策はアメリカの全く国益に与しなかった。

 

1993年から2000年まで続いたビル・クリントン大統領政権では、トヨタ自動車のレクサスLS400、レクサスGS300、レクサスES300、トヨタ・アバロン、日産自動車のインフィニティQ45、インフィニティJ30,インフィニティI30、日産マキシマ、本田技研工業のアキュラRL、アキュラNSXなど日本製高級車が輸出不可能になるほどの超高率の関税をかけることを提案するなど、反日の政策を掲げていた。

 

ビル・クリントン大統領政権で財務長官になったロイド・ベンツェン氏は、上院議員時代に反日に近い対日本強硬派を売りにしており、反日に近い対日本強硬の姿勢がビル・クリントン大統領に評価されていた。

 

 1997年にUSTR合衆国通商代表に就任したシャーリーン・バシェフスキー氏は、1997年の読売新聞のインタビューで、「日本より中国の方が良い国」と発言、露骨なまでに親中国の姿勢を強調した。

 

1993年からクリントン政権で東アジア担当国務次官補を務めていたジョセフ・ナイ氏(ハーバード大学ケネディ行政学大学院長)は、1970年代後半のカーター政権では、ズビグニュー・ブレジンスキー大統領特別補佐官とともに日本封じ込め・弱体化に賛同していたが、クリントン政権では日本国憲法の枠内での極東における日米防衛協力推進を主張し、2000年のアーミテージ・レポートでは日本国憲法改正と集団自衛権強化、日本の防衛力強化を主張するに至っている。

 

ビル・クリントン大統領政権でハーバード大学准教授から国務次官補代理となったカート・キャンベル氏は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改訂を担当した。

しかしカート・キャンベル国務次官補は、日本は左翼が強く軍事・防衛・安全保障に関する法律を立案・策定することが困難ということを知らない、日本は左翼が強く自衛隊・アメリカ軍が空港、港湾、公有地を使用することが困難ということを知らない、日本は左翼が強く左翼の圧力により地方自治体、民間企業が自衛隊、アメリカ軍に協力できるか不透明ということを知らない、日本に有事法制が無いということを知らない、防衛庁・自衛隊に権限が無いということを知らない、日本の有力政治学者、有力国際政治学者、有力安全保障研究者が防衛庁の省昇格に反対、自衛隊強化に反対しているということを知らない、統合幕僚会議議長はアメリカの統合参謀本部議長と似たような役職を作るようアメリカに要請されたが自衛隊が力を持つことに反対する大蔵省、警察庁によってただの名誉職にされ全く力が無い役職にされたことを知らない、戦時においても大蔵省、警察庁、建設省、郵政省、農林水産省が大きな力を持ち軍事・防衛を否定し有事対応を妨害するということを知らない、などカート・キャンベル国務次官補はアメリカによる日本弱体化がいつまでも続いていることを知り衝撃を受ける。

カート・キャンベル国務次官補は日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改訂には時間と労力がかかることを理解するまで時間がかかった。

 

ビル・クリントン大統領から駐日大使に任命されたウォルター・モンデール駐日大使(1977年から1980年まで副大統領)は、尖閣諸島紛争にアメリカは関与しないと発言、サンディ・バーガー国家安全保障担当大統領補佐官、バウチャー国務省報道官もこのことを追認した。日本での怒りの声を考慮したカート・キャンベル国防次官補代理は、日本の施政権下にある尖閣諸島は日米安全保障条約によって守られると、政府高官の前言を撤回した。しかし、クリントン民主党政権は中国を「戦略的パートナーシップ」と位置づけ中国を重視し、中国を好意的に扱い中国の国益となる政策を立案した。

 

 1977年から1980年までジミー・カーター大統領の特別補佐官をつとめたコロンビア大学教授のズビグニュー・ブレジンスキー氏は、アメリカの外交・防衛政策および世界の政治に大きな影響力を持つ。

ズビグニュー・ブレジンスキー氏はアル・ゴア民主党大統領候補外交顧問、ジョン・ケリー民主党大統領外交顧問、バラク・オバマ大統領外交顧問を務めた。

ズビグニュー・ブレジンスキー氏は、世界有数の外交論文集である『フォーリン・アフェアーズ』の1997年9/10月号に、「ユーラシアの地政学」という論文を発表している。そこでは、「とりわけ重要なのが、NATO,米国とさらには中国とのパートナーシップの形成であり、これを軸にロシア、中央アジア、日本との安定的共存を図っていかなければならない。」(注5)、「核戦力を別とすれば、中国が自らの地域を越えてその軍事的影響力を行使する能力をもつことは当面ありえない。」(注81)、「日本は極東における米国の不沈空母であってはならない。日本はアジアでの米国の主要パートナーであってはならない。」(注6)、「(日本を)地域大国になろうとする試みを回避させる方向へ向かわせる。」(注7)、「日本がグローバルな影響力を手にすることができるのは、地域大国になりたいという望みをおさえた場合だけである。」(注8)と主張、日本の大国化に反対し、日米同盟も否定するなど反日、嫌日の姿勢を強調し、中国をNATOと同等のパートナーとする構想を主張している。

しかし中国は、日本の尖閣諸島に対しての領有権主張と軍事威嚇、東シナ海において日本とアメリカへ軍事威嚇、南シナ海においてフィリピン、ベトナムから武力奪取した暗礁(低潮高地)は国際法で領土化できないとされているにも関わらず埋め立て領土化し、さらにバラク・オバマ大統領に対し埋め立てた暗礁は領土化しても軍事基地にはしないと明言したにも関わらず軍事基地化した。さらに中国は領土化が認められていない暗礁付近の公海を航行する合衆国海軍の艦艇に対し、中国人民解放軍海軍や民兵が危険な異常接近、航路への障害物投機など合衆国海軍に威嚇を続け、南シナ海におけるアメリカの権益を大きく毀損した。

 

ズビグニュー・ブレジンスキー氏が熱望した中国のパートナー化という夢想・妄想はすぐに破綻した。

ズビグニュー・ブレジンスキー氏は高齢で思考力・判断力が低下していたが、表舞台から引退しなかった。その結果、ズビグニュー・ブレジンスキー氏は自身の影響下にない学者、研究者から批判されることとなった。

 

 ズビグニュー・ブレジンスキー氏はアル・ゴア民主党大統領候補の外交顧問、ジョン・ケリー民主党大統領候補の外交顧問、バラク・オバマ大統領の外交ブレーンとして中国重視、中国はパートナー、中国は敵ではない、と中国との関係強化を主張した。

 

オバマ政権は「G2」と表現し中国との関係を重視、中国と良好な関係が築けると判断していたが、中国側にその意思は無く、東アジア政策は迷走を続けた。

スーザン・ライス国家安全保障問題担当補佐官は中国を称える姿勢を示し、チャック・ヘーゲル国防長官は中国の暴挙を批判していた。

台湾はダッソー ミラージュ2000戦闘機60機の更新としてロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機66機の購入をアメリカに打診したがアメリカ、バラク・オバマ大統領は拒否した。

最新のロッキード・マーティン F-35AライトニングⅡ戦闘機や20世紀最強の戦闘機の派生型であるボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機ではなく、古くハイ・ロー・ミックス構想のローにあたる性能より数を揃えることを目的とした低価格て比較的低性能のロッキード・マーティン F-16C/Dブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機の66機のみの売却すら中国に阿って台湾に売却しなかったバラク・オバマ大統領。

 

中国は日本の尖閣諸島に対しての領有権主張と軍事威嚇、東シナ海において日本とアメリカへ軍事威嚇、南シナ海においてフィリピン、ベトナムから武力奪取した暗礁(低潮高地)は国際法で領土化できないとされているにも関わらず埋め立て領土化した。

中国は埋め立てた暗礁は領土化しても軍事基地にはしないとバラク・オバマ大統領に明言したのでバラク・オバマ大統領は中国による暗礁埋め立て領土化を承認した。

しかし中国はバラク・オバマ大統領に埋め立てた暗礁を軍事基地化しないと明言したにも関わらず軍事基地化した。

合衆国海軍は埋め立てた暗礁は領土化できないという国際仲裁裁判所の判決もあり、中国が埋め立てた暗礁すぐそばの海は公海なので埋め立てた暗礁すぐそばの公海を合衆国海軍艦艇が航行する「航行の自由作戦」を立案した。しかしバラク・オバマ大統領は埋め立てた暗礁から12カイリ以上離れた場所での合衆国海軍艦艇の航行にするよう命令、バラク・オバマ大統領は中国による暗礁の埋め立ての領土化を事実上認めることにした。

さらに中国は領土化が認められていない埋め立てた暗礁から12カイリ以上離れた公海を航行する合衆国海軍の艦艇に対し、中国人民解放軍海軍艦艇や民兵が合衆国海軍艦艇に危険な異常接近、航路への障害物投機など合衆国海軍に威嚇を続け、南シナ海におけるアメリカの権益を大きく毀損した。

  

ロバート・ゲイツ氏は国防長官の就任中、「F-22戦闘機はイラクやアフガニスタンで役に立たない。」と発言するなど、イラク、アフガニスタンという格下相手の非対称戦ばかり重視し、中国の脅威、中国・ロシアという大国との正規戦の重要性への言及はあまりしなかった。ロバート・ゲイツ国防長官の意向というよりバラク・オバマ政権の意向で、ロバート・ゲイツ国防長官は国民が選んだコマンダー・イン・チーフのバラク・オバマ大統領へ忠誠心を示した。

ロバート・ゲイツ国防長官は普天間基地移転合意を一方的に破棄した鳩山由紀夫・内閣総理大臣に対し制裁として訪日時に陸上自衛隊第302保安警務中隊の栄誉礼および儀仗を拒否し、防衛省の赤絨毯も拒否した。しかし、鳩山由紀夫氏および民主党議員に意図は伝わらなかった。

 

 ロバート・ゲイツ国防長官は韓国ノ・ムヒョン大統領の「東アジアの危機の要因はアメリカと日本」という発言、「日本を韓国とアメリカの仮想敵国にしよう」という提案、を聞かされる。ロバート・ゲイツ国防長官は韓国ノ・ムヒョン大統領について「この男は頭がおかしいと思った」と回顧録に書いた。

 

2000年代、東アジアに関わる人物に、リチャード・アーミテージ、ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、コリン・パウエル、ジェームズ・アワー、エズラ・ヴォーゲル、ジェームズ・リリー、ジェームズ・ケリー、カール・フォード、ダグラス・パール、ジョセフ・ナイ、カート・キャンベル、トーケル・パターソン、マイケル・グリーン、コンドリーザ・ライス、ジョン・ケリー、ボブ・ドール、ウォーレン・クリストファー、シャーリーン・バシェフスキー、ケント・E・カルダー、エドワード・リンカーン、ロバート・ゲイツ、チャック・ヘーゲル、マデレーン・オルブライト、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・パール、ルイス・リビー、リチャード・アーミテージール・ウォルフォウィッツ、テッド・カーペンター、ダグ・バンドウ、パット・ブキャナン、ウォルター・モンデール、ウィリアム・サファイア、アーヴィング・クリストル、ビル・クリストル、スーザン・ライス、デイヴィッド・ブラノ、ノラ・ベンサヘル、ショーン・ブリムリー、パトリック・クローニン、ロバート・ワーク、デイヴィッド・バートゥ、ネイサン・フレイアー、マレン・リード、クラーク・マードック、キム・ウィンカップ、ダヴ・ザヘイム、ミシェル・フロノイ、バーリー・ブレックマン、ゴードン・アダムス、トシ・ヨシハラ、ラッセル・ランボー、トーマス・ドネリー、マッケンジー・アーグレン、マイケル・オハンロン、アンドリュー・クレパインヴィッチ、ジム・トーマス、マーク・ガンジンガー、トッド・ハドソン、ヴィクター・チャ、サム・ナン、ダニエル・イノウエ、ブレント・スコウクロフト、などがいた。

 シンクタンクにはハーバード大学ケネディ行政学大学院、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院SAIS、プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン研究所、戦略国際問題研究所CSIS、スタンフォード大学フーバー戦争・革命・平和研究所、新アメリカ安全保障センターCNAS、外交問題評議会CFR、ケイトー研究所、ユダヤ人国家安全保障問題研究所JINSA、戦略予算評価センターCSBA、RANDコーポレーション、ハドソン研究所、ブルッキングズ研究所、カーネギー国際平和財団、タフツ大学フレッチャー法・外交研究所、ロックフェラー財団、ヘリテージ財団、フォード財団、スミソニアン協会、アメリカン・エンタープライズ研究所AEI、スティムソン・センターなどがある。

 

 2000年代、アメリカ合衆国の主要な安全保障アナリストとして、新アメリカ安全保障センターにデイヴィッド・ブラノ、ノラ・ベンサヘル、ショーン・ブリムリー、パトリック・クローニン、ロバート・ワーク、戦略国際問題研究所にデイヴィッド・バートゥ、ネイサン・フレイアー、マレン・リード、クラーク・マードック、キム・ウィンカップ、ダヴ・ザヘイム、スティムソン・センターにバーリー・ブレックマン、ゴードン・アダムス、ラッセル・ランボー、アメリカン・エンタープライズ研究所にトーマス・ドネリー、マッケンジー・アーグレン、ブルッキングズ研究所にマイケル・オハンロン、戦略予算評価センターにアンドリュー・クレパインヴィッチ、ジム・トーマス、マーク・ガンジンガー、トッド・ハドソンがいた。

 

 

 

 

注1   ジェームズ・アワー「日米安保協力体制への三つの提言」

中央公論社『中央公論』1994年1月号  

注2   リチャード・アーミテージ氏の証言 読売新聞朝刊1995年11月25日

注3   リチャード・アーミテージ「米国と日本 成熟したパートナーシップにむけて」2000年10月11日

     リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイ

文芸春秋 文春新書『日米同盟VS中国・北朝鮮』

注4   田久保忠衛氏の証言

テッド・カーペンター「日本は『大国の義務』と自立のために米国の安全保障の毛布から出よ」小学館『SAPIO』1999年8/25・9/8合併号

注5   ズビグニュー・ブレジンスキー「ユーラシアの地政学」

     外交問題評議会『フォーリン・アフェアーズ』97年9/10月号

     中央公論社『中央公論』1997年1月号P395

注6   同上P395

注7   同上P401

注9   同上P403

注10  読売新聞朝刊「地球を読む」1997年8月25日月曜日

注11  同上

注12  同上

注13  読売新聞朝刊「地球を読む」1997年10月25日月曜日

注14  読売新聞朝刊「地球を読む」1999年5月10日月曜日

 

 

 

 

 

 

 

 第2節 日本の危機 中国

 

 中国は1989年以来、国防費を対前年度比10%以上増加させ続けている。さらに、この国防費の中には装備導入費、研究開発費などは含まれていない。ロシアからの輸入兵器であるスホーイSu-27戦闘機、スホーイSu-30MK2戦闘爆撃機、スホーイSu-30MKK戦闘爆撃機、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級ディーゼル・エレクトリック推進潜水艦の購入費は国務院予算に計上され、核兵器の予算は科学技術予算や電力開発予算に計上されている。このことから中国の実際の国防費は公表されているものの3倍から8倍であると推測される。(SIPRI、ISIS、合衆国CIA、合衆国国防省、合衆国軍備管理軍縮庁など調査報告)

 1989年の天安門事件によって西側陣営からの軍事技術移転・導入が困難になった中国は経済的に困窮するロシアに接近した。

中国は1992年にロシアからスホーイSu-27戦闘機の中国への輸出をとりまとめ、翌1993年に第一陣として26機のスホーイSu-27戦闘機を受領し、現在に至るまで輸入を続けている。

さらに中国はスホーイSu-27戦闘機の中国国内でのライセンス生産をおこなうようになり、保有数は150機を突破するにいたっている。これによって中国人民解放軍航空軍・海軍航空隊の大幅な近代化と戦力増強を実現しつつある。また、中国はスホーイSu-27戦闘機の戦闘爆撃機型であるスホーイSu-30MKK戦闘爆撃機、スホーイSu-30MKK戦闘爆撃機の中国型スホーイSu-30MK2戦闘爆撃機をロシアから輸入しロシア製第4世代戦闘機の数は300機以上となり、近隣諸国の脅威となっている。

中国はスホーイSu-27戦闘機を無断コピー生産した殲撃11B/BH J-11B/BH戦闘機、スホーイ Su-30MK2戦闘爆撃機を無断コピー生産した殲撃16 J-16戦闘爆撃機、空母艦載機スホーイ Su-33戦闘機を無断コピー生産した殲撃15 J-15戦闘機を大量に生産、導入している。

また、これら戦力を有効に活用するために早期警戒管制システムの導入につとめている。

 海軍においても中国国産の駆逐艦、フリゲート、潜水艦の着実な配備をはじめ、ロシアからソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦を輸入し、今後も大幅に増強される。

 ソブレメンヌイ級駆逐艦に装備されているマッハ2の速度で、超低空をS字状に飛行するSS-N-22艦対空ミサイルは、高高度脅威を目的に開発されたイージス・システムを艦隊防空の主軸に据える日本の艦隊防空に打撃を与え、脅威となった。

 空母保有は人民解放軍創設以来の念願だったが、その真意は隠し通してきた。1980年に艦隊世界一周を成功させたことによって空母保有の実現へ走り出した。

2008年12月23日、中国・国防省の黄雪平報道官は「空母は国家の総合力の表れだ。中国政府は各方面の要素を総合し、関係する問題を研究、考慮する。」と述べ、遂に正式に空母保有を宣言した。

空母保有の理由として「中国領海の主権と権益を守ることは軍の神聖な職域だ。」と強調した。

 

 中国と日本の直接的懸案事項は尖閣諸島の防衛問題である。尖閣諸島は明治政府による先占の実効性により我が国固有の領土である。

中国は、日本の第二次世界大戦敗戦後には尖閣諸島の領有権を主張しておらず、1968年の国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が尖閣諸島における石油埋蔵の可能性を報告した直後の1970年から領有権を主張し始めた。

 中国は1992年に領海法を制定し、その中国領海法では尖閣諸島の、南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島を中国の領土であると主張している。これらの島々は日本、ベトナム、フィリピンなどに不当に占拠されているとして、武力による奪還も明記されている。

