中国の軍拡と攻撃的外交でも防衛力を削減した政権5

小泉純一郎内閣総理大臣は、郵政民営化をはじめ各種の「構造改革」に乗り出した。

 

そのひとつに防衛も含まることとなった。

 

中国は1989年から国防費を急増させ、1993年にはロシアからスホーイSuー27戦闘機、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦の導入を開始し、量だけではなく質の大幅向上していった。  
   
1992年には領海法を制定し尖閣諸島、南沙諸島などの武力奪取を宣言した。  
   
北朝鮮も核開発を進め、弾道ミサイルの配備を進める。  

 

韓国の日本に対する軍事的挑戦が強まり、経済が復調したロシアは極東での権益を増すため軍事力を強化していた。

 

日本の防衛力増強は必至であった。しかし小泉政権は大幅な軍縮を目指した。

 

 

2004年年末、「安全保障と防衛に関する懇談会」の答申を受けて、防衛計画の大綱の見直しが始まった。

 

小泉純一郎内閣総理大臣は、防衛計画の大綱の見直しに、「小泉構造改革」を反映させようとした。その結果、小泉総理大臣は財務省に主導権を持たせた。

 

小泉総理大臣と財務省首脳の意向をうけた片山さつき財務省主計官は独自の発想に基づく防衛計画の大綱見直し案を提案してくる。

 

片山さつき財務省主計官は

 

「陸上兵力で言えば戦車、火砲、対戦車用ヘリ。海上兵力では護衛艦、対潜哨戒機。航空兵力では、戦闘機などの作戦用航空機など。冷戦型の正面装備になる。」

 

と的外れな思い込みが激しかった。

 

 

テロ対策、ゲリラ・コマンド対処にしても

 

「施設に人を張り付ける非効率な守り方から、情報能力を高めて、敵に張り付ける効率的な方法に変更するというのが、RMAの考え方」、

 

「対象国として想定されている北朝鮮の特殊部隊2500人が日本に向け侵攻し、接岸するとの想定が、アメリカはじめ、わが国も含め周辺各国が情報衛星などを含めてあらゆる方法で集中監視している国から、これまでのような少人数ならいざ知らず、2500人もの大規模部隊が、移動を始めたことすら探知も捕捉もされないほど、甘い国際環境に北朝鮮はおかれていない。」

 

と甘い考えを表明している。(注1)

 

RMAの実現には時間がかかり多額の予算が必要になるが、RMA予算を増額することはなかった。情報能力を高めると言っているがISR(情報捜索偵察)能力向上への予算はつけられなかった。

 

北朝鮮の工作員・コマンド・ゲリラは有事の際に急に日本に来るのではなく、平時から日本に浸透されている。工作員は民間の航空、船舶を使い日常的に浸透している。ゲリラは金正日政治軍事大学に留学した朝鮮総連要員が日本国内で結成するものである。

 

 

 

 

 

1995年防衛計画の大綱では

 

陸上自衛隊現有定員は16万人(実際は16万7千人)、

 

常備編成定員は15万8千人、

 

予備自衛官と即応予備自衛官9千人、戦車979両であった。

 

海上自衛隊の護衛艦数は

 

護衛艦隊33隻、

 

地方艦隊21隻

 

の54隻であった。

 

航空自衛隊の戦闘機数は

 

編成定数300機、実際は295機

 

であった。

 

 

 

 財務省と片山さつき財務省主計官は

 

陸上自衛隊の編成定数を12万人、

 

うち常備編成定数を11万人、

 

予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人とし、

 

戦車は425両と半減した。

 

また北海道の2個師団・2個旅団4万3千人を1個師団1万3千人にするなど、大幅な削減を提案した。

 

これは日本の国土の2/3で、人口は1/2、さらに友好国、同盟国に囲まれたイギリス陸軍(ブリティッシュ・アーミー)の現役兵力より少ない数で、予備役を含めるとさらに少ない数となる。

 

また、装甲厚700mm以上(均質圧延防弾鋼板換算)に及ぶ複合装甲と、装軌・1500馬力のエンジンによる走破性・機動力によって戦場のパトロールをはじめゲリラ・コマンド対処、機甲戦などあらゆる紛争に最適であると、戦車の有効性が近年のあらゆる地域紛争で証明されているのに数を半減させている。

 

 

 また、片山さつき財務省主計官は

 

「他国は少数精鋭化している。この事実を防衛庁側はいまだみとめようとはしない」

 

としているが、陸上自衛隊は国土面積38万平方km、人口1億2700万人の大国でありながら、編成定数16万人の少数精鋭である。

 

また、近年の紛争頻発、激化によって各国は陸上兵力を増加させている。

 

災害には、

 

「自衛隊、警察、消防、自治体が協力して対応すべき」

 

と言いながら、災害救援に当たる警察の機動隊の削減も要求し、自治体防災予算も増やさなかった。

 

 

 

海上自衛隊の護衛艦数は38隻とし、

 

航空自衛隊の戦闘機数は216機とした。

 

航空自衛隊のこの数字は

 

北海道より人口も面積も小さいイスラエルの469機(F-15A/B戦闘機47機、F-15I戦闘爆撃機60機、F-16A/B/C/D戦闘機362機)、

 

発展途上国のトルコ484機(F-16C/D戦闘機270機、F-4E戦闘機214機)、

 

サウジ・アラビア275機(F-15C/D戦闘機98機、F-15S戦闘爆撃機72機、トーネードADV防空戦闘機60機、トーネードIDS戦闘攻撃機45機)、

 

九州程度の大きさで人口が2000万人しかいない台湾575機(F-16A/Bブロック20戦闘機150機、ミラージュ2000戦闘機60機、IDF経国戦闘機150機、F-5E/F戦闘機215機)

 

よりも少ない数である。

 

さらに15年以上前年度比10%以上の軍事費増加を続け、近隣諸国への侵略と覇権の姿勢を見せる中国や、歴史的に覇権主義、拡張主義の国防体制をとるロシアに接する、人口1億2700万人、国土面積38万平方km世界でも有数の領空・排他的経済水域を持つ日本では、従来の編成定数でも不足する。 

 

 

一方、防衛庁は

 

陸上自衛隊の編成定数を16万2千人、うち常備自衛官を15万2千人、予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人、戦車の数は678両と提案、

 

海上自衛隊の護衛艦数を50隻、

 

航空自衛隊の戦闘機数を282機と提案した。

 

防衛庁もゲリラ・コマンド対処に必要なマン・パワーを増加させているが、護衛艦数、戦闘機数を削減ありきで削減している。