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横溝正史シリーズ 悪魔が来りて笛を吹く 2

 

昭和22年1月15日。銀座の宝石店・天銀堂に東京都衛生局を名乗る人間が来て、付近で集団赤痢が発生したから予防薬を飲んでほしいと言った。予防薬という液体を飲んだ天銀堂の店員は血を吐き、もがき苦しみ、そのすきに東京都衛生局を名乗る人間は宝石を奪っていった。液体は青酸カリだった。

昭和22年2月20日、新聞に天銀堂事件の犯人のモンタージュ写真が載る。その顔は元・子爵の作曲家・椿英輔そっくりだった。椿英輔の義理の伯父で元・伯爵、貴族院のドンと言われた玉虫公丸は激怒、椿英輔を責め立てる。

椿英輔は性的不能で、妻・秌子とは不仲だった。椿英輔は1月15日には箱根・芦の湯に行っていたという。

警視庁捜査1課に密告状が届く。椿英輔が犯人だと言う。椿英輔を取り調べる日和警部、等々力警部、出川刑事。椿英輔は箱根には行ってなかった。椿英輔は須磨の三春園にいた、と言うが絶対に理由は言えないという。

椿英輔は妻・秌子と娘・美禰子、妻の兄・新宮利彦とその妻・華子と息子・和彦、伯父・玉虫公丸とその愛人・菊江、医師の目賀博士、女中の種、信乃、小間使い的な書生・三島東太郎、と屋敷に暮らしていた。

密告状には屋敷に住んでいる者しか知り得ない情報が書いてあった。

4月15日、信州・霧ヶ峰で椿英輔は青酸カリを飲んで自殺した。

しかしその後、秌子は椿英輔を見たと言い張る。

目賀博士の砂占いで犯人を占うと、悪魔の紋章が現れた。悪魔の紋章とは新宮利彦の背中にある痣と同じ形である。そして玉虫公丸が風神像で殴られた後、首を絞められ殺される。

須磨の三春園で調査する金田一耕助。椿英輔は明石に行くには省線か山陽電車かどちらがいいか、と聞いていた。三春園に戻ってきた椿英輔は潮のにおいがきつく、足に鱗がついていたという。淡路島の尼僧・妙海こと駒子は新宮利彦の愛人で、娘・小夜子は自殺していた。妙海も殺される。妙海の周辺には椿英輔そっくりな人物があらわれていた。

新宮利彦は金に困っており、妹の秌子を近親相姦でなだめ、ダイヤの指輪をかすめ取る。