1978年、中国政府の扇動により尖閣諸島に中国船籍の漁船大集団を派遣した。1995年から1996年には中国人民解放軍の情報収集船と海洋調査船が尖閣諸島付近や南西諸島付近の日本領海と日本の排他的経済水域で海洋調査、そしてその後も継続的に海洋調査船や海軍艦船を尖閣諸島付近、南西諸島付近の日本領海および日本領海ぎりぎりのところまで接近させ、調査活動、威力偵察をおこなっている。

1996年9月には尖閣諸島近辺56kmの海域で中国人民解放軍海軍東海艦隊、中国人民解放軍空軍南京軍区人民解放軍空軍が参加しする尖閣諸島奪取訓練を実施している。駆逐艦2隻、フリゲート2隻、スホーイSu-27戦闘機が参加する本格的なものだった。(注2)

 尖閣諸島周辺では中国人民解放軍海軍の海洋調査船「東調232」、「大地」、「海氷723」、中国人民解放軍の影響下にある国家海洋局、国務院国土資源部の海洋調査船「化学1号」、「海洋4号」、「奮闘4号」、「奮闘7号」、「中国海監18」、「大洋1号」、「東方紅2」、「濱海511」がソナー調査、ソノブイ投下など潜水艦戦に必要な潮流調査、海底地質調査、海流温度調査などの軍事調査を行っている。(注2)

 1995年4月と5月には沖縄トラフで中国国務院地質鉱山局「向陽紅9号」が海洋調査した。

1995年12月には久米島と大正島にある日本の排他的経済水域で「勘探3号」が日本の海上保安庁の制止を無視し海洋調査を続けた。

1995年から1996年にかけては尖閣諸島周辺で、中国情報収集艦船が非常に多い回数、日本領海を侵犯した。

1997年には中国国務院国土資源部の海洋調査船「奮闘7号」が大正島付近、尖閣諸島付近の日本領海を侵犯しながら海洋調査をおこなった。

1998年には宮古海峡で国家海洋局「海洋13号」がソナーを使用した調査をおこなっている。(注2)

2000年5月には中国人民解放軍海軍ヤンビン級情報収集兼砕氷艦「海氷723」が対馬海峡において複数回の往復航行、ジグザグ航行を実施、さらに津軽海峡においても複数回の往復航行、ジグザグ航行、アンテナの回転、ソナーの投下、ソノブイの投下を実施、その後、房総半島、紀伊半島沖の日本領海すれすれの場所においてアンテナを回転させるなどの行動をとった。

また、7月には、同じく中国人民解放軍海軍ヤンビン級情報収集兼砕氷艦「海氷723」が愛知県沖日本領海すれすれのところで情報収集活動をおこなった後、大隈海峡において情報収集活動をおこないながら通過していった。(注3)

 2004年11月10日には中国人民解放軍海軍の漢級攻撃型原子力潜水艦が日本の領海を侵犯した。

2004年4月23日、中国は沖ノ鳥島を「岩」と主張し日本の領土、領海、領空、日本の排他的経済水域を認めないと表明する。

2008年11月8日と2010年3月、2010年4月には中国艦隊が沖縄と宮古島の間を抜け太平洋に進出した。

2009年6月19日から中国人民解放軍海軍は沖ノ鳥島から260km付近で軍事演習するなど、中国は太平洋の覇権を表明し始めた。

 

日本政府が2012年9月11日に尖閣諸島を国有化してからは、9月14日に中国国家海洋局の監視船6隻が領海侵犯し、18日、19日には漁業監視船、海洋監視船16隻が領海侵犯した。2013年9月10日までに63日、216隻が領海侵犯し、接続水域には1051隻が侵入した。

 

中国は日本の排他的経済水域での海洋調査活動や、南西諸島、琉球諸島周辺での海洋調査活動など、日本の経済的な権益に対しての侵害、日本の国防に対しての脅威となるような調査活動を続けている。

経済発展し、シー・レーンの確保が必要となった中国にとって日本列島は天然の要塞で、日本を籠絡させることが国家安全保障、経済安全保障にとって重要になっている。

 中国政府は大陸棚を、大陸の延長部であるとする「自然延長論」を根拠に、東シナ海を中国の海と認識している。日本などがとる「中間線論」と折り合う気はないようである。

 一方で南シナ海では「中間線論」をとり、東南アジア諸国の大陸棚を侵食している。

 エネルギー輸入国、通商国家となった中国は、シー・レーン防衛の必要が出てきたことから、外洋海軍(ブルー・ウォーター・ネイヴィー)建設がはじまり、日本列島も中国の外洋海軍の活動域・防衛ラインに入る。まず第2列島線まで封鎖(接近阻止・領域拒否戦略)、最終的には、最低でもハワイ以西の西太平洋を中国の支配圏にしたい模様である。

 

 

注1 防衛庁防衛研究所『東アジア戦略概観2003』P149

注2 平松茂雄氏の調査・分析・研究による

注3 『平成15年版防衛白書』P65、毎日新聞朝刊2000年8月20日

 

 

 

 

 

 

 

第3節 日本の危機 台湾

 

 国共内戦に破れ、台湾に逃れてきた国民党、蒋介石、蒋経国政権は国内では独裁政治体制を敷き、中華民国の大陸復権を目指していた。中国(中華人民共和国)は、1954年から金門島、馬祖島への砲撃を始め、全力を挙げて台湾侵攻の機会をうかがってきた。1996年、独裁政治に終わりをつげるべく実行されようとしていた台湾の総統の民主選挙に対し、中国は3発のミサイル発射と、台湾上陸を前提とした大規模な軍事演習を実施、自由と民主主義に対する脅迫・恫喝をおこなった。しかし、台湾は恫喝に屈することなく、総統選挙を実施し、その結果、李登輝氏が総統に選ばれ、台湾は新たなる一歩を確実に進めることになった。

 しかし、中国は台湾の対岸に大量の地対地ミサイルを配備、スホーイSu―27戦闘機、スホーイSu―30MKK戦闘爆撃機、スホーイSu―30MK2戦闘爆撃機を300機以上、スホーイSu―27戦闘機の無断コピー殲撃11B/BH J-11B/BH戦闘機、スホーイSu―30MK2戦闘爆撃機の無断コピー殲撃16 J-16戦闘爆撃機、スホーイSu―33戦闘機の無断コピー殲撃15 J-15戦闘機を相当数保有、ミコヤンMiG-21戦闘機、ミコヤンMiG-19戦闘機などの旧型戦闘機を4000機以上保有、攻撃機を900機、爆撃機を300機以上配備し、人民解放軍海軍艦船とともに台湾周辺海上封鎖や台湾侵攻を実行する態勢を敷いている。 

台湾は、ロッキード・マーティンF-16Aブロック20ファイティング・ファルコン戦闘機150機、ダッソー ミラージュ2000-5戦闘機60機、IDF F-CK-1経国戦闘機150機、ノースロップ F-5E/Fタイガー戦闘機215機と、レーダー、情報通信網、MIM-104 PATRIOT地対空ミサイル防空システムなどによる高度の防空システムで空からの脅威に対抗し、オリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲート、フランスのステルス艦ラファイエット級フリゲートの台湾版・成功(チェンクン)級フリゲートを保有し、中国による海上封鎖に対抗しているが苦境に立たされている。

劣勢挽回のためのわずかな望みであった老朽化、性能陳腐化しているダッソー ミラージュ2000戦闘機60機のF-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機ブロック50ファイティング・ファルコン戦闘機66機への代替導入はアメリカのバラク・オバマ大統領に拒否されてしまい台湾の航空戦力の近代化は失敗し、中国の攻勢に対抗することが非常に困難となってしまった。

台湾、南シナ海で中国の希望を叶えるバラク・オバマ大統領。

 

 

 

 

 

 

 

 

第4節 日本の危機 南シナ海

 

南シナ海での近年の戦争、紛争は、中国とベトナムの西沙諸島(パラセル諸島)での戦争(1974年1月)、中越戦争(1979年2月)、南沙諸島(スプラトリー諸島)での中国とベトナムの戦争(1988年3月)、ナトゥナ諸島での中国とマレーシアの係争、南沙諸島・ミスチーフ礁での中国とフィリピンの戦争(1995年2月)などがあり、中国と東南アジア諸国との対立は深刻である。さらに南シナ海では強力な武装の残忍な海賊集団の存在、地形的な面からテロリストによる襲撃が容易など、危険地帯であり、日本のシー・レーンは脆弱である。

南シナ海には石油や天然ガスなどが埋蔵されていることが確実視されており、さらに海上交通の要衝であるため、この地域の実効支配は非常に重要である。そのなかで、中国のこの地域での実効支配強化のための軍事力の強化には目に余るものがある。

中国はミスチーフ礁(美済礁)、ジョンソン・サウス礁(赤爪礁)、ヒューズ礁(東門礁)、スビ礁(渚碧礁)、クアルテロン礁(華陽礁)、ファイアリー・クロス礁(永暑礁)、ガベン礁(南薫礁)暗礁/低潮高地は埋め立てても領土化できないと言う国際仲裁裁判所の判決を無視し違法に埋立て領土化し、埋め立てた暗礁/低潮高地を軍事基地化しないというアメリカのバラク・オバマ大統領との約束を無視し、埋め立てた暗礁/低潮高地に滑走路、港湾、潜水艦基地を建設し戦闘機など軍用機と地対空ミサイル、水上戦闘艦と潜水艦を配備し軍事基地化し、アメリカ周辺諸国を威圧している。

 南シナ海においても中国は「領海法」を適用しており、この海域に点在する島々の武力奪取、実効支配を進めており、現在も中国とベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアとは一触即発の緊迫した状況が続いている。

 2001年4月1日には合衆国海軍のロッキード・マーティンEP-3Eアリエス電子偵察機を中国人民解放軍空軍の殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ戦闘機が挑発、中国人民解放軍空軍の殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ戦闘機が合衆国海軍ロッキード・マーティン EP-3Eアリエス電子情報機に接近し過ぎて両機は接触し、殲撃8Ⅱ J-8Ⅱ戦闘機は墜落、合衆国海軍EP-3E電子情報機は中国人民解放軍航空基地に緊急着陸した。合衆国海軍EP-3Eアリエス電子情報機に搭載している軍事機密の情報収集装置は中国に調査分析される。

2009年3月には合衆国海軍の音響測定艦インペッカブルを公海上で進路妨害し、同年2009年4月にも公海上の合衆国海軍の音響測定艦ヴィクトリアスに対して中国人民解放軍海軍の傘下にある中国漁船が妨害行為、危険行為を行った。

 ベトナムはミコヤンMiG-29戦闘機を少数配備、フィリピンは昼間限定のノースロップF-5Aフリーダム・ファイターを極少数配備、マレーシアはボーイングF/A―18ホーネット戦闘攻撃機とスホーイSu―27戦闘機を少数配備、インドネシアはロッキード・マーティンF-16ファイティング・ファルコン戦闘機を少数配備、など航空戦力は中国に全く対抗できない。海軍力はブラウン・ウォーター・ネイヴィー沿岸警備程度で総じて弱体であり、中国との紛争が生じやすい状況となっている。

 

 

 

 

 

 

 

第5節 日本の危機 インド洋

 

 インド洋においては、中国とインドの覇権争いが熾烈になってきている。中国はミャンマーの軍事独裁政権と協力、ミャンマー、スリランカ、パキスタンのインド洋沿岸に海軍基地を建設、中国人民解放軍海軍の艦船が寄港、覇権への布石を打っている。インドもブリティッシュ・エアロスペース(BAEシステムズ)のシー・ハリアー垂直離着陸戦闘機を艦載機とした軽空母を有する艦隊を保有しており、将来の正規空母保有に動いている。中印の対立は避けられそうに無い。

 日本政府は、1998年にインドとパキスタンが実施した核実験に対し、政府開発援助を全面的に停止してしまった。重要な戦略的パートナーに対するこの非行は日本、インド双方にとって重大な損害である。しかも、1995年に敵国の中国がおこなった核実験に対して日本は、無償資金援助を停止したのみであった。敵国には援助するのに戦略的パートナーには援助を停止するという、日本政府の奇行は日本国民に大きな損害を与えた。

 

 

 

 

 

第6節 日本の危機 韓国

 

韓国は反日教育、反日政策を推し進める半面、朝鮮半島有事の際は日本が後方支援の要になるという状況を甘受している。

韓国ムン・ジェイン大統領の師匠である韓国ノ・ムヒョン大統領は2007年、「これまでの南方三国同盟(日米韓)から、北方三国同盟(韓朝中)へ切り替えるべき」と発言した。

韓国ノ・ムヒョン大統領は2007年、アメリカのロバート・ゲイツ国防長官に「東アジアの危機の要因はアメリカと日本」と発言、「日本を韓国とアメリカの仮想敵国にしよう」と提案し、ロバート・ゲイツ国防長官は回顧録に「この男は頭がおかしいと思った」と書かれている。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は日本やイギリスの首相を親しみを込めて「THIS MAN」と呼んだが、ジョージ・W・ブッシュ大統領は韓国ノ・ムヒョン大統領をバカにして「EASY MAN」と呼んだ。

在日韓国人だったので親日派・知日派と日本のマス・メディアが喧伝したイ・ミョンバク大統領は竹島に上陸し日本を挑発、さらに天皇陛下侮辱発言をするなど反日政策を鮮明にした。

保守派なので親米派と日本のマス・メディアが報道した韓国パク・クネ大統領は、「アメリカの同盟国なら参加するな」というアメリカの要請を無視し中国の軍事パレードに参加、中国共産党首脳に囲まれ笑顔で中国人民解放軍のパレードを満悦した。

その後、韓国パク・クネ大統領は「千年たっても被害者と加害者の関係は変わらない」発言し日韓関係改善を全否定、移民先・帰化した国への愛国心は持たず韓国に愛国心を持ち続ける韓国系移民と連携し全世界に慰安婦像の建立を促進した。

韓国パク・クネ大統領は、安倍晋三・内閣総理大臣のアメリカ連邦議会での演説を妨害するためかなりの金銭と外交通商部の外交官、国家情報院の工作員および韓国系移民を投入し、しつこくロビー活動を展開、アメリカ国務省、アメリカ国防省、アメリカ国家安全保障会議、アメリカ上院、アメリカ下院、アメリカ大学教授・研究者、アメリカのシンクタンク研究者のあいだで「韓国疲れ KOREA FATIGUE」という言葉が流行した。

韓国パク・クネ大統領は反日、反米を鮮明にしていたが、さらに合衆国陸軍のミサイル防衛システムTHAAD(終末高高度地域防衛)の韓国配備を拒否することで中国への忠誠を鮮明にした。

さらに韓国は外交通商部と国家情報院が日本で工作活動を展開、日本の防衛力強化、防衛費増加、集団自衛権、安全保障関連法案について、日本の左翼マス・メディア、日本の左翼学者、日本人左翼研究者、日本人左翼弁護士、親韓国派の日本人を利用してアメリカ国内で政治活動、工作活動を展開、反日活動を扇動している。 

アメリカにおいて外交通商部の外交官、国家情報院の工作員を投入し在アメリカ日本人左翼弁護士、在アメリカ日本人左翼学者、在アメリカ日本人左翼ジャーナリスト、アメリカ在住の韓国人、韓国系移民、親韓国のアメリカ人学者、親韓国のアメリカ人研究者、親韓国のアメリカ人弁護士、親韓国のアメリカ政治家を使って反日ロビー活動、反日工作活動を展開している。

 

韓国は、日本固有の領土である竹島を不法に占拠し続けている。韓国は国際司法裁判所での解決を拒み続けている。

また、沿岸海軍(ブラウン・ウォーター・ネイヴィー)だった韓国海軍は、外洋海軍(ブルー・ウォーター・ネイヴィー)に変貌を遂げつつある。

駆逐艦増備計画であるKDX、KDX-2、KDX-3が実施され海軍力の大幅な増強がなされた。日本のシー・レーンに対する脅威になっている。

また韓国は潜水艦を導入し、潜水艦勢力の増強も計画されている。

韓国は潜水艦導入の理由として日本のシー・レーン(海上交通輸送路)を破壊するためと発表した。

 航空戦力も増強されている。

マクドネル・ダグラス F-4D/EファントムⅡ戦闘機に代わり、竹島問題での対日本用としてボーイング F-15Eストライク・イーグル戦闘爆撃機の韓国版であるボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機が配備され、さらに増強される。

ボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機は長距離射程の空中発射巡航ミサイルAGM-84H SLAM-ER空対地ミサイルを搭載し、対地爆撃能力が優れている。

韓国はボーイング F-15Kスラム・イーグル戦闘爆撃機が搭載するAGM-84H SLAM-ER空対地ミサイル導入も対日本用であると発表した。

地上発射/水上発射の韓国国産巡航ミサイルや弾道ミサイルも開発・配備されている。

韓国の保有できる対地ミサイルは射程距離180kmまでだったがアメリカとのガイドライン(米韓ミサイル指針)を無視し、なし崩しで距離射程300kmの小型巡航ミサイルを多数配備した。さらに韓国は射程距離800kmから1000kmの小型巡航ミサイル開発を進めた。

2000年代、射程距離800kmの弾道ミサイルの開発している。日本にも使用されることが表明され、日本の脅威となった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

第7節 日本の危機 北朝鮮

 

 

北朝鮮・人民武力省朝鮮人民軍特殊軍団の特殊部隊・コマンド部隊、北朝鮮・人民武力省朝鮮人民軍偵察局の特殊部隊が日本に投入される。

北朝鮮の特殊部隊、コマンド部隊の装備は60mm迫撃砲、RPG-7 対戦車ロケット擲弾砲、AT-3対戦車ミサイル、SA-16携帯地対空ミサイル、AK-47 7,62mm×39自動小銃、AKS-74 5,45mm自動小銃、AR-15 5,56mm×45ライフル M4A1 5,56mm×45カービン、VZ61サブ・マシンガン、FNブローニング・ハイパワー9mm×19自動拳銃、手榴弾、携帯用化学兵器、と強力で陸上自衛隊特殊作戦群だけでなく、陸上自衛隊一般部隊を相当数投入しない対処できない。

北朝鮮の特殊部隊は日本に2500人投入されると想定された(防衛庁、2004年)。

 

 

北朝鮮は、1996年には韓国・江陵道江陵市にサンオ級潜水艦が工作員の投入のため海岸に接近し失敗、座礁、乗組員11人が自決、工作員3人と乗組員13人が韓国陸軍に射殺され、工作員1人が逮捕、工作員1人が韓国にいる協力者の助けを得て逃亡する工作員投入事件を起こした。

