冷戦が終わり平和になったので自衛隊を減らせと言い続けた政治家マスコミ学者1

猪口孝・東京大学教授は2002年4月18日の読売新聞朝刊において、

 

「日本は国際紛争解決のための力の行使を専守防衛以外に自己抑制してきた。これは20世紀後半に、かつてない長い平和を日本にもたらす一つの大きな力だった。」、

 

「日本外交は、人間の業とでもいうべき軍備を縮小し、軍備管理していくことを全面的に突出させなければならない。」、

 

「いくつかの国がミサイル防衛で軍備競争を激化させる一方、安全保障を求めて多くの国家が核ミサイルを保有・拡大に走るというシナリオも懸念される。このシナリオを阻止する方向が日本の軍縮外交の基本でなければならないだろう。」

 

と主張している。

 

情勢判断が甘く、理想論だった。

 

 

 

 

 

 

 民主党や社民党のブレーンで、田中真紀子氏など左派のブレーンをつとめた山口二郎・北海道大学教授(当時)は1995年(平成7年)4月号の雑誌「Ronza」において、

 

「軍備というのは、永続的な秩序を守るためにそんなに役立つものでないという点について日本は、きちっと主張していく必要がある。」、

 

「安全保障とか秩序というものの構成要素がずいぶん変わったわけで、人間の存在にとっての脅威や、安全を脅かす要因として、軍事以外のものがはっきり見えてきた。」

 

と述べている。

 

軍事の脅威は今日も存在し、その脅威はさらに増している。この主張は外れたといえる。

 

 

 

 

「安全保障と防衛に関する懇談会」の答申を受けて、防衛計画の大綱の見直しが始まった。小泉純一郎内閣総理大臣は、防衛計画の大綱の見直しに、「小泉構造改革」を反映させようとした。その結果、小泉総理大臣は財務省に主導権を持たせた。

 

小泉総理大臣と財務省首脳の意向をうけた片山さつき財務省主計官は独自の発想に基づく防衛計画の大綱見直し案を提案してくる。

 

片山さつき財務省主計官は

 

「陸上兵力で言えば戦車、火砲、対戦車用ヘリ。海上兵力では護衛艦、対潜哨戒機。航空兵力では、戦闘機などの作戦用航空機など。冷戦型の正面装備になる。」

 

と的外れな思い込みが激しかった。

 

テロ対策、ゲリラ・コマンド対処にしても

 

「施設に人を張り付ける非効率な守り方から、情報能力を高めて、敵に張り付ける効率的な方法に変更するというのが、RMAの考え方」、

 

「対象国として想定されている北朝鮮の特殊部隊2500人が日本に向け侵攻し、接岸するとの想定が、アメリカはじめ、わが国も含め周辺各国が情報衛星などを含めてあらゆる方法で集中監視している国から、これまでのような少人数ならいざ知らず、2500人もの大規模部隊が、移動を始めたことすら探知も捕捉もされないほど、甘い国際環境に北朝鮮はおかれていない。」、

 

「日米同盟を強化するなら、なぜ自衛隊を強化する必要があるのか」

 

と甘い考えを表明している。

 

1995年防衛計画の大綱では陸上自衛隊現有定員は16万人(実際は16万7千人)、常備編成定員は15万8千人、予備自衛官と即応予備自衛官9千人、戦車979両であった。海上自衛隊の護衛艦数は護衛艦隊33隻、地方艦隊21隻の54隻であった。航空自衛隊の戦闘機数は編成定数300機、実際は295機であった。

 

 財務省と片山さつき財務省主計官は陸上自衛隊の編成定数を12万人、うち常備編成定数を11万人、予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人とし、戦車は425両と半減した。また北海道の2個師団・2個旅団4万3千人を1個師団1万3千人にするなど、大幅な削減を提案した。

 

これは日本の国土の2/3で、人口は1/2、さらに友好国、同盟国に囲まれたイギリス陸軍(ブリティッシュ・アーミー)の現役兵力より少ない数で、予備役を含めるとさらに少ない数となる。また、装甲厚700mm以上(均質圧延防弾鋼板換算)に及ぶ複合装甲と、装軌・1500馬力のエンジンによる走破性・機動力によって戦場のパトロールをはじめゲリラ・コマンド対処、機甲戦などあらゆる紛争に最適であると、戦車の有効性が近年のあらゆる地域紛争で証明されているのに数を半減させている。

 

 また、片山さつき財務省主計官は

 

「他国は少数精鋭化している。この事実を防衛庁側はいまだみとめようとはしない」

 

としているが、

 

陸上自衛隊は国土面積38万平方km、人口1億2700万人の大国でありながら、編成定数16万人の少数精鋭である。また、近年の紛争頻発、激化によって各国は陸上兵力を増加させている。

 

災害には、

 

「自衛隊、警察、消防、自治体が協力して対応すべき」

 

と言いながら、災害救援に当たる警察の機動隊の削減も要求され続けている。

 

 

海上自衛隊の護衛艦数は38隻とし、航空自衛隊の戦闘機数は216機とした。

 

航空自衛隊のこの数字は

 

北海道より人口も面積も小さいイスラエルの469機(F-15A/B戦闘機47機、F-15I戦闘爆撃機60機、F-16A/B/C/D戦闘機362機)、

 

発展途上国のトルコ484機(F-16C/D戦闘機270機、F-4E戦闘機214機)、

 

サウジ・アラビア275機(F-15C/D戦闘機98機、F-15S戦闘爆撃機72機、トーネードADV防空戦闘機60機、トーネードIDS戦闘攻撃機45機)、

 

九州程度の大きさで人口が2000万人しかいない台湾575機(F-16A/Bブロック20戦闘機150機、ミラージュ2000戦闘機60機、IDF経国戦闘機150機、F-5E/F戦闘機215機)

 

よりも少ない数である。

 

さらに15年以上前年度比10%以上の軍事費増加を続け、近隣諸国への侵略と覇権の姿勢を見せる中国や、歴史的に覇権主義、拡張主義の国防体制をとるロシアに接する、人口1億2700万人、国土面積38万平方km世界でも有数の領空・排他的経済水域を持つ日本では、従来の編成定数でも不足する。 

 

一方、防衛庁は陸上自衛隊の編成定数を16万2千人、うち常備自衛官を15万2千人、予備自衛官及び即応予備自衛官を1万人、戦車の数は678両と提案、海上自衛隊の護衛艦数を50隻、航空自衛隊の戦闘機数を282機と提案した。ゲリラ・コマンド対処に必要なマン・パワーを増加させているが、護衛艦数、戦闘機数を削減ありきで削減している。

 

小泉内閣総理大臣は2004年12月1日の参議院予算員会で、「防衛予算も聖域はない。前年度以下に抑制するように、増やすべきは増やしていいが、それに見合った削減も考えてくれと言っている。」と発言した。

 

細田内閣官房長官は2004年12月8日に、東京・赤坂全日空ホテルで与党安全保障に関するプロジェクトチームの額賀福志郎氏に対して、

 

「定数は抑制的にしてほしい。私の感触として小泉首相はそうだ。」

 

と述べ、小泉内閣総理大臣と細田内閣官房長官は高まる脅威の中、軍縮を指示した。

 

 

 

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