国家安全保障 マス・メディアにおける論議 1990年代
読売新聞と朝日新聞 1995年
読売新聞における論議 1995年
1995年(平成7年)2月24日の社説「有事立法論議をタブー視するな」
では、
阪神大震災で「有事法制」なき国の悲劇が露呈されたが、
この原因となった社会党、左翼マスコミの「自衛隊違憲論」を批判、
シビリアン・コントロールの維持の必要性からも有事法制の必要性を説いている。
1995年3月1日の社説「日米安保を充実強化するとき」
では、
各種紛争や、中国の軍事力増強や、北朝鮮の脅威の存在から、超大国アメリカの責任と、
日米同盟による抑止力が重要である、
と説いている。
1995年5月1日の社説「安保強化のための防衛強化」
では、
「ソ連消滅により、脅威はなくなった」
などの理由で日米安保条約解消論を唱える勢力を、
わが国を取り巻く情勢を考慮していないもの
と、批判している。
読売新聞は、
「日米安全保障条約、日米同盟をさらに充実させていくことが重要だ」
と、
提言している。
とくに
「ポスト冷戦でも、日米安保体制の重要性に変化はない」
との認識をあらためて深めていくことを提言している。
日本国内には左派勢力、左派マス・メディアを中心として、日米安保不要論が強かったが、読売新聞は、これらを一蹴している。
1995年5月19日の社説「国際協調に背く中国の核実験」では、
国際的に問題である中国の核実験を批判、
政府開発援助をカードとしておくべきとの意見がなされている。
1995年8月5日の社説では、中国、そしてフランスに対しても自制を求めている。
1995年8月18日の社説「中国の核実験強行に抗議する」
では、
繰り返される中国の核実験を非難し、
包括的核実験禁止条約に反対する中国を強く非難している。
1995年8月30日の社説「武村蔵相の『核抑止』観を問う」
では、
中国の核実験には反対せず、
フランスの核実験には反対した武村正義大蔵大臣にたいして、
「私的参加」
を公人がおこない国際社会の誤解が生まれたこと、
軽率なパフォーマンス的な行動を批判している。
1995年10月27日の社説
では、
沖縄で発生した駐留アメリカ海兵隊兵士による少女暴行事件によって動揺する世論に、
「安保体制が揺らいではならない」
と、
アメリカとの同盟の重要性を説いている。
また、1995年11月5日には、
ごく少数の沖縄アメリカ軍基地用地地権者の反対を退け、
強制使用手続きをおこなった首相を評価している。
日本のおかれている国際社会での立場をわきまえた当然の処置で、当然の評価である。
1995年6月10日の社説、「党利党略を離れた防衛大綱を」
では、
「防衛計画の大綱」見直し作業について、
与党である自民党、新党さきがけ、社民党の3党に、
米ソ冷戦構造の崩壊の一方、
地域紛争の多発、北朝鮮の脅威、中国の軍拡、さらには阪神大震災などの災害出動、テロに備えるため、
日米の協力を中軸に、
新たなる防衛計画をまったく思想の違う3党に国益を考えるようにもとめている。
このことは非常に難しいもので、憲法改正を視野に入れた自民党、リベラル左派の新党さきがけ、自衛隊違憲論の残滓強い社民党が共同で今後数年の防衛計画を決めるのであるから紛糾必死であるのを読売新聞社説は諌めている。
1995年8月3日の社説、「お粗末な数字だけの防衛費論議」
では、
1996年度防衛費の概算要求基準において、
社民党が、党是に掲げている「軍縮」の看板を下ろせないがために1995年度の対前年度比0、855%以下に抑えるように主張、
国際情勢の認識に欠け、防衛政策を提示することのないまま数字だけで議論されている状態を非難している。
1995年12月23日の社説、「“先送り”に終始する防衛論議」
では、
防衛政策がなんら討議されることなく、
社民党、大蔵省の数字先行の削減要求に終わってしまったことを非難している。
これら社説は、大蔵省(現・財務省)と左派政党による内容のない数字だけの削減を的確に非難している。
1995年11月12日の社説「『集団自衛権』を議論の土壌に」
では、
自民党が集団自衛権の行使に言及したことを評価、
野党・新進党にも日本の防衛の観点からそれを求めている。
1995年11月29日の「『集団的自衛権』のタブーを破れ」では、
野党・新進党の有志が集団的自衛権の行使に踏み込んでいることを評価している。
1995年の読売新聞は、中国の軍拡、北朝鮮の脅威におかれる日本において、それに対処しうる体制、防衛力の強化と、日米同盟の重視、有事法制整備による防衛体制の適正化を提言しており、非常に適切な指摘が多い。
朝日新聞における論議 1995年
1995年(平成7年)5月3日にいくつかの安全保障に関する提言をおこなっている。
PKF業務をおこなわずに国連協力する「平和支援隊」創設の提言、
2010年までに自衛隊を国土防衛隊に改変縮小、
陸上自衛隊半減、
イージス艦、P-3C対潜哨戒機、F-15戦闘機の大幅削減
を主張している。
また
「すべての土台は、日本が再び軍事的な脅威とならないことだ」
として、対話型の安全保障をめざす、としている。
「平和支援隊」のような組織が果たして国際社会から必要とされているのか疑問である。
「陸上自衛隊の半減」と主張しているが、16万の定員が充足率9割の状況で基盤的防衛力にも達することなく、さらに半減させるということは、国土防衛の必要最小限にも及ばないとおもわれる。
イージス艦、P-3C対潜哨戒機にしても、艦隊防衛という決して侵略的・攻撃的なものでないので、これを大幅削減させる理由はない。
朝日新聞自身が中国の海軍力増強を認識しているならなおさらである。
また、「F-15をこれほど濃密に配備している国はない」との表現には、事実認識に誤りがある。
日本より高度な防空体制を敷いている国は数多い。
これら提言は、現実を無視した朝日新聞の独りよがりに過ぎない。
1995年11月30日の社説「新大綱は時代に耐えられるか」では、
新大綱による自衛隊の削減傾向を
「不十分」
と指摘しながら
「防衛費の削減に結び付けなければならない」
と主張している。
地域の不安定化を防ぐには
「日本が非核三原則や武器禁輸原則を厳格に貫き、さらに紛争の予防や信頼醸成に貢献する決意を明確にすること」
と、ひとりよがりかつ、あいまいなものに終わっている。
日本のおかれた情勢を認識しているのか疑問である。
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