1990年には福井県の海岸で北朝鮮の工作員が使った水中スクーターが発見された工作員投入事件があった。

1999年には漁船に偽装した小型ガス・タービンを搭載する超高速巡航できる北朝鮮の工作船が能登半島沖で発見され、追跡する海上自衛隊艦艇と航空自衛隊マクドネル・ダグラス F-15Jイーグル戦闘機に対し、北朝鮮はミコヤン MiG-21戦闘機を出動させ対抗し、日本政府は野中広務官房長官の主張で追跡を断念した工作員投入事件が発生、日本を震撼させる。

2001年には奄美沖で北朝鮮の工作船が海上保安庁巡視艇に銃撃、ロケット弾攻撃、海上保安庁航空機に携帯地対空ミサイル攻撃をしたのちに自沈した工作員投入事件が発生した。

 

このように明らかになった北朝鮮・工作員の日本国内への投入。

 

2002年、北朝鮮は長期間、大規模な工作員の投入による日本人拉致を認めた。

 

朝鮮労働党作戦部の工作員は在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊の指揮を執る。

 

また朝鮮大学で非常に優秀な人材が金正日政治軍事大学に留学し、軍事訓練、ゲリラ戦、テロを学び、日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊の指揮を執ることが期待されている。

 

 

北朝鮮ゲリラ・コマンド(北朝鮮の特殊部隊、コマンド部隊、ゲリラ部隊)は10000人と想定された(陸上自衛隊、2005年)。

 

朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊は朝鮮半島有事の際の在日アメリカ軍基地攻撃、自衛隊基地攻撃・駐屯地攻撃、重要防護施設攻撃、要人暗殺、要人拉致、社会基盤(空港、港湾施設、道路、鉄道、水道施設、発電所、ガス施設、変電所、高圧線、ダムなど)攻撃、人口密集地に対する攻撃、テロ、心理戦を準備している。

 

また北朝鮮は、朝鮮総連内部過激派や日本の左翼過激派との連動作戦、左翼過激派の便乗攻撃、左翼マス・メディア、左翼学者、左翼弁護士、左翼市民団体の支援を期待している。

 

北朝鮮は日本に常時、朝鮮労働党対外連絡部、朝鮮労働党35室の工作員を潜入させ、親北朝鮮派の醸成、主体思想派の育成に力を入れている。

 

2000年代、陸上自衛隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊という北朝鮮ゲリラ・コマンド対処を最重要課題とした。

陸上自衛隊は合衆国陸軍、合衆国海兵隊から対テロ戦、対ゲリラ戦を学び、北朝鮮ゲリラ・コマンド対処に応用した。

陸上自衛隊一般部隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊がアメリカ軍基地、陸上自衛隊駐屯地、海上自衛隊基地、航空自衛隊基地、原子力発電所、政府機関など重要防護施設への襲撃を準備していることに対し、効果的な検問の実施と検問を突破しようとする朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処、捕虜として身柄拘束した朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への国際法に則ったうえでの非常に厳しい尋問の訓練を開始した。

陸上自衛隊一般部隊は人質を取って市街地のビル、マンションに立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処として、人質救出作戦、と徹底した残敵掃討作戦の訓練を繰り返しおこなった。

人質救出をとって立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊に対し、人質救出のため正確な狙撃を実施できるレミントンM24スナイパー武器システム対人狙撃銃も導入された

2000年代になって陸上自衛隊の演習場には鉄筋コンクリート鉄骨コンクリートによる本格的な市街戦訓練施設が建設され、人質をとって立てこもる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊の制圧作戦、人質救出作戦の訓練ができるようになった。

陸上自衛隊一般部隊によって包囲された朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊を殲滅するため陸上自衛隊一般部隊のレンジャー資格保有者による対ゲリラ戦、対テロ戦の訓練を開始した。

朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊は陸上自衛隊装備や合衆国陸軍、合衆国海兵隊と同じ装備で欺瞞作戦を敢行するので、陸上自衛隊一般部隊のレンジャー資格保有者は顔に施す迷彩を短時間で変更し、欺瞞作戦を実施する朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊を見分ける戦術訓練を実施した。

レンジャー資格保有者が半数を占める陸上自衛隊西部方面普通科連隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊に対処する訓練とともに韓国語、朝鮮語の教育を重視し、対テロ戦、対ゲリラ戦への有効な対処を計画した。

1993年後半から1994年前半、北朝鮮は国際原子力機関IAEAの特別査察を拒否、妨害した。核弾頭、弾道ミサイル、化学兵器、生物兵器で国際社会を威嚇する北朝鮮に対し国連は経済制裁を実施、国連は北朝鮮へ軍事制裁も真剣に検討した。

北朝鮮危機、朝鮮半島有事に対し陸上自衛隊も特殊部隊の創設を決定、1994年から特殊部隊創設へ向けた研究を開始、1999年には陸上自衛隊の特殊部隊創設に向けた準備が始まり、20004年3月に陸上自衛隊特殊作戦群が発足、朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処が本格的に可能になった。

航空自衛隊は基地警備に対してあまり力を入れてこなかったが、北朝鮮危機、朝鮮半島有事の可能性が高まり朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊による航空自衛隊への攻撃が現実に迫るなか、基地警備の強化に迫られた。

航空自衛隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処として基地警備訓練を強化するとともに航空自衛隊基地警備教導隊を創設、朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処に向けて動き出した。

海上自衛隊は1999年の北朝鮮の工作船事件で対処ができなかったことから特殊部隊である海上自衛隊特別警備隊を創設、北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員と人質を取りながら立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊に対処する訓練を開始した。

 

 

北朝鮮は日本の政界、官界、学界、マス・メディア、司法、財界への浸透工作や、非合法の資金調達手段としての偽造通貨流通、サイバー攻撃、麻薬・覚醒剤売買、軍事関連機器購入を続けている。

 

 1992年には射程距離1000kmのノドン1号弾道ミサイルを完成させ、日本の大半を射程に収めた。1993年3月には能登半島沖にノドン1号を試射し、日本に脅威を与える弾道ミサイルの完成に成功した。

ノドン1号は核弾頭、化学兵器弾頭、生物兵器弾頭が搭載可能で、落下速度は非常に速く、迎撃は困難である。また発射プラットフォームは移動式で早期発見は困難である。ノドン1号は200基を超える数が実戦配備された模様である。

 

 1999年8月31日には、日本全土を射程におさめるテポドン1号が日本国土を通過するかたちで試射され、日本だけでなく同盟国アメリカにも脅威となった。さらに北朝鮮はテポドン2号、ムスダンを開発中で、脅威の広範囲化をはかっている。

 

 北朝鮮は早い時期から化学兵器、生物兵器を保有していたが。

北朝鮮は1994年に国際原子力機関(IAEA)による原子力施設への特別査察を拒否、妨害し、核兵器開発への疑念は深まった。

 国連、国際社会は北朝鮮を非難、経済制裁を決定、実施した。

さらに国連、国際社会はほぼ全会一致で北朝鮮への軍事制裁の支持へ動いた。

1994年、北朝鮮危機、朝鮮半島有事に対応するためアメリカは日本に、在日アメリカ軍航空基地、海上自衛隊航空基地、航空自衛隊基地以外に3000m級滑走路のある東京国際空港(羽田空港)、新東京国際空港(成田空港)、大阪国際空港(伊丹空港)を合衆国海軍、合衆国空軍、合衆国海兵隊の航空機が使用できるよう日本に打診した。

またアメリカは1994年、北朝鮮危機、朝鮮半島有事に対応するため在日アメリカ海軍基地と横浜港以外に海上自衛隊舞鶴基地、海上自衛隊呉基地と東京港、大阪港、神戸港を合衆国陸軍、合衆国海軍、合衆国海兵隊が使用できるよう打診した。

アメリカからの打診を受け日本政府は大阪市に大阪港のアメリカ軍艦艇入港を打診、1995年、大阪府警察第1機動隊、大阪府警察第2機動隊が全面的に投入され左翼過激派の妨害、暴動を厳重に警戒する中、合衆国海軍オリヴァー・ハザード・ペリー級フリゲートが20年ぶりに合衆国海軍艦艇として大阪港に入港した。さらに1997年に大阪府警察の機動隊が投入され左翼過激派の妨害、暴動を警戒する中、合衆国海軍アーレイ・バーク級駆逐艦も大阪港に入港した。その後は際立った警備もされることなく合衆国海軍の巡洋艦、駆逐艦、フリゲート、強襲揚陸艦、補給艦、給油艦が大阪港に入港できるようになった。

2000年代、アメリカは北朝鮮危機、朝鮮半島有事においてアメリカ軍基地を攻撃する朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊へ対処する作戦計画5055を策定、陸上自衛隊に協力を打診した。

ジミー・カーター元大統領の訪朝と、ビル・クリントン大統領の米朝合意によってアメリカは北朝鮮へ石油を無償提供した。日本と韓国は北朝鮮に軽水炉型原子力発電所を建設することになり準備を急いだ。

北朝鮮は本来、核開発を中断すべきであったが、カーターとクリントンの北朝鮮への甘い態度は、北朝鮮の核開発継続を許し、北朝鮮は黒鉛減速炉の燃料棒からプルトニウムを抽出し、核爆弾の製造をおこなったと思われる。


 

 

第8節 日本の危機 ロシア

 

 ソ連時代は極東に多大な戦力を割き、南下政策、日本侵攻を実現する可能性もあったが、ソ連崩壊後の経済的困窮によってロシアの軍事力は急速に低下した。艦艇の半数近くが退役し、軍内の士気も低下した。また、ベトナムのカムラン湾においていた海軍基地からも撤退し、ロシア海軍艦船の日本海縦断、日本接近の回数も減った。

しかしながら、威嚇偵察と思われる航空機の領空侵犯や、樺太千島交換条約で北方領土は北海道の一部とされていることを無視して、ロシアは北方領土を不法占拠しているのみならず、択捉島、国後島には冷戦激化の1979年から継続的に旅団(5000人)規模の地上軍部隊、戦闘機部隊を配置していた。

 その後、限られた資源を有効に活用すべく弾道ミサイル搭載原子力潜水艦、地上発射大陸間弾道ミサイルの二本槍による核戦力、高い性能を誇るスホーイSu―27戦闘機、スホーイSu―30戦闘爆撃機、スホーイSu―35戦闘爆撃機の配備を進めていた。

また、経済的困窮から逃れるために、中国に対し大量に戦闘機、駆逐艦、潜水艦を輸出、中国の軍事技術向上に貢献した。

 2000年代、ロシアの経済は一時の困窮を脱した。1970年代後半の軍拡と外交攻勢、拡張主義ときのように石油資源の高騰など状況が整えば再びアジアとヨーロッパでの覇権を確立でき、軍事力を行使して東アジア、日本を影響下におさめようとする可能性が高まっていった。(注1)

 ロシアは1990年代中盤のユーゴスラビア紛争ではセルビア共和国、ボスニアヘルツェゴビナのセルビア人勢力を支持、アメリカ、NATОはロシアの介入を警戒しユーゴスラビア紛争の平和維持に躊躇した。

 しかしボスニアヘルツェゴビナで飛行禁止空域を飛行しセルビア人勢力を近接航空支援するユーゴスラビア空軍SОKО G-4スーパー・ガレブ軽攻撃機4機に対し、合衆国空軍のロッキード・マーティン F-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機2機が警告する。警告を無視しセルビア人勢力へ近接航空支援を続けようとするユーゴスラビア空軍SОKО G-4スーパー・ガレブ軽攻撃機3機がロッキード・マーティン F-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機1機に撃墜された。さらにF-16C/Dファイティング・ファルコン戦闘機1機がユーゴスラビア空軍SОKО G-4スーパー・ガレブ軽攻撃機を撃墜した。ロシアはアメリカを非難するが具体的にどうすることもできず親ロシアのセルビアをアメリカ、NATО北大西洋条約機構に浸食されたという逆恨みを始める。

 さらにコソボ紛争によってNATО北大西洋条約機構はアライド・フォース作戦を実施、NATО北大西洋条約機構がセルビア共和国を徹底的に爆撃する。合衆国海軍、合衆国空軍はGPS誘導爆弾のGBU-31JDAM統合直接攻撃爆弾、GBU-32JDAM統合直接攻撃爆弾、GBU-38JDAM統合直接攻撃爆弾を使用し成果を上げる。  

当初、セルビア共和国は空軍のミコヤン MiG-29戦闘機でNATО航空機を迎撃しようとしていたが、ミコヤン MiG-29戦闘機は合衆国空軍マクドネル・ダグラス F-15Cイーグル戦闘機に一方的に撃墜されたため、ユーゴスラビア空軍はMiG-29戦闘機での迎撃を諦め、爆撃によって破壊されないようミコヤン MiG-29戦闘機を秘匿するようになった。

ユーゴスラビア国防省、ユーゴスラビア情報省、空軍基地、レーダー、通信施設、橋梁などが次々と爆撃で破壊されていく映像が公開され、親ロシアのセルビア共和国に対しなにもできないロシアは露土戦争の戦果を盗まれたと不満を募らせていった。

ロシアはアゼルバイジャン、アルメニアの紛争に介入、グルジア(ジョージア)とロシアも紛争となり、ロシアはロシア軍を平和維持軍として派遣する。

グルジア(ジョージア)、ウクライナ、モルドバ、アゼルバイジャンはロシアに対し危機感をもった。

ウクライナに牙を向いていくロシア。

 2014年にはウクライナのクリミア半島に自警団を展開させ、住民投票を実施しロシアに編入した。さらドネツク州、ルガンスク州、ハリコフ州にもロシア諜報機関、ロシア軍特殊作戦部隊、ロシア人民兵を派遣し親ロシア派住民にドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国を樹立させ、武器を供与しウクライナと戦闘させた。

 中国に甘く中国にかなり譲歩した田中角栄・内閣総理大臣だったが、田中角栄・内閣総理大臣はソ連に対しては新井弘一・外務省欧亜局東欧第一課長の「絶対に譲歩しないでください。」という助言を聞いた。田中角栄・内閣総理大臣が中国に甘く譲歩したのは外務省アジア局(現・外務省アジア大洋州局)に問題があると考えられた。まだこのころは大国や歴史ある国家に力があり、国際法がある程度守られる常識の範疇の正規の外交が主流だったので外務省でもある程度は対応できたが、大国の余裕、正規の外交、歴史、伝統とは程遠い中国、韓国、北朝鮮による非正規戦、国際法無視の謀略外交、情報戦、プロパガンダ戦が執拗に仕掛けられるようになると外務省は対応できなくなった。

 

 

注1  防衛庁防衛研究所『東アジア戦略概観』1993~2003 

    新井弘一氏の証言

 


 

 

第5章 日本のテロ・ゲリラ・コマンド対処

 

北朝鮮の朝鮮人民軍コマンド部隊、朝鮮人民軍特殊部隊、北朝鮮の朝鮮労働党作戦部の工作員に指揮される在日朝鮮人ゲリラ部隊、北朝鮮の朝鮮労働党作戦部に指揮される親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、イスラム原理主義テロリスト、日本赤軍など国際テロリスト、中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)テロリスト、革マル派(革命亭共産主義者同盟革命的マルクス主義派)テロリスト、革労協(革命的労働者協会)テロリスト、共産主義テロリスト、アナーキズムテロリスト、カルト宗教テロリスト、などによるテロ、ゲリラに対処するため警察庁、海上保安庁、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊は対テロ作戦、対ゲリラ作戦、対コマンド作戦を準備している。

 

 

 

 

 

第1節 警察の対テロ作戦 2000年代

 

非正規戦やテロリズム事件発生時、初動対処にあたるのは都道府県警察地域部の自動車警ら隊、機動警ら隊、機動パトロール隊、所轄地域課、刑事部の機動捜査隊、所轄刑事課、である。

地域部隊員の主装備は、アルミ・フレームで非常に軽いスミス&ウェッソン(S&W)M37エアー・ウェイト38スペシャル口径回転式拳銃(5発装弾)、S&W M3913「LADY SMITH」9mm×19口径自動拳銃(8+1発装弾)が導入され始めた。刑事部機動捜査隊捜査員の装備はシュバイツイッシュ・インダストリー・ゲゼルシャフト(SIG)P230 32ACP口径(7,65mm×17)自動拳銃(7+1発装填)であり、非正規戦や銃乱射などのテロリズム発生時には対応は困難と思われる。

テロなどの初動対処を担当する都道府県警察の地域部には直列6気筒2000ccエンジンのJZS155トヨタ・クラウン、V型6気筒2000ccエンジンのYPY31日産セドリック、直列6気筒2000ccエンジンのHK30日産クルーが配備されていたが、2001年から直列6気筒2500ccエンジンのJZS173Zトヨタ・クラウンが配備されるようになった。しかし、コスト・ダウンされた直列6気筒2000ccエンジンのGS171トヨタ・クラウンが配備の中心に変更となった。積雪地には水平対向4気筒エンジンで4WDのRS330スバル・レガシィB4が配備されている。高速隊に配備されていたEC5A三菱ギャランVR-4も年数を経ると都道府県警察地域部の大規模警察署地域課への配備に変更された。2005年からV型6気筒2500ccエンジンのGRS180-AERTHトヨタ・クラウンの配備が始まり、2010年まで製造、配備された。

テロなどの初動対処を担当する都道府県警警察の刑事部機動捜査隊にはEC5三菱ギャラン、初代スバル・インプレッサ、スバル・インプレッサWRX、V35日産スカイラインが配備された。

1997年2月28日にロサンゼルス市ノース・ハリウッドのローレル・キャニオン通りにあるバンク・オブ・アメリカで銀行強盗事件が発生した。犯人はごく普通の凶悪犯罪者ラリー・フィリップス・ジュニアとエミール・マタサレムの二人だけである。二人は全身をアラミド繊維製の防弾装備で固め、中国北方工業公司ノリンコAK-47突撃銃、H&K HK91ライフル、ブッシュマスターAR-15ライフルなどの自動小銃、ベレッタM92F拳銃を乱射し、周囲をポリスカー50台以上、警察官100人以上で完全に包囲したロサンゼルス市警察と銃撃戦を展開した。拳銃とショット・ガンしか装備しないロサンゼルス警察のパトロール警官と刑事はなすすべもなく、一方的に銃撃された。アラミド繊維製防弾装備には効果が無い拳銃、ショット・ガンによる反撃は全くの無力だった。アラミド繊維製防弾装備を貫通する能力を持つM16A1自動小銃を装備するSWAT特殊武器戦術部隊は渋滞で到着が遅れ、SWAT特殊武器戦術隊員が現場に到着、M16A1自動小銃で犯人を射殺する事件発生から44分後までに重傷者が多数発生、死者が出なかったのは奇跡であった。

