日本の国家安全保障90年代 53

 

 第1節 日本の危機 中国 1990年代

 

 

 

 

 中国は1989年以来、国防費を対前年度比10%以上増加させ続けている。

 

 

さらに、この国防費の中には装備導入費、研究開発費などは含まれていなかった。

 

 

ロシアからの輸入兵器であるスホーイSu-27戦闘機、スホーイSu-30MKK戦闘爆撃機、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級ディーゼル・エレクトリック推進潜水艦の購入費は

 

国務院予算に計上され、

 

 

核兵器の予算は科学技術予算や電力開発予算に計上されていた。

 

 

 

このことから中国の実際の国防費は公表されているものの3倍から8倍であると推測される。

 

 

 

殲撃8Ⅱ戦闘機はグラマン、ウェスティングハウス・エレクトリック、リットンとアメリカ企業が協力したが、

 

1989年の天安門事件によって西側陣営からの軍事技術移転・導入が困難になった中国は、経済的に困窮するロシアに接近した。

 

 

中国は1992年にスホーイSu-27戦闘機の中国への輸出をとりまとめ、翌1993年に第一陣として26機のスホーイSu-27戦闘機を受領し、

 

スホーイ27戦闘機シリーズ(Su-30MKK戦闘爆撃機、Su-30MK2戦闘爆撃機)の輸入を続けた。

 

 

さらに中国はスホーイSu-27戦闘機の中国国内でのライセンス生産をおこなうようになり、保有数は300機を突破するにいたっている。

 

 

これによって中国人民解放軍航空軍・海軍航空隊の大幅な近代化と戦力増強を実現しつた。

 

 

中国はスホーイSu-30MKK戦闘爆撃機、スホーイSu-30MK2戦闘爆撃機の導入で、近隣諸国の脅威となっている。

 

 

 

 海軍においても

 

中国国産の駆逐艦、フリゲート、潜水艦の着実な増強をはじめ、

 

ロシアからソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦を輸入した。

 

また、これら戦力を有効に活用するために早期警戒管制システムの導入につとめた

 

 

 ソブレメンヌイ級駆逐艦に装備されているマッハ2の速度で、超低空スキミング飛行するSS-N-22艦対空ミサイルは、高高度脅威を目的に開発されたイージス・システムを艦隊防空の主軸に据える日本の脅威となった。

 

 

 

 中国と日本の直接的懸案事項は尖閣諸島の防衛問題である。

 

 

尖閣諸島は明治政府による先占の実効性により我が国固有の領土である。

 

 

中国は、

 

日本の第二次世界大戦敗戦後には尖閣諸島の領有権を主張しておらず、

 

1968年の国連アジア極東経済委員会(ECAFE)による尖閣諸島、東アジアにおける石油埋蔵の可能性が報告された直後の1970年から領有権を主張し始めた。

 

 

 

 中国は1992年に領海法を制定し、その領海法では尖閣諸島の、南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島を中国の領土であると主張する。

 

これらの島々は日本、ベトナム、フィリピンなどに不当に占拠されているとして、武力による奪還も明記されている。

 

 

1978年には中国政府の扇動で尖閣諸島に中国船籍の漁船大集団を派遣、

 

 

1995年から1996年には海洋調査、

 

そしてその後も継続的に海洋調査船や海軍艦船を尖閣諸島付近、南西諸島付近の日本領海および日本領海ぎりぎりのところまで接近させ、調査活動をおこなっている。

 

 

 

1996年9月には

 

尖閣諸島近辺56kmの海域で中国人民解放軍海軍東海艦隊、南京軍区人民解放軍空軍が参加した尖閣諸島奪取訓練を実施している。

 

駆逐艦2隻、フリゲート2隻、スホーイSu-27戦闘機が参加する本格的なものだった。

 

 

 

 

 尖閣諸島周辺では

 

人民解放軍の海洋調査船「東調232」、「大地」、「海氷723」、

 

人民解放軍の影響下にある国家海洋局、国務院国土資源部の海洋調査船「化学1号」、「海洋4号」、「奮闘4号」、「奮闘7号」、「中国海監18」、「大洋1号」、「東方紅2」、「濱海511」

 

がソナー調査、ソノブイ投下など

 

潜水艦戦に必要な

 

潮流調査、海底地質調査、海流温度調査

 

などの軍事調査を行っている。

 

 

 

 1995年4月と5月には沖縄トラフで中国国務院地質鉱山局「向陽紅9号」が海洋調査し、

 

 

1995年12月には久米島と大正島にある日本の排他的経済水域で「勘探3号」が日本の海上保安庁の制止を無視し海洋調査を続けた。

 

 

1997年には「奮闘7号」が大正島、尖閣諸島の領海を侵犯しながら海洋調査をおこなった。

 

 

1998年には宮古海峡で「海洋13号」がソナーを使用した調査をおこなっている。

 

 

 

 1995年から1996年にかけては尖閣諸島周辺で中国情報収集艦船が日本領海を侵犯し、

 

 

2000年5月にはヤンビン級情報収集兼砕氷艦「海氷723」が

 

対馬海峡において複数回の往復航行、ジグザグ航行を実施、

 

さらに津軽海峡においても複数回の往復航行、ジグザグ航行、アンテナの回転、ソナーの海洋投下を実施、

 

その後、房総半島、紀伊半島沖の日本領海すれすれの場所においてアンテナを回転させるなどの行動をとった。

 

 

また、2000年7月には、

 

同じく「海氷723」が愛知県沖日本領海すれすれのところで情報収集活動をおこなった後、大隈海峡において情報収集活動をおこないながら通過していった。

 

 

経済発展し、シー・レーンの確保が必要となった中国にとって、日本を籠絡することが国家安全保障、経済安全保障にとって重要になっている。

 

 

 中国政府は大陸棚を、大陸の延長部であるとする「自然延長論」を根拠に、東シナ海を中国の海と認識している。日本などがとる「中間線論」と折り合う気はないようである。

 一方で南シナ海では「中間線論」をとり、東南アジア諸国の大陸棚を侵食している。

 

 

 

 エネルギー輸入国、通商国家となった中国は、シー・レーン防衛の必要が出てきたことから、外洋海軍(ブルー・ウォーター・ネイヴィー)建設がはじまり、日本列島も中国の外洋海軍の活動域・防衛ラインに入る。まず第2列島線まで封鎖(接近阻止・領域拒否戦略)、最終的には、最小限でもハワイ以西の西太平洋を防衛ラインにしたい模様である。

 

 

 

 

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