この事件以後、ロサンゼルス市警察ではM16A1自動小銃が普通のポリスカーに配備されるようになった。

日本赤軍によるイスラエルのロッド空港での銃乱射・手榴弾ばら撒きテロ、インドのイスラム原理主義ラシュカイ・タレバによるムンバイ銃乱射テロ、イスラム原理主義組織によるパリ銃乱射テロ、オウム真理教によるAK-74自動小銃乱射テロ計画など銃乱射テロは多い。

 

日本においてもテロ対処、ゲリラ対処、コマンド対処の初動に携わる警察官の重装備化および人材の高度化、低能力警察官の排除など飛躍的な能力向上が必要となった。

各種凶悪刑事事件、テロリズム、ゲリラ事件、コマンド対処に幅広く投入されるのは都道府県警察の警備部に置かれている機動隊である。機動隊はSAT特殊急襲部隊隊員の選抜母体にもなっている。

機動隊は、警視庁に9個機動隊(第1機動隊:千代田区、第2機動隊:墨田区、第3機動隊:目黒区、第4機動隊:立川市、第5機動隊:新宿区、第6機動隊:品川区、第7機動隊:調布市、第8機動隊:新宿区、第9機動隊:江東区)と1個特車隊(新宿区)の10個隊、3000人とSAT特殊急襲部隊3個隊60人がおかれる。

大阪府府警には3個機動隊900人とSAT特殊急襲部隊2個隊40人がおかれる。

千葉県警察には3個機動隊900人とSAT特殊急襲部隊1個隊20人、成田国際空港警備隊1500人がおかれる。

神奈川県警察と福岡県警察には、2個機動隊600人とSAT特殊急襲部隊1個隊20人がおかれる。

他の府県警察には1個機動隊が定数なくおかれる場合と、または常勤の第1機動隊とパートタイムの第2機動隊がおかれる。

車両は三菱重工業によって防弾鋼板で防弾化された三菱ふそうキャンター特型警備車、三菱ふそうキャンター小型警備車、日野ガーラ大型バス輸送警備車や三菱ふそうファイター遊撃放水車、三菱ふそうスーパー・グレート銃器対策特型警備車、三菱ふそう大型輸送車、日野自動車大型輸送車、いすゞ自動車大型輸送車、Jバス大型輸送車、UDトラックス大型輸送車、日産シビリアンⅠ型遊撃車、三菱ローサⅠ型遊撃車、いすゞジャーニーⅠ型遊撃車、トヨタ・コースターⅠ型遊撃車、トヨタ・ハイエースⅡ型遊撃車、日産キャラバンⅡ型遊撃車、日産ホーミーⅡ型遊撃車、トヨタ・ランドクルーザーⅡ型遊撃車、トヨタ・ランドクルーザー大型SUVゲリラ対策車、日産テラノ中型SUVゲリラ対策車、いすゞ・ビッグホーン大型SUVゲリラ対策車、などが配備されている。偵察・斥候用には三菱ランサー覆面パトカー、マツダ・カペラ覆面パトカー、マツダ・アクセラ覆面パトカーが使われる。

指揮のために用いられる多重無線車にはトヨタ・ハイエース多重無線車、日産キャラバン多重無線車、日産シビリアン多重無線車、日野自動車大型輸送車改造多重無線車、いすゞ大型輸送車改造多重無線車、遊撃車Ⅰ型多重無線車、遊撃車Ⅱ型多重無線車、指揮車に使われる。

警視庁警備部警護課、警視庁警備部警備部警衛課、大阪府警警備部警護警衛課、京都府警警護警衛課、各県警の警備部警護課にはシボレー・エクスプレス、シボレー・アストロにTLアンテナ2本以上を装備したものや、高い座席位置からの視野確保のためと突撃阻止・防止のために重量が重く車高の高いシボレー・タホ大型SUV、いすゞビッグホーン大型SUV、トヨタ・ランドクルーザー大型SUV、三菱パジェロ中型SUVが配備される。

 

 

 

第5章 日本のテロ・ゲリラ・コマンド対処

 

北朝鮮の朝鮮人民軍コマンド部隊、朝鮮人民軍特殊部隊、北朝鮮の朝鮮労働党作戦部の工作員に指揮される在日朝鮮人ゲリラ部隊、北朝鮮の朝鮮労働党作戦部に指揮される親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、イスラム原理主義テロリスト、日本赤軍など国際テロリスト、中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)テロリスト、革マル派(革命亭共産主義者同盟革命的マルクス主義派)テロリスト、革労協(革命的労働者協会)テロリスト、共産主義テロリスト、アナーキズムテロリスト、カルト宗教テロリスト、などによるテロ、ゲリラに対処するため警察庁、海上保安庁、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊は対テロ作戦、対ゲリラ作戦、対コマンド作戦を準備している。

 

 

 

 

第1節 警察の対テロ作戦 2000年代

 

非正規戦やテロリズム事件発生時、初動対処にあたるのは都道府県警察地域部の自動車警ら隊、機動警ら隊、機動パトロール隊、所轄地域課、刑事部の機動捜査隊、所轄刑事課、である。

地域部隊員の主装備は、アルミ・フレームで非常に軽いスミス&ウェッソン(S&W)M37エアー・ウェイト38スペシャル口径回転式拳銃(5発装弾)、S&W M3913「LADY SMITH」9mm×19口径自動拳銃(8+1発装弾)が導入され始めた。刑事部機動捜査隊捜査員の装備はシュバイツイッシュ・インダストリー・ゲゼルシャフト(SIG)P230 32ACP口径(7,65mm×17)自動拳銃(7+1発装填)であり、非正規戦や銃乱射などのテロリズム発生時には対応は困難と思われる。

テロなどの初動対処を担当する都道府県警察の地域部には直列6気筒2000ccエンジンのJZS155トヨタ・クラウン、V型6気筒2000ccエンジンのYPY31日産セドリック、直列6気筒2000ccエンジンのHK30日産クルー、V型6気筒2500ccエンジンの三菱シグマが配備されていたが、2001年から直列6気筒2500ccエンジンのJZS173Zトヨタ・クラウンが配備されるようになった。しかし、コスト・ダウンされた直列6気筒2000ccエンジンのGS171トヨタ・クラウンが配備の中心に変更となった。積雪地には水平対向4気筒エンジンで4WDのRS330スバル・レガシィB4が配備されている。高速隊に配備されていたEC5A三菱ギャランVR-4も年数を経ると都道府県警察地域部の大規模警察署地域課への配備に変更された。2005年からV型6気筒2500ccエンジンのGRS180-AERTHトヨタ・クラウンの配備が始まり、2010年まで製造、配備された。

テロなどの初動対処を担当する都道府県警警察の刑事部機動捜査隊にはEC5三菱ギャラン、初代スバル・インプレッサ、スバル・インプレッサWRX、V35日産スカイラインが配備された。

1997年2月28日にロサンゼルス市ノース・ハリウッドのローレル・キャニオン通りにあるバンク・オブ・アメリカで銀行強盗事件が発生した。犯人はごく普通の凶悪犯罪者ラリー・フィリップス・ジュニアとエミール・マタサレムの二人だけである。二人は全身をアラミド繊維製の防弾装備で固め、中国北方工業公司ノリンコAK-47突撃銃、H&K HK91ライフル、ブッシュマスターAR-15ライフルなどの自動小銃、ベレッタM92F拳銃を乱射し、周囲をポリスカー50台以上、警察官100人以上で完全に包囲したロサンゼルス市警察と銃撃戦を展開した。拳銃とショット・ガンしか装備しないロサンゼルス警察のパトロール警官と刑事はなすすべもなく、一方的に銃撃された。アラミド繊維製防弾装備には効果が無い拳銃、ショット・ガンによる反撃は全くの無力だった。アラミド繊維製防弾装備を貫通する能力を持つM16A1自動小銃を装備するSWAT特殊武器戦術部隊は渋滞で到着が遅れ、SWAT特殊武器戦術隊員が現場に到着、M16A1自動小銃で犯人を射殺する事件発生から44分後までに重傷者が多数発生、死者が出なかったのは奇跡であった。

この事件以後、ロサンゼルス市警察ではM16A1自動小銃が普通のポリスカーに配備されるようになった。

日本赤軍によるイスラエルのロッド空港での銃乱射・手榴弾ばら撒きテロ、インドのイスラム原理主義ラシュカイ・タレバによるムンバイ銃乱射テロ、イスラム原理主義組織によるパリ銃乱射テロ、オウム真理教によるAK-74自動小銃乱射テロ計画など銃乱射テロは多い。

日本においてもテロ対処、ゲリラ対処、コマンド対処の初動に携わる警察官の重装備化および人材の高度化、低能力警察官の排除など飛躍的な能力向上が必要となった。

各種凶悪刑事事件、テロリズム、ゲリラ事件、コマンド対処に幅広く投入されるのは都道府県警察の警備部に置かれている機動隊である。機動隊はSAT特殊急襲部隊隊員の選抜母体にもなっている。

機動隊は、警視庁に9個機動隊(第1機動隊:千代田区、第2機動隊:墨田区、第3機動隊:目黒区、第4機動隊:立川市、第5機動隊:新宿区、第6機動隊:品川区、第7機動隊:調布市、第8機動隊:新宿区、第9機動隊:江東区)と1個特車隊(新宿区)の10個隊、3000人とSAT特殊急襲部隊3個隊60人がおかれる。

大阪府府警には3個機動隊900人とSAT特殊急襲部隊2個隊40人がおかれる。

千葉県警察には3個機動隊900人とSAT特殊急襲部隊1個隊20人、成田国際空港警備隊1500人がおかれる。

神奈川県警察と福岡県警察には、2個機動隊600人とSAT特殊急襲部隊1個隊20人がおかれる。

他の府県警察には1個機動隊が定数なくおかれる場合と、または常勤の第1機動隊とパートタイムの第2機動隊がおかれる。

関東管区機動隊、近畿管区機動隊KRRFなど管区機動隊が東北管区、関東管区、中部管区、近畿管区、中国四国管区、九州管区にある。

車両は三菱重工業によって防弾鋼板で防弾化された三菱ふそうキャンター特型警備車、三菱ふそうキャンター小型警備車、日野ガーラ大型バス輸送警備車や三菱ふそうファイター遊撃放水車、三菱ふそうスーパー・グレート銃器対策特型警備車、三菱ふそう大型輸送車、日野自動車大型輸送車、いすゞ自動車大型輸送車、Jバス大型輸送車、日産ディーゼル大型輸送車、UDトラックス大型輸送車、日産シビリアンⅠ型遊撃車、三菱ローサⅠ型遊撃車、いすゞジャーニーⅠ型遊撃車、トヨタ・コースターⅠ型遊撃車、トヨタ・ハイエースⅡ型遊撃車、日産キャラバンⅡ型遊撃車、日産ホーミーⅡ型遊撃車、トヨタ・ランドクルーザーⅡ型遊撃車、トヨタ・ランドクルーザー大型SUVゲリラ対策車、日産テラノ中型SUVゲリラ対策車、いすゞ・ビッグホーン大型SUVゲリラ対策車、などが配備されている。偵察・斥候用には三菱ランサー覆面パトカー、マツダ・カペラ覆面パトカー、マツダ・アクセラ覆面パトカーが使われる。

指揮のために用いられる多重無線車にはトヨタ・ハイエース多重無線車、日産キャラバン多重無線車、日産シビリアン多重無線車、日野自動車大型輸送車改造多重無線車、いすゞ大型輸送車改造多重無線車、遊撃車Ⅰ型多重無線車、遊撃車Ⅱ型多重無線車、指揮車に使われる。

警視庁警備部警護課、警視庁警備部警備部警衛課、大阪府警警備部警護警衛課、京都府警警護警衛課、各県警の警備部警護課にはシボレー・エクスプレス、シボレー・アストロにTLアンテナ2本以上を装備したものや、高い座席位置からの視野確保のためと突撃阻止・防止のために重量が重く車高の高いシボレー・タホ大型SUV、いすゞビッグホーン大型SUV、トヨタ・ランドクルーザー大型SUV、三菱パジェロ中型SUVが配備される。

 

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、警察庁は機動隊に置かれている銃器対策部隊の強化を決め、「28主要都道府県警察に自動小銃1400丁を配備する」と発表した。

しかし実際に配備されたのは自動小銃ではなく、自動小銃より射程距離、貫通力が劣る機関拳銃(サブ・マシンガン)のH&K MP5機関拳銃だった。

 

 

全国の銃器対策部隊にはH&K MP5機関拳銃(サブ・マシンガン)が28都道府県警の銃器対策部隊に1400丁配備された。

サッカー・ワールド・カップ開催地や、日本原子力研究開発機構・もんじゅ、北海道電力泊原子力発電所、東北電力東通原子力発電所、東北電力・女川原子力発電所、東京電力・福島第一原子力発電所、東京電力・福島第二原子力発電所、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所、日本原子力発電・東海第二発電所、日本原子力発電・敦賀原子力発電所、北陸電力・志賀原子力発電所、関西電力・美浜原子力発電所、関西電力・大飯原子力発電所、関西電力・高浜原子力発電所、中国電力・島根原子力発電所、四国電力・伊方原子力発電所、九州電力・玄海原子力発電所、九州電力・川内原子力発電所、日本原燃・再処理事業所、日本原燃・濃縮・埋設事業所、東北大学・金属材料研究所付属材料試験炉利用施設、日本原子力研究開発機構・東海村事業所、日本原子力研究開発機構・人形峠環境技術センター、日本原子力研究開発機構・大洗事業所、三菱原子燃料、核物質管理センター、原子燃料工業・東海製造所、原子燃料工業・熊取営業所、日本原子力研究所・東海事業所、日本原子力研究所・大洗事業所、ニュークリアディベロップメント、高エネルギー加速器研究機構、日本燃料開発・NFDホットラボ施設、放射線医学総合研究所、日本ニュクリアフュエル、京都大学原子炉実験所など原子力関連施設所在地に「原子力関連施設警戒隊」を創設、H&K MP5機関拳銃は警視庁、大阪府警察、神奈川県警察、千葉県警察、埼玉県警察、兵庫県警察、北海道警察、福岡県警察、原子力関連施設警戒隊など28都道府県警察に配備されていた。

配備が確認されたのは、警視庁第1機動隊、第6機動隊、第9機動隊(注5)、大阪府警察第1機動隊、第2機動隊、第3機動隊(注6)、千葉県警察第1機動隊、第3機動隊、新東京国際空港警備隊(成田国際空港警備隊に改称)(注7)と北海道警察、福島県警察、新潟県警察、千葉県警察、埼玉県警察、神奈川県警察、愛知県警察、兵庫県警察、和歌山県警察、福井県警察、広島県警察、福岡県警察などだった。

また、総理大臣官邸警備隊100人や皇宮警察特別警備隊には28都道府県警の銃器対策部隊1400丁配備と別枠でH&K MP5機関拳銃が配備された。

これによって、銃器対策部隊の能力は飛躍的に高まり、ある程度のテロリズム対処能力を持つようになった。

銃器対策部隊は、重要防護施設の存在、大都市を中心に装備が強化されているが、福井県、福島県、新潟県など原子力発電所・核燃料処理施設がある都道府県には他県の機動隊銃器対策部隊が応援で派遣されていた(注10)。原子力発電所が集中する福井県には、大阪府警察第2機動隊銃器対策部隊、愛知県警察機動隊銃器対策部隊、神奈川県警察機動隊銃器対策部隊が派遣されていた。(注11)


 銃器対策部隊はH&K MP5機関拳銃とともに、豊和工業ゴールデン・ベア・ライフル、豊和工業ホーワM1500ライフルを装備している。しかし高性能なアラミド繊維ボディ・アーマーが普及し、世界の対テロ部隊がアラミド繊維ボディ・アーマーで防御可能な機関拳銃からアラミド繊維ボディ・アーマーを貫通するカービン、自動小銃に装備を変更しているなかで、銃器対策部隊の装備ではテロリズム対処、非正規戦に不足であった。

テロ、立て籠もり、人質事件、誘拐・拉致事件、銃器犯罪などのテロリズムの発生時、最初に対処するのは各都道府県警察本部刑事部捜査第一課である。

 テロ事件が長期化することが見込まれる場合は、予算を与えられ装備と訓練が充実している警視庁刑事部捜査第一課SIT(東日本担当)、大阪府警察刑事部捜査第一課MAAT(西日本担当)が犯行現場に派遣され、武力行使によらない解決に尽力がそそがれる。

 

占拠人質テロでは、武力行使も含めた強行解決にむけた準備がすすめられる。

各警察本部の刑事部捜査一課や警備部機動隊による現状調査、警備がすすめられ、機動隊銃器対策班、特殊急襲部隊SAT(Special Assault Team)による突入準備が進められる。

突入には刑事部捜査一課、警備部銃器対策部隊、SATが担当する。重大なテロの場合はSATが突入を担当し、銃器対策部隊はその支援にあたる。

刑事部捜査一課特殊捜査犯捜査係とSATは、レーザー測距機、指向性高感度マイク、超小型カメラ、コンクリート透過レーダー、骨伝導デジタル無線装備などを使用し、状況把握に全力を注ぐ。

特殊急襲部隊SATには三菱パジェロ防弾SUV隊長車、トヨタ・ランドクルーザー防弾SUV隊長車、日野リエッセ人員輸送車、トヨタ・ランドクルーザー作戦車、三菱ふそうキャンター・ガッツ装備搬送車、三菱ふそうファイター装備搬送車が配備されている。

突入の際はスタン・グレネード(特殊音響閃光弾)が使用される。

警察庁はSAT特殊急襲部隊の装備として自動小銃、機関拳銃、拳銃と公表している。SAT特殊急襲部隊の装備は、豊和工業 89式小銃(5,56mm×45)、H&K MP5(機関拳銃、サブ・マシンガン、9mm×19)、H&K USP拳銃(9mm×19、8+1発装弾)、レミントン M700狙撃ライフル(7,62mm×51)、豊和工業 M1500狙撃ライフル(7,62mm×51)、H&K PSG-1狙撃ライフル(7,62mm×51)と思われる。(注92)

特殊急襲部隊SATは1977年10月に発足した。

1977年9月、日本航空ダグラスDC-8機が左翼テロリスト日本赤軍にハイジャックされた。福田赳夫首相は左翼テロリスト日本赤軍に屈服し、超法規的措置により囚人である日本赤軍テロリストや連合赤軍テロリスト、東アジア反日武装戦線テロリストを釈放した。   

さらに福田赳夫首相は左翼テロリスト日本赤軍に身代金600万ドル(約16億円)まで支払った。イスラエル・ロッド空港での銃乱射手榴弾ばら撒きテロで28人を殺害した左翼テロリスト日本赤軍はその他、数々のテロで重傷者を多数生じさせていた。

福田赳夫首相は左翼テロリスト日本赤軍に16億円を持たせて野に放った。左翼テロリスト日本赤軍は16億円をテロに使い、ナポリのディスコを爆破したナポリ事件では5人が殺害された。国際社会から非難された福田赳夫首相、海外メディアからは「テロリストまで輸出する」と報道された。

1977年10月にルフトハンザのボーイング737機がPFLP(パレスチナ解放人民戦線)にハイジャックされた。犯人のPFLPテロリストは、ヨーロッパ各国に収監されている西ドイツ赤軍派(RAF)とPFLPのメンバーの釈放、身代金900万ドル(約24億円)を要求した。こうしたPFLPテロリストの要求に対し、西ドイツ政府は拒否を決断した。パイロットを殺害したテロリストが陣取るソマリア・モガディシオ空港に指揮を執る総務長官と、対テロ特殊部隊である内務省国境警備隊第9部隊(GSG-9、現・連邦警察庁GSG-9)を派遣する。

イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)の支援のもと、スタン・グレネードを使用、H&K MP5機関拳銃で犯人の無力化に成功、3人を射殺、1人を逮捕した。日本の警察庁首脳は事態を重視、西ドイツに幹部を派遣、GSG-9設立の経緯と運用を調査した。

GSG-9は1972年のミュンヘン・オリンピックでイラク・バグダッドを拠点とするパレスチナ・ゲリラ「黒い9月」によるイスラエル選手団人質、殺害事件の反省から発足した。当時の西ドイツでは、基本法(憲法)により、北大西洋条約機構域外に連邦軍を派遣できなかったことから、全世界に隊員を派遣できる国境警備隊に対テロ特殊部隊を設立することになった。このことは憲法なども政治的制約により、自衛隊の運用が厳しく制限されている日本において、非常に参考になった。

GSG-9は、第二次世界大戦からコマンド部隊を運用し、マラヤ、ギリシアでの共産主義ゲリラ掃討、北アイルランドでの暴徒鎮圧とIRA(アイルランド共和軍)への対テロ戦、家屋強襲群設置を実施した経験のあるイギリスSAS(特殊空挺部隊)に国境警備隊のヴェーゲナー中佐を派遣、対テロ戦闘のノウハウを学んだ。

1977年10月末、警察庁は警視庁警備部第6機動隊に極秘裏に「第7中隊」(「特科中隊」)を編成、機動隊を中心に優秀な警察官60人を選定し、対テロ特殊部隊を編成した。また、1977年12月には大阪府警察警備部第2機動隊に「零中隊」を編成、警視庁と同様に優秀な人員40人を選抜し対テロ特殊部隊を編成した。これら対テロ特殊部隊は、GSG-9、SASなどから対テロ作戦を学び、徐々に実力をつけていった。(注3)

1979年1月26日、猟銃で武装した30歳の男、梅川昭美が大阪市住吉区にある三菱銀行北畠支店を襲撃、銀行員2人を射殺、駆けつけた阿倍野署警ら係長警部補と住吉署警ら課巡査の2人も射殺、さらに第2方面機動警ら隊員に発砲、負傷させた。さらに人質に猟奇的、残忍な危害を加え、香川県の実家から連れて来た母親の説得も聞かなかった。

大阪府警察警備部(三井一正警備部長)は機動隊とともに、「特別狙撃隊」と偽装して、対テロ特殊部隊「零中隊」を派遣する。新田勇刑事部長と坂本房敏刑事部捜査第一課長の進言で、吉田六郎大阪府警察本部長が強攻突入と犯人射殺を決断する。1月28日午前8時に第2機動隊の松原和彦警部指揮の下、「特別狙撃隊」32人を投入、犯人・梅川昭美を射殺した。(注4)その後、「第7中隊」「零中隊」は、SAP(SPECIAL ARMED POLICE)と称され東京国際空港や大阪国際空港で、JAL日本航空、ANA全日本空輸、TDA東亜国内航空と協力しハイジャック対処訓練を繰り返し、ハイジャック対処では世界有数の力を持つにいたった。また、訪日した外国の要人や、日本政府の閣僚の警護などにも投入され、実績を積んでいった。

1995年、札幌近郊・新千歳空港で心神喪失状態の東洋信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)行員が全日空のボーイング747機をハイジャックした。北海道警察機動隊、銃器対策部隊とともに、警視庁SAPが派遣された。報道においては、特殊梯子による突入が喧伝された。特殊梯子による突入が衆人の目にさらされたことによって、対テロ特殊部隊の存在が明らかになった。

このことから、警察庁は警視庁第6機動隊第7中隊60人、大阪府警察第2機動隊零中隊40人という対テロ特殊部隊の存在を正式に認め、特殊急襲部隊SATと名づけた。さらに特殊急襲部隊SATは、神奈川県警察、千葉県警察、北海道警察、福岡県警察、愛知県警察の5県警にもそれぞれ20人ずつで設立した。

特殊急襲部隊SATはハイジャックなどのテロリズム対処とともに、治安出動、防衛出動が発動されるまでには時間を要し自衛隊の出動が困難な日本で在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊との非正規戦、北朝鮮・朝鮮人民軍特殊部隊、北朝鮮・朝鮮人民軍コマンド部隊との戦闘も考慮され、野戦訓練にも力を入れられている。

また、治安出動、防衛出動が発令され、自衛隊が出動するにいたっても、空港、港湾施設、道路、鉄道、水道施設、通信施設、地下施設、ガス施設、変電所、高圧線、ダム・水力発電所、原子力発電所、火力発電所など重要防護施設の警備、政治家、官僚、自衛隊高官、大企業重役、重要防護施設担当者などの要人警護、と任務はあまりにも多すぎ、自衛隊だけでは重要防護施設警備、要人警護は不可能で、警察の特殊急襲部隊SAT、銃器対策部隊、機動隊、自動車警ら隊、機動捜査隊は動員せざるを得ない。

1996年年末、1997年度予算において特殊急襲部隊SAT訓練費10億円を要求した警察庁であったが、大蔵省はそれを不要として認めなかった。

しかし、1996年12月17日にペルーの日本大使公邸占拠・人質事件が発生するにいたって、大蔵省もテロリズムの危険を認めざる得なくなり、予算は通ることになった。

 

また、ペルー日本大使公邸占拠・人質事件に特殊急襲部隊SATを派遣し人質救出作戦をすべきとの声が自民党からあがったがが、日本大使公邸は日本領土でも空港から日本大使公邸までは海外、日本大使公邸の外は海外と内閣法制局は主張、特殊急襲部隊SATによる日本大使公邸人質占拠事件の人質救出作戦は、内閣法制局は憲法で禁止されている「海外での武力行使」に相当すると主張したため、断念された。

 

 

 

 

 

 

第2節 海上の対テロ作戦 2000年代

 

1990年には福井県の海岸で北朝鮮の工作員が使った水中スクーターが発見された工作員投入事件があった。

1999年には漁船に偽装した小型ガス・タービンを搭載する超高速巡航できる北朝鮮の工作船が能登半島沖で発見され、追跡する海上自衛隊艦艇と航空自衛隊マクドネル・ダグラス F-15Jイーグル戦闘機に対し、北朝鮮はミコヤン MiG-21戦闘機を出動させ対抗し、日本政府は野中広務官房長官の主張で追跡を断念した工作員投入事件が発生、日本を震撼させる。

2001年には奄美沖で北朝鮮の工作船が海上保安庁巡視艇に銃撃、ロケット弾攻撃、さらに海上保安庁航空機に携帯地対空ミサイル攻撃をしたのちに自沈した工作員投入事件が発生した。

2002年、北朝鮮は北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員が在日朝鮮人協力者、親北朝鮮派日本人協力者、親北朝鮮派在日韓国人協力者が支援するなか、日本人を拉致していたことを認めた。

海上保安庁は法執行機関であるが、軍事的観点から見れば準軍事組織である。

海上保安庁は国土交通省の外局で、海上の治安維持を任務とする。定員は1万2000人である。内局には総務部、装備技術部、警備救難部、海洋情報部、交通部がある。

第1管区海上保安本部(本部:北海道小樽市)は北海道を担当する。第2管区海上保安本部(本部:宮城県塩竃市)は東北沿岸と東北の太平洋側沖合いを担当する。第3管区海上保安本部(本部:神奈川県横浜市)は関東を担当する。第4管区海上保安本部(本部:愛知県名古屋市)は中部地方太平洋側を担当する。第5管区海上保安本部(本部:兵庫県神戸市)は近畿南部、四国太平洋側を担当する。第6管区海上保安本部(本部:広島県広島市)は瀬戸内海を担当する。第7管区海上保安本部(本部:福岡県北九州市)は九州北部と山口県日本海側を担当する。第8管区海上保安本部(本部:京都府舞鶴市)は近畿・中部の日本海側、山陰を担当する。第9管区海上保安本部(本部:新潟県新潟市)は中部地方日本海側と東北の日本海側沖合いを担当する。第10管区海上保安本部(本部:鹿児島県鹿児島市)は九州南部を担当する。第11管区海上保安本部(本部:沖縄県那覇市)は沖縄県を担当する。

海上保安庁最大の艦船はヘリコプター2機搭載型、巡視船しきしま型である。平成元年度補正計画船で、平成4年4月8日に竣工した。総トン数7175トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はエリコンKDC 35mm連装機関砲、JM61 20mm機関砲である。搭載ヘリコプターはアエロスパシアルAS332L1ヘリコプター2機である。フランスからのプルトニウム輸送を警護するために建造され、日本-フランス間を無補給で往復できる。

アメリカは日米原子力協定に基づきプルトニウム輸送において海上自衛隊の護衛艦2隻以上でプルトニウム輸送船を警護するよう日本に要請したが、後藤田正晴・副総理が海上自衛隊によるプルトニウム輸送船警護を強硬に反対した。

そのためプルトニウム輸送船の警護は海上保安庁が担当することとなった。

しかし危険なプルトニウム輸送船を軍隊に警護させないという日本の姿勢は国際社会から批判された。また、異様なまでに軍事を嫌悪し危険なプルトニウム輸送船の警護を軽視する本末転倒的な日本、後藤田正晴にアメリカ、イギリス、フランスは不信感を抱いた。

「巡視船しきしま」は日米原子力協定に基づきアメリカから対空レーダーを搭載するよう求められた。

また、アメリカは日米原子力協定に基づき「巡視船しきしま」に搭乗するプルトニウム輸送船警護要員を合衆国海軍特殊戦群SEAL TEAMで教育訓練することを要請した。

プルトニウム輸送船あかつき丸を警護していた「巡視船しきしま」は環境保護団体グリーン・ピースの船の危険すぎる突撃により損傷したが任務への影響は抑えられた。

 ヘリコプター2機搭載型、巡視船みずほ型の1番船PLH-21「みずほ」は、昭和58年度計画船で、昭和61年3月19日に竣工した。巡視船「みずほ」型は総トン数5229トン、常備排水量5317トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はエリコンKDC 35mm機関砲1基、JM61 20mm機関砲1基である。搭載ヘリコプターはベル212ヘリコプター2機である。昭和54年の海上における捜索および救助に関する国際条約に対応するために建造された。巡視船「みずほ」型は2隻建造された。

 3500トン型、巡視船「いず」型は、平成7年度第1次補正計画船で、平成9年9月25日に竣工した。総トン数3768トン、排水量3683トン、鋼製、ディーゼル推進である兵装はJM61 20mm機関砲1基である。阪神・淡路大震災で第5管区海上保安本部が被害を受けたのを受け、指揮所機能を強化するために建造された。

 3000トン型、巡視船「みうら」型は、平成8年度計画艦で、平成10年10月28日に竣工した。総トン数3167トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はJM61 20mm機関砲1基である。海上保安学校の練習船兼巡視船で、被災者・非難民移送能力、医療設備などが充実し、災害に対応できる。

 3000トン型、巡視船「こじま」は、平成2年度計画船で、平成5年3月11日に竣工した。総トン数3136トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はエリコンKDC 35mm機関砲1基、JM61 20mm機関砲1基、FNブローニングM2 12,7mm機関銃1基である。海上保安大学校の練習船兼巡視船で、7メートル型高速警備救難艇を装備する。

 ヘリコプター1機搭載型、巡視船「つがる」型は、1番船PLH-02「つがる」が昭和52年度補正計画船で、昭和54年4月17日に竣工した。総トン数3221トン、満載排水量4037トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はボフォースL70 40mm機関砲1基である。搭載ヘリコプターはベル212ヘリコプターである。「つがる」型巡視船は9隻建造された。

 ヘリコプター1機搭載型、巡視船「そうや」は昭和52年度計画船で、昭和53年11月22日に竣工した。総トン数3139トン、満載排水量4089トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はボフォースL70 40mm機関砲1基である。搭載ヘリコプターはベル212ヘリコプターである。

 2000トン型、巡視船「ひだ」型は、1番船PL-51「ひだ」が平成15年度計画船で「ヘリ甲板付き高速高機能大型巡視船」として予算要求され、平成18年4月18日に竣工した。総トン数1800トン、軽合金製、ディーゼル、ウォータージェット推進である。兵装はボフォースL70 40mm機関砲1基、JM61 20mm機関砲1基である。7メートル型高速警備救難艇と複合型警備艇を搭載する。平成13年12月「九州南西海域工作船事件」を受けて建造された。巡視船「ひだ」型は3隻建造された。

 1000トン型、巡視船「はてるま」型は、1番船PL-61「はてるま」が平成17年度計画船で、平成20年3月31日に竣工した。総トン数1300トン、軽合金製、ディーゼル、ウォータージェット推進である。兵装はMk44ブッシュマスターⅡ 30mm機関砲1基である。巡視船「はてるま」型は9隻建造された。

  1000トン型、巡視船「えりも」型は、1番船PL-02「おじか」(現「えりも」)が平成元年度計画船で、平成3年10月31日に竣工した。総トン数1268トン、満載排水量2006トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はJM61 20mm機関砲1基である。2番船PL-03「くだか」からはエリコンKDC 35mm機関砲1基も装備している。巡視船「えりも」型は7隻建造された。

 1000トン型、巡視船「おき」は、昭和62年度計画船で、平成元年9月21日に竣工した。総トン数993トン、常備排水量1500トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はJM61 20mm機関砲1基である。

 1000トン型、巡視船「しれとこ」型は、1番船PL-101「しれとこ」が昭和52年度補正計画船で、昭和53年11月8日に竣工した。総トン数965,3トン、常備排水量1200トン、鋼製、ディーゼル推進である。兵装はJM61 20mm機関砲1基である。巡視船「しれとこ」型は28隻建造された。

 1000トン型、巡視船「あそ」型は、1番船PL-41「あそ」が平成14年度計画船で、平成17年3月15日に竣工した。総トン数770トン、軽合金製、ディーゼル、ウォータージェット推進である。兵装はボフォースL70 40mm機関砲1基である。平成11年、警察庁警備局は北朝鮮から送信される短波放送による暗号を傍受、日本への工作員投入と工作員回収、日本への覚せい剤密輸・偽ドル札スーパーK密輸、日本からの軍事関係品密輸を警戒するなか能登半島沖で北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作船が発見された。北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員は小型ガス・タービンを搭載し漁船に偽装した超高速の工作船に乗り逃亡、海上保安庁の巡視艇、海上自衛隊の護衛艦、航空自衛隊のマクドネル・ダグラスF-15J/DJイーグル戦闘機が追跡するものの北朝鮮に逃亡されてしまった事件「能登半島沖不審船事件」を受け建造された。巡視船「あそ」型は3隻建造された。

 500トン型巡視船には「なつい」型14隻、「てしお」型1隻が建造された。500トン型新PM(PATOROL VESSEL MEDIUM)が3平成26年度計画船として予算化されている。50トン型巡視船には「とから」型19隻、「びぼろ」型20隻、「あまみ」型4隻が建造された。特350トン型巡視船、「たかとり」型は2隻が建造された。180トン型巡視船は「しんざん」型4隻、「らいざん」型13隻、がある。特130トン型巡視船は「あかぎ」型が5隻、「たかつき」型が2隻ある。

 

 高速特殊警備船、巡視船「つるぎ」型は、1番船PS-201「つるぎ」が平成11年度第2次補正計画船として、平成13年2月15日に竣工した。総トン数220トン、軽合金製、ディーゼル、ウォータージェット推進である。兵装はJM61 20mm機関砲1基である。

平成11年、警察庁警備局は北朝鮮から送信される短波放送による暗号を傍受、日本への工作員投入と工作員回収、日本への覚せい剤密輸・偽ドル札スーパーK密輸、日本からの軍事関係品密輸を警戒するなか能登半島沖で北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作船が発見された。

北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員は小型ガス・タービンを搭載し漁船に偽装した超高速の工作船に乗り逃亡、海上保安庁の巡視艇、海上自衛隊の護衛艦、航空自衛隊のマクドネル・ダグラスF-15J/DJイーグル戦闘機が追跡するものの北朝鮮に逃亡されてしまった事件に対する反省から巡視船「つるぎ」型は6隻建造された。

 

 巡視艇は35メートル型「はやなみ」型巡視艇11隻、35メートル型「まつなみ」型巡視艇1隻、35メートル型「はまぐも」型巡視艇4隻、35メートル型「よど」型巡視艇9隻、30メートル型「あそぎり」型巡視艇4隻、30メートル型「はやぐも」型巡視艇19隻、30メートル型「むらくも」型巡視艇23隻、23メートル型「しきなみ」型巡視艇17隻、23メートル型「しまぎり」型巡視艇3隻、特23メートル型「なつぎり」型巡視艇2隻、23メートル型巡視艇「ことなみ」型巡視艇7隻、特23メートル型「あきづき」型巡視艇12隻が建造された。

20メートル型は「ひめぎく」型巡視艇、「しらうめ」型巡視艇、「はやぎく」型巡視艇がある。18メートル型は「やまゆり」型巡視艇が64隻建造されている。15メートル型は高張力鋼製の「いそかぜ」型2隻と、「なだかぜ」型2隻がある。

監視取締艇は「さざんくろす」型、「りんくす」型、「おりおん」型、「ぽらりす」型、「ぽおらすたあ」型、「おりおん」型がある。いずれも総トン数5トン程度の小型船である。

 

海上保安庁の航空機は73機ある。

 固定翼機は8タイプ27機である。

 日本航空機製造 YS-11「日本航空機製造式YS-11A型」は、最大搭乗者数28名、最高速力257ノット、巡航速力230ノットである。昭和44年度から5機取得されたが、退役した。

ガルフストリーム・エアロスペース G-Ⅴ「ガルフストリーム・エアロスペース式G-V型」は、最大搭乗者数22名、最高速力510ノット、巡航速力488ノットである。ドップラー・レーダー、自動追尾機能付き赤外線カメラ、自動船舶識別装置を装備する。平成17年度から2機取得された。

ダッソー・ブレゲ― ミステール・ファルコン900「ダッソ-・ブレゲー式ミステール・ファルコン900型」は、最大搭乗者数18名、最高速力502ノット、巡航速力428ノットである。捜索レーダー、自動方向探知機を装備する。昭和62年度から2機取得された。

ボンバルディア DHC-8-315「ボンバルディア式DHC-8-315型」は、最大搭乗者数32名、最高速力266ノットである。全周捜索レーダー、赤外線暗視装置を装備する。平成21年度から9機が取得される。

サーブ・スカニア SAAB340B「サーブ・スカニア式SAAB340B型」、サーブ SAAB340B「サーブ式SAAB340B型」は、最大搭乗者数27名、最高速力250ノット、巡航速力198ノットである。合成開口レーダーを装備する。平成7年度から4機取得された。

ビーチクラフト B350「ビーチクラフト式B350型」は、最大搭乗者数14名、最高速力263ノット、巡航速力224ノットである。全周捜索レーダーに代えて赤外線カメラが装備された。平成11年度から10機取得された。しかし、東日本大震災で1機喪失した。

ビーチクラフト B200T「ビーチクラフト式B200T型」は、最大搭乗者数10名、最高速力235ノット、巡航速力192ノットである。ビーチクラフト社のスーパー・キング・エアがベースである。昭和54年度から17機取得された。

テキストロン・カンパニー・セスナ・エアクラフト U206G「セスナ式U206G型」は、最大搭乗者数6名、最高速力151ノット、巡航速力130ノットである。テキストロン・カンパニー・セスナ・エアクラフトのステイショネアがベースである。昭和52年度に1機取得した。

回転翼機は7タイプ46機である。

ユーロコプター EC225LP「ユーロコプター式EC225LP型」は最大搭乗者数29名、最高速力175ノット、巡航速力149ノットである。特殊警備隊SST専用機として導入された。平成20年度から2機が取得された。巡視船「あきつしま」搭載用と、東日本大震災で喪失したAS332L1型の代替に平成23年度計画で3機が予算化されている。

アエロスパシアル AS332L1「アエロスパシアル式AS332L1型」は、最大搭乗者数18名、最高速力140ノット、巡航速力125ノットである。巡視船「しきしま」搭載機として導入された。平成4年度から4機が取得された。東日本大震災で1機喪失した。

ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニー ベル412「ベル式412型」、ベルヘリコプター・テキストロン・カンパニー ベル412EP「ベル式412EP型」は、最大搭乗者数15名、最高速力140ノット、巡航速力126ノットである。ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニーの4枚ブレード機ベル412で、赤外線暗視装置を装備する。平成5年から7機が取得された。2機を喪失している。

アグスタ・ウェストランド AW139「アグスタ式AW139型」は、最大搭乗者数15名、最高速力167ノットである。アグスタ・ウェストランドAW139で、17機が配備された。

ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー S-76C「シコルスキー式S76C型」はシコルスキーS-76Cで、最大搭乗者数14名、最高速力155ノット、巡航速力135ノットである。平成7年から4機取得しているが2機を事故で失っている。

ユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキー S-76D「シコルスキー76D型」はユナイテッド・テクノロジーズ・シコルスキーのヘリコプター、シコルスキーS-76で、平成23年度第3次補正計画から11機が予算化されている。

ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニー ベル212「ベル式212型」は、ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニーのヘリコプター、ベル212で、最大搭乗者数11名、最高速力110ノット、巡航速力103ノットである。昭和48年度から38機が取得された。現在は12機である。

ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニー ベル206「ベル式206型」は、ベル・ヘリコプター・テキストロン・カンパニーのヘリコプター、ベル206で、ベル式206型は、最大搭乗者数5名、最高速力130ノット、巡航速力113ノットである。ベル206ジェットレンジャーとして1967年から生産が開始された。海上保安庁では昭和48年度に4機購入した。その4機はすでに退役し、平成3年度から新たに4機導入している。

警察の機動隊にあたる暴動対処部隊の海上保安庁特別警備隊SRS(Special Riot Service)は、海上デモの鎮圧、洋上警戒などが主任務であるが、豊和工業 89式小銃(5,56mm×45)、レミントン M870ショット・ガン防錆仕様、S&W M5906ミリタリー拳銃(9mm×19)と、ボディ・アーマー、対NBC防護服で装備し(注13)、ヘリコプターからの強行乗船もおこなえる実力を有し、対テロ・ゲリラ戦に対処できる能力をある程度有している。(注15)

海上保安庁における対テロ、対ゲリラ、対コマンド特殊部隊は海上保安庁の機動隊にあたる特別警備隊と、特別警備隊から優秀な人員が選ばれて編成される特殊警備隊SST(Special Security Team)がある。

特殊警備隊SSTは、成田空港開港後、闘争目標を関西空港開港阻止の爆弾テロ闘争とソウル五輪開催阻止へのシー・ジャック・テロ敢行へと動いた中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派のテロに対応するため組織された。

中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派は成田空港開港阻止に異様なまでに固執し、警察官、運輸省官僚、新東京国際空港公団職員、建設会社従業員、弁護士など10000人以上が死傷したものの成田空港は開港された。

中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派は成田空港にとどまらずあらゆる空港を目の敵にするようになった。

中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派は1983年の連続ゲリラ事件、1983年の陸上自衛隊駐屯地での時限発火装置による陸上自衛隊車輌同時多発破壊事件、1984年の大阪府警本部近辺での軽ワゴン車爆破事件など、関西国際空港開港阻止のテロ事件、ゲリラ事件を年間数百件発生させた。

中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派は、関西国際空港建設本格化によってさらなる関西国際空港開港阻止闘争開始、関西国際空港建設反対テロを宣言した。

また、軍事独裁、反共産主義、反北朝鮮の韓国は民主選挙と引き換えにソウル・オリンピックを開催できることになった。反韓国の中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)を中心とした左翼過激派や北朝鮮・朝鮮労働党作戦部によるソウル・オリンピック阻止のための日韓フェリーのシー・ジャックが懸念された。さらに金正日政治軍事大学出身の北朝鮮・工作員による大韓航空機爆破事件も発生した。

これらの脅威に対処するため、全国の管区特別警備隊隊員から25人が選定され関西空港海上警備隊として、第5海上保安本部大阪特殊警備基地が関西空港対岸地区に設けられた。(注11)     

また1987年には、あまりにも危険なプルトニウム海上輸送任務を軍隊による警備にするように世界各国から圧力がかけられた。アメリカは日米原子力協定に基づき、プルトニウム輸送船を海上自衛隊の護衛艦2隻以上での警備を要求した。

しかし、内務省官僚、警察庁官僚出身で反軍・反自衛隊を主張する後藤田正晴・官房長官は海上自衛隊による警備を強硬に反対した。

後藤田正晴・官房長官の強硬な反自衛隊論によってプルトニウム輸送船・あかつき丸の警備は海上保安庁が担当することになった。アメリカ政府は日米原子力協定に基づき、プルトニウム輸送船・あかつき丸の警備要員に対しアメリカ海軍特殊戦群の特殊部隊SEAL TEAMによる訓練を要求した。海上保安庁はプルトニウム輸送警備隊を設立し、合衆国海軍特殊戦群SEAL TEAMに隊員を訓練のため派遣した。(注12)

1996年、関西空港海上警備隊とプルトニウム輸送警備隊が統合され特殊警備隊SSTが40人で発足した。特殊警備隊SSTは合衆国海軍特殊戦群の特殊部隊SEAL TEAMなどの指導の下、対テロ戦・対ゲリラ戦・対コマンド戦に励んだ。(注13)             

特殊警備隊SSTは、1989年に東シナ海で発生したイギリスの海運会社の保有するパナマ船籍の貨物船「アランドラ・レインボー」の船員暴動事件にイギリス政府から鎮圧要請を受け、ヘリコプターから船内に突入、人質となっていたイギリス人船長を救出、暴動を鎮圧した。

また特殊警備隊SSTは1992年、のシンガポールの貨物船「アセアン・エクスプレス」の船員暴動事件にも投入され暴動を鎮圧、人質の船長などを救出した。(注14)

注1~注22

 2004年「海上保安庁観閲式」

組織|海上保安庁 (mlit.go.jp)

船艇|海上保安庁 (mlit.go.jp)

航空機|海上保安庁 (mlit.go.jp)

    海人社『世界の艦船』2010年7月号、2014年7月号

    ワールドフォトプレス『コンバットマガジン』2004年8月号

注23~注27

読売新聞朝刊1998年4月11日、2001年10月17日

 

 

 

 

 

第3節 陸上自衛隊の対テロ作戦 2000年代

 

米ソ冷戦時代にもテロ・ゲリラ・コマンド・特殊部隊の危機は存在していたのだが、テロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処には治安の要素があるため、陸上自衛隊が任務とすることに警察庁の反対があった。 

陸上自衛隊が特殊部隊を創設しテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処を実施すると、左派マス・メディア、左派市民運動家、左派政治家が「国民に銃を向けるのか」、「戦争の準備をしている」、「市民が巻き込まれる」という反対の声を上げる可能性が高かった。

陸上自衛隊がテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処を本格化させること、特殊部隊を創設することは躊躇われてきた。

しかし、ソ連が崩壊し、機甲部隊の衝突の可能性が低くなったため、相対的にテロ対処・ゲリラ対処・特殊部隊/コマンド対処の比重は高まった。

1993年後半から1994年前半、北朝鮮は国際原子力機関IAEAの特別査察を拒否、国際原子力機関IAEAの査察を妨害した。核弾頭、弾道ミサイル、化学兵器、生物兵器で国際社会を威嚇する北朝鮮に対し国連は経済制裁を実施、国連,国際社会は北朝鮮へ軍事制裁も真剣に検討した。

1994年、北朝鮮の暴発、朝鮮半島有事、第二次朝鮮戦争の可能性が高まり、世界有数の特殊部隊・コマンド部隊、ゲリラ部隊・テロ部隊を有する北朝鮮の脅威が切迫したものとなった。

以前からソ連の日本進攻時に真っ先に投入されるソ連軍参謀総局特殊任務部隊(スペツナズ)を考慮はしていたが、こうした経緯で防衛庁、陸上自衛隊のなかでもゲリラ・コマンド対処の重要性が再認識された。

北朝鮮危機、朝鮮半島有事、第二次朝鮮戦争に対し陸上自衛隊も特殊部隊の創設を決定、1994年から特殊部隊創設へ向けた研究を開始、1999年には陸上自衛隊の特殊部隊創設に向けた準備が始まった。

陸上自衛隊は合衆国陸軍特殊作戦コマンド、合衆国陸軍特殊部隊コマンド、合衆国陸軍特殊部隊群(グリーン・ベレー)、合衆国陸軍第1特殊部隊作戦分権隊D(デルタ・フォース)、ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールに要員を派遣し、部隊運用、作戦、訓練のノウハウを学んだ。

陸上自衛隊特殊作戦群は2004年3月、千葉県・習志野駐屯地で正式に発足した。

陸上自衛隊特殊作戦群は対テロ、対ゲリラ、対コマンド/対特殊部隊を担当する陸上自衛隊最強の部隊である。陸上自衛隊特殊作戦群は戦闘部隊が200人、支援部隊が100人の300人と発表された。

陸上自衛隊特殊作戦群は当初、空挺レンジャー資格保有者、部隊レンジャー資格保有者を中心に選抜された。その後も空挺レンジャー資格保有者、部隊レンジャー資格保有者を中心に構成されるものの、レンジャー資格が無くても特殊作戦群のセレクションに呼ばれることがある。

朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストへの対処が本格的に可能になった。

 

2002年3月には西部方面隊直轄の組織として西部方面普通科連隊が長崎県・相浦駐屯地で発足した。島嶼部、山岳の多い西部方面隊の地形に対応する部隊で、敵が占領・潜伏した離島の奪還、情報収集、テロ・ゲリラ・特殊部隊/コマンド対処がおもな任務である。水路からの潜入、山中機動、ヘリコプターを使っての空路からの侵入など難しい戦術をこなす。レンジャー資格保有者が多数を占める。一方、新兵も比較的多く採っている。(注4)

陸上自衛隊西部方面普通科連隊は本部管理中隊と3個普通科中隊からなる660人の連隊である。非常に重い81mm迫撃砲を担いでの険しい山中の機動や、装具を身につけての長距離水泳での水路侵入など任務は過酷を極める。

陸上自衛隊西部方面普通科連隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、国際テロリストに対処する訓練とともに韓国語、朝鮮語の教育を重視し、対テロ戦、対ゲリラ戦への有効な対処を計画した。

 

陸上自衛隊第1空挺団は千葉県習志野駐屯地に駐屯し、団本部、団本部中隊(偵察小隊、降下誘導小隊)、第1普通科大隊、第2普通科大隊、第3普通科大隊、空挺特科大隊、空挺後方支援隊、空挺通信中隊、空挺施設中隊、空挺教育隊、からなる2000人の部隊である。(注2)

陸上自衛隊第1空挺団の隊員の多くは空挺レンジャー資格保有者で占められ精強を誇る。

2000年代、第1空挺団は1500人から2000人に増強された。朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、国際テロリストなど対テロ戦、対ゲリラ戦、対コマンド戦に対応する。

 

陸上自衛隊中央即応連隊は2008年3月26日に栃木県宇都宮駐屯地で正式に発足した。国内での各方面隊への増援や、国際平和協力活動における先遣隊の役割を果たす。隊員はレンジャー資格保有者や第1空挺団出身者が多く、錬度も非常に高い。700人で構成され、本部管理中隊と3個普通科中隊からなる。

 

 

 

 

2000年代、陸上自衛隊は北朝鮮暴発、朝鮮半島有事、第二次朝鮮戦争を想定し、朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊という北朝鮮ゲリラ・コマンド対処を最重要課題とした。

陸上自衛隊は合衆国陸軍、合衆国海兵隊から対テロ戦、対ゲリラ戦を学び、北朝鮮ゲリラ・コマンド対処に応用した。

陸上自衛隊一般部隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊がアメリカ軍基地、陸上自衛隊駐屯地、海上自衛隊基地、航空自衛隊基地、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、ダム、水道施設、高圧線、ガス施設、鉄道、空港、政府機関など重要防護施設への攻撃、政治家、官僚、自衛隊高官、大企業重役の暗殺、拉致という直接行動を準備していることに対し、効果的な検問の実施と検問を突破しようとする朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処、捕虜として身柄拘束した朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への国際法に則ったうえでの非常に厳しい尋問の訓練を開始した。

 

2000年代になって陸上自衛隊の演習場には鉄筋コンクリート鉄骨コンクリートによる本格的な市街戦訓練施設が建設され、人質をとって立てこもる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストの制圧作戦、人質救出作戦の訓練ができるようになった。

陸上自衛隊一般部隊は人質を取って市街地のビル、マンションに立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊への対処として、人質救出作戦、と徹底した残敵掃討作戦の訓練を繰り返しおこなった。

 

人質救出をとって立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリスト、に対し、人質救出のため正確な狙撃を実施できるレミントンM24スナイパー武器システム対人狙撃銃も導入された

 

陸上自衛隊一般部隊によって包囲された朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊を殲滅するため陸上自衛隊一般部隊のレンジャー資格保有者による対ゲリラ戦、対テロ戦の訓練を開始した。

朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊は陸上自衛隊装備や合衆国陸軍、合衆国海兵隊と同じ装備で欺瞞作戦を敢行するので、陸上自衛隊一般部隊のレンジャー資格保有者は顔に施す迷彩を短時間で変更し、欺瞞作戦を実施する朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊を見分ける戦術訓練を実施した。

 

 

 

 

第4節 海上自衛隊の対テロ作戦 2000年代

 

 海上自衛隊は1999年の北朝鮮の工作船発見事件、工作員逃亡事件で対処ができなかったことから特殊部隊である海上自衛隊特別警備隊を創設、北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員と人質を取りながら立て籠もる朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストに対処する訓練を開始した。

対テロ、対ゲリラ、対コマンドの特殊部隊である海上自衛隊特別警備隊はアメリカ海軍特殊部隊SEALやDEVGRU(合衆国海軍特殊戦開発群、旧称SEAL TEAM6)ではなくイギリス海軍特殊部隊SBS(特殊舟艇部隊)の協力を得て発足した。。

海上自衛隊特別警備隊は70人の部隊である。

1999年3月の北朝鮮工作船事件を発端に、対ゲリラ・コマンド特殊部隊「特別警備隊」が発足した。豊和工業 89式小銃(5,56mm×45)、H&K HK416ライフル(5,56mm×45)、H&K MP5機関拳銃(サブ・マシンガン、9mm×19)、SIG P226拳銃(9mm×19)などを装備している。(注7)

 

対潜水艦の哨戒だけでなく北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作員の日本投入に使われている北朝鮮工作船に対処するためSH-60K哨戒ヘリコプターが導入され始めた。

SH-60K哨戒ヘリコプターはSH-60J哨戒ヘリコプターに比べ若干大型化され、コックピットは操作、状況認識しやすいようグラス・コクピット化、さらに搭載センサーは小型化されながら高性能化された。

これまでのHQS-103ディッピング・ソナーに代わり、新型低周波アクティブ・ソナーが装備された。また、対水上戦用に捜索レーダーに代わり、逆合成開口レーダーが装備される。またFLIR機能とレーザー誘導機能のあるレイセオンAN/AAS-44 ILDRTS(赤外線・レーザー探知測距追跡セット)を装備する。

三菱重工業SH-60K哨戒ヘリコプターは北朝鮮の工作船の日本への工作員投入、日本人拉致、偽造紙幣スーパーK密輸、軍事関連機器密輸、覚せい剤密輸など工作活動阻止のため74式車載7,62mm機関銃とAGM-114Mヘルファイア対戦車ミサイルを装備している。AGM-114ヘルファイア対戦車ヘリコプターは対戦車用の弾頭ではなく対人・対車輌・対工作船に有効な爆風破砕タイプを採用し、北朝鮮の工作船、左翼テロリスト、国際テロリストの無力化に対応できるようになった。

北朝鮮・朝鮮労働党作戦部の工作船からの携帯対空ミサイル攻撃に備え、自衛システムとしてEADS AN/AAR-60 MILDミサイル発射探知システムとBAEシステムズAN/ALE-47 CMDSカウンターメジャー・ディスペンサー・システムが装備された。(注5)

 

 

 

 

第5節 航空自衛隊の対テロ作戦 2000年代

 

航空自衛隊は基地警備に対してあまり力を入れてこなかったが、北朝鮮危機、朝鮮半島有事の可能性が高まり朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊による航空自衛隊への攻撃、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストの航空自衛隊基地への便乗攻撃が現実に迫るなか、基地警備の強化に迫られた。

航空自衛隊は朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストへの対処として基地警備訓練を強化するとともに航空自衛隊基地警備教導隊を創設、朝鮮人民軍特殊部隊、朝鮮人民軍コマンド部隊、在日朝鮮人ゲリラ部隊、主体思想派ゲリラ部隊、親北朝鮮派日本人ゲリラ部隊、親北朝鮮派在日韓国人ゲリラ部隊、左翼テロリスト、共産主義テロリスト、国際テロリストへの対処に向けて動き出した。

航空自衛隊は基地警備部隊の能力向上のため基地警備教導部隊の研究を始め、2008年3月に基地警備教導隊を発足させる予定であった。

2008年3月の発足予定から3年遅れて2011年3月に航空自衛隊基地警備教導隊が発足した。

航空自衛隊の基地警備教導隊は、豊和工業 64式小銃(7,62mm×51)、FN MINIMI5,56mm機関銃(5,56mm×45)、ミネベア 9mm機関拳銃(9mm×19)、SIGザウエル/ミネベア SIG P220 9mm拳銃(9mm×19)などの小火器が装備されている。

車輌は陸上自衛隊と同じコマツ 軽装甲機動車が配備されている。陸上自衛隊ではオリーブ・ドラブとライト・ブラウンの迷彩となっているコマツ 軽装甲機動車だが、航空自衛隊基地警備教導隊はオリーブ・グリーン一色のコマツ 軽装甲機動車を装備する。

 

 

 

 

 

 

 マス・メディアにおける論議

 

第1章 マス・メディアにおける論議

 

第1節 マス・メディアの状況

 

 1990年代後半のマス・メディアを広告費で検証する。1990年代後半の総広告費の平均は、5兆9901億円である。そのうち、新聞が1兆2636億円、雑誌が4395億円、ラジオが2247億円、テレビが2兆79億円、となっている。(注1)

 新聞の1997年における状況を検証してみる。日本ABC協会による公差レポートによる公差部数では、1997年の平均で第1位が読売新聞で1020万部、第2位が朝日新聞で832万部、第3位が毎日新聞で396万部、第4位が日本経済新聞で299万部、第5位が産経新聞で194万部、第6位が北海道新聞で121万部、第7位が西日本新聞で85万部となっている。(注2)また、日本ABC協会から脱退した中日新聞は公称254万部となっている。

 2013年度後期の日本ABC協会による公差レポートによる公差部数では第1位が読売新聞で926万部、第2位が朝日新聞で710万部、第3位が毎日新聞で330万部、第4位が日本経済新聞で275万部、第5位が産経新聞で162万部となっている。

 2015年度後期の日本ABC協会による公差レポートによる公差部数では第1位が読売新聞で914万部、第2位が朝日新聞で671万部、第3位が毎日新聞で329万部、第4位が日本経済新聞で273万部、第5位が産経新聞で160万部となっている。

 各地域における世帯普及率で各新聞が1997年と2007年においてどう扱われていたかを検証してみる。

 まずは1997年からである。

北海道での世帯普及率は、北海道新聞が52,1%、読売新聞が11,0%、朝日新聞が7,1%、毎日新聞が3,0%、日本経済新聞が2,4%、産経新聞が0,0%となっている。半数以上が北海道新聞を購読しており、読売新聞と朝日新聞がある程度読まれている。産経新聞はほぼ読まれていない状態である。

東北の太平洋沿岸部の中心である宮城県での世帯普及率は、河北新報が59,9%、朝日新聞が12,9%、読売新聞が10,5%、日本経済新聞が4,5%、毎日新聞が2,6%、産経新聞が1,3%となっている。宮城県においても地域紙(ブロック紙)である河北新報の独占状態で、残りを大手2社が分け合っている状態である。

東北の日本海沿岸の秋田県の世帯普及率は、秋田魁が66,6%、読売新聞が12,3%、朝日新聞が11,4%、毎日新聞が4,6%、日本経済新聞が2,6%、産経新聞が0,7%となっている。秋田県も他の地方部と同様、地域紙が非常に強い状態である。

首都圏のベッドタウンとして、1950年の230万人、1985年の人口550万強から2000年には人口700万人へと急速に人口を増やし、発展した埼玉県の世帯普及率は、読売新聞が43,0%、朝日新聞が24,6%、毎日新聞が10,5%、日本経済新聞が6,7%、埼玉新聞が6,8%、産経新聞が3,8%となっている。都市化の進む埼玉県では、全国紙である読売新聞が健闘、朝日新聞がダントツの2位、毎日新聞が3位と続くが、全国紙である産経新聞は苦戦を強いられている。

首都として、1211万人の人口を抱える東京都の世帯普及率は、読売新聞が30,4%、朝日新聞が24,6%、日本経済新聞が11,1%、毎日新聞が7,7%、東京新聞が5,8%、産経新聞が5,2%となっている。東京では読売新聞と朝日新聞の2強の戦いが続いているが、近年は読売新聞が優勢である。産経新聞は、地方紙である東京新聞にも破れており、全国紙としての資格、影響力が問われる。

中部地方の中心、愛知県の世帯普及率は、中日新聞が68,2%、朝日新聞が12,4%、日本経済新聞が5,7%、読売新聞が5,0%、毎日新聞が4,0%、産経新聞が0,1%である。大都市・名古屋を中心に都市化の進んだ愛知県であるが、新聞世帯普及率から見ると、完全に地方型の様相を呈する。

日本第2の都市圏の中心で、881万人の人口を抱える大阪府の世帯普及率は、読売新聞が28,9%、朝日新聞が23,3%、産経新聞が20,4%、毎日新聞が16,9%、日本経済新聞が8,1%である。地域新聞が存在しない大阪府では、全国紙が激戦を展開しており、産経新聞が唯一、健闘している地域である。

大阪のベッドタウンともなっている兵庫県の世帯普及率は、神戸新聞が26,2%、読売新聞が24,7%、朝日新聞が23,5%、毎日新聞が11,6%、産経新聞が6,6%、日本経済新聞が6,2%である。兵庫県は全国紙に加え、地方紙である神戸新聞を巻き込んだ激戦地となっている。

山陽の広島県での世帯普及率は、中国新聞が59,6%、読売新聞が14,7%、朝日新聞が12,7%、日本経済新聞が5,5%、毎日新聞が4,6%、産経新聞が1,8%となっている。広島県も典型的な地方型の展開である。

山陰の鳥取県での世帯普及率は、日本海新聞が77,3%、読売新聞が16,7%、朝日新聞が11,8%、毎日新聞が8,7%、日本経済新聞が3,8%、産経新聞が2,1%となっている。

九州の中心として発展する福岡県の世帯普及率は、西日本新聞が34,1%、読売新聞が22,5%、朝日新聞が19,1%、毎日新聞が16,8%、日本経済新聞が4,6%、産経新聞が0,1%である。福岡県は強い地方紙と均衡する全国紙といった状態で、都市型と地方型の中間の様相である。

1972年に日本に返還された沖縄県での世帯普及率は、琉球新報が43,4%、沖縄タイムス44,2%、日本経済新聞が1,0%、朝日新聞が0,5%である。沖縄県は沖縄型といっても過言ではない特殊な状況である。(注3)

次に2007年である。

北海道の世帯普及率は北海道新聞が46,9%、読売新聞が9,0%、朝日新聞が6,0%、毎日新聞が2,8%、日本経済新聞が2,2%、産経新聞が0,0%となっている。

宮城県では河北新報が55,3%、読売新聞が8,4%、朝日新聞が10,2%、毎日新聞が2,0%、日本経済新聞が4,1%、産経新聞が1,3%となっている。

秋田県では秋田魁が62,9%、読売新聞が9,5%、朝日新聞が9,3%、毎日新聞が3,7%、日本経済新聞が2,3%、産経新聞が0,8%となっている。

埼玉県では読売新聞が39,1%、朝日新聞が22,5%、毎日新聞が10,4%、日本経済新聞が5,9%、産経新聞が3,8%となっている。

東京都では読売新聞が24,3%、朝日新聞が20,1%、毎日新聞が7,0%、日本経済新聞が10,3%、産経新聞が6,0%、東京新聞が4,3%となっている。

愛知県では読売新聞が3,3%、朝日新聞が9,6%、毎日新聞が3,5%、日本経済新聞が5,3%、産経新聞が0,1%、中日新聞が64,2%となっている。

大阪府では読売新聞が24,7%、朝日新聞が21,2%、毎日新聞が15,6%、日本経済新聞が6,9%、産経新聞が20,2%となっている。

兵庫県では読売新聞が24,1%、朝日新聞が22,7%、毎日新聞が10,7%、日本経済新聞が5,9%、産経新聞が6,3%、神戸新聞が25,0%となっている。

広島県では読売新聞が12,6%、朝日新聞が11,2%、毎日新聞が3,2%、日本経済新聞が5,1%、産経新聞が1,6%、中国新聞が54,3%となっている。

鳥取県では読売新聞が13,6%、朝日新聞が8,1%、毎日新聞が5,0%、日本経済新聞が3,1%、産経新聞が1,4%、日本海新聞が75,9%となっている。

福岡県では読売新聞が19,8%、朝日新聞が16,7%、毎日新聞が15,8%、日本経済新聞が4,2%、産経新聞が0,1%、西日本新聞が31,2%となっている。

沖縄県では読売新聞が0,1%、朝日新聞が0,3%、毎日新聞が0,1%、日本経済新聞が0,8%、産経新聞が0,0%、沖縄タイムズが41,3%、琉球新報が38,6%となっている。

産経新聞は全国紙でありながら、大阪府以外ではまったく振るわず、大手広告代理店の博報堂DYホールディングス大広の梅本春夫氏は、産経新聞を「大阪の地域紙」にすぎないと述べている。

購読者の世帯主職業でみる新聞の到達度を検討する。

読売新聞では、給料事務18,2%、給料労務33,1%、役員・管理職16,0%、自由業8,6%、商工自営15,4%、無職・その他8,8%である。読売新聞は可処分所得の少ない給料労務が主力であるため、1020万部の部数を誇りながら広告料は1段あたり266万8000円に甘んじている。(注4)

朝日新聞の場合、給料事務26,1%、給料労務23,0%、役員・管理職24,2%、自由業7,2%、商工自営11,0%、無職・その他8,6%となっている。朝日新聞は可処分所得の大きい給料事務、役員・管理職が主力のため、発行部数は第2位の832万部でありながら広告料は1段当たり277万7000円と、読売新聞より高くなっている。

毎日新聞では給料事務18,8%、給料労務19,9%、役員・管理職19,1%、自由業13,2%、商工自営18,8%、無職・その他10,3%となっている。毎日新聞は各層にまんべんなく浸透しているおり、発行部数は朝日新聞の半分以下でありながら広告料は1段当たり153万1000円となっている。(注5)

産経新聞は、給料事務16,0%、給料労務24,5%、役員・管理職16,3%、自由業10,1%、商工自営26,0%、無職・その他12,1%となっている。産経新聞の場合、発行部数が少なく、高齢者に購読が多い(無職・その他)ため、広告料も非常に低いものとなっている。(注6)

 

注1、2、3、4、5、6

日本ABC協会『公差レポート』日本ABC協会 1996

                                    1997

                                    1998

                                    1999

                                    2000

                                    2014

                                    2016

 

 

 

 

 

 

第2章 読売新聞における論議

 

 発行部数日本最大の読売新聞における安全保障の論議・提言を検証する。

 

 

 

2000年の論調

 

 

 2000年7月26日朝刊の社説で、民主党において「安全保障、防衛をめぐる意見の隔たりが大きい」と指摘し「特に憲法問題は改憲派と護憲派が対立」と主張、「党の方針は、立場を鮮明にしない『論憲』にとどまっている」と指摘している。「二十一世紀の国家像を描くには憲法問題を避けて通ることはできない。」と民主党の体質を描いている。(注1)

2000年7月30日朝刊の社説では、日本の排他的経済水域に中国の調査船が急増している問題について書くと同時に、新たなる国家の脅威について「防衛庁は、来年度からの次期防衛力整備計画にサイバー・テロ対策などを取り込む考えだが、なおこの問題についての認識が薄いと言わざるを得ない」と、サイバー・テロの脅威に対しての対策を求めている。(注2)

2000年9月28日朝刊の社説では、「有事法制のすみやかな整備も日米安保の円滑な運用に不可欠だ」と指摘、有事法制の制定を求めている。(注3)

2000年12月16日朝刊の社説では、RMAが「日本は大幅に遅れ」、「自衛隊の能力向上だけなく、日米安保の効果的運用の面からも危機感をもって取り組まなければならない」と日本の防衛の弱点を指摘、公明党の反対で来年度予算に空中給油機が組み込まれなかったことを「防衛の重要事項を後回しにして、選挙対策を優先したのだとしたら、責任ある与党だと言えない」と批判している。(注4)

 

 

 

2001年の論調

 

 2001年3月5日朝刊の社説で、「領域警備 早期の法整備へ政治の見識示せ」とし、「警察官職務執行法準用に無理がある」と、現在の状況が自衛隊が警察官職務執行法に縛られまともに動けないことに警鐘を鳴らしている。また、「各国は、領域警備を軍隊本来の任務に付随する任務と位置付けている。日本も、自衛隊の任務と明記するべきだ。」と提言している。(注5)

2001年8月31日朝刊の社説では、「これまで警察は短銃の使用に抑制的であり過ぎたように見える。それが警察官に歯向かう凶悪犯を助長した一面は否定できない。」と日本の警察が銃の使用を遠慮させられてきたことを指摘し、「戦後の日本は、何であれ『力』の行使はすべて罪悪視する傾向が長く続いてきた。」と、戦後日本の誤った思考回路を批判している。(注6)

2001年9月14日朝刊の社説で、「国際テロ対策 平和と秩序を守る日本の責任」と題し、「急がなければならないのは、テロに関する情報の収集と分析の体制強化だ。日本は国際テロ組織に関する海外の情報を米国などから全面的に頼っている。」とし、「警察庁はもちろん、外務省、防衛庁も各国情報機関との連携を強めるなど情報収集体制を強めるべきだ」と主張している。また日本には、「『スパイ防止法』がない。」と指摘、「その種の法整備の必要性の論議する必要がある」と説いている。そして、「緊急事態に迅速、機動的に対応するには、首相官邸に情報を集約し、首相が一元的に指揮することが欠かせない」と提言している。(注7)

 

 

 

 

2002年の論調

 

 2002年5月11日朝刊の社説で、「有事法制審議 不毛な神学論争を繰り返すな」と主張、左翼勢力による自衛隊批判論などを牽制している・(注8)

2002年8月3日朝刊の社説では、「防衛白書 軍事情勢の大変化に対応せよ」と述べ、「『テロとの戦い』国際社会の新たな脅威」とし、「安保政策を見直す必要がある。防衛力整備の分野では、情報通信などの先端分野技術の導入に力を入れるべきだ」と主張している。(注9)

2002年9月7日朝刊の社説では、「不審船問題 なぜ、そんなに及び腰なのか」とし、「無用な配慮を働かせていては、引き出せるものもひきだせない」、「毅然とした姿勢こそ、大事なメッセージである」と、与野党にある中国、北朝鮮を意識した主張を批判している。(注10)

 

 

 

 

2003年の論調

 

 2003年3月29日朝刊の社説で、「情報収集衛星 『宇宙の目』生かす体制拡充急げ」とし、「専守防衛に徹する利用であっても、安全保障にかかわることになると、一部野党の反対で、政府は自らの手足を厳しく縛ってきた。安全保障に衛星を利用するには、その衛星が『民生分野で一般化されていることが条件』とする従来の政府解釈に拘束されて今回の衛生の解像度も商用の観測衛星レベルに抑えられた」と、日本における偵察衛星論議の不毛さを指摘している。(注11)

2003年4月3日朝刊の社説では、「日本の防衛 『北』ミサイルへの対応を考えよ」と主張し、「当面必要なのはミサイル防衛だ」と主張している。(注12)

2003年5月26日朝刊の社説では、「専守防衛 『北』の脅威への見直し論議深めよ」とし、「他国に脅威を与えず、自衛のための必要最小限の防衛力しか持たない、という専守防衛の基本理念は、国民の間に定着している。その基本を維持しつつ、時代と情勢の変化に応じた合理的な防衛力整備を進めるというのが政治の責務だ」と主張している。(注13)

 

 

 

 

2004年の論調

 

 2004年6月28日朝刊の社説では、「自衛隊50年 組織や装備を大改革する時だ」と主張し、「厳しい財政上の制約がある以上、不要な装備や人員を削減しなければならない。自衛隊には、現在もなお古い組織、装備が残存している。例えば戦車は980両あり、うち470両が北海道に配備されている」と軍事的にはお粗末な考えである戦車不要論に近い主張を展開、「自衛隊の組織のスリム化を図るべきだ。大型ヘリを使って部隊を機動的に展開させることなどを検討するなど、組織や運用を根本から見直せば陸自は十五万人体制を維持する必要がなくなる」と、理想論の机上の空論を展開している。(注14)

2004年11月10日朝刊の社説では、「防衛計画の大綱で安全保障戦略は示されるべき。安全保障戦略が定まらないまま、防衛力整備構想を各省庁間で論議するのは順序が逆なのではないか。防衛計画の大綱を急ぎ、そのうえで整備構想をつめるのが筋」としたうえで、「財務省の(言う)削減は当然だろう」と東アジア情勢を考えない主張を展開し、「三自衛隊の統合運用、装備のハイテク化、情報収集・分析能力の向上などで。組織や装備の削減は補えるはずだ。」と人員的、金銭的に一番手間がかかる方法を代案に唱えている。(注15)

2004年12月11日朝刊の社説では、「スリムで筋肉質な自衛隊にすべきだ。」とすでに実行されていることを主張し、「財政上の理由だけで、国民の生命や国の安全を守る防衛力を補ってはならない」と、2004年11月10日朝刊社説の前言を翻している。(注16)

 

 

 

 

2005年の論調

 

 2005年2月16日朝刊の社説で、「自衛隊法改正 ミサイル防衛強化への一歩だ」と、自衛隊法改正を評価している。(注17)

 

 

 

 

2006年の論調

 

 2006年3月27日朝刊の社説で、「自衛隊統合運用 陸海空一体へ体制作り急げ」と三自衛隊の統合運用を勧めている。(注18)

 

 

 

 

 

2007年の論調

 

 2007年1月1日朝刊の社説「タブーなき安全保障論議を 集団自衛権『行使』決断せよ」において、「米国、中国、ロシアの3国は、北の核に対する圧倒的な核報復力、つまり核抑止力を保持している。日本が置かれている状況ほどの深刻な脅威ではない。」、「現在の国際環境下で、日本が核保有するという選択肢は、現実的でない。」、「核保有が選択肢にならないとすれば、現実的には米国の核の傘に依存するしかない。」、「同盟の実効性、危機対応能力を強めるため、日本も十分な責任を果たせるよう、集団自衛権を『行使』できるようにすることが肝要だ。」、「また、非核三原則のうち『持ち込ませず』について議論しなおしていいだろう。」と主張している。現実的防衛力増強となる日米同盟強化のために集団自衛権行使容認を勧めている。(注19)

 2007年2月28日朝刊の社説「日本版NSC 国家戦略の司令塔作りを急げ」において、「外交・安全保障には、資源・エネルギー政策や、政府開発援助も含まれる。その時々の政策案件によっては、少人数閣僚会議に、財務相、経済産業相、国土交通相ら関係閣僚や統合幕僚長が参加することも必要だろう。」、「閣僚会議が機能するためには、情報分析や各省庁間の調整を行う事務局がしっかりとしてなくてはならない。」と主張している。日本版NSCに具体的提言を行っている。(注20)

 2007年7月7日朝刊の社説「防衛白書 中国との安保対話を深めよ」において、「国際社会の一員として責任ある行動をとる。軍事分野の透明性を高める。」、「こうした点を中国に粘り強く求めることが地域の平和と繁栄につながる。」と主張している。日本の対中外交の弱腰姿勢からまっとうな方向への転換を促している。対話だけでなく力の均衡が必要なことも主張すべきである。(注21)2007年8月21日朝刊の社説「平和協力活動 自衛隊の武器使用を国際標準に」において、「武器使用基準を緩和し、国連平和活動(PKO)で認められている国際基準に合わせて、任務遂行のための使用を認めるべきだ。」と主張している。(注22)

 2007年8月26日朝刊の社説「次期戦闘機 日米同盟踏まえた機種選定を」において、「東アジアでは中国の空軍力の近代化が著しい。20~30年後の日本の安全保障環境を見据えれば、防衛省が最も高性能なF22の導入を追求するのは理解できる。」、「ただ価格、機体整備の利便性など、様々な条件を吟味し、総合的に判断すべきだ。F22を導入できないときに備えて、米英などが共同開発中のF35など、代替案を検討する作業も不可欠だ。」、「日米両政府は軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結した。情報漏えいには政府全体で取り組むべきだ。」と1980年代後半の次期支援戦闘機(FSX)をめぐる防衛摩擦の再来のよう情報漏洩に甘い日本に注意を促している。そして、「1980年代後半の次期支援戦闘機(FSX)をめぐる防衛摩擦の再来のようなことがあってはならない。」と主張している。FSX事件は日米双方の相互不信が両国家に大きな影響を与えたため、再検証の必要がある。(注23)

 

 

 

 

2008年の主張

 

 2008年1月7日朝刊の社説「新たな秩序へ やはり日米同盟が基軸だ 自衛隊派遣恒久法を」において、「日本単独では対処できない」、「超大国・米国が保持する軍事抑止力をはじめとする強大な力を、日本は安全は無論、世界の平和と繁栄の支えとするために、今日日米同盟の重要性は一層強まっている。」、「防衛協力の進展が重要」、と日米同盟の重要さを強調、「集団自衛権は『保有しているが、行使できない』という矛盾した憲法解釈の見直しも必要」と日米同盟の正常化を提言し、「安保理に委ねるのは国家主権の放棄に等しい。安保理決議が無くても、国会の承認があれば、自衛隊を派遣できる枠組みを定めるべきだ。」と国連重視の姿勢を批判し、さらに「武器使用基準を見直すべき」として、海外における自衛隊運用の非合理性を正そうとしている。(注24)

 2008年6月1日朝刊の社説「クラスター禁止 安全保障上の代替策を探れ」では、「日本が同意を決断したのは、妥当な判断だろう」と政府の決定を支持し、「米軍との防衛協力も含め、戦術面の見直しなども検討する必要があるかもしれない。」とクラスター爆弾禁止後の対応を模索している。(注25)

 2008年6月19日朝刊の社説「日中ガス田合意『戦略的互恵』へ第一歩だ」において、「海洋国家日本として、主権と権益を守る体制を一層強化していかなければならない」と日中合意を評価しながらも、一定の注意を促している。(注26)

 2008年9月22日朝刊の社説、「ミサイル防衛 空自も迎撃に成功した」において、「ミサイル防衛は、単に迎撃ミサイルを配備するだけでは有効に機能しない。ミサイルを探知する警戒管制レーダーFPS5や、防空情報を一元管理する空自の自動警戒管制組織(BADGE)システムとの適切な連結が不可欠だ。ミサイル発射の事前情報や早期警戒情報を持つ米軍との情報共有や連携強化も重要となる」として、防空体制の強化とアメリカ軍との関係強化を主張している。(注27)

 2008年8月18日朝刊の社説、「防衛大綱改定 陸海空の予算配分見直せ」において、「現在の陸海空の予算配分が、冷戦時とほぼ同じというのはおかしい。当面は陸自の予算を減らし、海自と空自を増やす方向で議論を進めるべきだろう。現在の大綱では、陸自の定員は15万5000人、戦車と火砲は各600門に減らされたが、一層の削減を検討する必要がある。」と主張している。陸海空の予算配分の見直しは当然であるが、東アジア情勢の緊迫化に伴う防衛力拡大の必要性にはまったく言及していない。また、陸戦の基本である兵士の頭数や火力をまったく考慮していない提言である。(注28) 

 

 

 

 

2009年の主張

 

2009年1月20日朝刊の社説「防衛大綱改定 国際平和活動の拡充目指せ」において、「自衛隊には依然冷戦時代の名残がある。旧ソ連の着上陸侵攻を想定した北方重視の部隊編成や装備体系だ。」と批判しているが、ロシアの脅威や広大な演習場が北海道以外にない現実を無視している。また、「陸自の定数や戦車・火砲などの一層の削減に取り組まなければならない」と主張、既成概念にとらわれた国防思想から踏み出せていない。(注29)

2009年6月10日朝刊の社説、「武器輸出 3原則の緩和に踏み出す時だ」において、「自国の防衛のために武器を調達すること自体は、本来否定されるべきではない。」と戦後日本の左翼勢力を中心とした国防否定、軍事否定の考えを批判している。また「忘れてはならないのは、防衛費の減少が続く中で、武器を輸出できない日本の防衛産業の経営が悪化していることだ」と、日本の防衛の根幹を揺るがす事態に警鐘を鳴らしている。(注30)

 2009年8月5日朝刊の社説「大胆な提言を新大綱に生かせ」において、「国際的な安全保障環境が変化する中、日本の平和と安全を確保し続けるには、従来のタブーを排し、防衛政策や自衛隊の部隊編成・装備を見直すことが肝要だ。」と主張している。(注31)

 2009年7月23日朝刊の社説「防衛白書 脅威を直視し防衛力を高めよ」において、「装備調達の効率化は当然としても、そろそろ防衛費の漸減に歯止めをかけるべきではないか。」と、提言している。(注32)

 2009年8月23日朝刊の社説「日米同盟 責任分かち信頼強化せよ」において、「北朝鮮の核とミサイルの脅威が顕在化した今、日米同盟を強化し、防衛協力の実効性ト抑止力を高める必要性がある」と主張している。(注33)

 2009年8月26日朝刊の社説「アジア外交 膨張する中国とどう向き合う」において、「中国軍の増強も、この地域にとって懸念材料だ」と指摘している。(注34)

 2009年9月30日朝刊の社説「東アジア共同体 経済連携の強化で環境整備を」において、「『東アジア共同体』という言葉だけが先走ってはいないか。」、「だが欧州連合(EU)をモデルにするのは無理がある。東アジアは、政治体制の異なる多様な国からなる。北朝鮮の核ミサイルの脅威や中国の軍事的台頭などがあり、冷戦終結後の欧州のような安全保障環境が整っていない。」と指摘している。(注35)

 

 

 

 

 

注1         2000年7月26日

注2        2000年7月30日

 

 

 

注3        2000年9月28日

注4        2000年12月16日

注5        2001年3月5日

注6        2001年8月31日

注7        2001年9月14日

注8        2002年5月11日

注9        2002年8月3日

注10        2002年9月7日

注11        2003年3月29日

注12        2003年4月3日

注13        2003年5月26日

注14        2004年6月28日

注15        2004年11月10日

注16        2004年12月11日

注17        2005年2月16日

注18        2006年3月27日

注19        2007年1月1日

注20        2007年2月28日

注21        2007年7月7日

注22        2007年8月21日

注23        2007年8月26日

注24        2008年1月7日

注25        2008年6月1日

注26        2008年6月19日

注27        2008年9月22日

注28        2008年1月18日

注29        2009年1月20日

注30        2009年6月10日

注31        2009年8月5日

注32        2009年7月23日

注33        2009年8月23日

注34        2009年8月26日

注35        2009年8月30日

 

 

 

 

 

第3章 朝日新聞における論議

 

 

 

2000年の論調

 

2000年5月17日朝刊の社説で、「夢想は疑心暗鬼を呼ぶ ミサイル防衛」と題し、「この構想は、いわば米国のひとりよがりではないか。あまりにも素朴な技術振興は根底にありはしないか。冷戦の終了で断ち切ったはずの軍拡が、また始まることになる。警戒しつつも、外交的な手段を尽くして、こうした国々を国際社会に受け入れる。その努力こそが安全保障の王道であろう。」と主張している。(注1)

2000年8月11日朝刊の社説では「新潮流の備えこそ 自衛隊50年」と題し、「OECDがまとめた主要国の購買力平価(データのない中露は除く)で比較すると、日本の防衛費は米、英に次ぐ規模に達している。先の南北首脳会議を機にようやく緊張緩和の兆しが見える朝鮮半島を、冷戦状態に引き戻すような敵視政策は許されまい。」と主張している。一番敵対的で拡張主義の軍事大国である中国、ロシアを無視し日本が軍事大国だと唱え、さらに朝鮮半島情勢の判断を間違える朝日新聞の安全保障感覚のなさには呆れるしかない。さらに「TMDは中朝などの警戒感が強く、技術面、コスト面での難点も多い。開発を断念すべきである。」と続け、具体的安全保障政策がまったくみえてこない。(注2)

2000年12月16日朝刊の社説では、「『買い物』は何のため」と題し、「次期防衛力整備計画の総額はもっと絞り込むべきだった。周辺諸国に働きかけ、ともに軍縮を進めることは財政上も必要ではないか。さらに思い切った縮小が必要でないか。いったい、どこのハイテク戦車が攻めてくるのか、解せない話だ。」と主張している。中国の軍拡など東アジア情勢を無視した夢想ばかりの主張である。(注3)

 

第7項  2001年の論調

 

 2001年1月7日朝刊の社説「同盟の虚と実と」では、「核の脅しをたてにした安保がいつまでも続くとは思えない。」と理想論を述べている。(注4)

2001年5月10日朝刊の社説「はっきりNOと言え ミサイル防衛」では、「集団自衛権との関係でも、論議を引き起こすことになるのではないか。米国の新ミサイル防衛構想に対抗して中国が核戦力増強に走る-これほど愚かで危険なシナリオはない。同盟国として日本が米国に正面から意義を唱える。いまなすべきはそれだ。」と主張している。(注5)

2001年6月29日朝刊の社説「対地訓練は必要なのか 空自誤発射」では、「対地攻撃訓練を続ける必要性を根本から考え直してみるべきではなかろうか。専守防衛の日本で対地攻撃支援射撃が必要になるのは、日本の領土に対しての大規模な侵攻があった場合であろう。冷戦の終わった今、そんな想定にどれほど現実性があるのだろう。」と主張している。防衛には冗長性が必要ということを全く理解していない主張である。(注6)

2001年7月15日朝刊の社説では「北朝鮮や中国の軍事動向には、確かに不透明な部分も多い。だからと言ってその脅威を必要以上に言い立て両国の警戒心をたきつけ、より大きな脅威を招く。それほど愚かなことはない。両国を国際社会の責任あるパートナーとして迎える努力こそが最良の防衛政策だと肝に銘じるべきだ。」と理想論だけを展開している。(注7)

2001年11月19日朝刊の社説「市民の目による検証を 拳銃使用」では、「『けん銃取り扱い規範』改正。39年ぶりの本格的見直しである。発砲が適正だったかどうか、警察内部だけでなく、市民の目による検証が必要だ」と主張している。(注8)

 

 

 

 

2002年の論調

 

 2002年1月30日朝刊の社説「同盟を吟味する時だ 英米と日米」では、「英国ほどの距離感を日本は保てるのか。米国に直言する気概のないまま英米のような緊密な軍事協力関係が将来のお手本だというのなら、願い下げである。」、「どんな同盟にも寿命がある。帝国主義時代や冷戦期とは異なる新たなる脅威への対応に、2国間同盟はどこまで有効か。くもりのない目で吟味すべきだ。だからといって、日本が日米安保や専守防衛の枠組みを離れ、自主防衛に踏み出すことは賢明な選択ではあるまい。より普遍的な集団安保の仕組みを考えたい。」と主張している。(注9)

2002年4月28日朝刊の社説「米国にもの申してこそ 独立50年」では、「一歩一歩深まる日米の防衛協力。ソ連が崩壊したとはいえ、東アジアを含む不安な国際情勢にあって、安保条約を維持する価値はある。もちろんそれはアジアの安定のためであり、日本国民の安心のためでなければならない。だが、もし米国自身が世界の安心を、安定を乱す存在になってしまったらどうなのか。」と主張している。(注10)

2002年8月4日朝刊の社説「脅威の列記はいいが 防衛白書」で、「しかし極東ロシア軍の変化については、脅威の圧倒的な削減による防衛政策の見直しに踏み出さない。必要なのは、北海道に手厚い冷戦時代の部隊配置をやめ、警察などとともに、テロやゲリラ上陸に機敏に備える態勢を早急に整えることだ。」と主張している。(注11)

2002年12月30日朝刊の社説「自衛隊の統制者は誰か 統合運用」では、「文民統制には三つの段階がある。防衛庁内部の文官による自衛隊管理、首相による防衛庁、自衛隊に対する指揮統制、自衛隊の行動に対する国会の監督と承認である。」と誤った認識をさらけ出している。本来、文官(軍政)と自衛隊(軍令)とは対等な立場であり、指揮統制する首相が絶対的立場である。(注12)

 

 

 

 

2003年の論調

 

 2003年2月5日朝刊の社説「軍事費突出を憂う 米国予算」において、「今回の04年度予算案でも、国防費は4,4%、国防費を除く米本土の安全保障費は7,6%増加させるという。あまりにもぬきんでた軍事力を持つと、国際的な協調や外交での解決軽視につながりかねない」とアメリカの軍事費だけを主張、中国やロシアに関しては口をつぐんでいる。(注13)

2003年3月29日朝刊の社説では「専守防衛に徹せよ 偵察衛星」という的外れな主張を展開している。(注14)

 

 

 

 

  2004年の論調

 

 2004年1月11日朝刊の社説「平和のため肩組もう カナダ」では、「カナダが大事にしてきた多国間外交の伝統をぜひ守ってほしい。日本とカナダが役割を分担して平和を築くための戦略を練る。そんなソフトな同盟を形づくっていきたい。」と主張している。日本とカナダのおかれている地政学的な環境も考慮すべきである。(注15)

2004年1月15日朝刊の社説「困った防衛庁長官だ 武器輸出」では、「ともすると見過ごされがちなのは、日本にとってこの政策が外交上の大きな『武器』になっていることだ。いや、何より、アジアの国々に無用の警戒心を与えず、信頼を得るための大きな財産になっている。」と主張している。東南アジア各国からは日本の武器、自衛隊の中古兵器の引き合いが多い。(注16)

2004年5月8日朝刊の社説「重し失う小泉政権 福田長官辞任」では、「しかし、自衛隊の派遣には慎重な姿勢をにじませることもあった。米軍を支援する自衛隊の活動範囲や内容を広げることにも批判的だった。」、「防衛庁の予算の増額を求めたときだ。福田氏が石破長官を厳しく批判し、逆に戦車や護衛艦などの正面装備を削減する結果となった。福田氏は、海外での自衛隊の活動はあくまでも非軍事的であり、抑制的あるという考えを貫こうとしていた」と主張し、左翼的な心情を持つ福田官房長官にシンパシーを表明している。(注17)

2004年6月30日朝刊の社説、「『軍隊でない』を誇りに 自衛隊50年」では、「自衛隊は他国で戦争をしない。それが日本にとって国益の源泉であり、誇りであることをあらためて刻みたい。」と主張、国際情勢の変化に対応できない考えを示している。(注18)

2004年10月5日朝刊の社説「防衛懇報告 期待はずれだった」では、「気掛かりは、武器輸出3原則の緩和をはっきりと打ち出したことだ。」と懸念を表明している。(注19)

2004年12月5日朝刊の社説「防衛大綱 あれもこれもは通らぬ。」では、「次期防には射程数百キロの地対地ミサイルの研究が盛り込まれている。敵基地攻撃力を高めることにつなごうというのなら、専守防衛の原則をゆるがすばかりか、日本周辺の緊張を高める恐れがある。」と主張している。(注20)